Sightsong

自縄自縛日記

吉田哲治+栗田妙子@東中野セロニアス

2020-03-21 11:01:34 | アヴァンギャルド・ジャズ

東中野のセロニアス(2020/3/20)。

Tetsuji Yoshida 吉田哲治 (tp)
Taeko Kurita 栗田妙子 (p)

ファーストセットは吉田さんのオリジナル2曲から。「ハイ・デ・ボッチ」は間がぎくしゃくとしていて、テーマの途中で吹かなかったりして、どことなく奇妙だ。「IM1」は池田芳夫さんのお弟子さんにあたるムロタさんという方の頭文字だそうで、ふたりでユニゾンをキメたあとに自由飛翔をはじめ、競うように走ってズレもあらわれてくるという、やはり奇妙な曲だった。

続いて栗田さんのオリジナル「昔話」と「昆虫博士」。後者は下を向いて歩く追憶的な雰囲気が漂っていて、ピアノもミュートを付けたトランペットもだんだんと強くなってきた。

続いて、フリジアン・スケールを使わない「フリジアン・ストーン」という吉田さんのオリジナル。ちょっとノリが「Watermelon Man」みたいで、強度が高いピアノも、音を少しファンキーによじらせるトランペットも良かった。

セカンドセットは栗田さんのピアノソロで、オリジナル「へそ」と「境川」。左手のベースラインの上で暴れる音の群がとても愉しい。吉田さんがまた入り、先の続編「IM2」。震えながら吹きはじめ、やがて朗々と鳴る。ピアノはそれを支える印象。「パレード」はまたしても妙なパターンで、渋くも賑々しくも花開いた。続いての栗田さんのオリジナル(なんだろう?)は、悦びと美しさに満ちた和音からフラグメンツが飛び出て散りばめられるようで、そこに詩人のように吹くトランペットとともに良い世界を創った。

「木曽川」では、長く低音を響かせつつ、さまざまな和音を重ねる。それに、靄を吹き飛ばすようなトランペット。音風景もそれが持つ時刻も早回しのように変わってゆく。最後はレゲエみたいな感じの曲。

渋さも華やかさもあって、すぐウケそうなものに色目を使わない、良い音楽だと思った。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●吉田哲治
吉田哲治『December』、『Eternity』(2019年)
吉田哲治『Jackanapes』(2018年)
FIVES & 鈴木常吉『童謡』(1991年)
のなか悟空&元祖・人間国宝オールスターズ『伝説の「アフリカ探検前夜」/ピットインライブ生録画』
(1988年)
生活向上委員会大管弦楽団『This Is Music Is This?』(1979年)

●栗田妙子
川下直広+栗田妙子『11.25 & 27@バレルハウス』(2019年)
伊藤匠+細井徳太郎+栗田妙子@吉祥寺Lilt
(2018年)


ヨアヒム・バーデンホルスト+安田芙充央+井野信義@稲毛Candy

2020-03-21 08:15:27 | アヴァンギャルド・ジャズ

稲毛のCandy(2020/3/20)。

Joachim Bedenhorst (cl, bcl)
Fumio Yasuda 安田芙充央 (p)
Nobuyoshi Ino 井野信義 (b)

安田さんはCandy初登場、井野さんは久しぶりで「クルマで3時間かかったよ!」と言いながら現れた(横須賀から稲毛は遠い)。

3人は気負いも衒いもなくインプロを開始する。はじまりの安田さんの内部奏法は弦を掌で押さえ、勝手知ったるように鍵盤とともに制御するようなもので、その思い切りにいきなり引きこまれる。バスクラが入るとピアノのあり方が変わる。続いて井野さんが参入したのだが、弓を使った乱暴さに動かされてしまう。インパクトがあったのか、ヨアヒムも安田さんも井野さんを眺めていて可笑しい。井野さんはマージナルな音領域を攻め、その後ピチカートに移ったときの音の深さといったらない。そしてピアノが再び入り色を付け、全体を迫り上げる。

ベースとピアノがサウンドを停滞ではなく前進にシフトすると、ヨアヒムはクラを手に取った。マルチフォニックの出し方も、ベースとともにマージナルな領域に専念するありようも良い。井野さんは駒の下の弦を擦り唸るような音さえ出す(!)。デュオは逸脱の振幅を大きくしてゆく。

またピアノが入るとベースとのふたりで愉し気な呼吸を共有し、バスクラが入り、ピアノの迫力が全体を支配し、そしてトリオ。この悦びはなんだろう。ヨアヒムはクラでは一筆書きのようなノリのソロも聴かせる。3人の時間の制御ぶりはさすがである。

セカンドセット。バスクラのマージナル域での震えに対し、コントラバスが弓でなぞる。ヨアヒムは循環呼吸も使い管を鳴らし、フォーキーな感覚の旋律も展開する。ここではピアノのトリルと、ベースとバスクラの途切れない連続音との併存が素晴らしかった。

そしてヨアヒムがバスクラでエリック・ドルフィーを思わせる跳躍する太いラインを描く。三つ巴でばんばん出てくるが、突然潮目が変わり、お祭りのようなリズムが訪れた。井野さんは愉しそうにコントラバスを抱え込んで高速のピチカート、安田さんはフレーズを繰り返し、ヨアヒムがクラで受ける。この集合と逸脱の繰り返しの中で、ヨアヒムがクラのマウスピースを外してフルートのように吹いたのはおもしろかった。「Blue Moon」のようなフレーズも聴こえた。

ピアノの和音でまた潮目が変わり、ヨアヒムはマウスピースを取り付け、井野さんの静かなアルコがあり、安田さんは箏を思わせる音での内部奏法をみせた。

文字どおり3人の達人による、みごとな演奏。感嘆した。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●ヨアヒム・バーデンホルスト
ヨアヒム・バーデンホルスト+大上流一+南ちほ+池田陽子@不動前Permian(2020年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+ガレス・デイヴィス+秋山徹次@水道橋Ftarri(2020年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+細井徳太郎@下北沢Apollo、+外山明+大上流一@不動前Permian(2019年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+北田学@渋谷Bar subterraneans(2019年)
Poem of a Cell Sound / Film Installation & Concert in Tokyo@ドイツ文化センター(2018年)
Spontaneous Ensemble vol.7@東北沢OTOOTO(2017年)
ギレルモ・セラーノ+ヨアヒム・バーデンホルスト+マルコス・バッジャーニ『Lili & Marleen』(2016年)
LAMA+ヨアヒム・バーデンホルスト『Metamorphosis』(2016年)
ハン・ベニンク『Adelante』(2016年)
安田芙充央『Erik Satie / Musique D'Entracte』(2016年)
ダン・ペック+ヨアヒム・バーデンホルスト『The Salt of Deformation』(-2016年)
安田芙充央『Forest』(2015-16年)
ヨアヒム・バーデンホルスト『Kitakata』(2015年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Garlic & Jazz』(JazzTokyo)(2015年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Ljubljana』(2015年)
パスカル・ニゲンケンペル『Talking Trash』(2014年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+ジョン・ブッチャー+ポール・リットン『Nachitigall』(2013年)
ハン・ベニンク『Parken』(2009年) 

●安田芙充央
Poem of a Cell Sound / Film Installation & Concert in Tokyo@ドイツ文化センター(2018年)
安田芙充央『Erik Satie / Musique D'Entracte』(2016年)
安田芙充央『Forest』(2015-16年)

●井野信義
TRY ANGLE/原田依幸+井野信義+山崎比呂志@なってるハウス(2019年)
山崎比呂志+レイモンド・マクモーリン+井野信義@なってるハウス(2019年)
藤原大輔『Comala』(2018年)
Poem of a Cell Sound / Film Installation & Concert in Tokyo@ドイツ文化センター(2018年)
ニュージャズホールって何だ?@新宿ピットイン(2018年)
安田芙充央『Forest』(2015-16年)
峰厚介『Plays Standards』(2008年)
アクセル・ドゥナー + 今井和雄 + 井野信義 + 田中徳崇 『rostbeständige Zeit』
(2008年)
井野信義『干反る音』(2005年)
沖至+井野信義+崔善培『KAMI FUSEN』(1996年)
高瀬アキ『Oriental Express』(1994年)
内田修ジャズコレクション『高柳昌行』(1981-91年)
内田修ジャズコレクション『宮沢昭』(1976-87年)
日野元彦『Flash』(1977年)
森剣治『Plays the Bird』(1976年)