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視界が殆どない朝だ。山も木も家々も、昇ってきた太陽さえも霧に包まれて、一日が始まった。
寒い。外に出ると身の縮むような寒気に包まれてしまう。
心まで寒い朝だ。
霧は、晴れると思いながらも、このままあの視界のない世界から、抜け出ることのない幻想の中に佇む。
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茜色に空を染めて今太陽は沈もうとしている。
信号待ちの一瞬。最後の明かりが染めているのは、空だけではない。
白い私の車も、ハンドルを握る手も、カメラに向ける私の顔も。
こんなに明るいひと時の後に来る、夜の暗さを拒否したくなる。
せめてもう少し、信号が変わるまで待って欲しいと・・・