MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『街とその不確かな壁』と学生運動

2023-07-28 00:53:22 | Weblog

 ところで『対論 1968』で一番おどろいたのは村上春樹に関する部分だった。

「いずれにせよ村上春樹の小説は、そのつもりで読み直してみると腑に落ちるところがある。これまでの作品でほとんど唯一、単行本化されていない『街と、その不確かな壁』(『文學界』1980年9月号)という中編があって、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(新潮社、1985年)の習作みたいなものなんだけど、たしかに本人も言っているように失敗作ではあるんです。しかしおそらくは、川口事件(川口大三郎事件、早稲田大学構内リンチ殺人事件)を引き起こすような早稲田の環境というものを、壁に囲まれてほとんど死んだようになっている〝壁〟に仮託して書いてるんじゃないか......というふうに読めるんだよね。あくまでも〝読める〟というにすぎませんが、『海辺のカフカ』では明確に川口事件について書いてるんだしさ。」(p.171)
「革マル派は一方で大学当局との交渉の回路を持ちつつ、革マル派以外の学生たちをムーゼルマンのように、何もできない、死者のような存在と化させるような形で支配している。」(p.173)

 ここで「そのつもりで読み直す」というのは〝革マル派批判〟的観点から読み直すという意味である。そういう読み方があるということは分かったが、試そうとは思わない。「当事者」じゃないから。

「これはもうダメだと思ったのは、竹田(青嗣)がちくま新書の『人間の未来』(2009年)で、『最悪の専制権力でもアナーキーよりましだ』と書いた時かな。もしも早稲田にまたバリケードが築かれたら、『全共闘のアナーキーより機動隊の秩序のほうがましだ』とか教授会で言うんだろう、もう向こうの側の人なんだと見切ったね。」(p.168)
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/nikkansports/nation/f-so-tp0-230418-202304180001406


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