辻野弥生『福田村事件』(五月書房)。
ちょうど百年前の関東大震災のとき、デマに煽られた市民や軍人が多くの韓国・朝鮮人を殺した。このときの判断基準は「話し言葉が日本人のように聞こえるか」程度のものであって、そのために地方出身の被害者もまた多かった。福田村(いまの野田市)で刃を向けられたのは香川県から来た薬の行商人たち。
沖縄の詩人・山之口貘も、関東大震災のとき日本刀を持った男がうろうろする殺伐とした時空間を体験している(NHKのドキュメンタリー『貘さんを知っていますか』)。実際、多くの沖縄人が犠牲になった。そんな事例が少なくなかったことは知っているので、あらためて読んでみても驚きはない。いまさら人間って!なんて嘆息するのはイノセントに過ぎるというものだ。けれども、驚きはなくても恐怖はある。
この本には、千葉県下で朝鮮人と誤認して日本人を殺害した事例のリストが掲載されている。うちのすぐ近所でも、浦安町で2人、行徳村で3人が被害に遭っている。やはり恐怖は具体的なところからあらわれる。
さて森達也さんの映画を観にいくかどうか。
●関東大震災
関東大震災99周年/韓国・朝鮮人犠牲者追悼式
関東大震災97周年/韓国・朝鮮人犠牲者追悼式
呉充功『隠された爪跡』、関東大震災96周年/韓国・朝鮮人犠牲者追悼式
伊藤ルイ『海の歌う日』
藤原智子『ルイズその旅立ち』
『ルイズその絆は、』
亀戸事件と伊勢元酒場
加藤直樹『九月、東京の路上で』
藤田富士男・大和田茂『評伝 平澤計七』
南喜一『ガマの闘争』
田原洋『関東大震災と中国人』
植民地文化学会・フォーラム「内なる植民地(再び)」
山之口貘のドキュメンタリー(沖縄人の被害)
平井玄『彗星的思考』(南貴一)
道岸勝一『ある日』(朝鮮人虐殺の慰霊の写真)
『弁護士 布施辰治』(関東大震災朝鮮人虐殺に弁護士として抵抗)
野村進『コリアン世界の旅』(阪神大震災のときに関東大震災朝鮮人虐殺の恐怖が蘇った)