原題:『Live By Night』
監督:ベン・アフレック
脚本:ベン・アフレック
撮影:ロバート・リチャードソン
出演:ベン・アフレック/エル・ファニング/ブレンダン・グリーソン/クリス・メッシーナ/シエナ・ミラー
2017年/アメリカ
「自由な生き方」を巡って
若くして第一次世界大戦に従軍後、ボストン警察の警視正を父親に持つ主人公のジョー・コグリンは友人のディオンとパオロのバルトロ兄弟と共に街の2大勢力と化していたギャング団に属さないまま強盗を繰り返していた。従軍の経験からジョーは組織のルールに縛られることが嫌だったのであるが、その一方のギャング団の長であるアルバート・ホワイトの情婦であるエマ・グールドと恋に落ち、それが見つかって1927年に殺されたエマの復讐を果たすためにジョーは1933年に出所後にもう一方のギャング団の長であるマソ・ペスカトーレと組んでフロリダ州マイアミのホワイトの縄張りを荒らして殺害することを決心する。
ネタバレをしてしまうが、実はエマは車で拉致された後に、背後から拳銃で運転手を撃ち、河に落ちた車から脱出して生き残っていたのである。再会したエマにそのような話を聞かされたジョーは呆然としたまま立ち去っていく。エマのような自由な生き方をジョーは望んでいたからなのだが、だからと言ってエマが必ずしも幸せそうには見えないところが本作の肝ではあろう。
ところが演出が上手くいっているように見えない。例えば、娘のロレッタが自殺した後に、家に籠っている父親のアーヴィング・フィギスが「レペント」と呪文のように唱えているシーンは、その後のシーンを考えると不必要であろうし、逆に観客の意表を突き損なっているように思う。
ジョーが息子のトーマスと映画館に行った時、第二次世界大戦が始まる直前のナチスに関するニュースリールと共に2人が観た映画はモンゴメリー・クイン(Montgomery Quinn)監督の『Riders of the Eastern Ridge』という西部劇である。ジョーの兄が脚本を書いているからということなのだが、この作品は実在するものではなく、わざわざアフレックが本作のために撮った作品のようである。ここまで作り込んで興行的に大失敗してしまったのは気の毒ではある。