東京、仙台、名古屋、大阪、博多の人から見れば確かに広島市は小さな地方都市であろう。地下鉄も無いし、アーケードの商店街も小規模である。都会育ちの人が「田舎」だと感じるのは至極当然である。
だが、北関東の人に「田舎ですね」と言われると「実際に訪れたことがあるんですか」と逆に尋ねてしまうし、宇宙人の迷言「あなた方に言われたくない」というフレーズをそっくりそのまま使いたくなるのだ。
「首都に比較的近い街」イコール「文化的な街(都会)」と履き違えてもらっては困る。生まれ育った地を何年か離れて別世界で暮らすことにより故郷の長所短所ははっきり見えてくる。そういう意味で一つの街しか知らないのは不幸だと思う。
大正十三(1924)年、かつての城下町に「旧制広島高校」が設置された。旧制高校は文化的都市であるか否かを判断する「重要なモノサシ」になる。
18歳でガラの悪い町を抜け出した私には広島市内が輝いて見えた。普通に生活する上では自転車も車も特に必要なく、歩きでほとんど事が済んだ。日曜日になると「積善館」に入って興味を持った本を立ち読みしたものである。書籍を手に取る楽しさを教えてくれた店も既に無くなって久しい。
