小澤實<おざわみのる>1956年 長野の生まれ。1972年。松本深志高校に入学し、ガリ版による手作りの詩集を出版。ちなみに、小説「なんとくなくクリスタル」で知られ長野県知事となった田中康夫とは同級。信州大学の文学部に入学。信大連句会の会員となり同大学教授の東明雅やのちに国文学者となる宮坂静生より俳句を学びます。
「本の山 くづれて遠き 海に鮫」<實>
やがて、水原秋桜子の弟子で俳誌「鷹」を主宰していた藤田湘子に師事。自らも「信大俳句会」を結成します。上京し成城大学の研究課程に進学。江戸時代の北条霞亭など漢詩人の研究に没頭します。
「かげろふや バターの匂ひ して唇」<實>
1985年、「鷹」の編集長に就任。1998年、句集「立像」により俳人協会の新人賞を受賞。2000年「澤」を創刊し主宰者となります。ちなみに、相子智恵、川上弘美、野崎海芋、葛西省子、押野裕など斬新でユニークな感性を持つ俳人たちは實の門下生。
「北斎漫画 ぽろぽろ人の こぼるる秋」<相子智恵>
「ばれをるも 使ふ居留守や 目白鳴く」<川上弘美>
「潜望鏡上げよ さくらの夜なれば」<野崎海芋>
「蜂の子の 手足出たるを 食べよと」<葛西省子>
「大学に 羊生まれぬ 秋の風」<押野裕>
小澤實は「俳句は謙虚な詩である」を信条とし作者の個性より詠み手の気持ちを考えるべきと述べています。さらに、下記の句のように中七で切れ、下五でさらに描写を続ける手法は「澤調」と称されています。
「たれ刷いて うなぎの艶や さらに刷く」<實>
人類学者中沢新一との共著「俳句の海に潜る」角川書店刊は、自然や仏教と俳句との関わりを記した異色の対談集。拙文の参考にさせていただきました。小澤實は早稲田大学や跡見学園女子大学で講師を務め、NHK俳句選者や角川俳句賞の選考委員など幅広い分野で精力的な活動を続けています。小澤實。現在65歳。句会は下記サイト。http://www.sawahaiku.com/
写真と文<殿>