アドルファス・メカス『ハレルヤ・ザ・ヒルズ』(1963年)を観る。
言うまでもなくジョナス・メカスの弟であり、『リトアニアへの旅の追憶』にも、ジョナスの書いたものにもしばしば登場する。ただこの映画はなかなか観ることができなかった。いまではDVD(英語字幕付)が入手できる。
話に聞いた通り、作風はジョナスとはまったく異なる。一応は男女の色恋が出てくるものの、そのストーリーは敢えて支離滅裂になっている。雪のなかではしゃいだり、銃を撃ったり、ヘンな顔をしてみたり。D・W・グリフィス『東への道』へのオマージュだと言ってもいるが(しかも最後ではなく途中で突然告白する)、それもひとつの要素に過ぎない。したり顔でヌーヴェルヴァーグの影響が云々と言うのはやめておこう。とにかく自由なのだ。人間の精神は自由だ!
サウンドトラックのLP盤だけはずいぶん前に入手していた。映画を観たあとにあらためて聴いてみると、バスクラも効いていて、やはり解放されたような自由感があって、なんだかとても良い。
●参照
ジョナス・メカス(1) 『歩みつつ垣間見た美しい時の数々』
ジョナス・メカス(2) 『ウォールデン』と『サーカス・ノート』、書肆吉成の『アフンルパル通信』
ジョナス・メカス(3) 『I Had Nowhere to Go』その1
ジョナス・メカス(4) 『樹々の大砲』
ジョナス・メカス(5) 『営倉』
ジョナス・メカス(6) 『スリープレス・ナイツ・ストーリーズ 眠れぬ夜の物語』、写真展@ときの忘れもの
ジョナス・メカス(7) 『「いまだ失われざる楽園」、あるいは「ウーナ3歳の年」』
ジョナス・メカス(8) 『ファクトリーの時代』
ジョナス・メカス(9) 『富士山への道すがら、わたしが見たものは……』、小口詩子『メカス1991年夏』
ジョナス・メカス(10) 『ウォールデン』
アンディ・ウォーホルのファクトリー跡
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