大阪の国立国際美術館に足を運んだ目当ては、実は、「郭徳俊 ニコッとシェー 1960年代絵画を中心に」展だった。
郭徳俊は京都生まれ。両親が韓国人であったために、サンフランシスコ講和条約の発効(1952年)とともに日本政府に国籍を剥奪され、在日コリアンとなる。その後、結核を患い、余命10年を宣告され、生への執着を絵という形にしていった。1960年代の作品群は、そのようにして生まれた。
もっとも、そのような背景の物語を意識してもしなくても、この作品群はひたすら愉快で、またひたすらに本能的な域にアクセスしてくる。
デュビュッフェのように天真爛漫かつ邪気溢れるものもあれば、菅井汲のようにかたちへの傾倒が見られるものもある。鳥の目で、存在しない都市のヴィジョンを幻視したようなものもある。すべてが生と性のエネルギーで満ちているようだ。自分もスケッチブックを開いて、思いつくままに線や色を展開していきたいという気持ちになってしまう。