原題:『Anatomie d'une chute』
監督:ジュスティーヌ・トリエ
脚本:ジュスティーヌ・トリエ/アルチュール・アラリ
撮影:シモン・ボーフィス
出演:ザンドラ・ヒュラー/スワン・アルロー/ミロ・マシャド・グラネール/アントワーヌ・レナルツ/サミュエル・セイス/ジェニー・ベス
2023年/フランス・ドイツ
無罪と汚名の違いについて
フランスのグルノーブル近辺の人里離れた山荘に夫のサミュエルと妻のサンドラは11歳の息子のダニエルと暮している。かつてサミュエルはロンドン大学で教師をしていたが、サミュエルの迎えが遅れたためにダニエルは4歳の時に交通事故に遭い、盲目は免れたものの、極度の弱視になってしまい、生活を変えるためにサミュエルの故郷であるフランスに戻ったのである。
バイセクシュアルのサンドラは小説家として成功し、当時は女子学生のインタビューを受けていたのだが、自身も小説家としてデビューを目指すものの、なかなか認められずくすぶったまま、自分のアイデアを使って小説を執筆して売れた妻のことを素直に肯定できないでおり、それらが理由かどうかは分からないが、インタビュー中にサミュエルの部屋から50セントの「P.I.M.P.(ヒモという意味)」のインストルメント・ヴァージンが大音量で流れてきていた。
間もなくして散歩から帰ってきたダニエルが血を流して地面に倒れているサミュエルを見つけたのが2018年の4月頃だと思う。それから一年後、サンドラは夫殺しの容疑で裁判にかけられている。
タイトルの「落下の解剖学」はサミュエルが落ちたことに関する精密な分析といった意味だが、裁判で明らかになることはサンドラの無罪という「正誤」の問題以上に、その過程で明らかになっていくサンドラの「強弁」による性格の悪さである。サミュエルの「落下」はサミュエルだけに帰する訳ではなく、多かれ少なかれサンドラにも何らかの原因がある故の落下である以上、必然的に家族も「落下」に巻き込まれるのである。
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