アンジェイ・ワイダ『ワレサ 連帯の男』(2013年)を観る(岩波ホール)。ここでワイダの映画を観るのは、『コルチャック先生』、それから『灰とダイヤモンド』のリバイバル上映以来である。
レフ・ワレサ(ヴァウェンサ)。1970年頃から労働運動や政府批判を開始し、幾度となく当局に投獄される。つねに監視下にあり、また当局からも、運動内部からも、ときには市民からも、苛烈な批判を受けることもあった。それでも、ワレサは心を折ることなく、「連帯」を率いて、ポーランドの民主化を主導していく。そして、ついに大統領となる。
あらすじはこれだけであり、実際に、映画もほとんどそれだけだ。上映後出てきた観客のなかから、「ほとんどワレサの成功物語だけになっていた」、「投獄されて受けたはずの拷問が、なぜほとんど描かれないのか」、といった声も聞こえてきた。物足りなさはわたしも同じである。おそらく、ワイダは祖国の英雄に呑まれてしまったのだろう。
当局が国内的には威張りながらも、ソ連に対しては戦々恐々としている姿は興味深いものだった。
ところで、1980年に、ワレサの許をイタリア人女性ジャーナリストが訪れる場面がある。当然、建物の外で当局が監視しているのだが、そのときに当局が使っていたカメラは、ソ連Zenit(クラスノゴルスク機械工場)製のダブルラン・スーパー8(16mmフィルムの100フィートのリールを右左で2回使う8ミリカメラ)であるQuartz DS8-3に見えたが、どうだろう。