森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

トキワイカリソウ(メギ科)

2006年05月20日 | 自然観察日記
越後低山には最も一般的に生育している。越後にあるものは花は澄んだ白色だ。紫色のトキワイカリソウも他県にはあるという。常葉の通り葉は常緑のまま冬を越す。

キバナイカリソウ(メギ科)

2006年05月20日 | 自然観察日記
 画像でははっきりしないがトキワイカリソウに比べ花が黄色い。葉は冬に枯れ越冬しない。詳しい分布調査をしないと判らないのだが、この種はトキワイカリソウに比べ深山にあるようで、むしろイカリソウと重なっているのだろうか。

イカリソウ(メギ科)

2006年05月20日 | 自然観察日記
 花の形がユニークなイカリソウ。一目見るともう忘れないし、名前も納得の山野草で、ファンも多いのではないかと思う。
 ところが、越後には私の知るところ3種があるがいろいろと謎の多い種ではないかと思っている。
 長岡辺りには次種のトキワイカリソウがごく普通に生育していて、地域の人はイカリソウは白い花というイメージが出来上がっていて、紫の花を見ると驚く。ところが、太平洋側の人は逆で、白い花を珍しがるのだ。イカリソウは太平洋側、トキワイカリソウは日本海側のすみわけでもしていると考えると収まりがいいのだが、越後のイカリソウは魚沼の深山で雪の深いところに点々と生育し海岸に近いところにはない。こうなると納得がいかなくなるのだ。イカリソウは太平洋側から高い山を越えて越後に来たのか?そう考えるのも不自然であるからもっと違う思考をしなければならないのだろう。
 どんな野草にも不思議が一杯詰っている。

アマドコロ(ユリ科)

2006年05月19日 | 自然観察日記
 ナルコユリに似ているが茎が角ばり陵を持つから丸茎のナルコユリと区別することが出来る。地下茎がポコポコと膨らんでいてヤマノイモ科のトコロに似ていて甘みがあるからアマドコロなのだそうで、山菜扱いされている。
 まだ食したことが無いのでいつか試そうと思いつつ、あるとき「地下茎にはアルカロイドを含む」ということを知った。「なんでそんな危険なものが山菜なんだよぉ・・」。少量なのだろうがむやみやたらと食べてはいけないということである。
 植物にとっては自己防衛の手段、ようやくアマドコロもそういう能力を獲得してこれからもっと発展させようとしている途上なのだろう。どんな生き物も時間と共に変異し新しい能力を獲得していく。人も同じで日々進歩しないといけない。

ラショウモンカズラ(シソ科)

2006年05月18日 | 自然観察日記
 我が家には全国各地から連れてきた「子供」が育っている。このラショウモンカズラもそのうちの一つで、これは越後魚沼の平標山麓の沢筋から連れてきた。けっこう暴れ癖があって我が家の庭の一角にはびこっている。連れてくるといってもそこは良識の範囲内で、自分の手に負えそうにないものは持ってこないし、多くは一枝頂いて、挿し木や挿し穂で活着させているから誤解のないように。
 ところで、「ラショウモンカズラ」という名前が気になる。花の形が羅生門の鬼の切り落とされた腕に似ているからだというのだが、名付けられた方はいい迷惑だろう。もう少し美的な名前でも十分通用すると思うのだが。「カズラ」は蔓を意味する。ランナーを出して結構あちこち這い回る。
 ラショウモンカズラの生態も面白い。新潟県内では阿賀野川沿いには福島県側から海岸近くまで分布しているのだが、その他の分布は越後山脈に沿った深山に点々と生育する。信濃川や魚野川沿いには下りてきていない。ただし、弥彦山塊には分布する。どんな歴史がこの植物にはあったのか、そんなことを考えるのも楽しいものだ。

クマヤナギ(クロウメモドキ科)

2006年05月17日 | 自然観察日記
 今回も少し地味なものを紹介する。クマヤナギというがヤナギの仲間ではない。紛らわしいホナガクマヤナギという主に日本海側に分布している種もあるのだが、つるになるかならないところで区別できる。クロウメモドキ科のもので同じ科にナツメなどがある。
 面白いのは、果実は越冬し次の春に成長を初め初夏に黒く熟す。花は6月頃に見られるのだが、花の時期に昨年の果実があるという変わった性質がある。温帯の夏緑樹林帯に住む植物としては特異な性質に見える。どういう理由があるのだろうか、春から夏は鳥の渡り鳥の北上が見られるから、クマヤナギは北へ行きたがっているのだろうか。

ウゴツクバネウツギ(スイカズラ科)

2006年05月16日 | 自然観察日記
 5枚のがくとつぼみ(果実)をくくりで見ると「つくばね」に似ている。ツクバネウツギと名付けれれたのも頷けるというもの。もちろん「ウツギ」は「空木」で茎が中空であるためだが、「ウゴ」は「羽後」で秋田辺りの地名であろう。新潟県以北の日本海側に生育するツクバネウツギの変種ということになる。
 スイカズラの仲間は対で花を咲かせるものが多いが、ウゴツクバネウツギも同じ性質を持つ。新緑の頃で葉そのものが様々な彩を持つ頃の開花だからそれほど目立つ花ではない。とはいえ、可愛い花を見つけたときの喜びは大きいものだ。「今年もお前に会えたなぁ」。越後の低山の散策道にぽつんぽつんと生育している。

カマツカ(バラ科)

2006年05月15日 | 自然観察日記
 カマツカ、あまり聞きなれない樹木であろうか。特に珍しいというわけではないが多くもない。全国の山地にある低木から亜高木でるということになる。私もこの樹木に合うのはそう多くないが、今回自然観察会観察会を行った新津丘陵で見かけた。
 一見、ヤマナシの花にも見えてなんだろうと小首をかしげる人もいることだろう。この名前の由来は「鎌柄」とされるが、材の材の性質でよい材料なのだろう。別名、「ウシコロシ」ともいう。牛の鼻環に使われることからであり、材が粘り強いことから付いたものと思われる。
 秋には葉は黄葉し、赤い実をつけるから里山にあってはもっと馴染んでほしい樹木である。
 

コナラに出来た虫えい

2006年05月14日 | 自然観察日記
 コナラの芽に出来た虫えい、これほどの大きなものを見るのは始めてである。おそらく、アブラムシとかタマバエの仲間か何かが卵を産みつけて出来たものであろう。産卵時の刺激でコナラの細胞が異常な増殖をしてこのような塊になったもので、産みつけられた卵やその後の幼虫のゆりかごになる。この虫えいはまだ柔らかい。中では卵から孵化した幼虫がこの組織を餌にして成長し、やがて外に出てきて成虫として生活するのであろうか。
 植物と昆虫との関わりは不思議なものである。虫えいを理解することでその一面を覗くことが出来るが、だからといってその疑問が解決されるものでもない。虫えいはやがて固化してしまうから、タマバエなど虫えいをつくる昆虫にとって見れば産卵する時期はごく限られることになる。柔らかい組織のうちに産卵しないと次世代の個体を残せないから、そのタイミングをどう計っているのか。これもまた不思議なことである。

八王子のシロフジ(マメ科)

2006年05月13日 | 自然観察日記
 越後は今がフジの盛り。山の各所に紫色の房が垂れ下がっている。サクラと同じくらいに日本人はフジを好む。各地にフジの名所が作られていて、藤祭りなどが開かれる。鉢植えで上手に花を咲かせている方も多く庭にもなかなかの銘木が散見される。
 ところで、このフジは新潟県燕市の八王子というところにあって「八王子のシロフジ」といわれ県の記念物に指定されているものである。樹齢300年余と推計されていて、およそ10m×20mくらいの広がりで見事な花を見せてくれる古木である。臭いが強く、この時期は当たり一面に香りを放って圧巻である。
 この「シロフジ」は「フジ」の突然変異で生じた白化品種で「フジ」であるが、混同しやすいものに「ヤマフジ」がある。これは普通白い花であるので「シロフジ」というと「ヤマフジ」をさす。その違いは花穂の長さであるが、写真のように細長いのは「フジ」で、短く花穂の先が長く伸びないのが「ヤマフジ」である。

ヒスイカズラ(マメ科)

2006年05月12日 | 自然観察日記
 これも、ちょっと前の小石川植物園の温室で見た植物。ヒスイカズラ、蒼い見事な花がちょうど見ごろのときに入ったので幸運であった。温室を持つ植物園なら大概栽培しているが、花の時期に重なることはあまりなかった。花を見ればマメ科の特徴を持つ花だから直ぐわかるし、葉でも見当はつけられるのだが、各地のヒスイカズラの株で今までに果実を見たことが無い。
 当然マメの実なのだが見かけないところをみると不稔性なのかもしれないとおもっていたのだが、調べてみるとポリネーター(花粉運搬者)のせいであった。ポリネーターがコウモリなのだそうだ。コウモリがいない温室では実は出来ないのは当然の理屈なのだが、人口受粉でもダメだというから不思議である。
 多くのマメ科植物は根粒菌との共生で栄養の多いところでは生育しないいわゆる先駆植物という生態をもつ。だから、種子を作りにくいというのはある意味マメ科らしからぬ性質なのである。ましてや、次の子孫をコウモリとの付き合いの中でしか作らぬという選択は、マメ科の中では「風上にもおけない」存在なのだろう。
 

ミツバアケビ(アケビ科)

2006年05月11日 | 自然観察日記
 越後は山菜の真っ盛りである。なかでもこのミツバアケビの新芽を「きのめ」と呼んで地元でも非常に人気が高い。私の家内もこの「きのめ」だけは大好きで、採ってきてとせがむほどだ。ほろ苦く歯ざわりのよさが好きなのだろう。
 ところで、越後にもアケビの仲間は3種あって特に旧新津方面の海岸に近いほうには一緒に見られることがある。5枚葉で全縁のアケビと三枚葉のミツバアケビ、それにこの雑種と思われる5枚葉でふちが波打つゴヨウアケビである。三種の花のほうは、アケビはうすい紫、ミツバアケビは写真のような濃紫、ゴヨウアケビはう中間の紫色となり二者の雑種というのがわかる。さらに、ゴヨウアケビは果実が出来ないという。動物で言うとライオンとヒョウをレオポンといい子供が出来ないというのに似ている。自然界における不思議の一つだ。
 雪深い長岡辺りはミツバアケビしか見ないが、山菜としてはこれが一番美味しい。今年もたくさん頂くことにしよう。長岡は山菜に恵まれたところなのである。