
原題:『若草物語』
監督:森永健次郎
脚本:三木克巳
撮影:松橋梅夫
出演:芦川いづみ/浅丘ルリ子/吉永小百合/和泉雅子/浜田光夫/杉山俊夫/和田浩治
1964年/日本
昭和の夫婦のプレッシャーについて
気になるシーンを書いておきたい。次女の高村由紀にフラれて瀬戸内へ記録映像を撮るために行った東京ニュース通信社に勤めるカメラマンの矢坂次郎の後を追って飛行機で飛び立った三女の高村しずかを飛行場で見送った帰りのバスで、親の言う通りに結婚していた長女の瀬川早苗は「私、瀬川と別居してチエコと一緒に住もうかしら?」と突然言いだし、それを聞いた四女のチエコが瀬川と喧嘩でもしたのかと尋ねると「何もないわ。何もないのよ。今までかて、これからかて」と答える。「誰もかれもと同じくらい楽しうて、同じくらい悲しうて、同じくらい嬉しうて」という早苗にチエコは幸せなんだから贅沢を言うなとたしなめるのであるが、早苗の漠然とした不安は夫婦に子供がいないことが原因だと思う。父親の再婚を期に3人の妹たちが早苗のアパートに住みつくようになり、最後には由紀が結婚し、しずかが恋人を追い家を離れると、いずれいなくなるチエコを我が子のように思えて一緒に暮らしたくなったという気の迷いが一時的にでも芽生えたように見えるのである。