『沖縄を売った男』 単行本(ソフトカバー) – 2017/3/19
竹中明洋 (著)
帯書きには、
菅義偉官房長官の写真入りで、
仲井眞さんこそが県民の幸せと発展を考えて最善の努力をした人
『売った男』ではないことは歴史が証明するはずです。
ー菅義偉官房長官- <本文より>
とある。
帯なしで手に取ったときは、うんざり感もあり、あまり読む気は起らなかったのだが、
もし帯があったなら、逆に読む気になったはずである。
まず、表紙の仲井眞元知事の写真が秀逸だ。
自信に満ちたような、トップの孤独をかみしめいているような、達成感か諦観か、
とらえがたいが、しかし、いい顔をだ。「偽悪家」ではあるかもしれないが、売国奴の顔には、とても見えない。
「売った男」の「売」の字は赤の小文字で目立たない。つまりカギかっこ付きだ。それに気づいたら、それでは、そう名付けたのは誰か?、それに付和雷同したのは?はたまた、本当に売った男はいるのか?それは、どこの誰だろうとの連想をも呼び起こす。
本文の中にもう一枚、印象的な仲井眞知事の写真があった。
P217 知事が辺野古埋め立て承認を明らかにした2013年12月27日の記者会見で
TBS記者の質問に、それまでの淡々としていた仲井眞知事が、一変、
激怒する顔にフラッシュがあたっている。
TBS記者は、承認は県外移設の公約違反とせまる質問の前置きとして
「日本国民としての日本語能力を、常識的な日本語能力をお持ちだと思うから聞くが」との挑発的な問いかけをしたのだった。
気色ばった表情で「今のは私にたいする批判か、それとも質問か。ようするに何を言いたいんですか!」と知事。
騒然とした会見終了後、会場に居合わせた県の幹部はそろって怒りを隠さない。
記者の「日本語能力をお持ちだと思うから聞くが」との問いかけに「我々の年代のウチナーンチュならだれでもがもっているこころの傷をえぐられるような思いがした」
本土の人間の沖縄に対する潜在的差別感情を感じ取ったからだ。
しかし知事のあたえた印象は最悪だった。「苦渋の決断」を演出すべきだったとの意見もあった。
一字一句の引用ではないが、このあたりが写真とともに本書のキモといえる部分かもしれない。記者の反論も聞きたいところ。
あと一か所は、規制法ではなく、手続き法である、公有水面埋立法の法理論と知事の承認との関係、それから知事の沖縄2大メディアに対する考えなどあと一歩の踏み込みほしいところだったが、今、頁数をしめせない。
本文は、仲井眞の経歴と、承認までの経緯など手際よくまとめられている印象だが、
著者自身の不祥事を受けてのことなのか、主張は抑制され、バランスのとれた書きぶりだ。
論理ではなく情念の問題といわれる沖縄の基地問題。
うんざりするほど読んだつもりだが、こういう書き方もありかな、と思うのだが、これはしかし官邸のおすすめそのものでもある、とおもうのであった。
5つ星のうち 4.3
6件のカスタマーレビュー
amazon 登録情報
単行本(ソフトカバー): 253ページ
出版社: 扶桑社 (2017/3/19)
amazon 内容紹介
(内容紹介)
「辺野古に基地を造らせない」
反基地運動の闘士として絶大なる人気を誇ってきた沖縄県知事の翁長雄志氏。今、その足元にほころびが見え始めている。
(略)