台北にいる間に、いくつか美術館・博物館を覗いた。
■ 二二八国家記念館
1947年2月28日の二二八事件について展示がなされている。中国本土からの外省人による白色テロであり、かつての国家権力による汚点を自ら晒すことは日本にはない。
事件と直接の関係はないものの、日本による植民地支配も多く展示されており、皇民化教育のひどさが迫ってくる。高砂族を特攻隊として死なせたことなど日本ではあまり知られていない。
また、事件の犠牲者たちが名前と肖像写真とともに並べられているのだが、写真が無い者も多い(おそらくは名前がわからない者も)。記憶の継承は容易ではない。
帰国してから気が付いたのだが、二二八和平公園内に台北二二八和平紀念館という別の場所がある。今度はぜひ行ってみなければ。
■ 台北市立美術館
ふたつの展示。
于彭(Yu Peng)は台北生まれのアーティストであり既に故人。水墨画や版画を多く手掛けている。はじめは散漫にも思えて流すように観ていたのだが、ふと、その情報過多の世界がロシア・アヴァンギャルドのフィローノフにも共通する無限のミクロコスモスに視えてきた。
「Musica Mobile」は音楽のさまざまなあり方を提示する企画展。手を叩くと反応して光を放ちながら笑うスマホの森(Stephane Borrelらによる「Smartland Divertimento」)など面白かった(>> 動画)。スマホ用アプリもあるのでヒマな方はどうぞ。
なかでもとりわけ素晴らしいなと思った展示は、李明維(リー・ミンウェイ、Lee Mingwei)による「四重奏計画」である。暗い部屋の中に4つの衝立があり、それぞれの向こうがぼんやりと光って、弦楽器を奏でている。視えない存在と音楽という観点に奇妙に動かされた。
■ 順益台湾原住民博物館
先住民族(台湾では原住民と呼ぶ)についての博物館。小さいながらなかなか充実していて勉強になる(図録も買った)。
楽器の展示場所で流れるようになっている。なかでもタイヤル族のロボ(口琴)は弾く板が複数あり、かなり巧妙に作られていた。また鼻笛というものもあった。
博物館前の公園には、先住民族たちの彫像(石板)があった。
■ 湿地
ちょうど市内のいくつかのギャラリーが連動した写真展をやっていて、そのひとつ。風呂に乱暴に写真が置いてあったりと工夫が凝らされている。もっとも、若い人たちの意欲以上のものではなかったが。
■ 朋丁
1階が本屋とカフェ、2階と3階が展示室。デイヴィッド・シュリグリー(David Shrigley)のシニカルな作品はいちいち笑える。
■ 關渡美術館(KdMofa)
大学の敷地内にある美術館。いくつも小さい展示があった。なかでも「On Demand」展は楽しめた。アーカイヴから複数の映像が壁に映写されており、また、PCでは、文字通りオンデマンドで映画を観ることができるようになっている。ヴィム・ヴェンダース『東京画』があり、つい最後まで観てしまった。
■ 当代芸術館(MOCA Taipei)
現代美術をこそ観たかったのだが、ちょうと工事中だった。残念。