ジョージ・オーウェル『カタロニア讃歌』(岩波文庫、原著1938年)を読む。
1936年、オーウェルはフランコ将軍の反乱軍に抗するため、個人として、共和国を応援する民兵部隊に参加する。フランコ側を独伊のファシズム国家が支援し、英仏は直接には干渉しない方針を取った。ファシズムとの闘いという意義をわがこととして身を投じたのは、スペイン国内のみならず、世界中から集まった義勇兵たちでもあった。その意味で、スペイン内戦はまたスペイン市民戦争でもあった。
オーウェルが属した組織は、労働者による革命を先行させようとしたPOUM(マルクス主義統一労働者党)。その他に、アナキズム色の強い組織や、ソ連が支援する共産主義組織があった。オーウェルが体験し、見たものは、革命よりも中産階級・ブルジョアを含む層を取り込んだ国家形成の方を先行させようとする共産主義組織による醜い同胞粛清であり、それはソ連の意向を汲んだものなのだった。
このルポルタージュは、スペイン戦争が単純な図式によって語りうるものでないことを、生々しく示すものだ。オーウェルが共感し、伝えたかったことは、後付けの歴史の欺瞞、そして、ファシズムに抗するために集まった人びとの連帯感の実感なのだろうと思える。
オーウェルが英国に戻ったあと、フランコが内戦に勝利し、日本は、早々にフランコ政権を支持した。フランコ独裁体制は、その後、1975年まで続くことになる。すなわち、この歴史は現在と地続きのものである。
この本には多数の写真が掲載されていて、本文は活版、製本は意図かがりです。
文庫になっていたとは気づきませんでした。文庫版では、写真は省略されているのでは?
しばらくしてヒュー・トマスの『スペイン市民戦争』という大著にチャレンジしたものの、途中で挫折してそのままになっています。
ヒュー・トマス『スペイン市民戦争』はみすず書房ですね。読んでみたいところです。