新井一二三『台湾物語 「麗しの島」の過去・現在・未来』(筑摩選書、2019年)を読む。
なるほど、台北を見て台湾を見た気になってはいけないということがよくわかる。台北は歴史的には外省人の都市、国民党の都市。しかし台北とそれ以外との対比はそう簡単ではないし、また、実際に交通インフラが整って住民にとっての距離が近くなったのは、比較的最近だということもまたわかる。
海の神・媽祖についての記述も面白かった。華南一帯における民間信仰の対象だが、マカオの名前の由来になったことは知らなかった(媽祖を祀った廟である媽閣から来ているという)。媽祖は海の交易ルートに沿って祀られており、東南アジアから沖縄、さらには青森の大間にまでたどり着いている(姫田光義編『北・東北アジア地域交流史』)。何年か前には大久保にも媽祖廟ができた。本郷義明『徐葆光が見た琉球』によれば、沖縄では媽祖のことを「天妃」と称し、渡来後の中国人が礼拝していた。いま、天妃宮の跡は、那覇の天妃小学校に残る。なお本書によれば、香港では「天后」と称する。すなわち、台湾も沖縄も中国沿岸も、海からの視線で視なければならない。
●参照
何義麟『台湾現代史』
丸川哲史『台湾ナショナリズム』
佐谷眞木人『民俗学・台湾・国際連盟』
黄銘正『湾生回家』
ウェイ・ダーション『セデック・バレ』
侯孝賢『非情城市』
Sakurazaka ASYLUM 2013 -TAIWAN STYLU-
デイヴィッド・ダーリング+ウールー・ブヌン『Mudanin Kata』
Panai『A Piece of Blue』、Message『Do you remember the days when we could communicate with ...』
趙暁君『Chinese Folk Songs』二二八国家記念館、台北市立美術館、順益台湾原住民博物館、湿地、朋丁、關渡美術館(、当代芸術館)