ヴァーラーナシー(ベナレス)は聖なるガンガー(ガンジス川)での沐浴で有名であり、三島由紀夫や遠藤周作もここを舞台にした小説を書いている。ちょっと話したサリー屋の男も、「大沢たかおが『深夜特急』の撮影で来たよ、長澤まさみも来たよ」なんてまくしたてていて、オリエンタリズム的なステレオタイプと化しているのは間違いないのだ。
とは言っても、そして実際に日本や韓国や欧米の観光客をちらちら見かけるとしても、そんなもので本質が揺るがないような圧倒的な存在の重さがヴァーラーナシーにあることも間違いない。ガンガーと路地と雑踏でそんなように思った。
空き時間にガンガーに足を運ぼうとしてホテルで訪ねると、沐浴なら早朝か夕方、特に朝焼けが良いよと教えてくれたが、そうも言っておられず、昼過ぎに向かった。
ガンガーでは大勢の人や犬や山羊が階段に腰掛けていて、呆然と川面を眺めている。ボートに乗って対岸を見物しようとする人たちもいた。
横の路地はひたすら狭く、それにも関らず、バイクも牛も平気で通っている。
「町の中心部からガートへ向かう大通りの左手、幅二メートル程の小路を入ると、サーリー、下着、食器、玩具、線香と、およそ生活と信仰とに関わるありとあらゆるものを売る小さな店が、両側に所狭しと並んでいる。」
(荒松雄『インドとまじわる』)
この文章が書かれたのは1981年、30年前のことであるが、これは変わっていない世界だと確信できる。ひとつの小さな店で、気まぐれにハヌマーンの小さな彫像を値切って手に入れた。きんまの葉に石灰水と檳椰の実を巻き込んだものを噛むと口の中が真っ赤になる。いつか試したいと思っているが、仕事で来ていてそれは無理。
野菜売り
行きかう人びと
ポンプ
狭い路地の牛
※すべてペンタックスLX、AM TOPCOR 55mmF1.7、FUJI PRO 400で撮影
●参照
○荒松雄『インドとまじわる』
○2011年9月、ベンガル湾とプリーのガネーシャ
○2011年9月、コナーラクのスーリヤ寺院
○2011年9月、ブバネーシュワル
○2010年10月、デカン高原
○2010年10月、バンガロール
○ジャマー・マスジッドの子ども
○2010年10月、デリー
○2010年9月、ムンバイ、デリー
○2010年9月、アフマダーバード
○PENTAX FA 50mm/f1.4でジャムシェドプール、デリー、バンコク