森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

ホウノキの不定根

2006年05月10日 | 自然観察日記
 菩提寺山散策道で見かけた面白い植物の生態の一つ。ホウノキの二股に分かれるところ(腋)から何かしらの原因で腐れがはいって材が腐敗してしまったようだ。中心材がここからおそらく数十cm範囲で半ば腐植土のようになったためか、ホウノキの表面の生育部から根が発生し、この腐植土の中に根を伸ばし始めたようである。
 地上から1.5m位の高さのところであるが、このまま根が下へと伸びた場合、ホウノキ自身の中心材の中に根が入り込むことになるのだが、中心材は死んだ組織であるとはいえ機能している組織であるから、はたしてどのようなことになるのか興味深い。自らの組織の中に自らが伸びていく・・・・。ある種のジレンマをどう克服するか?

ナガハシスミレ(スミレ科)

2006年05月08日 | 自然観察日記
 昨日に引き続いてスミレから一題。ナガハシスミレ、別名テングスミレ。距(きょ)という花の後部のとんがりを天狗の鼻に見立てたものと直ぐわかる。「ハシ」は「嘴」の意味で鳥などのくちばしのことだから、「ナガハシ」は「長い嘴」からきていることも理解できるだろう。
 葉を見ればタチツボスミレに似ているからこの仲間というのも理解できるが、結構いろいろな種があって、このグループもなかなか難しい。しかし、花の距の長さは一目瞭然だから、花があれば間違えることはないスミレである。
 日当たりのいい場所に群生していることも多く、ユーモラスな天狗状の青色の花がとても良く目立つ。気分を和ませてくれる野の花である。

マキノスミレ

2006年05月07日 | 自然観察日記
 越後はスミレの宝庫である。今はまさにスミレの最盛期で、今後いくつかの種を紹介することになるだろうが、今回は菩提寺山散策道で見かけたマキノスミレ。マキノスミレは木漏れ日が差し込むような比較的うす暗い山道に生育し、枯葉の熱く溜まったような場所にはない。群れて生育することも嫌うようで、ナガハシスミレやオオバキスミレなどのような生活スタイルをとらない。
 散策道沿いに生育するが踏まれることの少ない道の端で土壌がむき出しになっているような場所を好むように見える。そういう意味で典型的な里山植物ということになるのだろう。「マキノ」は植物学者の牧野富太郎氏にちなんだ名前だ。
 葉の裏が紫色に帯色し、同じようなシハイスミレ(紫背菫)との識別がいまだ判然としない。付き合っていくとだんだん判らなくなってくるもので、スミレの世界も奥が深い。

コシノチャルメルソウ(ユキノシタ科)

2006年05月06日 | 自然観察日記
 菩提寺山散策道の野草、コシノチャルメルソウ。これも、越後の山野の少し湿った場所にはごく普通にあって定番の植物。チャルメルというのは花の形が中国の楽器チャルメルというのに似ているとからだというが、どんな楽器かは知らない。それにしても名前を付けた方の感性に感心する。
 アップで見るとなかなか芸の細かい造詣でなのだが、受粉にはどんな昆虫が関わっているのだろうか。ほとんど虫らしい虫を確認できないから風媒花状態なのでは無いだろうか。花も小さいし色彩も地味で昆虫の目にもアピールしないのではないだろうか。

モミジイチゴ(バラ科)

2006年05月05日 | 自然観察日記
 菩提寺山への散策道に比較的多かったのがこのモミジイチゴの花。枝に鋭い棘があるから下手に触ろうものなら痛い思いをしなければならないせいか、普通は遠めで愛でている。近づいて観察すればきりっとした姿と純白の花弁が清楚な品のいい雰囲気をかもし出している。決して派手な存在ではない。
 黄色のぶつぶつした果実は6月頃に熟すが、キイチゴの仲間で日本産のものの中では最も美味しいものと私は思っている。外来産のベリー類にも決して引けを取らないと思うのだが、まだこれを栽培して商品化したという話を聞かない。野生には至る所にあるものだが、どこか難しい問題が隠されているのだろう。

オオルリ(スズメ目ヒタキ科)

2006年05月04日 | 自然観察日記
 5月に森林インストラクターとしての仕事が2回入っている。ゴールデンウィークのさなかだが来週の案内をするために下見を行った。旧新津市の金津地内にある菩提寺山。標高は250m足らずの里山だが、石油の里として知られ白玉の滝があったり山頂からは新潟方面が一望に見渡せる展望のいい場所でたくさんの市民が好天の中汗を流していた。
 白玉の滝の駐車場について、綺麗な小鳥の鳴き声が聞こえたので見上げるとオオルリが舞っていた。またとない幸運であった。梢に止まっては駐車場の空き地上に飛んでくる虫を待ち構えて、獲物が来ると飛び立って捕まえまた梢に止まる。こんな行動を何度も何度も繰り返していて、観察するには絶好の機会を与えてくれた。啼き声もさることながら瑠璃色の美しさには感動する。10mくらい上空を行ったりきたりする姿をしばし時を忘れて見入ってしまった。
 オオルリは渡り鳥で夏鳥ということになってはいるが、もうここ金津には飛来している。

ヒトツバタゴ(モクセイ科)

2006年05月03日 | 自然観察日記
 これも小石川植物園のもの。もちろん名前は以前から良く知っていて、モクセイの仲間というから越後ではマルバアオダモという樹木が生育しているから、系統からしてこれと同じという感じを抱いていた。思いがけない対面だったからしみじみと観察させてもらった。
 別名「ナンジャモンジャノキ」という。植物学者が分類上どれに分類していいか判らず「なんじゃもんじゃ」と言ったのが「いわれ」なのだそうだが、真偽のほどは判らない。日本では自生地がごく限られていて珍木とされているが、公園樹として各地に植栽されている。

トキワマンサク(マンサク科)

2006年05月02日 | 自然観察日記
 見事な巨木である。マンサクのイメージを一変させた出会いであった。さらにの花の時期に出会えたことでなおさらである。びっしり付いた花は流れ落ちる滝を見ているようであった。しばし言葉が出ない。
 かって、伊勢神宮で社中の植物を簡単に案内を受けたことがあって、そのときにトキワマンサクの樹についても説明を受けた。だれそれの寄進で植えられたような話であったが、4~5mくらいのさほど大きなものでなく、越後にも普通にあるマルバマンサク程度の大きさで、マンサク科の植物はこの程度のものかと勝手なイメージを作り上げたものである。一枝頂いて挿し木をし伊勢神宮の分身を育てているが25年くらいの歳月が流れるがまだせいぜい40cmの苗木である。
 マンサクの名の由来は縁起のいいものとして有名であるが、「トキハ」は「常盤」で常緑性を意味しているから、マンサクの仲間でもひときわ縁起がいいのだろう。




イヌザクラ(バラ科)

2006年05月01日 | 自然観察日記
 西日本ではサクラは終わり今は東北がサクラの盛りである。南北に長い日本は桜前線などという言葉もあって花と季節の南北移動の変化を表現する。世界でも類を見ない感性ではないかと思う。
 「サクラ」好きな日本人でもイヌザクラは知られていない。「サクラ」と付くが第一印象で「サクラ」とは考えないだろう。無理もないのだが、一つ一つの花を見れば「サクラ」と同じ構造だから納得はしてもらえるかもしれないが、穂状になった花ではいわゆる「サクラ」ではない。
 上越の妙高高原でイヌザクラを見かけたことがあるが、野生では越後でも少ない。しかし、同じ属のウワミズザクラは越後には沢山ある。山菜で「あんにんご」といわれるもので、このつぼみを塩味で瓶詰したものである。酒の肴に合うという。