ロイ・ナサンソン『Nearness and You』(clean feed、2015年)を聴く。
Roy Nathanson (as, bs, ss, p, vo)
Arturo O'Farrill (p)
Anthony Coleman (p)
Myra Melford (p)
Marc Ribot (g)
Curtis Fowlkes (tb, vo)
Lucy Hollier (tb)
2015年6月、ニューヨーク・The Stoneにおけるナサンソンのレジデンシーの抜粋である。ここではほとんどデュオ集のような形になっているが、実際のところ、The Jazz Passengersなど、もっといろいろな編成での演奏が繰り広げられた模様(>> リンク)。
わたしはマイラ・メルフォード目当てで聴いたのだけれど、彼女だけでなく、この多彩な共演者たちとナサンソンとの会話ぶりがとても愉しい。マーク・リボーの割れた音のギターもいい。アンソニー・コールマンが入ると少し背筋が伸びるような感覚。マイラ・メルフォードは転がり出る音と戯れている。
ナサンソンは、父親がテナーで吹く「The Nearness of You」なんかを聴いて育ったのだという。タイトルはそのもじり。さらに「The Nearness of Ewes」とか「The Nearness of Jews」とか、悪ふざけ満点。それを、まったく力が抜けたなで肩のサックスが彩ってゆく。なんだかロル・コクスヒルの諧謔と脱力ぶりを思い出してしまう。
さらに、ラテン・ピアニストのアルトゥーロ・オファリロが美しく速く弾き、ナサンソンが味わいを込めて吹く「Ida Lupino」にも惹かれる。カーラ・ブレイの曲である。そういえば、本盤のジャケットはカーラの『Songs with Legs』に似ている。もっとも、それに「Ida Lupino」は入っていない。