旅行先で私が「広島県人」だと言うと旅館や料理屋の主人は自分達が知っている広島(想像も含めて)について語り出す。
「路面電車が街を走っているでしょう」とか「原爆ドームへは行ったことがありますよ」と語る人は多い。こういう場合は笑顔で頷いている私も「カキで有名な所でしょ」と言われるとむっとするのである。
そして「もっと美味しいものがいっぱいありますよ」と反論する。しかし、彼らは「広島の人はカキをよく食べるんじゃないんですか」と更に聞いてくる。それで話を切るためにこう言うのだ。
「当たり前ですが、広島県人のすべてがカキ好きとは限りません。私は嫌いじゃないけどそんなに食べませんね。暮れに1回、年が明けてしばらくおいて2回ほどかな。広島というブランドでカキが売れたのははるか昔のことですよ。今では宮城の方が有名でしょう。他所が力をつけてきたということです。過剰なコマーシャルをするのは売れずに困っているから。だから冷凍にして年中流通させるんですよ。まあ、豚の餌にするよりはマシでしょうが、旬の有り難味はすっかり消えています。私の家では安くて身痩せしない、より旨い岡山産の養殖カキを買っています。もっと味を追求する場合は海まで出掛けてカキ打ちしますがね(笑)」