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映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』(2020年3月20日公開)108分

2021年11月08日 | 映画

【公式】『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』3.20(金)公開/本予告

『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』(2020年3月20日公開)

夏のころnetflixで観た(投稿忘れ)。早送りなし、何度も10秒戻りした。

1969年(昭和44年)1月18日の東大安田講堂攻防戦。私は島で白黒テレビで警視庁機動隊の放水の様子を多少興奮気味に見ていた記憶が鮮明に残っている。大河ドラマででしか見ていなかった日本人同士のタタカイではなく本物の攻防戦だ。びしょ濡れで抵抗する学生たちもかわいそうに思ったが、放水する同じ年恰好の機動隊員たちに対してもワルモノと思うこともなかったと思う。こういう時代になったのだなあと思うほかの背景知識もなかった。

ーーー

三島由紀夫が東大全共闘との「伝説の討論会」にのぞんだのは、約4か月後のこの年の1969年5月13日東大駒場キャンパス900番教室。千人を超える参加者。

テレビ局としては唯一取材していたTBSが撮影していた討論会の映像

会場入り口には三島を近代ゴリラとコケにした漫画の立て看板。イラストには胸毛にもみあげをのばした三島がバーベルを上げ肉体改造に励んでいる。
東大動物園、飼育量100円などと細かな文字がひしめいている。

   近代ゴリラで検索すれば見ることができます。

※スーパースター三島※を招いておいてそれはないだろうと思うのだが。三島はユーモアで返す。
(もはや私は圧倒的に三島に肩入れして観ていた)

※スーパースター三島※

平凡パンチ1967年5月8日号
1967年同誌で「オール日本ミスター・ダンディはだれか?」という読者投票があった。
1位三島由紀夫、
2位三船敏郎、
3位伊丹十三、
4位石原慎太郎、
5位加山雄三。
6位石原夕方
7位西郷輝彦
8位長嶋茂雄
9位市川染五郎
10位北大路欣也

有効投票 111,192票


学生たちは、警察の護衛をことわり単身で教室にはいる三島を論破(ロンパ)して壇上で切腹を、と息巻いていたのだった。(万一に備えて、楯の会幹部が隣室に身構えていた)

しかし三島は終始とても楽しそうだった。壇上でタバコを吸いながら、ときには論客と分け合いながら。


(のちに、この討論会について三島は「大変愉快な経験であった」と記している)

 

教室の床にも参加者たちのタバコの吸い殻が散乱しているのはいかにも「時代」だ。

「時代」と言えば、

三島は学生たちの観念論にも忍耐強く応じ、しかしロンパはしない。
ユーモアを交えながらすべての質問に答え、学生たちを説得する誠実な三島の姿勢が強い印象を残した。(誠実すぎる三島は討論のなかで1年半後の「自決」を暗示している)

討論会から一年半後、三島事件(陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決)

wikipedia 三島事件(みしまじけん)とは、1970年(昭和45年)11月25日に、作家・三島由紀夫(本名・平岡公威)が、憲法改正のため自衛隊の決起(クーデター)を呼びかけた後に割腹自殺をした事件である。三島が隊長を務める「楯の会」のメンバーも事件に参加したことから、その団体の名前をとって楯の会事件(たてのかいじけん)とも呼ばれる。


私の高校の卒業アルバムにはその年の世界のニュースに三島の自決が写真入りで載っている。

1970年11月25日(45歳没)
三島由紀夫 生きていれば95歳
全共闘の討論学生たちとは親子ほどの年の差。


三島の信念と思う部分

学生
「それは思いますよね、僕なんか
むしろ最初から国籍はないのであって」

三島
「あなたは国籍がないわけだろう?自由人として僕はあなたを尊敬するよ。それでいいよねぇ。けれども僕は国籍を持って日本人であることを自分では抜けられない。これは僕は自身の宿命であると信じているわけだ」

学生
「それは一種の関係づけでやられているわけですね」

三島
「そうそう」

学生
「だから当然歴史にもやられちゃうわけだし・・・」

三島
「やられちゃうというか、つまり歴史にやられたい


観念論が緊迫する場面があったり、壇上で自分の子供を肩にのせて現われ三島に鋭く迫る論客もいて、映画的な起承転結もあってなかなか見ていて飽きない内容ではあった。
(映画では当時の学生論客や盾の会のメンバーらが現在の視点から当時を振り返り三島の人となりをかたります)これもこの映画のみどころ)


三島の天皇感と思われる部分

三島
昔の神ながらの天皇というものの一つの
流れをね、もう一度再現したい


学生
「あなたはだから日本人であるという限界を超えることはできなくなってしまうということでしょう」

三島
「ああ、できなくていいんだよ。僕は日本人であって、日本人として生まれ、日本人として死んで、それでいいのだ。その限界を全然僕は抜けたいとは思わない、僕自身。だからあなたからみたらかわいそうだと思うだろうが」

しかしやっぱり僕は日本人である以上の、日本人以外のものでありたいとは思わない。

学生 しかし、日本、日本人というのは事物としてどこにあるんですか?

三島 それは外国行けばわかりますよ

ショウウィンドウにね姿が映るとこのとおり胴長でね


三島「言葉は言葉を呼んで、翼をもってこの部屋の中を飛び回ったんです。」

三島「この言霊がどっかにどんな風に残るか知りませんえれども、その言葉を、言霊を、とにかくわたくしはとにかくここに残して私は去っていくんで、これは問題提起に過ぎない。」

三島「私は諸君の熱情は信じます。これだけは信じます。他のものは一切信じないとしても、これだけは信じるということを分かっていただきたい」


さいごの最後もおもしろい。

学生「それで共闘するんですが?」
三島「えー、今のは一つの詭弁的な誘いでありまして、非常に誘惑的ではあったけれども」

「私は共闘を拒否します。」

観衆の笑い声と拍手

「ではこれで終わります」

三島一礼して去る。




全共闘は敗北したのか。監督のこの問いに対する現在の論者の答えも面白い。

 

元全共闘の木村修氏は当時を振り返って、(全共闘運動は)敗北したとは僕は思っていない、一般的な社会風潮として拡散しちゃったと思う」と表現しています。

ーーー

意味深長なラスト

(監督)あの時期を経て敗北したと言われていて…
(芥正彦)知らないよそんなこと。
君たちの国ではそういうふうにしたんだろ。
(監督)我々の国ではそうかも…
(芥正彦)俺の国ではそうなってないもん。
(監督)それはえーと芥さん…
(芥正彦)だって証拠がいるんだから ここに。
(監督)どういう…
(芥正彦)私の国には私という証拠がある。
監督 はあ、は

(芥正彦)君たちの国には私がいないからね。

監督 私という証拠というのは えー。

(芥正彦)ここで私が息をしている。
言葉をしゃべっている。
で、誰の真似もしないでしゃべっている
分かる?

ここでフェードアウト黒い画面


配給:ギャガ
監督:豊島圭介。企画プロデュース:平野隆。プロデューサー:竹内明、刀根鉄太。音楽:遠藤浩二。ナビゲーター:東出昌大
出演:三島由紀夫、芥正彦、木村修
橋爪大三郎、篠原裕、宮澤章友、原昭弘、椎根和、清水寛、小川邦雄、平野啓一郎、内田樹、小熊英二、瀬戸内寂聴

興行収入 2億1000万円