ケルンのエミさんから、マックス・エルンストが好きならブリュールという町にエルンスト美術館があると教えていただき、ボンに行く前に立ち寄った。確かに田舎町だが駅前にあって不便はない。
特別展はポルトガルのジョアナ・ヴァスコンセロス(1971年生)。レースでテレビや犬が梱包されている。飾り立てることと身体への過度の負担が女性の置かれたポジションなのであり、それをこのように痛いほどに提示されると圧倒されてしまう。中でも、深紅の大きなレースの心臓がぐるぐる回るインスタレーションなんて命そのものだ。ヴァスコンセロスはエルンストのヴィジョンにも影響を受けたようであり、それゆえのこの美術館での展示か。
エルンスト作品のコレクションはさすがである。
コラージュ作品は無関係が関係を持たされているという点でシュルレアリスムのカテゴリーに(歴史的に)はまるものであり、凝視すればするほど笑える。『百頭女』『カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢』『慈善週間:あるいは七大元素』の3冊は河出文庫版で観てきたけれど、これは大きなサイズで観るべきものだ。
わたしがもっとも愛するエルンストのスタイルはフロッタージュであり、それが20年代のフランス時代から模索を経て、完成どころか向こう側に突き抜けてしまう様子がわかる。九龍城的、生物のコロニー的でもあるが、こちらの理解を拒絶する異星の生物的でもある。
それらの宇宙的なヴィジョンは、コラージュやフロッタージュよりも立体作品において主張されている。もちろんユーモラスで笑えるのだけれど、ここまで執拗に提示されると、かれだけに感知できる宇宙的メッセージがあったのではないかと夢想してしまう(危ない、危ない)。エルンスト作成のチェスセットなんて欲しい。
●マックス・エルンスト
ケルンのルートヴィヒ美術館とヴァルラーフ・リヒャルツ美術館
2010年と1995年のルートヴィヒ美術館所蔵品展
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ