入谷のなってるハウス(2019/5/19)。昼間でお祭りもやっていて良い雰囲気だが、赤いドアを開けるとそこは地下音楽の世界。
Jun Numata 沼田順 (g, electronics)
Hisaharu Teruuchi 照内央晴 (p, pig, bell)
Ryuichi Yoshida 吉田隆一 (bs, bell)
この3人とは?と驚かされた前回のギグからはや1年が経つ。そのときは、「めちゃくちゃにしよう」という過度の策動によって、次へのポテンシャルが期待されるものとなった。
ファーストセットでは、意外なほどに三者の音が前へ前へと押し出され、大きな奔流を作った。吉田さんのウェットな轟音、ピアノとしてはそれに応じるために堅い和音を次々に積み重ねてゆく。沼田社長はずっとピピピピピという目覚まし時計のような音を出している(ご本人は「バリトンサックスの音かと思った」と謎のコメント)。照内さんのピアノもそれに呼応してか横方向に音を散らした。
セカンドセットでは、序盤は照内さんのピアニズムが支配的かと思われた。しかしふたりも呼応し、轟音だけではない複層的なサウンドを構築してゆく。合間合間に吉田さんが鳴らす鐘の音もまたサウンドの小さな亀裂となっていて良い。
このまま多様化を続けるのかと思っていると、照内さんが動いた。何を考えてか不敵な笑みを浮かべ、どこからか豚ちゃんを取りだし、腹を押してぶぎゅーぶぎょーと鳴かせる(どちらかというと豚の虐待にみえた)。轟音が止まり空間ができるたびに豚ソロが聴こえる。吉田さんはどう見ても笑いをこらえているように見える。だがその挑発に負ける面々ではない。バリサクは高いエネルギーをウェットに維持した(ときおり右手を招き猫みたいに振り上げるのはどういうことだろう。ガトー・バルビエリ化への一歩か)。沼田社長の音はここにきて、やはりというか、奇妙に懐かしい雰囲気を感じさせた。硬い大理石を叩くかのようなピアノの音とともに、静まって終わった。
次はまた1年後か。
Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4
●沼田順
mn+小埜涼子@七針(2019年)
mn+武田理沙@七針(2019年)
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2018年)
中村としまる+沼田順『The First Album』(2017年)
RUINS、MELT-BANANA、MN @小岩bushbash(2017年)
内田静男+橋本孝之、中村としまる+沼田順@神保町試聴室(2017年)
●照内央晴
吉久昌樹+照内央晴@阿佐ヶ谷ヴィオロン(2019年)
照内央晴、荻野やすよし、吉久昌樹、小沢あき@なってるハウス(2019年)
照内央晴+方波見智子@なってるハウス(2019年)
クレイグ・ペデルセン+エリザベス・ミラー+吉本裕美子+照内央晴@高円寺グッドマン(2018年)
照内央晴+川島誠@山猫軒(2018年)
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2018年)
『終わりなき歌 石内矢巳 花詩集III』@阿佐ヶ谷ヴィオロン(2018年)
Cool Meeting vol.1@cooljojo(2018年)
Wavebender、照内央晴+松本ちはや@なってるハウス(2018年)
フローリアン・ヴァルター+照内央晴+方波見智子+加藤綾子+田中奈美@なってるハウス(2017年)
ネッド・マックガウエン即興セッション@神保町試聴室(2017年)
照内央晴・松本ちはや《哀しみさえも星となりて》 CD発売記念コンサートツアー Final(JazzTokyo)(2017年)
照内央晴+松本ちはや、VOBトリオ@なってるハウス(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』@船橋きららホール(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』(JazzTokyo)(2016年)
照内央晴「九月に~即興演奏とダンスの夜 茶会記篇」@喫茶茶会記(JazzTokyo)(2016年)
田村夏樹+3人のピアニスト@なってるハウス(2016年)
●吉田隆一
吉田隆一ソロ@なってるハウス(2019年)
吉田隆一ソロ@T-BONE(2018年)
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2018年)
藤井郷子オーケストラ東京@新宿ピットイン(2018年)
MoGoToYoYo@新宿ピットイン(2017年)
秘宝感とblacksheep@新宿ピットイン(2012年)
『blacksheep 2』(2011年)
吉田隆一+石田幹雄『霞』(2009年)