今更ながら、デヴィッド・バーン(David Byrne)とブライアン・イーノ(Brian Eno)が
2008年にリリースした『エブリシング・ザット・ハプンズ・ウィル・ハプン・トゥデイ
(Everything That Happens Will Happen Today)』を聴いて、ゴスペルとアンビエントの
相性の良さに驚かされた。ところで日本盤の歌詞対訳を担っている Nick Stone の訳は決して
悪くはないのであるが、何故か訳された日本語の主語がなく、日本語としてならば自然では
あるが、英語の訳なのだから主語ははっきりさせた方が良いとは思う。
ここでは、日本盤ではリミックスヴァージョンも収録されている「プア―・ボーイ(Poor Boy)」
を訳してみたいと思う。「プア―・ボーイ」はお金持ちの「僕(I)」が却って不自由を強いられ
「貧しい(poor)」立場におかれているという皮肉を歌っていると解釈して和訳してみる。
「Poor Boy」 David Byrne & Brian Eno 日本語訳
今朝食料雑貨店の外にトラックが停まった
友達は誰も未来を見据えていて夏服に着替えている
まるでドミノ倒しのような強力な宇宙の力
僕はおかしな話をすることが大好きで
僕が知っている歌はその歌だけ
僕の人生が始まった甘く流行りの色っぽい日は
燃え尽きて損壊してしまい
僕は自分の体を引きずるようにして家に戻った
この女性器から粘液が溢れ、僕の服に滴っている
どの蠅も蜂蜜にこだわるように
彼らが知っているゲームはただそれだけ
憐れな少年
僕は帽子と靴を身に着けたまま川の中へと歩いていく
憐れな少年
僕はナイフとスプーンを持ってテーブルの前に座っている
生き急げば幸せに死ねる
君の下着が見えないようにしておくれ
僕は市場の力を信じている
僕が知っている歌はその歌だけ
だからここに来て僕の魂を揺さぶっておくれ
罪と後悔が横たわっている僕の魂を
白い馬たちが僕を向う側まで運んでいく
憐れな少年
僕は自分のあらゆる思考が冷たくなる国に住んでいる
憐れな少年
僕は自分が蒔いた種の収穫を待っている
夜の花は過行く日々の想いと共にある
僕は自分を満足させるためにあのベルを鳴らさなければならない
憐れな少年
僕は銀色のスリッパと長く白いガウンを着ている
憐れな少年
僕は周囲の壁が瓦解する日を思い描いている
憐れな少年
僕は決して自由を得られない国に住んでいる
憐れな少年
僕は目にする全てのものの名前を書き留めている