エドワード・ヤン『クーリンチェ少年殺人事件』(1991年)を再見した。
公開後権利関係の理由だとかで観ることが困難な時期が長く続いて、当時、わたしは香港のセラーからVCD(アジアで普及した、そのようなものがあった)を買って観た。4枚組とは言え画質がとても悪く、英語字幕もあまり読み取れなかった。それでも傑作だとわかった。3年ほど前にリバイバル上映があったときには満員で入れなかった。そんなわけで、amazon primeにあることを知って嬉しかった。
戦後の台湾における外省人と内省人との軋轢。これを直接的なドラマではなく、子どもという複雑でどう変化するかわからないフィルターを通して描いたことがユニークである。
そして、画面の細部から得られる印象はとても大きい。固定した引きの撮影で、自分ではどうにもならず把握さえできない大きな歴史の中に置かれた者たちの姿を描いている。広角レンズを多用し、被写界深度の深さにより、壁や痕跡や人を同列に見せるのも良い。引きによるかれらとの間の空気感は、時間の積み重なりを感じさせる効果を与えているように思える。
やはり大傑作だった。
●エドワード・ヤン
エドワード・ヤン『恋愛時代』(1994年)
エドワード・ヤン『クーリンチェ少年殺人事件』(1991年)