まだ日没までには間がある夕日。夏の日差しを避ける紗を張った。
書斎は西と南に全面の窓がある。
今の時期、紅く染まる夕日を背に、我が頭の影が壁に映っている。
振り返って、山の端に落ちる夕日を木々の葉越しに眺める。 そんな夕方の日課が好きだ。
夕日を見つめていると、口をついて出る歌がある。
”夕陽は赤し 身は悲し 涙は熱く 頬濡らす~”
東海林太郎の「湖底の故郷」だ。直立不動の東海林太郎が浮かぶ。
なぜこの歌なのだろうか?学生のころ生意気にも飲みに行くと、この歌をリクエストした。
その頃有線放送に希望曲をリクエストする。確かその頃は、カラオケではなくただ流れる歌声を聴いていたような気がするが、どうだったろうか。
他に、”リラの花散る キャバレーで逢て~”もよく聴いた。理由は分からないが、なぜか好きだった。ナツメロが好きなバンカラ学生だった。
「湖底の故郷」は3番まで諳んじて歌える。つい懐かしさが込み上げてきた。
1.夕陽は赤し 身は悲し
涙は熱く 頬濡らす
さらば湖底の わが村よ
幼き夢の ゆりかごよ
2.当てなき道を 辿りゆく
流離(ながれ)の旅は 涙さえ
枯れてはかなき おもい出よ
あゝうらぶれの 身はいずこ
3.別れは辛し 胸傷し
何処に求む ふるさとよ
今ぞ当てなき 漂泊(さすらい)の
旅路へ上る 今日の空