エッセイ  - 麗しの磐梯 -

「心豊かな日々」をテーマに、エッセイやスケッチを楽しみ、こころ穏やかに生活したい。

キンモクセイの香り

2006-09-20 | 日々の生活
 今日、庭にほのかな秋の香りが匂った。急に膨らんだキンモクセイの薄黄色の1番花が咲き始めた。
 この初秋の香りには込み上げる思いがある。大病で長期に入院中の今頃、娘、息子が庭のキンモクセイを手折って見舞ってくれたことを思い出す。3年前の今頃は病状の回復思わしくなく、諦めかけていたころだった。
 今生かされて、今年もこの香りを一杯嗅ぐことができた。感謝、感謝、この上ない。キンモクセイを眺めながら、何より健康を思う。庭の小さな自然を愛でながら、慎ましく生かされたいと念じている。
やがて、本格的な2番花が咲くと、庭から、家中一杯に甘い香りが広がる。

 エッセイ「闘病を乗り越え 生きる喜び実感」 (2003.10)

 遠路、ほとんど毎週私を見舞ってくれた息子、娘が、庭のキンモクセイを手折ってきてくれた。涙が止まらなかった。今年の秋は例年以上に咲き、庭いっぱいに香ったとのこと。話に聞く庭の秋ももう終わってしまう。
 病魔に冒されついに入院3ヶ月を過ぎる長い闘病生活となった。手術後いろいろな後遺症に苦しみながらもまさに九死に一生を得、なんとか退院も近い今を得た。愛犬や庭の木々との再会を思い涙ぐむ日々、無言で枕に伏せやせ細った腕や点滴をながめながら、家に戻りたい一心で頑張った。
 思えば日本中の病院でこうして入院生活を送る病人がいる。カーテンで区切られた空間にそれぞれの苦しく辛い、不自由な闘病生活がある。健康の大切さを今更のように思う。
 何気なくながめる窓の空にルリタテハが勢いよく舞って行くのが見えた。もう寒くなる、精いっぱいの秋の陽を浴びよと声をかけた。