先週も書いた通り、4月から山梨で仕事をしていた青年が事務所にやってきた。
この男、実は前の会社で同じ仕事をしていたことが有って、
僕の事を良く知っていて、リスペクトしてくれている。
となりのデスクに座るようになって、何かと僕に相談してくる。
実は先週末に相談を受けて、僕なりにコメントをしたのだけれど、
その件で週末は、色々と考える時間が多くなって、
芝居の稽古から帰った後に、そう云った考えをメモしたり、
『もう俺は技術者としての道は終わったし、今後もやる気なし』
と言っている自分とは裏腹に、相談を受けた部分がかつて僕が在職中に得意分野としていた
『放熱設計』の部分だったことも有って、技術的な事に頭を巡らせている自分が居ます。
電気設計に限らず、工業製品の行き着くところは『熱との戦い』です。
機械部品は特に熱の影響を受けやすい。
前の会社で設計していた電子顕微鏡に至っては、
ナノレベル(10億分の1m,100万分の1㎜、1000分の1ミクロン)のオーダーで物を観察するため、
熱によって起こる熱膨張や、揺らぎ(ドリフト)が問題になった。
電気回路が発生する熱で、物質が膨張したりすると観察している物が
動いてしまうので、写真を撮った時にボケてしまったりする。
同様に電気回路が熱によって電圧が変化したりすると、制御回路にドリフトを生じて
同じように観察している場所がずれてしまったり・・・・
その他に熱によって部品の劣化が早まって、寿命が短くなったり
特に半導体部品は熱によって素子そのものが壊れてしまったり…。
とにかく工業製品は、熱の対策がコストやサイズに大きく影響するから
用途や仕様によって熱対策の方法を吟味しないとならない。
今回は高容量のダイオード16個で発生する熱の総量が約700ワット。
丁度電気ストーブくらいの発熱になるものを、いかに冷やすか?
と言う課題に対して、僕が相談を受けたと言う訳。
それで、週末にあれこれ計算してみたりしている時間があって、
それが妙に楽しくて、いわゆる『構想設計』までしてしまった。
図を描いて、計算式と照らし合わせて間違いがないか?
そんな事をずっとやって来たんだなぁ・・・・なんて懐かしく思ったり。
技術者としての生活は、定年退職と共に終わりにしたと言うのに、
こういった時間は、それなりに楽しくて、ついつい手を出してしまう。
『もう俺の技術者としての道は終わった』
とは言っているけれど、自分の心の方はそうでもないのかも知れません。