エッセイ  - 麗しの磐梯 -

「心豊かな日々」をテーマに、エッセイやスケッチを楽しみ、こころ穏やかに生活したい。

はかなさ覚える春

2008-04-05 | 日々の生活

          【可憐 キクザキイチゲ 4/5】

 まもなく学校も新しい授業が始まる。
 かつてこの時期には、生徒に啄木の「空に吸われし」十五のこころ、「かへる術ない」十四の春を語るのが常であった。一度しかない人生は、取りも直さず自分への言い聞かせでもあった。
 
 「不来方のお城の草に寝ころびて 空に吸われし 十五の心」
 「己が名をほのかに呼びて涙せし十四の春にかえる術なし」


 万物が輝かしく萌える春だが、この季節はなぜかうつろな日々にむなしさをも感じることが多かったようだ。その虚脱感は、振り返るに忙しかった日々の代価だったと思っている。厳しい冬を堪えようやく咲いた花も散り急ぐ。自然の摂理を感じながら、矢の如く過ぎ去る時を静かに見つめていた。
 これから幾たび、流れる花びらに哀れを感じることができるのだろう。短い人生を意識し本当のゆとりを思わざるを得ない。
 いずれ、人の心に関わりなく時はまぼろしのごとく流れ、自然は物言わず静かに遷ろっていく。実にはかなさを覚える春でもある。


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