最近、土曜日曜は釣り人が多く、地元なのに港へ行っても車が多く駐車し難い。なので土日は潜りに行くのも遠慮がちである。今回も土日は我慢したので今日は潜りに行こうと思っていた。だが、今日は仕事が終わってからも色々とあり、潜りに行くには中途半端な時間となってしまい諦める。そこに丁度のタイミングで毎年お世話になっている深海エビ船の方から電話が来る。見たことのない魚が獲れ、確保してくれているそうである。エビも大漁だったらしく港で選別作業をしているという事で急いで港へ向かう。港に着き、お忙しい中魚を頂く。見るとレプトセファルス幼生だと直ぐにわかった。レプト幼生はウナギ目やカライワシ目、ソコギス目の仔魚であるが、その違いは自分にはわからない。だが、この個体は直ぐにアナゴの仲間であることがわかる。何故なら体はレプト幼生でありながら頭部は既にアナゴ類の顔付きとなっているからである。本来のレプト幼生であれば頭部もまだ透明で形状もどの種も似たような感じであるのだが、この個体は見て直ぐにウツボ類やウミヘビ類ではないことがわかる。こんなレプト幼生は見たことも無く非常に驚く。体はそのままで、頭部だけが成長してしまった感じである。そのようなことがあるのだろうかと奇形も疑う。レプト幼生期はプランクトンを捕食していると思われるが、この頭部だとプランクトンを捕食しているとは思えない。内臓も頭部に近く成長している感じであるが、総排出腔はレプト幼生のままなのでどうなっているのだろうか。更に頭部には色素もあり全体が白いが、生きている時の体は透明だと思うので、泳いでいる時は頭部のみ見えていたのだろうか。色々と考えると謎だらけである。傷みやすく非常に扱いが難しいレプト幼生であるが、今回船の方が傷まない様に缶コーヒーを包んでいるビニールシートで包み、直接氷や海水に触れないように持って来てくれていた。ただでさえ冷凍は厳しいうえ、忙しい中この様に丁寧に確保して来て頂いたので、これは直ぐにでも大学へ届けなければいけないと思い、急いで帰る。大学へ行くまでに色が変わってしまう恐れもあったので、家でも時間を掛けず簡単に撮影してから大学へと向かう。大学に着き、綺麗な状態で標本撮影してもらう。先生も驚き、学生も調べるのに知見があるのだろうかと嘆く程である。私も家に帰りネットや図鑑で色々と調べるが同じような個体は見つからない。今後、先生や学生達が正体を明かしてくれる事に期待したい。でも、奇形だけは勘弁してもらいたい。
*後日、魚ボラで日本未記録種Congriscus maldivensisのレプトセファルス幼生と同定され、2022年6月に新標準和名ナンヨウオキアナゴ(新称)と提唱されました。
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港の浮桟橋で選別作業中
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確保して来て頂いたレプトセファルス幼生
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鹿児島大学へ
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レプトセファルス幼生?の頭部