575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

月やさしいりて芦の中

2014年08月06日 | Weblog
女性が恋する男性に、自分の名を明かさずに色紙を送りました。
一か月後に男が書いた自由律の句です。
傾く月が芦のなかに静かに入ってゆく景を詠っています。
男は女性のことを、どう思っているのでしょうか?
半年間、句を見つめてきた女性は自分の名を明かして会う決心をしたそうです。

女性は、俳人・橋本夢道の妻の静子。
夢道も、静子からの依頼では、と書いた句でした。
夢道の勤めてい奥村商店は自由恋愛禁止。
出来ちゃった結婚に至るにはまだまだ時間が必要でした。

              

橋本夢道はプロレタリア俳句運動を理由に奥村商店を解雇されました。
また、昭和15年には投獄されています。
昭和16年の真珠湾奇襲の報を知って詠んだ句。

   大戦起るこの日のために獄をたまわる

で、有名です。
静子は家族を養い、獄中の夫を支え続けました。
夢道は、愛妻家としても有名です。
47歳の時「妻は最愛なる人間である」と10句の連作を発表しています。
その中の一句。

   妻よおまえはなぜこんなに可愛いんだろうね

自由律を重んじた夢道がどこにも発表しなかった句。

   五月闇妻は牡丹の息を吐く

これも良いですね。   遅足(参考・橋本夢道物語)


コメント
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