孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー  弾圧姿勢を強める国軍支配 民主派活動家の死刑執行へ

2022-06-05 23:01:07 | ミャンマー
(AAPP(ミャンマー政治犯支援協会)が公表している国軍支配による犠牲者 一番上の1887人が死者、二番目の13959人が拘束者、その下は今も拘束されている者、一番下は解放された者の数の推移【6月4日 Newsweek】)

【野放しのままの国軍による人権侵害】
ウクライナでの戦争は世界が対応すべき重大な問題ですが、その他の多くの紛争・混乱・弾圧がウクライナ問題の陰に隠れてしまっているという問題が起きているようにも。

ミャンマー国軍の力による統治もそのひとつ。
ミャンマーの状況については、4月16日ブログ“ミャンマー ウクライナの陰で忘れられる抵抗 「声明はもういらない。行動を」日本への失望の声も”でも取り上げたところです。

****やりたい放題のミャンマー軍事政権──国際社会はこちらの「惨状」も見過ごすな****
4月4日の朝、ミャンマー南東部カイン州(旧カレン州)のコーカレイ地区で暮らす住民は、激しい砲撃で目を覚ました。ミャンマー軍事政権の政府軍による攻撃だ。

17歳の少女が砲弾に当たって病院に運ばれる途中で死亡し、ほかにも4人が重傷を負った。ミャンマー南東部では、民間人に対する政府軍の執拗で激しい攻撃が続いている。

少数民族カレンの反政府組織カレン民族同盟(KNU)の軍事部門であるカレン民族解放軍(KNLA)によれば、KNLA支配地域のキェイクとパイカルドンは政府軍の戦闘機による攻撃を繰り返し受け、この1カ月でおよそ600人の住人が避難せざるを得なくなった。

ミャンマーでは、こうした痛ましい出来事が相次いで起きている。政府軍は、機関銃や高性能の兵器で民間人の居住地域を攻撃することを躊躇しない。政府軍が化学兵器を用いたという報告もある。

ミャンマーの軍事政権は、罪のない人々を意図的に標的にしている。コーカレイ地区だけでも、3月末までに合計1万2177人が強制的に住居を追い立てられた。

無差別攻撃だけでなく、現金や所持品の没収も
「モンランド人権基金(HURFOM)」は数十年間にわたり、ミャンマー南東部、特にモン州とカイン州、そしてタニンダーリ地域の人権侵害を調査してきた。

同基金によると、昨年2月1日のクーデターで国軍が全権を掌握して以降、民間人への残虐行為が著しく増加しているという。

民間人は、無差別攻撃の標的になっているだけではない。検問所で現金や所持品を没収されることも珍しくない。
軍事政権に奪われたオートバイは少なくとも500台に上る。携帯電話を没収されて、軍事政権に対抗する民主化運動に関わっている証拠がないか調べられることも多い。

所在が分からなくなる人も増えている。人権活動家は攻撃にさらされ、しばしば国外に亡命せざるを得なくなっている。HURFOMによれば、3月末までに67人以上が逮捕され、50人以上が不法に身柄を拘束され、23人が負傷し、8人が死亡したという。

軍事政権の攻撃は子供たちの命も奪っている。3月29日、政府軍とKNLAが衝突した際、政府軍がモン州タトン地区の村を長距離重砲で砲撃した。これにより8歳と6歳の兄弟が命を落としている。

今こそ国際社会が責任を問うとき
このような状況で、国境を越えてタイ領内に逃れる人が再び増加している。しかし、避難民に対するタイ当局の対応は人道的なものとは言い難い。

国境を流れるモエイ川沿いにつくられた仮設の避難所は、大雨で簡単に損壊する。清潔な飲み水と食料が不足しているため、特に子供と高齢者の間で病気も蔓延している。

HURFOMの報告から判断すると、国際社会が厳しい反応を示して介入し、軍事政権の責任を問わない限り、ミャンマー南東部の人権侵害は野放しのままになるだろう。

それでも、アメリカでは最近ようやく、懸案の「ビルマ法」の法案が下院を通過した。この法案は、軍事政権への制裁を強化し、人権団体への支援を拡充させることを可能にするものだ。

世界の国々や国連機関は、ミャンマー軍事政権に対する国際的な武器禁輸、飛行禁止空域の設定、ミャンマーにおける人権侵害行為の国際刑事裁判所への付託に動くべきだ。

国際社会が積極的に行動しなければ、罪なき市民の命が奪われ続けることになる。【4月28日 ナイ・アウエ・モン(HURFOMプログラム責任者)、マギー・クアドリーニ(人権活動家) Newsweek】
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【現地情勢は日本関連事業にも影響】
軍事政権に対し制裁を課す欧米とは一線を画し、ミャンマーに深く関わってきて、経済的つながりも深い日本は、よく言えば軍事政権とも関係を途絶させず、事態の改善に関われるポジションを維持している、悪く言えば、ミャンマーに有する利権を守るため(あるいは、中国にその利権を奪われないようにするため)軍事政権に宥和的対応をしているという独自の立場にあります。

その日本がミャンマーで行っている事業も、国軍と民主派抵抗勢力の抗争の影響を受けています。

****日本支援の鉄道事業中断 爆発相次ぐ、ミャンマー****
日本の円借款で進むミャンマーの鉄道改修事業の一部工区で今年1〜3月に爆発があり、工事が中断していることが29日分かった。けが人はいなかった。

ミャンマー軍政は昨年2月のクーデター前から続く同事業をインフラ開発の柱の一つに位置付けており、民主派武装勢力が妨害を図った可能性が高い。事業の本格再開は安全が確保されてからとなる見通し。
 
ミャンマーでは地方を中心に民主派勢力が国軍にゲリラ攻撃を仕掛け、混乱が続いている。事業主体の国際協力機構(JICA)は「工事の稼働状況に関する回答は差し控えたい」としている。【4月29日 共同】
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****ENEOS、ミャンマーのガス開発事業から撤退****
ENEOSホールディングスは2日、ミャンマーでの天然ガス開発プロジェクトから撤退すると発表した。共同事業者であるマレーシアとタイの企業も先週、撤退を表明している。
 
ENEOSは、傘下のJX石油開発を通じ、ミャンマー南部イエタグンガス田で20年間にわたって操業してきた。このプロジェクトには、日本政府と三菱商事も出資している。
 
ENEOSは、社会問題への対応を含む現在のミャンマー情勢および技術的な評価に基づく採算性を検討した結果、撤退を決定したと説明している。
 
資源エネルギー庁の担当者はAFPに対し、政府もENEOSと同じ立場だと述べた。同ガス田事業は過去10年、生産量が減少していたという。
 
マレーシアの国営石油ペトロナスとタイ国営石油開発PTTEPは4月29日、プロジェクトからの撤退を表明。ペトロナスは子会社チャリガリを通じて41%、PTTEPは19.3%をそれぞれ出資していた。
 
日本はミャンマーの主要な経済支援国で、長期にわたり国軍と関係を維持してきた。昨年2月の国軍によるクーデター後、新規支援の停止を発表したが、軍や警察の個人を対象とした制裁には踏み切っていない。 【5月2日 AFP】
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【国軍、米ASEAN首脳会議に反発 一方、ロシアに接近する国軍】
ASEANは、シンガポールやマレーシア、インドネシアが関与に国軍支配に批判的なのに対し、軍部由来の政権のタイや一党支配のもとで人権問題を抱えるベトナムは内政不干渉を主張するなど、またカンボジアやラオスは中国の影響が強いなど温度差が目立ち、有効な対策が取れていません。

軍事政権に宥和的な議長国カンボジアのもとで、ようやく特使派遣は実現したものの、軍事政権の考えの代弁に終わった感も。

そのASEANもアメリカとの関係もあって、米ASEAN首脳会議においては一応ミャンマー情勢に「深い懸念」を表明していますが、ミャンマーは激しく反発しています。

****米ASEAN首脳会議の共同声明「深い懸念」に、ミャンマー国軍反発「内政干渉、断固拒否」****
ミャンマーの国軍当局は14日、米国と東南アジア諸国連合(ASEAN)による首脳会議の共同声明に「ミャンマー危機への深い懸念」が盛り込まれたことに反発し、「内政干渉で断固拒否する」と表明した。
 
共同声明は、暴力の即時停止や全当事者間の対話開始など、ASEANの5項目合意の完全履行などを要請。拘束中の全政治犯の解放にも言及し、国軍は「合意内容を超え、受け入れがたい」と訴えた。
 
首脳会議はミャンマー代表不在で開催されたが、国軍は「非政治的な人物を招待され、平等の原則に反するため参加しなかった」とし、ボイコットだったと強調した。
 
一方、会場の米ワシントンで、民主派による挙国一致政府(NUG)の外相ジンマーアウン氏が、シャーマン米国務副長官らと対面で会談したことにも敏感に反応し、「最も強い言葉で抗議する」と批判した。「NUGや関連団体はテロを首謀し、騒動を扇動している」と主張し、NUGを含めた打開策を提唱しているマレーシアなどをけん制した。【5月15日 東京】
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一方、ミャンマー軍事政権は、欧米から同じように制裁を受けるロシアと接近しているようです。
ミャンマー国軍はもともと武器輸入でロシアと親密な関係にありましたが、ここにきて、燃料の輸入や経済協力が加わってきているようです。

3月末、ロシア主導のユーラシア経済連合がミャンマー経済省庁と会談。石油・ガス、肥料、農業機械などの取引が話し合われたようです。

4月末には、ミャンマーの国軍トップ、ミンアウンライン司令官がロシア連邦の一つでトラック製造の大手カマズの本社があるタタールスタン共和国を訪問、その後、カマズがミャンマーでトラック生産をはじめると発表。

5月に入るとロシアからの燃料輸入協議が始まり、国軍系銀行2行とロシアの銀行との提携も発表されています。

【強まる民主派への弾圧姿勢 民主活動家ら4人の死刑承認】
ミャンマー国内では爆発事件も。

****ヤンゴンで爆発、1人死亡=国軍と民主派が互いに非難―ミャンマー****
クーデターで国軍が権力を握ったミャンマーの最大都市ヤンゴンのバス停で(5月)31日、爆弾がさく裂し、国軍によると男性1人が死亡、9人が負傷した。犯行声明は出ていない。

国軍は民主派が結成した「国民防衛隊」が手製爆弾を設置したと主張。これに対し、国軍に対抗して民主派が立ち上げた「国民統一政府」は「国軍は無分別に爆破や市民殺害を続けている」と訴える声明を出した。【6月1日 時事】 
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事件の真相はわかりませんが、民主派側が一般市民を対象にしたテロを行うメリットは思い付きません。
一方AAPP(ミャンマー政治犯支援協会)の発表によれば、国軍支配のもとで、1887人の一般人が殺害され、13959人が政治犯などとして不当に拘束されているとのことです。
【6月4日 “ミャンマー最大都市ヤンゴン中心部で爆発10人死傷の事件について” Newsweek】

国軍側は民主派への弾圧姿勢を強めています。

****ミャンマー国軍、民主活動家ら4人の死刑承認 執行なら46年ぶり****
ミャンマー国軍のゾーミントゥン報道官は3日、テロ行為などにかかわったとして国軍が設置した軍事法廷から死刑判決を受けた国民民主連盟(NLD)元議員らの上訴が棄却され、4人の死刑執行が承認されたと明らかにした。複数の地元メディアが報じた。
 
インターネットメディアのイラワジによると、死刑が執行されれば政治犯としては1976年以来になる。執行日は未定。
 
死刑が承認されたのは、アウンサンスーチー氏率いるNLDに所属していたピョーゼヤトー元議員と、著名民主活動家チョーミンユ氏。いずれも今年1月に死刑判決を受けた。他に国軍への情報提供を疑って女性を殺害したとして有罪認定された男性2人の死刑執行も承認された。【6月4日 毎日】
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“軍事政権のゾーミントゥン報道官はAFPに対し、4人が「刑務所の手続きに従って絞首刑になる」と説明。執行日は未定だとした。”【6月4日 AFP】

【ミャンマー国内情勢以上に忘れられがちなロヒンギャ問題】
以上は、最近のミャンマー情勢でしたが、ミャンマー国内事情以上に国際世論から忘れ去られがちなのが、国軍の暴力・殺戮・レイプ・放火により民族浄化的に隣国バングラデシュに追放されたイスラム系少数民族ロヒンギャの件。

****ロヒンギャ59人、孤島置き去り=密航業者に1人15万円―タイ****
タイ南部の孤島で4日、ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャ59人が見つかった。ロヒンギャらはタイ警察に対し、マレーシアに向かう途中、密航業者に置き去りにされたと話している。
 
子供5人を含む59人は、マレーシアとの国境に近いドン島で発見された。5日に事情聴取したタイ警察に対し、ミャンマーとバングラデシュから178人で出発し、マレーシアの通貨で1人当たり5000リンギ(約15万円)を密航業者に支払ったと説明した。
 
ロヒンギャは2グループに分けられ、119人はマレーシアで逮捕された。59人は密航船の乗員に「マレーシアに着いた」と言われ、ドン島で降ろされたという。【6月5日 時事】
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ミャンマー  統治失敗は明白だが権力は手放さない国軍 膠着した情勢を打破する道筋は未だ見えず

2022-03-08 23:37:10 | ミャンマー
(2月12日、ミャンマー・ネピドーで、国軍が軍事力と平和構築の姿勢を演出した「連邦記念日」の式典【2月12日 東京】)

【ミャンマー連邦記念日 「生活が一層厳しくなる中、記念日のお祝いどころではない」】
クーデターで実権を掌握した国軍支配への抵抗が続いているミャンマー情勢に関しては、2月6日ブログ“ミャンマー 国内的にも、国際的にも、国軍を制止できず、犠牲者・避難民が増加”で取り上げましたが、その後は、ウクライナ情勢一色の国際記事のなかでミャンマー関連記事はあまり多くは目にしていません。

状況が落ち着いているからニュースもない・・・というなら、いいのですが。
おおよその状況は以下のようにも。

****ミャンマー連邦記念日、祝賀ムードなし 少数民族の式典出席は半数****
ミャンマーの首都ネピドーで12日、多数派のビルマ族と少数民族が連邦国家として独立することに合意した「パンロン合意」の締結75年を記念した大規模式典が開かれた。2021年2月のクーデターで全権を掌握した国軍は、全少数民族武装勢力の代表者を招待したが半数の参加にとどまった。
 
国軍のミンアウンフライン最高司令官は式典あいさつで「停戦協定を締結した7勢力と未締結の4勢力の少数民族武装勢力代表者が式典に出席した」と明らかにした。国軍としては、少数民族武装勢力と民主派の連携を阻止したい考えとみられる。
 
ミャンマーでは11年の民政移管以降、約20ある主要少数民族武装勢力のうち10勢力が政府と停戦協定を締結した。しかし、南東部を拠点とするカレン民族同盟(KNU)などはクーデターに反発。民主派の支援に回り、国軍と激しい戦闘を展開している。
 
また、国軍が設置した国家統治評議会は12日、拘束中の800人以上を恩赦で釈放し、約50人の公判を終了させると発表した。

汚職罪などで南東部カイン(カレン)州の裁判所から禁錮80年超の有罪判決が言い渡された国民民主連盟(NLD)の女性幹部の刑期を半分に減刑することも表明した。
 
12日を前に国軍に抗議するデモや攻撃が呼び掛けられ、英BBC放送によると、12日は広範囲で携帯電話からインターネットへの接続ができなくなった。
 
ミャンマーでは新型コロナウイルスの新規感染者数が再び増加している。クーデター後の夜間外出禁止令も続いており、最大都市ヤンゴンのタクシー運転手の男性(55)は「生活が一層厳しくなる中、記念日のお祝いどころではない」と話した。
 
英国から独立する前年の1947年2月、「独立の父」アウンサン将軍がビルマ族を代表して一部少数民族との間でパンロン合意に調印し、少数民族に広範な自治権付与などを約束した。
 
しかし、アウンサン氏は間もなく暗殺され、48年1月の独立後も合意は履行されないままになっている。ただ、毎年この日は多民族国家を目指す国の形が定まった「連邦記念日」として祝日に定められている。【2月12日 毎日】
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本来であれば、国家顧問の地位にあるなしに関らず、「独立の父」アウンサン将軍の娘であるスー・チー氏の姿もあるはずですが・・・現在拘束中なのは言うまでもありません。

【国軍統治の失敗は明白ではあるが、膠着した情勢】
いずれにせよ、民主派勢力や少数民族(記念式典に出席しなかった半数の民族)の抵抗は続いています。
軍事政権側も抵抗勢力側も事態打開の道がひらけず、膠着状態にあるようにも見えます。

****袋小路に入りつつあるミャンマー軍事政権とスーチー氏****
1月29日付の英Economist誌が、クーデタから1年を経過したミャンマーの危険な膠着した情勢を打破するために諸外国が何等かの手段を探求すべきことを論じている。

2021年2月1日のミャンマーのクーデタから1年を経過するが、危険な行き詰まりの状況が継続している。しかし、この社説によっても、外部から現状を変えるための有効な手段があるようには思えない。

1月にトタルとシェブロンがヤダナのガス田プロジェクトから撤退することを発表したことは、軍事政権の資金源を断つ意味で有効と思われるが、他にどういう手段があり得るかは明らかでない。

何時のことか分からないが、現状が変わるとすれば、軍事政権の自壊は予見されないが、この政権が国内の状況から方針転換の必要性を考える時ではないかと思われる。既に経済の混乱を始めとして、情勢は統治不能に近いと思われ、軍事政権に大きな圧力となっているに違いないが、今後、次のような事象を注視して行くことが有益であろう。

第一に、国民民主連盟(NLD)の議員が作った影の政府=国民統一政府(NUG)である。NUGは領域を支配している訳でもなく、諸外国政府が承認している訳でもない脆弱な存在であるが、NLDとはスタイルも中味も違った特色を有していることに注目しておく必要があろう。

NUGはスー・チーの独裁的な党運営の手法と決別してコンセンサスでの運営を方針とし、ビルマ族の党であることと決別して少数民族を取り込んだ包摂的な政府だとしている。彼等は連邦政府を目指し、ロヒンギャに市民権を与えることを約束している。

この立場(スー・チーと一線を画する立場である)は彼等が国際的に正統性を主張する必要性、また軍と戦う上で少数民族の協力を必要としている事情を反映するものに違いない。

第二は、抵抗勢力が昨年夏には非暴力の不服従運動から劇的に転換して暴力による抵抗を始めたことである。装備や人員の面で軍に太刀打ち出来るような存在ではないが、少数民族の支援を得ている例もあるようである。

NUGはビルマ族による支配を排除した多様な民族構成を持つ新たな軍(国民自衛軍)を構想するに至っている。軍による残虐な弾圧作戦は抵抗勢力による戦闘員徴募を助ける効果を持っているとの観察がある。

第三に、最も重要な鍵であるが、軍が何時までその一体性を維持出来るかの問題である。これまでにも兵士や警察官の逃亡が伝えられているが、国民に銃を向ける行動に兵士のモラルが低下する、あるいは軍の方針に幹部の間で分断が生ずることはないかという問題である。軍が分解することは考えられないが、軍の一体性に対する脅威が強まることは軍事政権の行動の重大な制約要因となろう。

スーチー氏は過去の人との見方も
以上に鑑みれば、軍事政権がその基盤が徐々に浸食されることを阻止することは相当に困難に思える。中国がスー・チーの釈放を要求しているとこの社説にあるが、彼女の釈放が情勢を転換する一手になるようにも思えない。

そもそも、軍が彼女の政治的復権を認めることはないが――彼女は軍の歓心を買うことも試みたが(ヒンギャの問題について国際司法裁判所で軍の弁護に立った)、結局、彼女と軍とではうまく行かないことが証明された――彼女は最早過去の人物になりつつあるように思われる。【2月16日 WEDGE Infinity】
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スー・チー氏の政治資質に問題もあること、ロヒンギャ問題で消極的対応に終始していることなど・・・はありますが、「最早過去の人物になりつつある」というのはどうでしょうか?

軍事政権から民政復帰するとき、国民をまとめられるのは彼女しかないように思えます。

ただ、軍事政権が彼女を解放するとも思えませんので、その意味では「最早過去の人物になりつつある」のかも。

国軍支配が完全に失敗したことは明らかです。国軍指導者も「こんなはずではなかった」と考えているのでは。
それでも権力は手放しません。

一方で、民主派勢力や少数民族側に国軍を凌駕する力があるようにも見えず、一般国民の抵抗も力で封じ込まれている状況では、国軍内部から明らかな統治失敗に対する動きが出てこないと状況はなかなか変わらないのかも。

あと、国軍を支援する中国・ロシアの対応が変わらないとなかなか・・・

****中ロがミャンマー軍政に武器供与 国連特別報告者****
国連でミャンマーの人権問題を担当するトム・アンドリュース特別報告者は22日、昨年2月のクーデター後も中国やロシア、セルビアがミャンマー軍事政権に対し、市民への弾圧に使われている武器を供与し続けているとの報告書を公表した。
 
アンドリュース氏は国連安保理に対し、「ミャンマー市民に対する攻撃や殺害に使われていることが分かっている武器の軍事政権への移転を禁じる決議について協議、採決するための」緊急会合を招集するよう呼び掛けた。
 
同氏は声明で、「軍政は昨年のクーデター後、罰を受けずに残虐な犯罪に及んでいるとの証拠があるにもかかわらず、安保理の常任理事国であるロシアと中国は軍政に対して、数多くの戦闘機や装甲車両を供与し続けている。ロシアに関しては、さらなる武器供与も確約している」と指摘した。
 
報告書の中でアンドリュース氏は、3か国による武器の供与について「市民への攻撃に使用されるだろうと完全に認識した中で実施されており、恐らくは国際法違反になる」と強調した。
 
国連によると、ミャンマーでは昨年2月以降の暴動に対する軍政の弾圧により、市民1500人以上が死亡している。 【2月22日 AFP】
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【相変わらずの国軍のロヒンギャ問題対応】
ロヒンギャ問題への軍事政権対応は相変わらず。

****ロヒンギャ迫害審理 ミャンマー国軍「司法裁に管轄権なし」主張****
オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)で21日に再開したミャンマーの少数派イスラム教徒「ロヒンギャ」への迫害を巡る審理で、ミャンマー国軍の代表は「ICJはこの問題を審理する権限がない」と主張した。
 
ミャンマー国軍が国際協力相に任命したコーコーフライン氏が出廷し、ロヒンギャ問題について「政府が平和的な解決に取り組んできた」と述べ、訴訟の却下を求めた。その上で、審理自体には協力する意向を示した。続いてミャンマー側の弁護士が、提訴した西アフリカのガンビアには訴訟を起こす法的地位がないと主張した。
 
裁判を巡っては、ミャンマーの民主派が設置した国民統一政府(NUG)は、ICJにこの問題の管轄権を認めた上で、国軍の代表を出席させないように求めていた。

ICJのジョアン・ドノヒュー裁判長は21日、コーコーフライン氏の出廷に先立ち、訴訟当事者は「特定の政府ではなく国家である」と述べた。これに対し、NUGは21日、「審理が軍事政権に正当性を与えるものではないと信じる」との声明を発表した。
 
審理は28日まで開かれる。欧米メディアは、ICJが管轄権の有無を判断するまでに数カ月かかり、管轄権を認めた場合は、ガンビアが主張している国連のジェノサイド条約違反と判断されるまでは数年かかるとの見通しを報じている。【2月22日 毎日】
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仮に数年かけてジェノサイド条約違反と判断されても、国軍支配が続く限り、事態は全く変わらないでしょう。

【ASEAN特使派遣も成果は期待できず】
ミャンマー軍事政権への対応で温度差があるASEANは、軍事政権と調整がつかずこれまで特使派遣ができませんでしたが、議長国カンボジアのプラク・ソコン外相がASEAN特使としてミャンマーを訪問するようです。

****ASEAN特使、20日からミャンマー訪問****
カンボジア外務省報道官は、東南アジア諸国連合(ASEAN)のミャンマー問題担当特使であるプラク・ソコン外相が今月20─23日にミャンマーを訪問することを明らかにした。

和平プロセスの開始を目指す。同相は先月、ミャンマーの軍事政権に対し、全ての利害関係者との面会を認めるよう求めていた。カンボジアは、現在ASEANの議長国。

外務省報道官は、同相が誰と面会するか、詳細を明らかにしていない。ASEANの特使は過去に民主化指導者アウン・サン・スー・チー氏との面会を試みたが、失敗に終わっている。(後略)【3月4日 ロイター】
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カンボジアのフン・セン首相とミンアウンフライン氏のオンライン会談で、ミンアウンフライン総司令官は、東南ASEAN特使が国民民主連盟(NLD)のメンバーと面会することを認めたとのこと。ただし、スー・チー氏と面会する可能性は低いと見られています。【2月7日 ロイターより】

いずれにしても、軍事政権に宥和的なフン・セン首相の命を受けるカンボジア外相ですから、軍事政権に厳しい注文をつけることはなく、国軍の主張を拝聴して帰ってくるのでしょう。

あとは、ASEAN内部で軍事政権に厳しい対応をとる国がどう反応するか・・・でしょう。

【停電で厳しさを増す市民生活 軍の意図的作戦?】
現在のミャンマー国内の市民生活について、停電が多くなっており、しかも“軍政による反軍政の市民の行動を困難に陥れる作戦ではないか”とも見られているとか。

****内戦状態のミャンマー、大規模停電で干上がる市民生活、SNS監視も強化****
国際報道はロシアによるウクライナ侵攻一色となっているが、ミャンマーにおける軍と武装市民・少数民族武装勢力との戦闘も依然収束しておらず、むしろ一部では激化している。
 
特に最近になって一般の市民生活の大きな脅威となっているのが大規模な停電だ。
ミャンマーの反軍政の独立系メディア「ミッズィマ」などによると、中心都市ヤンゴンでは2月初旬以降、停電が頻発しており、ひどい時は1日約5時間も電力が停止する事態が続いているという。
 
軍政によれば、停電の主な原因は、軍政に対抗するために市民が電気料金の支払いを拒否していることとしているが、同じヤンゴン市内でも、軍の基地や施設に隣接する地区では停電は頻発していない。こうしたことから停電は、軍政による意図的なものである可能性も指摘されている。

停電で市民生活に深刻なダメージ
ヤンゴンで治安当局による追及・逮捕を逃れるために地下に潜伏しているジャーナリストによると、ヤンゴン市内の停電は多くの地区で1日7〜8時間に及ぶこともあるという。だが軍の施設がある地区では停電は2日に1度、それも3時間程度となっており、地区により差が出ていると証言する。
 
ミャンマーは3月から一年で最も暑くなる乾季に入り、雨季が始まる6月までは電力需要が非常に高くなる。このため今後も停電が続くようであれば市民生活に大きな影響が出ることが考えられる。

エアコン、扇風機、冷蔵庫といった住居内の電気製品、あるいは病院の医療機器、銀行のATMなどの公共サービスへの電力供給が滞り、機能不全になる可能性がある。
 
停電の原因を、市民らによる電気料金の支払い拒否にあるとする軍政は、市民に対して電気料金の速やかな支払いを求めている。
 
企業の中には、停電による被害を軽減するために自家発電機を使用しているところもあるが、自家発に使用する燃料も高騰しており、「いつまで使えるかわからない」と懸念を表明している。
 
ヤンゴンではガソリンや灯油などの燃料、ガスも値上がりしており、これまた市民生活に打撃を与えている。
 
燃料の値上がりは公共バスの運行にも響いている。バスの運行回数が減少し、やっと来たバスも乗客が満員のため、バス停でどれだけまっても一向に乗車できない状況になっていると現地報道は伝えている。
 
ところが軍の施設がある周辺地区では停電の頻度も少ないことから、停電の理由は軍政が説明している電気料金の支払い停滞だけではなく、軍政による反軍政の市民の行動を困難に陥れる作戦ではないか、との見方も強まっている。

情報統制も強化、スマホの情報から民主派の若者が芋づる式に逮捕
こうした大規模な停電で市民生活が苦しくなる中、ヤンゴンでは2月以降、SNSで反軍政の情報発信を続ける若者らに対し、軍政が一斉摘発に乗り出しているという。
 
治安当局はネット上で情報発信を続ける人物のスマートフォンなどから、芋づる式にその仲間の連絡先や住所などを入手して、居場所を確認できた85人の若者を2月中に発見して身柄を拘束したと一部報道機関が報じている。
 
(中略)釈放された若者は治安当局の協力者か、今後の協力を約束した者だ。その他の若者は警察で尋問を受けた。軍の施設に送られた若者は、これまで反軍政の活動が顕著な者だった模様で、今後さらに厳しい取り調べや拷問を受けるのではとの懸念も出ている。

スマホを使って仲間を装い、誘い出して逮捕
また治安当局は反軍政の情報発信を続ける若者のFacebookやInstagramなどの検閲を強化しており、アップされた写真などから本人の居場所、活動場所、同僚、賛同者などの個人情報の特定を強化し、摘発を進めている。
 
地下運動を続ける若者の一人は反軍政のメディアに対してこう証言している。
「治安当局は、逮捕した若者のスマートフォンを利用し、その所有者を装って『釈放されたので会おう』と仲間を誘い出し、現場にやってきたところを逮捕している」
 
その「逮捕」にしても、極めて暴力的だ。(中略)

軍と民主派との戦闘、各地で勃発
このように民主化を求める市民側が追い詰められる中、ヤンゴン市内では治安部隊と武装市民との戦闘が激化している。2月19日、タケタ郡区で軍の車両や軍が駐屯するタケタサッカー場に対して武装市民側が手りゅう弾攻撃を行い、兵士2人が死亡、4人が負傷した。
 
一方、軍はタケタ郡区のセブン市場に放火した。軍によると武装市民が市場内に潜伏しているとの情報に基づいた作戦であるとして、放火を正当化している。
 
中部の都市マンダレーでは2月21日に地元大学構内に駐屯していた軍部隊に爆弾攻撃が2回あり、兵士が死亡。また武装市民組織はマンダレーのマハ・アウン・ミャイ郡区など3郡区の地方事務所を攻撃して放火した。地方事務所は軍が占拠して、市民弾圧の拠点となっていたことから武装市民メンバーが放火したようだ。
 
このほかにも、各地で武装市民による治安組織に対する攻撃が相次ぎ、軍も空爆という手段まで含めて反撃中だ。

市民の犠牲も増えている。タイ・バンコクに拠点を置くミャンマーの人権団体「政治犯支援協会(AAPP)」によると3月3日現在軍政により殺害された市民は1597人に上り、逮捕訴追を受けた市民は9478人となっている。
 
ウクライナの人々も大きな苦難を強いられているが、ミャンマーの人々もまた塗炭の苦しみを味わい続けている。
【3月8日 大塚 智彦氏 JBpress)
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ミャンマー  国内的にも、国際的にも、国軍を制止できず、犠牲者・避難民が増加

2022-02-06 23:23:34 | ミャンマー
(ミャンマー北西部サガイン地域ミンギン郡の焼き討ちされた村。地元メディアによると国軍によって105軒が破壊された。【2月6日 AFP】)

【民主派武装組織 銃などの武器を持つのは3割。そのほかは爆竹なども使って戦闘に】
2月2日ブログ“ミャンマー 景気悪化、物価高騰、大量失業 クーデターから1年 困窮する生活 「沈黙のストライキ」”で取り上げたように、クーデターから1年の節目となる2月2日には国軍支配に対する国民のせめての抵抗として「沈黙のストライキ」が試みられましたが、それすらも軍の厳しい弾圧によって十分な広がりをみせることができません。

抗議デモは国軍の容赦ない弾圧を受け、「沈黙のストライキ」も許されない・・・・となれば、国軍支配を受け入れるか、あるいは武器を手に戦うしかないということにもなり、いわゆる民主派勢力は「国民防衛隊(POF)」を結成して各地で軍事政権への抵抗を続けています。

しかし、銃すら満足にはなく、“爆竹”で戦うという状態で、戦力差は比べようもありません。

****武装勢力、武器求め… ミャンマー国軍との戦闘、泥沼化の懸念*****
国軍によるクーデターから1年が経過したミャンマーで、民主派勢力で作る国民統一政府(NUG)系の武装組織と国軍との戦闘が各地で続いている。

長期化する戦いを離脱し、国境を越えてタイ側に来る武装組織メンバーも増えているようだ。北西部ターク県の山岳地帯で出会った彼らは、みな一様に武器を求めており、専門家は戦闘が泥沼化することを強く懸念している。
 
「ロケット弾やドローンで攻撃してくる国軍に勝つには、武器が必要だ」――。ミャンマー東部カヤー州に接するタイ国境を越えてターク県に潜伏する「カレンニー国民防衛隊(KNDF)」の中枢メンバー、リオ氏(仮名)がそう力を込めた。
 
NUGは2021年5月に「国民防衛隊(PDF)」を組織し、同9月に国軍との戦闘開始を宣言した。分離・独立などを求め各地で長年、国軍と戦っていた少数民族武装勢力の中にはPDFを支援する組織もある。KNDFはそうした地域の若者らが独自に発足させた武装組織の一つだ。
 
リオ氏によると、KNDFは18歳以上の1万人を擁するが、銃などの武器を持つのは3割。そのほかは爆竹なども使って戦闘に臨んでいるという。
 
リオ氏は「我々はテロリストではなく、ミャンマー国民を守るために戦っている。戦闘が激しくなるのはやむを得ない」と話した。
 
タイのタマサート大の調査によると、ミャンマーではクーデターからの1年で、少なくとも計7686件の戦闘があった。中でも少数民族武装勢力の活動が活発な北部カチン州や南東部カイン(カレン)州、カヤー州では、とりわけ戦闘が激しさを増している。
 
カイン州の少数民族武装勢力「カレン民族同盟(KNU)」からPDFに参加し、1月にタイ側に来たダウロン氏(60)は「戦闘員として警察署に爆竹を投げ込んだが、大きな被害はなかった。国軍側に勝つために、威力のある武器を大量生産する必要がある」と訴えた。
 
仲間のドーダー氏(48)は「クーデター前まで銃を持ったことはなかった。しかし、戦いに勝つためには、エンジニアとして働いていた自分の持つ技術を提供しようと思う」と語った。
 
ミャンマー政治を研究するタマサート大のドゥヤパー・プリシャラット准教授は、戦闘の泥沼化に懸念を示す。「武器の調達では国軍が圧倒的に有利な上に、国軍側に被害が出れば出るほど、国軍は相手への攻撃を『違法行為』への防衛だとして正当化する。今後、死者はさらに増えるのではないか」とみる。
 
しかし、現時点で双方が妥協する気配はなく、ドゥヤパー氏は「停戦なくして民主化への平和的交渉は始まらないことを双方が早急に認識する必要がある」と指摘している。【2月3日 毎日】
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【残虐さが報じられる国軍支配】
“爆竹”ではどうにもなりません。
一方、この1年、国軍支配の残虐さを伝えるニュースは多々ありましたが、国際的に大きく注目されたのは、昨年クリスマスイブに起きた事件。

****セーブ・ザ・チルドレンの職員2人が死亡、ミャンマー国軍が殺害か****
国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」は28日、クーデターで国軍が権力を握ったミャンマーの東部カヤー州で、男性スタッフ2人が国軍兵士に殺害されたと発表した。複数の現地メディアは、24日に大勢の市民が国軍の攻撃で殺害されたと報じており、2人はこの攻撃に巻き込まれたとみられる。
 
セーブ・ザ・チルドレンによると、攻撃の犠牲者は女性や子どもを含む少なくとも35人で、この中に男性スタッフ2人が含まれていることを確認したという。2人は近くで人道支援活動をした後、事務所に戻る途中に攻撃に巻き込まれ、行方不明になっていた。
 
現地メディアは、国軍兵士が24日に複数の車両やバイクを燃やし、その近くで多くの遺体が見つかったと報じていた。現場では、国軍の支配に反対する現地の武装勢力や武器を持った市民が、国軍の部隊との武力衝突を続けていたが、殺害された市民は戦闘と無関係だったとみられている。SNSでは焼け焦げた車両などの写真が拡散している。
 
セーブ・ザ・チルドレンは28日付の声明で「援助関係者を含む罪のない一般市民への暴力は容認できないもので、国際人道法にも違反している」と国軍を非難した。【2021年12月29日 朝日】
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国軍兵士は、子供も含む数十人が乗ったトラックから強制的に降ろすと次々に殺害し、その場で遺体を焼き払ったとか。犠牲者は38人とも報じられています。【「選択」2月号より】

今日のニュースでは・・・

****ミャンマー北部で村焼き討ち、被害数百軒 住民は国軍を非難****
軍事クーデターへの抵抗が続くミャンマー北西部で、国軍が村を相次いで焼き討ちし数百軒に被害が出たと、村民と反クーデター勢力が非難している。
 
ミャンマーでは大規模な抗議デモが国軍の容赦ない弾圧を受けた後、市民が「国民防衛隊」 を結成して各地で軍事政権への抵抗を続けている。
 
北西部ザガイン地域のビン村から逃げてきたという女性は4日、自宅を含む民家約200軒が焼かれたと語った。村は先月31日未明に襲われ、砲撃や銃撃の音で村民は取る物も取りあえず逃げ出したという。
 
また、反クーデター派によると、近隣のインマテ村でも民家600軒が焼き払われた。これに先立ち、反クーデター派が国軍支持派の民兵を襲撃しており、国民防衛隊が村を離れてすぐに国軍が民家に火を放ったという。
 
国営テレビは3日、放火したのはPDFの戦闘員だと報じ、「テロリスト」に破壊された家屋だとする焼け跡の様子を放映した。 【翻訳編集】
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【国連「深い懸念」 実効性なし】
こうした事態に国連安保理は「深い懸念を表明」を表明していますが、それで事態が変わるものでもありません。

****ミャンマー情勢、安保理が懸念表明「人民の意思と利益に沿う解決を」****
国連安全保障理事会は2日、ミャンマー軍政が非常事態を継続している状況に深い懸念を表明し、「人民の意思と利益」に沿った事態解決に向けた協議を強く促した。

安保理は昨年2月1日のクーデターから1年となるのに合わせて採択した声明で、民主化指導者アウン・サン・スー・チー氏やウィン・ミン大統領ら一方的に拘束されている人々の解放をあらためて求めた。

国連人権当局の統計によると、クーデターを受けて発生したストや抗議活動に伴い、約1500人の民間人が弾圧のため殺害され、約1万1800人が違法に拘束されている。

安保理は、全土における暴力の全面停止と民間人保護を要求。声明は「安保理各国は(ミャンマーにおける)最近の新たな暴力に深い懸念を表明するとともに、大量の国内避難民の発生に強い懸念を示している。また、医療・教育施設を含むインフラへの攻撃を非難している」とした。

さらに、「ミャンマー人民の意思と利益に合致する形で、全関係勢力を含む対話の継続と和解」を求めるとあらためて訴えた。【2月3日 ロイター】
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【ASEAN  統一的対応困難】
ASEAN内にはミャンマー対応で温度差があること、議長国カンボジアのフン・セン首相が“スタンドプレー”的にミャンマー国軍と接近していることは2月2日ブログで取り上げたところです。この国軍支配を認めるような行動への反発で外相会談が延期になっていましたが、国軍代表者ではなく「非政治的な代表」を派遣するようにミャンマーに要請する形での開催が決まったようです。

****ミャンマー国軍の代表は招かず ASEAN外相会議****
東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国を務めるカンボジアは、16~17日にプノンペンで開くASEAN外相会議に、クーデターを起こしたミャンマー国軍が任命した外相を招かないことを決めた。ミャンマー国軍に融和的なカンボジアの姿勢に一部の加盟国が反発したため、会議の開催を優先して方針を変えた。
 
カンボジア外務省のチュン・ソンナリ報道官が3日、明らかにした。ミャンマー国軍が昨年4月にASEANと合意した「暴力の停止」「特使の受け入れ」などの5項目についてほとんど進展がなく、ミャンマー国軍が外相に任命したワナマウンルウィン氏を招くことについて「加盟国間で同意が得られなかった」と説明した。
 
ミャンマー側には官僚などを想定した「非政治的な代表」を派遣するように要請したという。
 
ASEAN外相会議は年間の議論の方向性を決める年初の重要な会議。当初は1月18、19日にカンボジアのシエムレアプで予定されており、フン・セン首相はワナマウンルウィン氏を招く姿勢を示していた。しかし、インドネシアやシンガポールなどが反発し、会議は直前になって延期されていた。【2月3日 朝日】
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ただ、内部に温度差があるASEANがミャンマーに対して何らかの譲歩を迫るようなことはできないでしょう。

【欧米の制裁も、日本の「静かな外交」も成果なし】
欧米はミャンマーに対して制裁を課していますが、これもこれまでのところ市民生活を苦しくするだけで「成果」を示すことができずにいます。

「ミャンマーと太い独自のパイプを持つ」という日本は欧米とは一線を画し「静かな外交」を展開していますが、これもまた成果を出していません。

【国軍は中国とも距離感】
日本が警戒するのは欧米や日本が厳しく対応すれば、その分中国の存在感が増す・・・ということですが、その中国と国軍の関係も、それほど良好なものでもないようです。伝統的にミャンマー軍部には中国への警戒感があります。

****中国ですら手懐けられず。国民を虐殺するミャンマー司令官の正体****
フライン総司令官率いるミャンマー国軍がクーデターで政権を掌握してから2月1日で1年となりましたが、「恐怖政治」の終わりは見えないようです。今回(中略)元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、何がこのような状況を招いたかを分析・解説。(中略)

欧米諸国が早々とミャンマーを去った後、プレゼンスを一気に高めたのが中国とロシアで、中国による経済支援、ロシアによる軍事支援が提供されることに合意されたようですが、その両国に対してさえ、フライン総司令官は気を許さず、距離を保っていると言われています。

中国としては“隣国”として、一帯一路の要所とも言えるミャンマーを確実に影響下に置きたいと考えており、他のアジア諸国に比べると中国に対するアレルギーが少ないとされているミャンマーを国家資本主義陣営に引き入れたいと考えているようです。

そして、安全保障上ではミャンマーは中国とインドに挟まれる形で存在することもあり、対インドの防波堤的な役割も期待されているようです。

国際社会から孤立している中、中国から手を差し伸べられている状況は助かるはずですが、いろいろな情報をまとめると、どうもフライン総司令官は中国にも接近することはしないようです。

なぜでしょうか?

一つの理由として考えられるのは、「中国に対する警戒心を解かないこと」があるようですが、同じ国軍出身で、予想に反して民主化への移管をスムーズに進め、かつミャンマーに経済成長の基盤をもたらしたティン・セイン政権の“成功”のイメージに自らを重ねたいとの思いもあるようです。

ティン・セイン政権が成功した理由は、欧米諸国からの投資を積極的に受け入れると同時に、中国ともよい関係を保ち、2010年に軟禁が説かれたアウン・サン・スー・チー女史を政権に取り込むことで、欧米諸国にラスト・フロンティアという幻想を強調できたことと考えられます。

この考えは、実は2月1日に行われたミャンマー情勢に関する会合で、かつてビルマ出身で国連事務総長を務めたウ・タント氏のお孫さんが表明したものなのですが、この見解に照らし合わせてみると、フライン総司令官が行っている様々な方式は悉くティン・セイン政権のケースと逆方向に進行させていることが分かります。

一応、来年の8月までに民主的な総選挙を行うと約束し、自らの政権を暫定政権と位置付けるのですが、ティン・セイン政権時との大きな違いは、“民主主義のシンボル”に位置付けられるリーダーが存在せず、逆に再度軟禁状態に置かれているという状況です。

アウン・サン・スー・チー女史も、残念ながら10年にわたり国民の期待のみならず、国際社会からの期待にもこたえられなかったと言えます。外務大臣兼国家顧問の立場にありながら、国軍によるロヒンギャへの残虐行為に対して何一つできなかったことは、「しかたなかった」とする意見もありますが、大きな失望を生み出したと思われます。

その結果がどうかは断言できませんが、スー・チー女史の窮状と民主主義の衰退、そして国軍による強権などに対して、民主主義サミットまで開催した国々は実質的には何も効果的な策を打っていません。

「民主主義は失敗した」との批判に耐えられないアメリカの国内事情、「人権擁護を訴えつつ、対応にばらつきが目立つ欧州各国」という事情もありますが、今、争うべきは中国との最前線、つまり台湾と南シナ海という位置づけが、ミャンマーへの対応の遅れと物足りなさを生んでいるのだと感じます。

実際には中国とインドに挟まれた、アジア地域における地政学的な要所にあるにもかかわらず。

そしてそれは、アジアシフトを打ち出している割には、中国以外のアジアにはさほど関心がないのではないかとの疑問につながります。

それは、かつて私が国連にいた際に仲良くなったビルマ人コミュニティの皆さんも感じているようで、ビルマ(ミャンマー)問題を話し合う際のUNにおける各国の煮え切らない雰囲気に強いフラストレーションを感じているようです。

個人的にはどこか北朝鮮問題に似ているような気もしています。

大きな違いは核問題が絡まないことですが、非難はしても行動を取ってこないという現在の状況を嘲笑うかのように、フライン総司令官と国軍は、この1年間で少なくとも2,500件の武力衝突を引き起こし、数えきれないほどの蛮行と虐殺が国軍と警察という治安勢力によって行われています。

クーデター直後は、少数民族と接近することでNLDとの切り離しを行おうとしたフライン総司令官ですが、それがうまくいかないことを悟ると、態度を180度転換して、少数民族への攻撃を徹底し、その攻撃が残虐さを増すことで、「反抗する者は殺害する」とのメッセージを打ち出す強権政治の体裁を示すようになってきました。

これには内政不干渉を掲げるASEANも、隣国中国も大きな懸念を示しているのですが、それぞれに国内での人権問題や少数民族問題を抱える立場であることもあり、フライン総司令官に対する効果的な行動の抑止力にはなっていません。

その証拠に、9月以降の半年で、一気に虐殺や蛮行が報告される案件が急増しており、弾圧の糾弾に対しても、その存在を否定しないという国軍側の姿勢は、完全に国際社会からの離脱を厭わない意思が見えます。

口先だけの介入と非難を続ける欧米諸国
人権擁護や民間人の安全の確保という大原則を掲げつつも、空洞化する国連。

寄り添っているように見せかけつつも、実際には自国経済を豊かにするための“財布”としか取られていない中国。

国際社会からの総スカンを食らう中、武器供与と外交的なサポートで支持を確保し、アジアに勢力の飛び地を確保しようとするロシア。

そして、自国周辺のことについては何としても自分たちで解決したいASEANと、内部で綱引きが過熱する状況。

そして、欧米諸国に続いて、フライン総司令官と国軍による弾圧に避難と懸念を示しつつも、企業の撤退を命じない日本。

そして、誰もdecisiveな行動を取れないことが分かっているフライン総司令官と国軍。

そして“だれも本気で助けに来てくれないことを悟った”ミャンマー・ビルマ国民。(後略)【2月5日 MAG2 NEWS】
***********************

“爆竹”で戦うしかない国内民主派勢力も、国連も、ASEANも、欧米も、日本も、そして中国もミャンマー国軍を動かすことができず、犠牲者と避難民が増え続ける・・・というのが現状です。
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ミャンマー  景気悪化、物価高騰、大量失業 クーデターから1年 困窮する生活 「沈黙のストライキ」

2022-02-02 22:22:18 | ミャンマー
((「沈黙のストライキ」に参加する形で店を閉めないように)警告を受けた商店の人は、「店は開けざるを得ないが、客には来ないでほしい」と話していました。【2月1日 日テレNEWS24】)

【軍政下で急速に失われつつある開発の成果】
ミャンマーではクーデターによる国軍支配、そして民主派市民や少数民族武装勢力の抵抗が続いていますが、昨年11月にミンアウンフライン最高司令官が「米を少し減らす必要がある。必要に応じて肉、魚、野菜を食べると健康につながる」と演説。

生活が困窮するミャンマー国民でなくても「そりゃ、あんたは肉でも魚でも食べられるだろうけど・・・」と突っ込みたくなるものでした。

****「私も好きだ」けど、食用油は節約して ミャンマー国軍トップが演説****
クーデターで権力を握ったミャンマー国軍のミンアウンフライン最高司令官が1日夜にテレビ演説し、国民に燃料油や食用油の節約を訴えた。普段の演説で繰り返す民主派勢力への非難は影を潜め、消費を抑えるよう強調した。クーデター後に経済は悪化しており、立て直しのために燃料油など輸入を減らす必要に迫られているようだ。
 
ミンアウンフライン氏は1日、軍服ではなく白の民俗衣装で登場した。冒頭で新型コロナウイルス対策の成果を強調した後、「できるだけ燃料油の節約をお願いしたい」と切り出した。燃料油と食用油の輸入が年間約30億ドル(約3400億円)に達するとし、「バスや鉄道での旅行を奨励したい」と公共交通機関の利用を求めた。
 
節約を求める対象は国民の食卓にも及んだ。発酵させた茶葉のサラダ「ラペットゥ」など、油をたっぷり使うミャンマー料理を複数挙げ、「私自身も好きだ」と述べた上で、「食用油の消費をできるだけ少なくすれば輸入を減らせる」と訴えた。
 
演説で、国軍に反発する市民や民主派を「テロリスト」などと糾弾することはなかった。終始穏やかな口調で、演説終盤には米を多く食べるミャンマーの「食生活の変化を促したい」と言及。「米を少し減らす必要がある。必要に応じて肉、魚、野菜を食べると健康につながる」と呼びかけ、食事を変えれば公衆衛生も向上するとした。
 
世界銀行は7月、ミャンマーの2020年10月~21年9月の国内総生産(GDP)は前年から18%減り、100万人が失業すると見込んだ。クーデター後の混乱で通貨チャットが急落し物価が高騰。演説は、景気の悪化に苦しむ国民に理解を求める目的もあったとみられるが、国民の反応は冷ややかだ。
 
ヤンゴンで雑貨屋を営む女性(37)は「演説は市民の厳しい生活に言及しておらず、解決策も示していない」と一蹴した。SNSには「その日の食事に困っている人も多いのに、どうやって肉や魚を食べろというのか」などのコメントも相次いだ。【2021年11月2日 朝日】
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国民が生活に困窮している実態を知らないのか・・・あるいは、そのようなことには関心がないのか・・・いずれにしても、民意から遊離している軍事政権の実態が垣間見えるエピソードでした。

クーデターから1年、状況は好転の兆しが見えません。

****ミャンマー市民の生活苦しく クーデター1年****
コロナと政局混乱のダブルパンチ、経済危機は深まる一方

ミャンマー軍のミン・アウン・フライン最高司令官は昨年の終盤、かつて「アジアの米びつ」と呼ばれた同国の市民に対し、主食の米を食べる量を減らすよう促した。食料はたっぷりあると言明し、もっと肉や魚、野菜を食べるようにと述べた。
 
だが今、人々にそんな余裕はない。
ミャンマーの軍事クーデターから1年がたち、国民の所得は激減した。通貨は暴落し、燃料価格が2倍になった。同国最大の都市ヤンゴンの市場では、食用油や農産物、せっけんなどに1年前の約2倍の値段を払っていると買い物客は言う。
 
「私たちは生きるのに必死だ」と、退職した市職員のサン・フタイさん(62)は話す。10代の娘が家計を助けるためにメイドとして働き始めたという。バイクタクシーの運転手をしているフタイさんの稼ぎでは、最低限の食費と家賃をまかなうこともできなくなった。
 
国連食糧農業機関(FAO)によると、2021年の世界の食料価格は、燃料や肥料のコスト上昇も一因に10年ぶり高水準に達した。ミャンマーではその影響が増幅されている。新型コロナウイルス感染拡大と政局混乱が重なり、他の多くの国々が直面したより深刻な危機を招いたのだ。

政治の独裁回帰と経済の低迷は、クーデター前の10年にその両方が進展していたために、一段と際立つ。クーデターによって、慎重を要する民主化への移行が後戻りし、専門家や住民によれば、苦労して手に入れた開発の成果も急速に崩れつつある。

国連人道問題調整事務所(OCHA)は12月下旬、2021年の経済と政治の混乱により、ミャンマーの人口510万人のほぼ半数が貧困状態に陥り、15年以上にわたって築き上げたものが水泡に帰したと指摘した。
 
軍事政権はここ1年、ノーベル平和賞受賞者のアウン・サン・スー・チー氏(72)を含む市民リーダーらを起訴し、平和的な抗議行動を武力で鎮圧しようとしている。非営利団体「政治犯支援協会(AAPP)」によると、兵士と警察は1500人余りを殺害し、1万1000人超を逮捕している。軍に反対する人の中には武装抵抗勢力に加わる向きもあり、国内の対立は悪化している。
 
こうした混乱は停滞を長引かせ、コロナ禍で既にほぼ停止状態にあった経済の回復を妨げている。世界銀行によると、ミャンマーの国内総生産(GDP)は2021年に18%減少し、タイ、フィリピン、ベトナムといった近隣諸国よりはるかに大きな落ち込みとなった。今年の成長率はわずか1%と予想され、回復は極めて小幅にとどまるとみられる。(中略)
 
昨年2月1日に発生したクーデターは、全国的なストライキを引き起こして労働力をまひさせ、多くの世帯の収入が失われた。軍と武装勢力の戦闘が激化し、農地から都市部への食料の搬送はますます困難になった。国際商取引の減少と少ない外貨準備高――クーデター直後にニューヨーク連銀がミャンマーの外貨準備高約10億ドルを凍結したことで一段と減少した――は、ドル不足を招いた。現地通貨の価値は約25%下落している。
 
米国をはじめとする欧米の民主主義国は、軍の上層部を含む数十人と主要な国有コングロマリットに対して制裁を発動したが、経済全体に大きな影響を与えるには至っていない。しかし、議員や活動家、その他の関係者から、ミャンマーの唯一最大の外貨収入源であるエネルギー部門をブラックリスト化するよう、各国政府に対し圧力がかかっている。(中略)

ヤンゴンの北オカラパに住む2児の母、メイ・メイ・アウンさん(35)は、少ないもので生活することを学んでいると語る。夫と共に、ミャンマーで増えつつあった中間層の仲間入りを目指していたが、数カ月で貧困に逆戻りしてしまった。一家はヤンゴンの工業地帯にある家具工場で働く夫の収入に頼っているが、夫の賃金は昨年20%カットされた。
 
以前は1日3杯のインスタントコーヒーがささやかな楽しみだったが、今は1杯だけだ。洗濯用洗剤は長持ちするように少なめに使い、食事は毎週、市場の一番安いものを利用してやりくりしている。
 
アウンさんは「このごろは、使うものについてよく考えないといけない」と言う。「余計なものは買わずに、必要なものだけを買うようになった」
 
ヤンゴン近郊に住むナイ・スレインさん(39)は、昨年末までには日々の暮らしの厳しさが手に取るように見えてきたと話す。彼は10月、自動車用品を売る仕事の時間を減らし、貧しい人々のために食事を提供する寄付制のレストランを開いた。払える人は好きなだけ払い、そうでない人は30円程度を払うか、何も払わずとも食べることができる。このプロジェクトは成功し、他の都市でも同様のレストランが次々と誕生した。
 
だが、お金を全く払えない来店客が増えているという。とりわけ貧しい常連客の多くは、タクシー運転手や近くの市場で働く行商人たちだ。
 
「全ての人に食べさせてあげることができないのは、自分にとって一番悲しい」とスレインさんは話した。【2月2日 WSJ】
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ミャンマー国民が軍に抵抗を続けているのは、クーデターによる権力掌握、民主主義を無視する軍の強権支配、暴力による弾圧・・・そういう政治的側面への抵抗と同時に、軍事支配のもとで深まるばかりの生活苦という経済的側面も強く存在します。

****「仕事がない」履歴書を手に座り込む若者たち 絶望して国外へも****
国軍によるクーデターが発生して1年となるミャンマーで、経済的な苦境が続いている。新型コロナウイルスの影響もあり、国際労働機関(ILO)は、2021年に約160万人の仕事が失われたとみる。昨年7月以降、人が戻り始めたオフィスもあるが、賃金は上がっておらず、経済の早期回復は見通せない。
 
昨年11月中旬、30人ほどの若者が閉ざされた門の前に座り込んでいた。ヤンゴン北部のラインタヤ地区。小さな工場の前に集まっていたのは、職を求める人たちだ。手には、手書きの履歴書を握りしめている。
 
「給料は日給4800チャット(約310円)。クーデター後は仕事がないから、少しでも募集があるとすぐに行列ができてしまう」。20歳という男性が言った。
 
ラインタヤ地区はもともと縫製工場などが集まっていた地域だ。職を求めて国内各地から集まり、不法に住み着いた労働者も少なくなかった。
 
だがクーデター後の混乱の中で、中国資本の工場が放火された。国軍は戒厳令を出して一帯を封鎖。不法な住居を立ち退かせた。工場近くに住むバイクタクシーの運転手(36)は「放火された工場には5千人の従業員がいたが、みな職を失った。おかげで稼げなくなった」と話した。
 
「100万人の雇用機会が失われた」――。世界銀行は2020年10月からの1年について、そう分析する。

新型コロナの感染拡大もあり、実質国内総生産(GDP)は18%縮小したと推計。新型コロナとクーデターがなかった場合の想定に比べると、3割小さいとみる。
 
22年9月にかけては、1%のプラス成長を見込む。職場には新型コロナ前の80%程度に人が戻っている。だが世銀のシニアエコノミスト、キム・アラン・エドワーズ氏は「低賃金、短い労働時間など、仕事はあってもより厳しい状況に陥っていることも多い」と説明する。
 
先行きに絶望し、国外に出る若者も多い。新型コロナからの経済復興に向けて、移民労働者を受け入れる国が出てきているからだ。
 
昨年12月、ヤンゴン市内の旅券発給事務所には、長蛇の列ができていた。事務所の開業は午前9時。だが朝5時には行列ができるという。行列を見てあきらめて帰る人も少なくない中、西部チン州から来たという男性は「知人を頼り、タイに行って働きたい」と語った。

投資集めた「成長センター」が一変
クーデターの影響がよりはっきり出ているのが、外国企業の動きだ。
 
人口5500万人、年齢中央値は29歳。若い労働力も多いミャンマーは11年の民政移管後、次の成長センターとして世界から投資を集めた。だがクーデターで状況は一変。治安や経済の悪化で事業環境が不透明になった。
 
さらに、ミャンマーでの事業そのものが国軍への協力とみられかねないことも、投資を控える動きにつながっている。
 
ミャンマー投資企業管理局の統計では、20年10月~21年9月のミャンマーへの海外直接投資の認可額は、約4320億円。前年から2割余り縮小し、12~13年以来の水準に沈んだ。
 
新たな投資が減っただけではなく、撤退する動きも出ている。天然ガス田の開発などを担う仏のエネルギー大手、トタルエナジーズは1月21日、ミャンマーから撤退すると発表した。
 
トタルはクーデター後、進行中の開発事業を止める一方で、既存ガス田からの供給は「ミャンマー人民のため」として続けてきた。
 
だが21日の声明では、この対応では株主やミャンマー内外の市民団体など「関係者の期待に沿うことができなかった」と説明。人権などの観点に照らしてミャンマーの現状をみると、「もはやこの国に前向きな貢献はできない」と判断したという。
 
日本企業も対応に頭を悩ませている。トヨタが建設していた自動車工場は、ほぼ完成していたものの開業できないまま。国土交通省が所管する官民ファンドが絡むオフィスやホテルの建設計画も、凍結された状態だ。
 
国軍系企業と合弁事業を営んでいたキリンは合弁を解消する意向だが、見通しは立っていない。【1月29日 朝日】
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****ミャンマー、クーデター1年 市民「絶望しかない」****
(中略)こうした中、急速に進むのが国民の貧困だ。国際労働機関(ILO)は今月、21年に国内で約160万人が失業したとする報告書を発表した。国内の混乱が海外投資減少につながったことに加え、新型コロナウイルス流行が経済の重荷となったとみられている。

ILOによると、大きな影響を受けたのが主要産業の1つの縫製業だ。最大都市ヤンゴンの縫製工場を解雇された女性、ナインさん(29)はクーデター前の月収が約35万チャット(約2万3千円)だったがほぼゼロになり、日雇いの仕事で糊口をしのいでいる。「絶望しかない。国軍でもNUGでもどちらでもいいから、職を作ってほしい」と心中を吐露した。

国内では表立って国軍を批判する声は減少した。だが、市民の怒りが消えたわけではない。1日には全国で出勤を見送ったり店舗を休業したりして抗議の意を示す「沈黙ストライキ」が行われる。

参加する予定だというヤンゴンの会社員男性(40)は「1年たっても、到底国軍を支持する気になれない。決定打にならないだろうが、小さい抵抗を積み重ねていくしかない」と決意を話した。【1月31日 産経】
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【せめてもの意思表示「沈黙のストライキ」 力で封じる国軍】
弾圧の犠牲者は1500人を超え、1万人前後が身柄を拘束されていると言われる国軍による力の支配が続く中で、上記のような国民の不満・絶望のせめてもの意思表示が2月1日の「沈黙ストライキ」でした。

****クーデターから1年のミャンマー 緊張の中に静寂、早朝にゲリラデモも****
<あの日から1年、多くの商店が営業し往来には自動車も行き交っているが、この日常はフェイクだ>

軍によるクーデターから2月1日に1年を迎えたミャンマーは軍政に抵抗する民主勢力が呼びかけた「沈黙のストライキ」により、静かな1日を迎えた。

中心都市ヤンゴンの繁華街では約80%の商店が店を開けていたものの訪れる客はほとんどなく、店員が時間を持て余している姿があちらこちらで見られた、とヤンゴン在住のジャーナリストは伝えてきた。

反軍政の立場をとるメディア関係者への摘発、拷問、弾圧を逃れるため地下に潜伏しているこのジャーナリストは、1日午前10時過ぎから正午頃まで、ヤンゴンのダウンタウンを中心に治安当局を警戒しながら回ってみたという。
世界人権デーにちなみ12月10日に行われた「沈黙のストライキ」の際にはほとんど車両が走っていなかったが、クーデターから1年となった2月1日は約10倍の車両が路上を走っていたという。

軍の摘発を恐れて商店は開店
また、ヤンゴン市内のダウンタウンでは食堂などの商店が約80%店を開けていたという。これは12月10日の際に商店はほとんどがシャッターを下ろして閉店していたことと比べると大きな違いを感じたという。

反軍政の民主派は2月1日を前にSNSなどを通じて、「沈黙のストライキ」で同日午前10時から午後4時までの間、仕事を休み自宅などに留まることで社会活動をマヒさせることを訴えた。

これに対して軍や警察の治安当局は「ストライキ」に同調する市民に対しては厳しい姿勢で臨むことを表明。同調者に対しては「テロ法」などの容疑による逮捕もありうるとしていた。

こうした治安当局の強硬姿勢に恐れをなした商店主たちが1日午前から店を開けて「ストライキ」不参加の立場を示したものとみられているという。もっとも現地を見た前述のジャーナリストによると、開いている商店や食堂も訪れる客はほとんどなく「開店休業」の状態が続いていたという。
そうした店では店員が無表情で暇そうにしているか、店員同士や近所の市民とひそひそ話しをしていたという。

治安当局は市内を頻繁にパトロール
こうした状況のヤンゴン中心部では兵士や警察官を乗せた治安当局の車両が頻繁に市内をパトロールする様子が見られ、軍政が反軍政の市民の動きを極度に警戒している様子がみてとれたとしている。

反軍政の独立系メディア「ミッズィマ」によると1日午前5時頃にヤンゴン市内で反軍政を訴える若者を中心とする市民によるデモが短時間行われ、民主主義の復活を訴え、無事解散したという。同じようなゲリラ的デモは中部にある第2の都市であるマンダレーでも行われたという。

軍政トップのミン・アウン・フライン国軍司令官は1日に国営放送を通じて「昨年2月1日に民主主義を掲げる我々は総選挙の不正などの困難に直面し、非常事態を宣言した」とクーデターを正当化。「テロリストが国を破壊しようとしている」と反軍政を掲げる武装市民などをテロリストと位置づけ、拘束、虐待、殺害などの強権弾圧や人権侵害を当然の行為としていることを改めて表明した。

市民弾圧を平然と行う治安当局
国営放送は1日に撮影日時が不明の軍政を支持するという市民のデモの映像も流して、軍政が国民の支持を得ていることを訴えた。

これに対し、反軍政の立場をとるメディアは「こうした映像は軍政による撮影日時や参加者も不明確な"プロパガンダ"に過ぎない」としている。(中略)

前述の地下潜伏中のジャーナリストは、クーデターから1年となった1日、軍や警察による通行人や通行車両、開店している商店の状況を監視、警戒する様子が非常に厳しいことから「カメラはおろかスマホによる写真撮影も難しい状況だった」と述べ、治安当局が最高度の警戒体制を敷いていたことを明らかにした。【2月1日 大塚智彦氏 Newsweek】
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“最大都市ヤンゴンでは、市民が国軍に対する抗議活動を禁じられる一方、国軍が動員したとみられる集団が軍歌を歌いながら街を練り歩いた。”【2月2日 朝日】“クーデターで権力を握った国軍を支持するデモで手投げ弾が爆発し、ニュースサイト「ピープル・メディア」によると、2人が死亡、40人が負傷した。犯行の背後関係は分かっていない。”【2月2日 時事】といった報道も。

国軍がクーデターに乗り出した理由はともかく、現状を見る限り軍の統治は“失敗した”と言わざるを得ませんが、それでも権力を手放そうとしない国軍・・・「道理」は意味を持たない世界のようにも見えます。

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ミャンマー対応でASEAN内部に不和も 国軍支配から1年、2月1日に「沈黙の抵抗」の呼びかけ

2022-01-27 23:37:38 | ミャンマー
(26日、カンボジアの首都プノンペン郊外のタクマウで、オンライン会談に臨むフン・セン首相(左)とミャンマー国軍のミンアウンフライン総司令官=カンボジア政府提供(AFP)【1月27日 時事】)


【国軍支配のもとで続く武装勢力との戦闘、民主派への弾圧】
ミャンマー情勢については、1月11日ブログ“ミャンマー  国軍との交渉でこれまでのところ大きな成果を出せていないASEAN・日本外交”で、カンボジアのフン・セン首相がミャンマーを訪問し、ミャンマー国軍のミンアウンフライン総司令官と会談したあたりのところまで取り上げました。

その後もミャンマー情勢は好転していません。

****ミャンマー東部で戦闘激化 僧侶も避難****
ミャンマー東部で、国軍と武装勢力の戦闘が激化しており、多数の避難民が出ている。目撃者によると、16日には主要2都市から僧侶数百人も退避した。

国軍は昨年2月、アウンサンスーチー氏率いる政権をクーデターで追放し、実権を掌握した。大規模な反クーデターデモが繰り広げられたが、国軍はこれを弾圧、これまでに1400人以上が死亡した。
 
東部カヤ州ロイコーでは先週、激しい戦闘が起き、国連は約9万人が避難したと推計している。地元NGOは、避難民は17万人に上るとしている。
 
約5000人は東部シャン州に逃れた。避難に加わった一人の僧侶はAFPに対し、30前後の寺院から僧侶が退避したと語った。ミャンマーでは僧侶は尊敬の対象で、寺院は安全な避難場所とされており、僧侶が退避するのは異例だ。
 
この僧侶によると、ロイコー近くの街デモソにある12の寺院からも僧侶が避難した。
シャン州タウンジーの地元指導者は、少なくとも30人の僧侶が先週、避難してきたと述べた。
 
匿名で取材に応じた警官は、ロイコーでは武力勢力が教会や民家を乗っ取ったり、刑務所を襲撃したりしており、「街はまるで墓場のようになった」と語った。毎日約600台の車がロイコーから避難してきているという。
 
国連によれば、ロイコーとデモソは武力勢力の拠点となっており、昨年12月以降戦闘が激化している。 【1月17日 AFP】
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暴力が武装勢力によるものか、国軍によるものか、双方によるものか・・・そのあたりはわかりません。

****スーチー氏にまた汚職容疑 ミャンマー当局、5件訴追****
国軍がクーデターで全権を握ったミャンマーの当局は14日、ヘリコプター購入などを巡り汚職を働いたとして、軟禁下にあるアウンサンスーチー氏を新たに5件の汚職容疑で訴追した。関係者が明らかにした。別の汚職や国家機密漏えいなどでも訴追されており、これで計17件となった。
 
一部で既に有罪判決が出ており、計6年の禁錮刑が言い渡されている。これまでの訴追容疑が全て有罪になると計100年超の禁錮刑が科される可能性があり、国軍はスーチー氏を徹底排除する姿勢を崩していない。
 
大統領だったウィンミン氏も14日、同様にヘリ購入を巡る汚職容疑で訴追された。【1月14日 共同】
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****スーチー氏政党の元議員、テロ罪で死刑 ミャンマー****
ミャンマーの軍事裁判所は21日、国家顧問だったアウンサンスーチー氏率いる政党「国民民主連盟」のピョーゼヤトー元議員に対し、テロ関連の罪で死刑判決を言い渡した。(中略)
 
軍事政権の発表によると、11月に逮捕されたピョーゼヤトー氏は、「ジミー」の通称で知られる著名民主活動家チョーミンユ氏とともに、反テロ法に基づき死刑を言い渡れた。

同政権はこれまで多数の反クーデター活動家に死刑を宣告しているが、ミャンマーではここ数十年間、死刑が執行されたことはない。 【1月22日 AFP】
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【フン・セン首相の“スタンドプレー”との批判も ASEAN内部でのミャンマー対応に溝】
“ミャンマー情勢を巡りASEANでは、クーデターを批判するマレーシアやインドネシアに対し、カンボジアやタイは「国内問題」と不干渉を決め込んできた。”【1月15日 読売】と温度差があるASEANですが、国際社会の批判が高まる中で、昨年10月に関連首脳会議へのミャンマー国軍関係者の出席拒否で一致しました。

そうした状況にあってのASEAN議長国であるカンボジアのフン・セン首相のミャンマー訪問・国軍司令官との会談は、ASEANの総意に基づくものではなく、フン・セン首相の“スタンドプレー”との批判もASEAN内部あり、カンボジアで18日から開催予定だった対面での外相会議は(コロナ対応を理由に)延期される事態となっています。

****ASEAN、ミャンマー巡り相違解消せず 会議延期で不和露わに****
東南アジア諸国連合(ASEAN)が今週予定していた外相会議が延期される中、外交筋や政府筋はミャンマーの軍事政権への対応に関する意見の相違が解消せず、加盟国間の不和をもたらしていると明らかにした。

ミャンマーでの軍事クーデターやデモ隊への弾圧行為を受けて、ASEANは昨年、同国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官を首脳会議から排除する異例の措置を決定。ASEAN内ではミャンマー問題が懸案となっている。

インドネシア外務省アジア・太平洋・アフリカ総局長のアブドゥル・カディール・ジャイラニ氏は、ミャンマーがASEANのイベントに参加するという厄介な問題はまだ解決されていないと説明。記者団に対し、「意見を統一するにはまだ時間が必要であることを認めざるを得ない」と述べた。

一方、新型コロナウイルスのオミクロン変異株が依然として脅威であることから、カンボジアが議長国になって初の会議となるはずだった今週の外相会議を延期したことは理解できると付け加えた。

ASEAN議長国のカンボジア政府は12日、同国で18─19日に予定していた外相会議を延期したと明らかにした。一部の外相から出席が「困難」との通知があったためとしている。

2人の外交筋がロイターに語ったところによると、カンボジアはミャンマーの軍事政権に関与する意向を示しており、会議に同国の「外相」で退役大佐のワナ・マウン・ルウィン氏を招待していた。

ここ数日、マレーシアのサイフディン外相とシンガポールのリー・シェンロン首相は、ミャンマー危機の解決に向けて合意された5項目のASEAN「コンセンサス」に何の進展もなかったことから、軍事政権を招くことに反対している。

リー首相は14日、カンボジアのフン・セン首相に対し、ミャンマー政策の変更は「新しい事実に基づかなければならない」と述べた。

こうした意見の相違は、ASEANにとって今年が困難な年であることを示しており、国際的に支持されているミャンマー和平への取り組みが頓挫する中、ASEAN内部の亀裂がさらに露呈し、ASEANの信頼性が損なわれる恐れがある。

<「外相」招待が問題に>
外交筋によると、カンボジアがミャンマー軍事政権のトップ外交官であるワナ・マウン・ルウィン氏を招待したことが問題となっており、複数の加盟国が最近の動きに反対しているという。

同筋は「インドネシアとマレーシアは、フン・セン氏のミャンマー訪問の結果、特にミャンマーに関するASEANの5項目のコンセンサスと軍事政権の5項目のロードマップが結び付くことに満足していなかった」と述べた。

軍事政権がクーデター以来宣伝しているロードマップはASEANの合意とは大きく異なっている。

フィリピンのロクシン外相は、ASEANのコンセンサスは「いかなるロードマップにも縛られてはならない」と強調している。

また、別の外交筋は、会議延期にはオミクロン変異株のリスクと、ミャンマー、特にワナ・マウン・ルウィン氏の招待に関する意見の相違が影響していると説明。「この問題に関しては一部が態度を硬化」していたと語り、カンボジアは予定されていたイベントの一部をオンラインで開催することを提案していたと語った。【1月18日 ロイター】
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フン・セン首相はミャンマー情勢の事態打開に独自の判断で臨む姿勢を崩しておらず、ミャンマー国軍のミンアウンフライン総司令官との再度の会談をオンライン形式で行っています。

ASEAN内部の国軍支配に対する厳しい見方が存在する現状、“ミャンマー政策の変更は「新しい事実に基づかなければならない」”といった声も踏まえて、ミャンマー側に何らかの譲歩を求めたのでは・・・との観測も。

****カンボジア首相、ミャンマー軍トップと会談 情勢打開へ譲歩求めたか****
カンボジアのフン・セン首相は26日、ミャンマー国軍のミンアウンフライン最高司令官と会談した。

カンボジアは東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国として、今月中旬の外相会議にミャンマー国軍の外相を招く意向だったが、一部の加盟国が反発。会議の延期を余儀なくされた。情勢を打開するため、フン・セン氏はミャンマー国軍側に譲歩を求めたとみられる。
 
両者の会談は7日にミャンマーの首都ネピドーで対面で実施されて以来、今月2回目。この日はオンライン方式で実施された。
 
会談の詳細は明らかになっていないが、フン・セン氏はミャンマー側に対して、ASEANとミャンマー国軍が昨年4月に交わした「暴力の即時停止」など5項目の合意事項の履行を求めたとみられる。
 
フン・セン氏は当初、今年のASEAN議長国の首脳として、関連会議へのミャンマーの復帰に積極的だった。しかし、フン・セン氏のミャンマー訪問後も、拘束中のアウンサンスーチー氏に有罪判決が出るなど状況は改善していない。
 
インドネシアやマレーシア、シンガポールは合意の履行に大きな進展がない限り、ASEANがミャンマー側に譲歩すべきではないとの立場で、国軍寄りのフン・セン氏の姿勢は加盟国の反発を招いた。

18、19日にカンボジアで予定されていた年初のASEAN外相会議は直前になって延期が決まり、新たな日程が決められないままになっている。【1月26日 朝日】
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上記の“譲歩”に関連するものかどうかはわかりませんが下記のような動きも。

*****スーチー氏の政党は解党せず****
ミャンマー国軍のゾーミントゥン報道官は26日、共同通信の取材に応じ、軟禁中のアウンサンスーチー氏が率いた国民民主連盟(NLD)について、国軍に解党する意図はないと明らかにした。【1月26日 共同】
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解党はしなくても、反国軍的言動は一切許さず、当然スー・チー氏ら幹部は拘束したままで、国際批判を避けるために形だけ残しておく・・・といった類でしょう。

【2月1日 「沈黙の抵抗」の呼び掛け】
2月1日で国軍クーデターから1年が経過するということで、2月1日は出勤や外出を一切控え、商店も店を閉じて自宅に留まり、静かに抵抗の姿勢を一斉に示そうという「沈黙の抵抗」の呼び掛けも行われているようです。

****ミャンマー、間もなくクーデターから1年 民主派リーダー「2月1日、沈黙の抵抗を」****
<突然の政変が起きた国は今も軍政と民主派の対立が続いたまま、もうすぐ1年に>

ミャンマーで反軍政の立場をとる民主派のリーダーが軍による2021年のクーデター発生から1年となる2月1日に、軍政への抵抗を示すために自宅に留まる「沈黙の抵抗」を国民に呼びかけている。

ミャンマーの反軍政の立場をとる独立系メディア「ミッズィマ」などによると、この呼びかけは2月1日は出勤や外出を一切控え、商店も店を閉じて午前10時から午後4時までの間自宅に留まり、静かに抵抗の姿勢を一斉に示そうというもので、「沈黙の抵抗」と名付けられている。

呼び掛けでは同日午後4時には各自が自宅で一斉に拍手をして抵抗運動を終えようと求めている。

インターネットのSNSで「沈黙の抵抗」を呼びかけているのは民主派のコー・タイ・ザー・サン氏で治安当局による捜索を逃れて現在地下に潜伏中といわれている。

SNSで国民に広く呼びかけ
SNSを通じて同氏は「クーデター発生日であり、我々の抵抗運動"春の革命"がスタートした日でもある2月1日に我々は世界に対して抵抗精神は強く、軍政の支配に決して屈することなく、戦いを恐れることがないことを示す」として賛同を求めており、このメッセージは急速に拡散、共感や支持が広がっているという。

この呼びかけには「ミャンマー一般労働者同盟(FGWM)」も呼応して傘下の組合、組合員にも「沈黙の抵抗」への参加を促し、連帯を示すよう求めている。

FGWMの報道官は「2022年は人々による革命が成就する年となることを確信している。我々の強い信念と闘争心で今年は人々による統治の復活を成し遂げよう」と表明。「世界は2月1日にミャンマー国民が軍政に屈することなく何をしようとしているか注目している」と強い決意を示している。

ミャンマーの反軍政市民による「沈黙の抵抗」は2021年12月10日の「国際人権デー」に合わせて行われたときに続き2回目となる。人権デーに合わせた運動ではミャンマー市民の民主政権復活への思いを国際社会に伝えることができたとしている。

市民の抵抗運動、穏健路線から武装へ
ミャンマーの軍政に抵抗する市民運動はクーデター後はしばらくの間、自宅などで鍋窯を叩いて反軍政を表現したり、男性がその下を通ると不幸が起きるといわれる女性用のロンジー(伝統衣装)を街頭に吊り下げたりするなど、穏健な運動を展開していた。

各地で拡大した反軍政のデモや集会では軍政トップのミン・アウン・フライン国軍司令官の写真を踏みつけたり、バツ印をつけて反発を示していたが、治安当局による弾圧が強まった。

反軍政の市民も「不服従運動(CDM)」に共鳴して職場からの離脱、職務放棄で抵抗を示し、公立病院などで多数の医師や医療従事者が現場を離れた。軍政はこうしたCDMに参加した医療関係者に対して法的責任を追及する構えを見せており、今後さらに混迷が深まるものとみられている。

軍政によるデモや集会への対応はその後実弾発砲を含む強権弾圧となり、それが止むことはなく、クーデター後に組織された民主派組織「国民民主連盟(NLD)」と関係が深いとされる武装市民組織「国民防衛隊(PDF)」が組織され、各地で軍や警察など治安部隊と銃撃戦などの武装闘争を続けている。

こうした反軍政の市民による武装抵抗運動に長年軍政と対立してきた国境周辺の少数民族武装勢力も呼応。PDFの市民への軍事訓練、武器供与、共同作戦実施などで戦闘が激化している。

武装市民組織は「テロ組織」と軍政
ミン・アウン・フライン国軍司令官は1月20日に軍政を支える最高意思決定機関「国家統治評議会(SAC)」で武装市民組織であるPDFを「テロ組織」として徹底的に武力で弾圧する方針を改めて表明したと国営紙が伝えた。

これは東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国であるカンボジアのフン・セン首相が1月7、8日にミャンマーを訪問し、ミン・アウン・フライン国軍司令官と会談した席で少数民族武装勢力と停戦する方針を明らかにした一方で、武装市民勢力とは徹底抗戦する方針を再度確認したことになる。

この時の少数民族武装勢力との停戦はあくまで軍政による一方的なもので、その後もチン州のチンランド防衛隊(CDF)、カヤ州の「カレンニー国民防衛隊(KNDF)」、カレン民族同盟(KNU)、ラカイン州のアラカン軍(AA)などと軍との戦闘は続いており、停戦があくまで軍政のポーズに過ぎないことを示している。

フン・セン首相のカンボジア訪問もASEANのコンセンサスを得たものでなく、加盟国内からは厳しい批判がでており、フン・セン首相の「スタンドプレー」への警戒も強まっている。

こうした状況の中で2月1日を迎えるミャンマーで市民は「沈黙の抵抗」で軍政への反発を示そうとしている。【1月26日 大塚智彦氏 Newsweek】
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ミャンマー  人権・民主主義への認識が問われる権力との距離感

2021-12-24 23:03:46 | ミャンマー
(ミャンマーの首都ネピドーで2021年2月、ミャンマー国軍トップのミンアウンフライン最高司令官(右)の訪問を受けたゼーゴウン僧院のカウィサラ師=国軍のウェブサイトから【12月19日 朝日】)

(ミャンマー・ヤンゴンでクリスマスケーキを切る、ミン・アウン・フライン国軍総司令官(右)とカトリック教会のチャールズ・ボ枢機卿。国軍情報班提供(2021年12月23日撮影)。 【12月24日 AFP】)

【国境地帯での戦闘で多数の避難民 国軍による住民拷問・殺害も】
クーデターで実権を掌握した国軍が支配するミャンマーでは、依然として国軍と民主派勢力・少数民族武装勢力の戦闘が報じられています。

****ミャンマーのカレン州で戦闘 住民2500人がタイへ避難****
ミャンマー東部カレン州で、ミャンマー国軍と少数民族カレンの武装勢力の間で戦闘が起き、住民約2500人がタイに避難した。国軍が民主派を摘発したことをきっかけに戦闘に発展したとみられる。
 
ミャンマーのクーデター後に国軍に免許を剝奪(はくだつ)されたメディアなどによると、武装勢力「カレン民族同盟」(KNU)が支配するレイケイコー村で14日、ミャンマー国軍が、国民民主連盟(NLD)の元国会議員を含む30人余りを逮捕したのが発端。

15日には国軍とKNUなどカレン民族の武装組織の間で戦闘が起きた。国軍は民主派勢力による「統一政府」の武装組織が駐留しているとみなす一帯に砲撃したという。
 
ロイター通信はタイの地元当局者の話として、戦闘は国境から約500メートルのエリアで起き、砲弾がタイ領内にも着弾したと伝えた。戦闘で国軍兵士十数人が死亡したとの情報がある。
 
タイのメディアによると、17日までに少なくとも2500人が川を渡ってタイに避難した。人道支援団体によると、このうち545人は子どもだという。
 
国軍は3月にもクーデターを批判して市民の抗議デモを支持するなどしたKNUの支配地域に空爆をしている。【12月19日 朝日】
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こうした混乱の中で国軍による残虐行為も表面化しています。
詳細は明らかではないものの、イスラム系少数民族ロヒンギャへの殺害・レイプ・放火など“民族浄化”的な非人道的行為を行ったとされるミャンマー国軍ですから、さもありなん・・・という感も。

****ミャンマー軍、村民らを拷問にかけ集団殺害=BBC調査報道****
ミャンマー軍が7月、数カ所の村で一般人を集団殺害し、少なくとも40人の男性が犠牲になったことが、BBCの調査報道で明らかになった。

目撃者や生存者によると、軍兵士たちは村で住民たちを整列させ、男性を選んで殺害した。兵士には17歳ほどの若者もいたという。当時の動画や写真からは、男性たちの多くは拷問を受けてから殺害され、浅い墓地に埋葬された様子がうかがえる。

殺害は7月に、ミャンマー中央部サガイン地域にある反政府勢力の拠点、カニ郡の4カ所で実行された。(中略)

BBCはカニ郡で目撃者11人に話を聞き、イギリスに本部を置くNGO「ミャンマー・ウィットネス」が収集した携帯電話の動画や写真と照らし合わせた。同NGOは、ミャンマーにおける人権侵害を調べている。

ロープで縛られ
集団殺害の規模が最も大きかったのは、イン村で実行されたものだった。男性14人が拷問や殴打を受けて死亡した。死体は森の中のくぼみに投げ込まれた。

目撃者の1人(特定されないよう名前を伏せた)はBBCに、男性たちがロープで縛られ、殴打された後に殺害されたと話した。

兄弟、おい、義理の兄弟を1人ずつ失ったという女性は、「見ていられなかったので頭を垂れ、泣いていた」と話した。「やめてほしいとお願いした。兵士たちは聞く耳を持たなかった。兵士たちは女の人たち向かって、『夫はこの中にいるか? いるなら最後の弔いをしてやれ』と言っていた」

何とか生き延びた男性は、兵士たちが男性たちを、何時間も恐ろしい残虐行為を加えた末に殺害したと話した。
「男性たちは1日中、縛り上げられ、石やライフルの銃床で殴打され、拷問を受けた」
「兵士の一部は見た目が若く、たぶん17歳か18歳だった。反対に、かなり年を取った人もいた。女性も1人いた」

近くのジー・ビン・ドゥイン村では7月下旬、浅い集団墓地から、切断された12人の死体が見つかった。子どもの可能性もある小さな死体や、障害者の死体が含まれていた。

60代男性の死体は、付近のスモモの木に縛り付けてあった。BBCはこの死体を映した動画で、男性が拷問を受けたことを明確に示す形跡を確認した。男性の家族によると、軍が村に入ってきた時、男性の息子と孫は逃げたが、男性は高齢だから危害は加えられないだろうと考え村に残ったという。

一連の集団殺害は、民主政府の復権を求める武装市民グループが軍を攻撃したことに対する罰とみられる。武装市民グループの集合体である国民防衛隊(PDF)と軍の戦闘は、集団殺害前の数カ月間、この一帯で激化していた。

男性が殺害の対象となったのは、BBCが集めた映像や証言などから明白だ。ミャンマー各地で最近、男性の住民たちが集団で「罰」を受けている。

犠牲者の家族は殺された男性たちについて、軍への攻撃と無関係だったと訴えた。イン村で兄弟を失った女性は兵士に対し、自分の兄弟は「パチンコ(投石機)すら扱えない」と言って懇願したという。すると兵士は、「黙れ。私たちは疲れている。お前を殺すぞ」と答えたという。

「起こりうる」と軍報道官
ミャンマーではクーデーター以降、外国人記者の活動は禁止されている。民間メディアのほとんどは閉鎖され、現地での取材はほぼ不可能になっている。

BBCは今回の疑惑について、ミャンマー情報省の副大臣で軍報道官のゾーミントゥン将軍にただした。将軍は、兵士らが集団殺害を実行したことを否定しなかった。

「起こりうることだ」と彼は言った。「私たちを敵として扱うなら、私たちには自衛権がある」。
国連は現在、ミャンマー軍が犯したとされる各種の人権侵害について調査を進めている。【12月20日 BBC】
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“将軍は、兵士らが集団殺害を実行したことを否定しなかった。”・・・・恐怖を広めることによって事態を鎮静化させようとの考えでしょうか。

拘束して裁判にかけているスー・チー氏についても、国民への“みせしめ”的な対応を強めています。

****スーチー氏、囚人服で出廷 国軍、権威失墜狙いか****
ミャンマー国軍のクーデターで政権の座から追われ、社会不安をあおった罪などで有罪判決を受けたアウンサンスーチー氏が17日、首都ネピドーの特別法廷で開かれた審理に囚人服姿で出廷した。法曹関係者が明らかにした。国軍は司法も統制下に置いており、スーチー氏の権威をおとしめる狙いがあるとみられる。
 
17日は汚職の審理だったが、スーチー氏は白いシャツに茶色のスカートの囚人服で、英BBC放送ビルマ語版によると、毅然とした様子で審理に臨んでいたという。スーチー氏は10件以上の容疑で訴追されている。【12月17日 共同】
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なお、20日は無線機を違法に輸入したとされる罪について判決が予定されていましたが、特別法廷は判決言い渡しを27日に延期しています。

【市民の心のよりどころになっている僧侶 ただ、そうした信仰に頼る姿勢に批判の声も】
出口が見いだせない状況にあって僧侶たちの存在が市民の心のよりどころになっていますが、そうした信仰に頼る姿勢に批判の声も。

****「僧侶に会ってる場合か」批判も 葛藤深まるミャンマーのお坊さん****
国軍がクーデターで権力を握り、多くの市民が犠牲になっているミャンマーで、僧侶たちの存在が市民の心のよりどころになっている。国民の約9割を占める仏教徒にとって、尊敬の対象である僧侶との触れ合いは「心の平和」を取り戻す数少ない機会だ。

ただ、国軍と武力闘争を続けている一部の市民からは、信仰に頼る姿勢に批判の声も上がっている。

■戻ってきた「日常」の風景
日の出前の午前5時。最大都市ヤンゴンの通りを約60人の僧侶がひたひたと裸足で歩く。手には金属製の器「鉄鉢」を抱えている。僧侶の到着を知らせる鐘の音が鳴ると、住民が一人、また一人と現れ、皿に盛った野菜や米を鉄鉢によそった。托鉢(たくはつ)の僧侶に食事をお裾分けする場面だ。
 
2月1日に起きたクーデターの直後は、市民のデモを国軍が武力で抑えつけた。一時はヤンゴンの通りから人影が消えたが、10月下旬ごろから徐々に人出が戻り、托鉢が再開した。
 
カレーを振る舞った会社員の男性(57)は「クーデター後に貧困が広がり、食事を振る舞う住民の数は減った。私も生活は苦しいが、10年続けてきた習慣を再開できて、穏やかな気分だ」と笑顔を見せた。
 
ヤンゴンの僧院では200人以上の市民が袈裟(けさ)や食事の寄付に訪れていた。僧侶への寄付は功徳を積むための善行と信じられている。
 
この僧院の僧侶ワジラ師によると、クーデター後の景気の悪化で寄付金は減ったが、「クーデター後、怒りや不安を抱えた多くの人が、できる範囲の寄付を持ち寄っている」と語る。
 
デモに参加して拘束された僧侶も少なくない。ワジラ師の僧院はデモの参加を禁じたが、社会の混乱を目の当たりにし、僧院を出て森の中で瞑想(めいそう)を始めた若い僧侶もいるという。

市民癒やすため? 現れた老僧に群がる人々
北西部ザガイン管区では、めったに公に姿を見せない著名な僧侶マハボディミャイン師(80)が、クーデター後に連日托鉢に現れ、話題になっている。この僧侶は森の中で数十年瞑想したと言われ、国内で知らない人はいない存在だ。多くを語らず、取材に応じないため、真意は明らかではないが、ネットでは傷ついた市民を癒やすためとの解釈が広まった。その姿を一目見ようと、連日数千人が僧院を訪れている。
 
約800キロ離れたヤンゴンからバスに揺られてやってくる人も。数十分ほどの托鉢の姿を見るため、舗装のない森の一本道は砂ぼこりをあげて走る車で混雑している。
 
批判も起きた。ザガインでは若者が武器を手に国軍と戦い、大勢が犠牲になった。そのザガインに見物客が集まる事態に、SNS上では「クーデターが起きたのに僧侶に会いに行っている場合か」「国軍との戦いに集中すべきだ」などの投稿が拡散した。
 
批判は僧侶にも向くことがある。ミンアウンフライン国軍最高司令官は、クーデターでアウンサンスーチー氏を拘束した翌日、スーチー氏と関係の深いゼーゴウン僧院のカウィサラ師と面会した。スーチー氏の状況などについて説明したとされるが、面会は国軍の統治を認める行為とみなされ、SNSで非難が集中した。6月、乗っていた国軍機が墜落し、カウィサラ師は亡くなった。
 
国軍の武力弾圧による犠牲は、社会の分断ももたらした。国軍と徹底抗戦する道を選んだ人もいれば、日常生活に戻ることを選んだ人もいる。「国軍寄り」とみなされた市民が殺害される事案も相次いでいる。
 
僧侶たちの胸の内は複雑だ。北東部シャン州の僧侶(36)は、もともとスーチー氏を支持していたが、今は迷っているという。「政治努力でクーデターを防いでいたら、市民が死ぬことも武器を手に戦うこともなかったかもしれない。僧侶は政治と距離を置くべきだが、政治について日々思い悩まずにいられない」【12月19日 朝日】
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【権力にすり寄る動きも】
国軍側が住民統治の一環として強い影響力を持つ宗教界に接近するのは当然のことでしょう。宗教界の側がその誘いにどのように対応するのか・・・。

信徒の安全を考えれば無碍には断れない・・・という側面もあるのでしょうが、ただ、無批判な権力へのすり寄りとも見えるような行為には批判も。

****ミャンマーのカトリック枢機卿に批判 国軍総司令官とクリスマス祝う****
ミャンマーで、カトリック教会のチャールズ・ボ枢機卿がミン・アウン・フライン国軍総司令官と共にクリスマスケーキを切っている写真などが公開され、24日にはボ氏に対する怒りの声が広がった。総司令官は国軍に対する抗議デモや衝突の弾圧を指揮し、キリスト教徒が多い地域でも多数の死者が出ている。
 
国営英字紙「ミャンマーの新しい灯」によると、ボ氏は23日にミン・アウン・フライン氏と面会。両氏はクリスマスキャロルに耳を傾け、「平和と繁栄に関する事柄について話し合った」という。
 
2015年にフランシスコ教皇によって枢機卿に任命されたボ氏は、自身のツイッターアカウントに、笑顔の両氏が一緒にナイフを持ち、クリスマスケーキを切る写真を投稿した。
 
国営メディアも、両氏がクリスマスツリーの前に並んで座る様子や、ミン・アウン・フライン氏が2000万チャット(約130万円)の寄付をボ氏に手渡す様子を捉えた写真を公開した。
 
2月の軍事クーデターで、国家顧問だったアウン・サン・スー・チー氏が拘束されて以来、ミャンマーは混乱の中にある。現地の監視団体によると、抗議デモの弾圧により1300人以上が死亡している。
 各
地で国軍と戦うための武装集団が結成され、キリスト教徒が多い地域で起きた戦闘でも多数の死者が出ている。 【12月24日 AFP】
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権力掌握が続けば、その権力になびく動き、現実支配体制への接近で実益を得ようとする動きも出てきます。

****ミャンマー国軍トップと会談=影響力維持狙いか―インド高官****
インドのシュリングラ外務次官が22、23の両日、隣国ミャンマーを訪れ、クーデターで権力を握った国軍のミンアウンフライン総司令官と会談した。市民弾圧が国際的な批判を浴び、孤立を深める国軍と関係を維持することで、影響力を保つ狙いとみられる。
 
インド外務省によると、シュリングラ次官は民主体制への早期復帰や政治犯の解放を呼び掛けた。また、インド製の新型コロナウイルスワクチン100万回分を供与したほか、食料支援を表明した。次官は拘束されたアウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)の関係者とも会談した。【12月24日 時事】
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“民主体制への早期復帰や政治犯の解放を呼び掛けた”とは言っても、現時点で司令官と会談すること自体が、国軍支配を正当化し、“民主体制への早期復帰や政治犯の解放”を遠のかせることにもなります。

【「23年8月」にやり直し総選挙 おそらく「香港型」】
今後については、国軍のミンアウンフライン総司令官は23日、最大都市ヤンゴンで演説し、総選挙を2023年8月に行う考えを明らかにし

****ミャンマー選挙は「23年8月」、国軍トップ言及 スーチー氏排除か****
ミャンマー国営紙は24日、ミンアウンフライン国軍最高司令官が2023年8月に総選挙を実施すると述べたと報じた。今年2月にクーデターを起こし、実権を握った国軍はこれまで、23年8月までに総選挙を実施するとしていたが、具体的な実施時期は明言していなかった。
 
国営紙によると、ミンアウンフライン氏は最大都市ヤンゴンで23日、国軍幹部らを前に演説し、「23年8月に複数政党による民主的な総選挙を実施するよう、できる限りの努力をしている」と述べた。ただ、「国の平和と安定に応じて」実施するとの条件もつけており、治安の悪化などを理由に先延ばしする可能性もある。
 
ミャンマーでは、アウンサンスーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)が20年11月の総選挙で圧勝したものの、国軍は不正があったと主張してクーデターを決行。国軍は将来的に総選挙をやり直すとしていた。
 
ただ、国軍は次の総選挙にスーチー氏らNLD幹部を参加させない方針とみられる。スーチー氏は10件以上の罪で訴追され、一部の罪について今月6日、禁錮刑の有罪判決を言い渡された。裁判は続いており、最近は囚人服姿を着て出廷するようになった。国軍報道官によると、スーチー氏は刑務所には送られず、軟禁生活が続いているという。
 
国軍統制下の選挙管理委員会は5月、NLDを解党する方針も表明。国軍系の政党が議席を得やすくするため、現在の小選挙区制から比例代表制への選挙制度の変更も進めている。【12月24日 朝日】
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“総選挙”とは言いつつも、要するに「香港型」の管理された選挙、結果のわかった選挙、批判勢力は排除された“儀式・パフォーマンス”としての見せかけの選挙でしょう。

もちろん、スー・チー氏の勢力は排除されますし、香港のように、国軍支配体制への忠誠が立候補資格になるのかも。
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ミャンマー  秘密裏に進むスー・チー氏裁判 西部チン州攻撃でロヒンギャ虐殺の再現の恐れも

2021-11-06 23:23:12 | ミャンマー
(【10月31日 共同】 160戸が焼失したとされる西部チン州タンタラン郡区)

【経済悪化、通貨価値急落 国軍司令官、国民に燃料油や食用油の節約を訴える】
私がミャンマーを始めて旅行したのが2002年、約20年前ですが、首都ヤンゴンに着いて2日目の夜に、ローカルな店で一人夕食を。

メニュー(確か一応英語記載がありました)を見てもよくわからず、「入った以上、何か頼まないと・・・」と迷いに迷ったあげく、魚カレーみたいな説明があった料理を頼みました。
そして出てきた料理は油の海に魚の切り身が浮かんだようなもの。その油に圧倒され思わず唸ってしまいました。

ミャンマー料理は油を多く使うという話は聞いていましたが、これほどとは・・・小さなカルチャーショックでした。
その後、何回かミャンマーへは行きましたが、ミャンマー料理と聞いて思い出すのはこの油の海です。

****「私も好きだ」けど、食用油は節約して ミャンマー国軍トップが演説****
クーデターで権力を握ったミャンマー国軍のミンアウンフライン最高司令官が1日夜にテレビ演説し、国民に燃料油や食用油の節約を訴えた。普段の演説で繰り返す民主派勢力への非難は影を潜め、消費を抑えるよう強調した。

クーデター後に経済は悪化しており、立て直しのために燃料油など輸入を減らす必要に迫られているようだ。
 
ミンアウンフライン氏は1日、軍服ではなく白の民俗衣装で登場した。冒頭で新型コロナウイルス対策の成果を強調した後、「できるだけ燃料油の節約をお願いしたい」と切り出した。燃料油と食用油の輸入が年間約30億ドル(約3400億円)に達するとし、「バスや鉄道での旅行を奨励したい」と公共交通機関の利用を求めた。
 
節約を求める対象は国民の食卓にも及んだ。発酵させた茶葉のサラダ「ラペットゥ」など、油をたっぷり使うミャンマー料理を複数挙げ、「私自身も好きだ」と述べた上で、「食用油の消費をできるだけ少なくすれば輸入を減らせる」と訴えた。
 
演説で、国軍に反発する市民や民主派を「テロリスト」などと糾弾することはなかった。終始穏やかな口調で、演説終盤には米を多く食べるミャンマーの「食生活の変化を促したい」と言及。「米を少し減らす必要がある。必要に応じて肉、魚、野菜を食べると健康につながる」と呼びかけ、食事を変えれば公衆衛生も向上するとした。
 
世界銀行は7月、ミャンマーの2020年10月~21年9月の国内総生産(GDP)は前年から18%減り、100万人が失業すると見込んだ。クーデター後の混乱で通貨チャットが急落し物価が高騰。演説は、景気の悪化に苦しむ国民に理解を求める目的もあったとみられるが、国民の反応は冷ややかだ。
 
ヤンゴンで雑貨屋を営む女性(37)は「演説は市民の厳しい生活に言及しておらず、解決策も示していない」と一蹴した。SNSには「その日の食事に困っている人も多いのに、どうやって肉や魚を食べろというのか」などのコメントも相次いだ。【11月2日 朝日】
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健康のために油は控えた方がいいとは思いますが、もちろんミンアウンフライン最高司令官の狙いは国民健康ではなく、財政危機への対処でしょう。

もともとミャンマーの経済水準は東南アジア諸国の中でも底辺に近いものでしたが、クーデター後の経済混乱で、そこから更に18%減少するということですから、市民生活の苦境は想像できます。まさに「その日の食事に困っている人も多いのに、どうやって肉や魚を食べろというのか」といった状況でしょう。

【外部への情報を遮断した状態で進められるスー・チー氏の裁判】
冒頭に書いた最初のミャンマー観光が2002年4月27日から5月7日でしたが、今確認したところ、当時自宅軟禁状態にあったスー・チー氏がいったん解放されたのが5月6日だったようです。

以来、スー・チー氏は自宅軟禁を繰り返し、ついに政権の座にもつきましたが、今また国軍によって拘束されているのは周知のところ。

****スー・チーさん軍政下で初めて証言台に、国際社会は手出しできず****
謂れのない複数の容疑をかけられ、軍政の影響下にあるミャンマーの特別法廷に立たされているアウン・サン・スー・チーさんが、10月26日に初めて証言台で発言した。
 
当局はスー・チーさんの弁護団に公判の内容に関してメディアなどへの対外発信を禁止していることから、スー・チーさんの証言内容についても一切伝えられていなかったが、27日になって一部メディアが関係者から匿名で得た情報として「スー・チーさんは容疑に関して無罪を主張した」と初めてその発言内容を伝えた。

箝口令が出される中で漏れてきた証言内容
米政府系ラジオ局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」は27日、前日の26日に特別法廷で「国民を扇動して社会不安を煽った」という刑法505条違反の容疑に問われているスー・チーさんが初めて証言台に立ったことを伝え、スー・チーさんは「無罪を主張した」と伝えた。
 
それよりも早くスー・チーさんが初めて証言したことを伝えたAFP通信などは「証言内容は不明」とし、その理由として弁護団に箝口令が出されているためと説明していた。RFAの報道はそこからさらに一歩踏み込んだ内容だった。
 
スー・チーさんは、各国大使館に書簡を送り「軍事政権を支持しないように要請した」ことから扇動罪に問われているウィン・ミン大統領とともに、これまでの公判で弁護団が「無罪」を主張していたが、スー・チーさん自身が証言台で発言したのは今回が初めてだ。そしてその証言内容も、弁護団のこれまでの主張に沿ったものとなったことがRFAの報道で確認されたことになる。

違法な箝口令の背景
スー・チーさんの弁護に当たる弁護団は、キン・マウン・ゾー弁護士、ミン・ミン・ソー弁護士、キー・ウィン弁護士、サン・マルラ・ニョン弁護士らで構成されている。この弁護団を率いるキン・マウン・ゾー弁護士は、10月13日に地元行政当局から、刑法144条の「公共の安全を脅かす行為」に当たる可能性があるとしてメディアに公判の内容を「口外することを禁止する」との措置を言い渡されているほか、外国メディアとのオンラインでのインタビューも禁止されたと明らかにしていた。
 
またニョン弁護士も8月にヤンゴンの地元行政事務所に呼び出されて「国家機密法違反の容疑がかかる」として、「いかなる対外組織とも接触しない」との誓約書に署名を強要されたことを明らかにしている。
 
弁護団はこうした措置は「弁護士は公判の模様を対外発信する必要が認められており、箝口令は違法であり公平性を欠く」として裁判所に抗議するとともに、箝口令の撤廃を求めている。だが、今も事態は改善されていない。
 
軍政のゾー・ミン・トゥン国軍報道官は「(スー・チーさんの)弁護団の発言や声明は大げさに強調されたり、誤解に基づく内容のものが多く含まれたりして国の安定に寄与しない」としたうえで「我々には地裁レベルでも公判の内容を必要に応じて対外発信するチームがありそこが適切に対応することになる」と述べてスー・チーさん弁護団に対する措置を正当化している。

軍政が箝口令による情報統制に踏み切った背景には、2月1日のクーデター当日にウィン・ミン大統領が拘束される際に「体調不良を理由に退陣を表明するよう脅迫されたがこれを拒否したために拘束された」というなまなましい発言内容が12日に弁護団からメディアに明らかにされたことが影響していると見られている。
 
そうでなくてもこれまで折に触れてスー・チーさんの様子や健康状態、短いコメントなどが弁護団から明らかにされ、それがメディアやSNSから国民に伝わり、反軍政運動に「勇気や共感、弾みをつけている」ことがあり、これに苦々しい思いを軍政が抱いていたことも箝口令を敷くに至った一因とされている。

軍政が企むスー・チーさんの影響力排除
スー・チーさんには今回無罪を主張した「扇動罪」以外にも不法に通信機器を所持していた「通信法違反」、無線機を違法に海外から輸入した「輸出入法違反」、十分なコロナ感染拡大防止対策を怠ったとする「自然災害管理法違反」、支援者から現金や金塊を受け取ったという「汚職防止法違反」など複数の容疑がかけられており、仮にそれぞれの裁判で有罪が確定すれば刑期の合計は最高で禁固75年になると言われている。
 
軍政は民主政権の指導者で民主化のシンボルとしても国民の人気が根強いスー・チーさんを「裁判の被告人」として扱い、最終的に「長期の禁固刑」とすることで社会的、政治的な「影響力を奪い去ろう」と画策しているのは間違いない。

公判日程変更も却下
(中略)軍政が立法、行政、司法の3権を実質的に支配しているミャンマーの現状では裁判所、裁判官、検察官に「中立性や公平性」を求めるのは実質的に困難とされ、スー・チーさんの裁判でも今後の展開に関わらず、禁固刑の有罪判決が予想される状況となっている。

スー・チーさん側が証人申請を一切しない理由
(中略)こうした裁判の進め方についてスー・チーさんの弁護団は公判では弁護側の証人を一切申請しない方針を固めているという。

これはスー・チーさん自身の強い意向とされ、その理由として①裁判の中立、公正が期待できないこと、②証人によるスー・チーさんに有利となる証言が出てもその内容に関わらず有罪判決となるシナリオができている可能性が高いこと、③スー・チーさんに有利な証言を法廷でした証人へその後に治安当局による監視や脅迫、暴行、収監などの危険が及ぶ可能性が否定できないことなどが挙げられているという。(中略)

10月26日から28日にかけてオンラインで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会議ではミャンマーが欠席する中、ASEAN特使によるスー・チーさんを含めた「全ての関係者との面会、話し合い」の実現を求める意見が続出し、採択された「議長声明」にもその旨が盛り込まれた。
 
しかし軍政は「裁判の公判中である被告との面会を認める国などはない。ASEAN特使のミャンマー訪問は歓迎するが、法の規定もありできないことはできない」との強い姿勢を崩しておらず、ASEANによるミャンマー問題への仲介・調停工作は膠着状態に陥っているのが現状だ。
 
そうした中で着々と進むスー・チーさんの公判に対して国際社会、地域の連合体であるASEAN、ASEAN特使そしてスー・チーさんの弁護団ですら「実質何もできない」状態が続いているのだ。【11月3日 大塚 智彦氏 JBpress】
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【ASEAN 国軍への圧力継続】
こうしたスー・チー氏との面会を拒否し、反政府勢力との妥協も拒んでいる国軍側の姿勢に、特使派遣を求めるASEANは圧力を継続することを表明しています。

****ASEAN次期議長国カンボジア、ミャンマー軍への圧力継続表明****
カンボジアのソコン外相は28日、2022年に東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国に就任した際には、ミャンマーの軍事政権に対して反対勢力との対話を促すとの方針を表明した。ロイターに述べた。

ソコン外相は、ミャンマーは「内戦の危機に瀕している」と警告した上で、ASEAN議長国就任時に新たなミャンマー特使を任命すると述べた。現在のミャンマー特使は、ASEANの現議長国であるブルネイが指名したエルワン・ユソフ氏が務めている。

ソコン外相はロイターに「われわれは皆、加盟国の内政に干渉しないという原則を尊重しているが、ミャンマーの状況は引き続き深刻な懸念の対象となっている」と強調。「地域全体、ASEANの信頼性、そしてミャンマーの人々にマイナスの影響を及ぼしている」とした。

ASEANは今週、首脳会議など一連の会合を開催したが、2月のクーデターを主導したミャンマー国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官の参加を認めなかった。

ソコン外相は、総司令官の排除を支持するとしつつも、排除継続について話すのは「現時点では」不適切とも指摘。「状況が変わるかもしれない。ミャンマー次第だ」などと語った。【10月29日 ロイター】
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これまで同様に圧力継続ということですが、周知のようにカンボジアはASEAN内にあっては中国の代理人的立場で、民主化や人権を重視する国とは一線を画しています。そのカンボジアが議長国ということで、国軍に対する融和的な姿勢が出てくるのでは・・・・とも、個人的には危惧しています。

もっとも、“(ミャンマー国軍が)首脳会議を欠席して抗議の意を示した。これに対し、「内政不干渉」「全会一致」を原則とするASEANとしては「(加盟国10カ国のうち)マイナス1の状況にあるがこれはASEANのせいではなくミャンマーのせいだ」(ASEAN首脳会議に出席したカンボジアのフン・セン首相)とミャンマー側を批判する会議となった。”【11月5日 大塚 智彦氏 JBpress】とのことですので、カンボジアのフン・セン首相も国軍対応を快く思っていないようです。

【西部チン州への国軍の攻撃 ロヒンギャ虐殺の再現の恐れも】
「内戦の危機に瀕している」というミャンマーでは、西部チン州への国軍の攻撃が報じられています。

****ミャンマー西部、数十軒の建物が炎上 国軍が反政権派を非難****
ミャンマーの軍事政権は30日、子どもの権利保護団体「セーブ・ザ・チルドレン」の事務所がある西部チン州のタントランで民家などを破壊したとして、反政権派の戦闘員らを非難した。タントラン周辺では国軍と反政権派の衝突が拡大している。
 
現地メディアと目撃者によれば、タントランでは29日、国軍が現地の防衛部隊と衝突後、砲撃を行った。
 
住民によると、人口7500人余りのタントランの街中で火の手が上がり、セーブ・ザ・チルドレンの事務所を含む数十の民家や建物が燃えた。
 
セーブ・ザ・チルドレンは29日に声明を発表し、砲撃発生時はほとんど人けがなく、これまでの衝突を受けてスタッフはすでに避難していたと説明した。
 
また、現在もタントランにいるとみている20人の子どもの安否を懸念しているとし、今回の衝突は「ミャンマーで危機が深刻化している」兆候だとの見解を示した。 【10月31日 AFP】AFPBB News
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****ミャンマー西部チン州で軍が攻勢 衝突激化、民家100軒超が炎上****
(中略)チン州では5月にも南部のミンダッ地方で軍による軍事作戦が行われ、このときは大規模な砲撃を市街地に加えたうえ、居住地区に通じる水道を遮断して市民生活に打撃を与える手法がとられた。

また、戦闘で拘束した住民に目隠しをした上でロープでつないで並ばせ、戦闘の最前線に配置したり、進撃する兵士らの前方を歩かせて「弾除け」とする「人間の盾」という卑劣な手段も報告されている。

このため今回軍による攻勢が報告されたタントラン郡区でも今後こうした軍による作戦が拡大するに従って、国連が指摘したような大規模な人権侵害が起きる懸念も高まっている。【10月31日 大塚智彦氏 Newsweek】
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仏教国ミャンマーにあって、チン州(ロヒンギャ虐殺の起きたラカイン州の北隣)はキリスト教徒が9割を占めており、ラカイン州のイスラム教徒少数民族ロヒンギャへの「民族浄化」の再現も懸念されます。

****ミャンマー軍、キリスト教徒が多いチン州で砲撃・放火の傍若無人****
ミャンマー情勢が風雲急を告げている。インド国境に位置する西部チン州で10月29日から軍が軍事作戦を開始、武装市民組織「国民防衛隊(PDF)」や少数民族武装勢力に対して銃撃や砲撃を加え、さらに兵士による民家放火などが伝えられ、米政府がミャンマー国軍を非難する事態となっている。(中略)

教会炎上、孤児院が取り残され孤立
反軍政のメディア「ミャンマー・ナウ」や「イラワディ」、「ミッズィマ」、「キッティッ・メディア」などが相次いで伝えたところによると、10月29日午前10時ごろ、無人状態となっていた西部チン州タンタラン郡区で商店に侵入して略奪をしようとした兵士に対して、地元少数民族武装勢力である「チンランド防衛隊(CDF)」が発砲して殺害、これに軍側が大規模な報復を始めた。
 
その中で軍は銃撃に加えて砲撃を開始、同時に民家への放火を始めたという。同日午後8時頃にはタンタラン郡区の複数の場所から火炎が上がっていることが確認され、その数は100戸以上、一部報道では160戸以上とされている。
 
大半の民家では住民がすでに郊外に避難していたものの、チン人権機関(CHRO)は町の中にある孤児院には子供約20人と教師が取り残された状態で安否が気遣われていると指摘している。
 
メディアによるとタンタラン郡区にあるキリスト教プロテスタントの「長老教会」の複数の教会も砲撃を受けて炎上、焼け落ちたという。全人口の9割が仏教徒というミャンマーにおいて、チン州は逆に人口の9割がキリスト教徒という地域。そうした背景もあり、長年、軍から迫害を受けている。

NGO事務所放火、インドへの避難も
(中略)軍がチン州に増派されているとの情報が流れた10月22日以降、タンタラン郡区の住民約1万人の大半は郊外への避難を始めていたため、29日の軍による攻勢で住民の犠牲者はまだ報告されていない。
 
ただし、避難した住民の中には、国境を越えて隣国インドのミゾラム州に逃れるケースも増えているという。
 
タンタラン地区の放火や破壊行為についてゾー・ミン・トゥン国軍報道官は地元メディアに対して、「放火したのは軍ではなく武装市民(PDF)であり、我々は放火や破壊を止めようとしたがPDFが攻撃してきて妨害したためにできなかった」として一連の報道を否定、武装市民らを批判している。(後略)【11月5日 大塚 智彦氏 JBpress】
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放火や破壊行為は反政府武装勢力によるものだ・・・という国軍主張は、ラカイン州ロヒンギャ虐殺でも繰り返されているものです。

ミンアウンフライン最高司令官も「肉、魚、野菜を食べると健康につながる」なんてことではなく、治安も経済も悪化するばかりの今の混乱を収束させるため、クーデターの失敗を認め、すみやかに民政に復帰してもらいたいところですが・・・・。

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ミャンマー  進展しないASEANによる仲介 続く経済混乱 “寝返り”兵士・警官も

2021-10-05 23:25:10 | ミャンマー
(軍政の指導者ミン・アウン・ウライン総司令官の誕生日である7月3日、ミャンマーのマンダレーで、クーデターに反対する人々が抗議の意を示す旗と三本指を掲げてデモ活動を行った【10月3日 JBpress】)

【ASEAN特使受入れを拒む軍政 ASEAN内部には苛立ちも】
前政権と国軍側の2名の国連大使が並存しているミャンマーですが、国連総会の一般討論演説については、演説を控える代わりに民主派の国連大使の地位を保つという米国と中国の合意がなされたことで、前政権によって任命されたチョー・モー・トゥン国連大使は演説を見送りました。

同大使はその「合意」を認めたうえで、来年9月まで1年間続く会期中には「ミャンマーの人たちのために発言する機会は多くあるだろう」との認識を示していましたが【9月28日 産経より】、国連総会の委員会で発言することになったようです。

****軍統治反対のミャンマー国連大使 国際社会へ支援訴えることに****
ミャンマーで、軍による弾圧によって市民に多数の犠牲が出る中、軍の統治に一貫して反対してきたチョー・モー・トゥン国連大使が近く、国連総会の委員会で発言し、軍の統治を認めず抵抗する市民を支援するよう国際社会に訴えることにしています。

ミャンマーでは、軍による市民への弾圧が続いていて、現地の人権団体によりますと、ことし2月のクーデター以降4日までに、1158人の市民が犠牲になりました。

さらに先月、民主派勢力が発足させた「国民統一政府」が市民に自衛のための戦闘を呼びかけたことから、軍と市民との間で武力衝突も相次ぎ、双方に多数の死傷者が出る事態となっています。

こうした中、ニューヨークの国連本部では、前の政権に任命され軍の統治に一貫して反対してきたチョー・モー・トゥン国連大使が近く、国連総会の委員会で発言することになりました。

軍は、すでに別の国連大使を任命したとしていますが、現時点で各国の代表権を決める国連の信任状委員会の結論が出ていないことから、チョー・モー・トゥン大使が引き続きミャンマーの代表とされています。

チョー・モー・トゥン大使をめぐっては、先に暗殺計画が発覚し、アメリカの警察などが捜査する事態となっていますが、大使は改めて国際社会に対し、軍の統治を認めず抵抗する市民を支援するよう訴えることにしています。【10月5日 NHK】
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一方、ASEANの外相会議には国軍側の外相が出席していますが、ASEANの特使決定から約2カ月がたつにもかかわらず、国軍側は依然として受入れを拒否しています。

事態の仲介を目的とした特使である以上、ASEAN側は国軍だけでなく民主派との接触(具体的には、アウン・サン・スー・チー氏との面会)を求めており、そのことに国軍側が難色を示しているようです。

なお、特使には、8月4日の外相会議で、議長国ブルネイのエルワン第2外相が任命されています。

****ASEAN外相会議、ミャンマーの和平に向けた取り組みに失望の声****
 東南アジア諸国連合(ASEAN)は4日、外相会議を開いた。

軍政下にあるミャンマーが合意した和平計画の履行を巡り、各国の外相から懸念の声が上がった。今月下旬に開くASEAN首脳会議に国軍トップが出席することを懸念する声も出た。

インドネシアのルトノ外相は、会議後の会見で「大きな進展がみられない。国軍は特使による試みに前向きな反応を示していない」と述べ「大半の国が失望を表明した」と述べた。

シンガポールのバラクリシュナン外相は、特使がミャンマーで直面した課題についてASEAN加盟国に説明したと述べ、ミャンマー国軍の最高意思決定機関である国家統治評議会(SAC)に対し協力するよう訴えたと説明した。

マレーシアのサイフディン外相はツイッターに、進展がなければ、今月下旬のASEAN首脳会合に国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官が参加することが難しくなると投稿した。

ASEAN首脳会議にミン・アウン・フライン氏の参加を認めないべきだとする提案がなされたどうかは不明。【10月5日 ロイター】
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ただ、ASEAN内部も、ミャンマー同様に軍事クーデターで実権を掌握したタイ政権、軍政が頼りとする中国に極めて近いカンボジアやラオス、国内人権問題への干渉を嫌うベトナムのように、ミャンマー軍政に融和的な国もあって、ミャンマー軍政への対応には温度差があるのが実態。

国軍側がスー・チー氏とASEAN特使の面会を認めるとは考えにくいなかで、特使派遣を含む暴力の即時停止、人道支援の提供など「五つの合意」(ミャンマー国軍のミンアウンフライン最高司令官も交えて4月24日に開かれたASEAN首脳会議で合意)は形骸化し、ASEANの存在意義も薄れていきます。

2003年から5年にわたりASEAN事務局長を務めたシンガポールのオン・ケンヨン氏は5月の講演で、国軍が特使受け入れに反対する場合には強い対応を取るべきだと主張。「ASEANには資格停止や追放の規定がないと言われるが、やりようはある」とも述べていますが【6月1日 朝日より】、なかなかそうした毅然とした対応がとれないところがASEANのASEANたる所以でしょうか。

マレーシア外相が今後開催予定のASEAN首脳会議からミャンマー軍政代表を排除する可能性に言及したのも、そうしたASEANの現状への焦りが現れているともとれます。

*****マレーシア、ASEANからのミャンマー排除を提案 解決の道筋見いだせぬ加盟国****
(中略)今回のマレーシア外相の「ミャンマー首脳の排除の可能性への言及」はこうしたASEAN内の焦りや手詰まり感を反映したものといえるが、どこまで実現の可能性があるかは極めて不透明だ。

そうしたASEAN内の今後の対応を見極めたうえでミャンマー軍政もASEAN特使への対応を明確にするものとみられている。

ASEANは内部の各国による綱引きと同時にしたたかなミャンマー軍政との駆け引きも求められるという難しい立場に追い込まれ、域内連合体としてミャンマー問題の解決に向けた調停、介入は依然として先の見えない状況にあるといえるだろう。【10月5日 大塚 智彦氏 Newsweek】
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【軍政の為替管理奏功せず、通貨チャットは暴落を続ける】
ミャンマー国内での国軍統治は、うまくいっていません。
経済活動の根幹となる為替管理も混乱。

****ミャンマー国軍、為替相場の管理策を撤回 二重相場で混乱、通貨急落****
クーデターで国軍が権力を握ったミャンマーで、国軍の統制下にあるミャンマー中央銀行が為替相場の管理強化策を撤回した。クーデター後の混乱で起きた通貨チャットの急落への対応だったが、実勢レートとの二重相場が生じ、かえって混乱が深まっていた。
 
中銀は9月10日、8月上旬に出していた管理変動相場制への移行の指示を「撤回する」とホームページ上で発表した。国軍の報道官は、現在の為替は「市場レートを反映している」と述べ、変動相場制に戻したことを認めた。
 
管理変動相場制を採用していた間、中銀は1ドルを1600チャット台半ばから1730チャット台に定め、この値から上下0・8%の範囲内で取引するよう命じていた。

だが、自国通貨への信用は高まらず、ドルを手元に置く市民が増加。両替商は実勢レートとの二重相場で商売を続け、現地メディアによると、実勢レートは史上最安値の1ドル=2020チャットにまで下落した。
 
現地の金融関係者は「管理変動相場制に移行してもドル不足が解消されず、二重相場も進んだため撤回したのだろう」とみる。
 
ミャンマーは2011年の民政移管後に、固定相場制から管理変動相場制に移行。16年から政権を担ったアウンサンスーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)政権が実質的な変動相場制を採用し、長く続いた二重相場は解消に向かっていた。
 
だが、今年2月のクーデターを機に、それまで1ドル=1300チャット台で推移していたチャットは急落。国軍は何とか相場を安定させようと、8月から管理変動相場制を復活させていた。【9月17日 朝日】
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上記の管理強化策撤回後も混乱は拡大しているようです。

****チャット暴落、1ドル=2500超え*****
ミャンマーの通貨チャットが暴落を続けている。市中の両替商の米ドルの販売レートは28日午後までに1米ドル=2,500チャット台に突入したもようだ。前日比で約3割の下落となる。同日のミャンマー中央銀行の参考レートは1米ドル=1,755チャットで、乖離(かいり)が一段と進んだ。

最大都市ヤンゴンの両替商では28日午前中から、1米ドル=2,200チャット台をつけ、その後も下がり続けた。独立系放送局「ビルマ民主の声(DVB)」英語版のツイッターへの投稿によれば、28日午後2時時点のレートは同2,500チャット台に達した。闇市場では2,700チャットにまで下落したとの情報もある。(中略)

中銀は規制撤廃後も断続的にドル売り介入を続けているが、ここにきてチャット安に歯止めが効かない状況に陥っている。【9月29日 NNA】
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【「兵士や警官の寝返り増加」とのことだが・・・】
国内治安も、軍政に対抗するために民主派が組織した「国家統一政府(NUG)」が9月7日、国民に対して武装抵抗による「一斉蜂起」を呼びかけたことで、不安定感を増しています。

そうした状況で、民主派に“寝返る”兵士や警官も増加しているとも。

****「市民に銃口向けられない」ミャンマーで兵士や警官の寝返り増加****
混迷が続くミャンマーで、軍政による実弾発砲を伴う弾圧方針に疑問を抱いた兵士や警察官が、軍や警察を離脱する事例が増えているという。そればかりか、中には民主勢力側に寝返って軍と戦うことを選択するケースもあるようだ。
 
報道によると9月27日までの過去2週間で兵士、警察官約450人が民主政権側の武装組織に寝返るか、寝返る意向を示して機会をうかがっていることが分かった。
 
こうした事態に対して軍政側も駐屯地や軍施設などからの外出を厳しく制限したり、外部からの訪問者に対する規制を強めたりするなどの対応策に出ており、軍内部でも焦燥感と危機感が高まっているようだ。

■ 呼び掛けに応じる形で軍や警察を「離脱」  
軍政に対抗するために民主派が組織した「国家統一政府(NUG)」は9月7日、国民に対して「全世界は軍が公営住宅、宗教施設、病院、学校を占拠し、人々を脅し、逮捕し、殺し、私有財産を略奪し、村を燃やすなど、非人道的な戦争犯罪を絶えず行っていることを知っている」として、武装抵抗による「一斉蜂起」を呼びかけた。  

その呼びかけの中にこんな一節もあった。  
「ミン・アウン・フライン国軍司令官に抑圧されてきた全ての兵士、警察官、公務員に警告する。出勤、活動を停止して、国軍司令官と軍政を攻撃せよ」  

つまり、兵士や警察官に対し、現在の職場・任務を放棄して、NUGによって組織された武装市民による「国民防衛隊(PDF)」への参加、つまり“寝返り”を呼びかけたのだった。
 
(中略)この数字と情報は、NUG関係者や警察などを離脱して軍政に抵抗するため「不服従運動(CDM)」に参加している治安組織のメンバーらが明らかにしたものとされ、今回の453人を合わせると、2月1日以降に軍・警察組織を離脱した兵士・警察官の合計は約3000人に上るという。  

この3000人の中には、「国民防衛隊(PDF)」や国境周辺地域の少数民族武装集団に合流し軍政と戦う道を選択した兵士・警察官の他に、隣国インドなどに脱出・避難したケース、さらに地下や地方に逃れて潜伏生活を送っているケースも多く含まれているとしている。  

またNUGなどによると、今回離脱が明らかになった453人の兵士や警察官のうち、約50人がすでにPDFに合流して、市民とともに銃をとって軍と対峙する前線に展開しているといい、残る約400人も軍部隊や警察組織から警戒監視の目を逃れて安全に離脱する機会を探っているという。

■ 広がる厭戦気運を軍も警戒  
このような兵士や警察官の「寝返り」情報に関しては、RFAの照会に対し軍政側がこれまでのところ無回答のために、その真偽・信ぴょう性は最終的には確認されるには至っていない。  

ただRFAによれば、事態を重く見た軍は最近、部隊の駐屯地や兵士が家族と居住する軍施設から兵士や家族の外出を厳しく制限するようになったとの匿名の軍関係者の証言を伝えている。こうしたことからも、報じられている数字はある程度実態を反映したものと見られている。
 
このRFAの報道によれば、兵士やその家族が外出許可証を入手できるのは病院への通院など健康上の理由だけで、その場合でも所持できるのはわずかの衣類だけで、日帰りが義務付けられるようになったという。  

また外部の人の訪問も厳しく制限され、商人の出入りも厳しくチェックされるようになり、兵舎での生活環境も息苦しいものに変化しているとしている。  

一方、民主派組織は、軍や警察を離脱した兵士・警察官に対して、必要であれば当座の資金を提供したり、場合によっては潜伏先、避難先を準備したりするなど手厚い保護を提供しているようだ。こうした保護によって、さらなる「寝返り」「厭戦気分拡大」を促す努力が続けられている。 

■ 治安部隊の死者増加も一因か  
9月7日のNUGによる国民への「一斉蜂起」「武装闘争開始」の呼び掛け以降、ミャンマー各地で軍施設の破壊や軍の車列への爆弾攻撃さらに、駐屯地などへの攻撃が激化しており、それに伴い兵士や警察官、さらに市民に紛れ込んだ「ダラン」と呼ばれる当局のスパイの死者も増えている。  

軍政側は兵士や警察官の正確な死者の統計を明らかにしていないが、「ダラン」はこれまでに100人以上が反軍政の市民らによって「国民の裏切り者」として殺害されているとの報告もある。(中略) 

こうした軍側の死者が増えていることも、兵士や警察官の間に「現在命令で実施している市民への弾圧が果たして正しい任務なのか」という疑問を生じさせる一因になり、それが軍や警察内部での離脱行動や厭戦気運に影響を与えている、との見方がNUGからは指摘されている。 

■ 武装化と組織化を急ぐ市民側  
9月27日、独立系メディアの「ミャンマー・ナウ」はNUGが軍と直接交戦している武装市民組織「PDF」からの訴えに応じる形で武器や装備の供給を急ぐ考えを示したと伝えた。  

前線での武器不足を早急に補うと同時に各都市で組織されているPDF相互の密接なネットワークの構築による組織化で情報交換や連携した作戦の実施、さらには各地の少数民族武装勢力とのさらなる協力関係強化で軍との対決姿勢をさらに強める方針を示した。  

こうした一連の動きにより、ミャンマー情勢はさらに混迷を深めることは確実で、今後さらに軍・警察と武装市民や少数民族武装勢力との戦闘が激しくなることは確実な情勢となっている。【10月3日 大塚 智彦氏 JBpress】
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武力に関する限り国軍側の優位は圧倒的であり、まともに渡り合って民主派側が事態を改善できる可能性は極めて小さいように、個人的には感じていますが、そうした状況を覆す唯一の道が、上記のような“寝返り”で国軍側の態勢が崩れることでしょう。

ただ、そこに至るまでには、453人云々はまだまだ“桁違いに”少なすぎるのが実態であり、「国家統一政府(NUG)」の呼びかけた「一斉蜂起」の実効性には懐疑的です。

もっとも、強権支配を強める国軍のもとで、他にどんな方法があるのか?と問われると答えに窮します。
冒頭ASEANの対応に見るように、国際社会をあてにすることもできませんし。

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ミャンマー  民主派反政府勢力にもワクチン支援で二股かける中国

2021-09-25 23:18:44 | ミャンマー
(ミャンマーの中国との国境の町ムセ(2020年5月12日撮影)【9月25日 AFP】 ミャンマーと国境を接する中国は、国境地帯の経済活動、少数民族との関係などで、「中国は国軍を支援」というほど単純ではないようです)

【「内戦」の状況 反政府勢力にとっては倫理的・軍事的問題も】
ミャンマーでは、軍政に対抗するためにクーデター後に民主化勢力が組織した「国家統一政府(NUG)」が9月7日、国民に向けて一斉蜂起を呼びかけ、軍に対して実質的な「宣戦布告」を行いました。

その後の状況に関する報道はあまり多くありませんが、「宣戦布告」当時の状況については、この地域に詳しい大塚智彦氏が下記のように報じています。「ヤンゴンの朝は爆弾で明ける」というのは、印象的なフレーズです。

****ミャンマー「内戦」激化…市民の死者1000人超、ついに統一政府が「蜂起」呼びかけ*****
国家統一政府が「宣戦布告」
2月1日に軍がアウン・サン・スー・チーさん率いる民主政権を武力で打倒したクーデターから7ヵ月目に入るが、この間、軍の強権的弾圧の犠牲となった市民はすでに1000人を超えている。 

一方、国境付近における少数民族武装勢力との衝突や市民の武装組織による爆弾攻撃、待ち伏せ攻撃などによる軍や警察、軍政支持者側の死者数も増加の一途を辿っている。  

軍政側が正確な数字を発表していなので具体的なデータはないものの、その数は9月までに相当数に上っているのは間違いないとの見方が有力だ。  

当初の思惑通りに市民の支持が得られないことに焦燥感を募らせているとも言われる軍政は、依然として反軍政のデモや集会、「不服従運動(CDM)」参加者などへの強権的な弾圧を続けており、各地で頻発する武装市民の抵抗に手を焼いている。  こ

うした中、軍政に対抗するためにクーデター後に民主化勢力が組織した「国家統一政府(NUG)」は9月7日、国民に向けて一斉蜂起を呼びかけ、軍に対して実質的な「宣戦布告」を行った。  

軍や警察は、中心都市ヤンゴンをはじめ各都市部で武装市民による爆弾や地雷、ロケットランチャーなどを駆使した攻撃にさらされ、また国境地帯では武装市民と連携した少数民族武装勢力との本格的な戦闘に直面しており、もはやミャンマーは実質的な「内戦」状態にあるといえる。

当局のスパイ170人が死亡か
ミャンマーの人権団体「政治犯支援協会(AAPP)」は、治安当局の実弾発砲を伴う弾圧で8月末までに犠牲となった市民は1001人に達したとして、すでに1000人を超えたことを明らかにした。  

これに対し軍政は6月15日に首都ネピドーで軍政の情報相幹部が会見の中で軍政支持政党である「連邦団結発展党(USDP)」関係者とその支持者170人が殺害されたことを明らかにしたのが、唯一の公式数字となっている。  

もっともこの170人は軍によって地区の管理者に任命され、住民の動向などを報告する当局のスパイ「ダラン(密告者)」であることを理由に殺されたケースであるとしている。このため軍兵士や警察官などの死者数に関しては正確なデータがない状況となっている。(中略)

各地で続く治安当局への武装抵抗
地元の反軍政メディア「イラワディ」や「ミッジマ」「キッティッ・メディア」などがインターネット上で伝えている個別の事案を追いかけてみることで軍や警察側の死傷者の実態の一部が浮かび上がってくる。  

大きな注目を集めたのが8月14日にヤンゴンの鉄道車内で警察官4人が射殺された事件だ。  同日午後5時過ぎ、ヤンゴン市街地のアロン郡区にあるホーンストリート駅付近を走る列車内で乗り合わせていた警察官6人が銃撃されうち4人がその場で射殺される事件が起きた。(中略)

8月23日、北西部サガイン地方のガングーからカレイに向かっていた軍の車列、トラック8台が地元PDFの待ち伏せ攻撃を受けて、兵士30人が死亡、15人が負傷した。(中略)

また8月25日午前11時ごろには中西部チン州ティータイン郡区にあるミャンマー経済銀行の支店がバイクで乗り付けた正体不明の男性らに襲撃され、銀行の警備員3人が射殺された。(中略)

9月3日午後11時45分ごろヤンゴン東部県北ダゴン・モーチット郡区の警察署に何者かによって爆弾が投げ込まれ、警察官1人が死亡したほか、翌4日午後1時ごろにはヤンゴン北部県インセイン郡区で約100戸の民家を管理する地区責任者が頭部などに4発の銃弾を受けて死亡した。この責任者は住民から「ダラン(密告者)」とみられていたという。

少数民族武装勢力との連携も増加
(中略)各都市部でのPDFによる武装抵抗と並行して国境周辺地帯では少数民族武装組織による、あるいは少数民族武装勢力とPDFの共同作戦による治安当局への攻撃も激化している。  

6月28日サガイン地方カタ郡区で軍の部隊と地元カチンPDFが交戦となり、兵士30人が死亡したという。その前の24日にも同地区で交戦があり、この時は兵士5人が死亡し19人を拘束したという。  

メディアによるとこの交戦には地元カチンPDFのメンバーに加えて少数民族武装勢力である「カチン独立軍(KIA)」も協力して攻撃に加わっており、共同作戦が展開されたという。  

8月15日午前7時15分ごろ、中東部シャン州ナムサンで軍部隊と少数民族武装勢力「南シャン州革命軍」が衝突し、兵士10人が死亡したと地元メディアが報じた。  

最近の事例としては8月28日シャン州モンコ地方で地元の少数民族武装勢力「ミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)」の山間部山頂付近にある拠点を軍が麓から攻撃しようとしたところ、激しい戦闘に発展し、兵士15人が死亡した。(中略)

このようにミャンマーの国境周辺では各少数民族武装勢力、あるいは武装市民組織の共同作戦で軍への攻勢を強めており、これまでに相当数の兵士が戦闘で死亡していることが見て取れる。その数は市民の側の犠牲者約1000人には及ばないものの、数百人規模上っているのは間違いものとみられている。  

このように兵士や警察官の死者が増えていることも軍政が詳細なデータを公表することを控えている一因とみられている。一部報道では軍や警察の中にも現在のような人権を無視した強権的弾圧方法に疑問を抱く者が出てきており、戦線離脱や職務放棄の事例も報告されているという。  

しかし士気や団結力の低下という悪影響を危惧する軍政によって、そうした実態は全く明らかにされていない。

ヤンゴンの朝は爆弾で明ける
ヤンゴンなどの都市部では爆弾の爆発事件が頻発している。8月30日にはヤンゴン市内8ヵ所で爆弾が爆発した。前日の29日は中部の都市マンダレーの4ヵ所で爆弾事件も起きている。いずれも人的被害などの詳細は明らかになっていないが、爆弾事件には武装市民組織であるPDFが関係した事案と同時に軍政側の組織による「やらせ」も含まれているという。  

30日のヤンゴン市内8ヵ所の爆発は、(中略)軍政を支援する市民組織「ピュー・ソー・ティー」による犯行との見方を地元メディアなどは伝えている。  

この「ピュー・ソー・ティー」は民間人の服装をした退役軍人や「ダラン(密告者)」、軍政支持の「USDP党」関係者などから成る武装組織で、2021年の5月頃から暗躍しているといわれている。  

ヤンゴンではこうした反軍政のPDF、軍政支持の「ピュー・ソー・ティー」双方による爆弾事案が増えていることから、最近では「ヤンゴンの朝は爆弾で明ける」とさえいわれているという。  

(中略)ヤンゴン市内では日中は経済活動や飲食店の営業も始まっているとはいえ、それはあくまで「嵐の前の静けさ」に過ぎず、街中にはあちこちに「ダラン(密告者)」や治安当局者の警戒監視の目が張り巡らされており、警戒を緩めることはできないという。  

一般市民が何気なくSNS上にアップした写真を情報源にして治安当局がPDFメンバーの拠点を特定して踏み込み、一斉摘発を行ったともいわれており、市民生活は表向きとは大いに異なり、緊張と警戒の中で過ごすことを強いられているのが実状だという。【9月9日 大塚 智彦氏(PanAsiaNews記者) 現代ビジネス】
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こうした民主化勢力の武闘方針に対し、倫理的な問題及び軍事的な実効性の面における現実的な問題の指摘もあります。

****ミャンマーに迫る内戦危機、民主派の武装蜂起は「墓穴を掘る」結果になる可能性*****
<国民統一政府が宣言した「自衛の戦争」は、国軍の圧倒的な反撃と国土の荒廃を招く>

(中略)武装蜂起の呼び掛けは、ソーシャルメディアでは熱狂的に支持されたが、国際機関や外国政府は狼狽している。元国連調査団員らが組織するミャンマー特別諮問評議会(SAC-M)は8日、「7カ月にわたる軍事政権の暴力と国際社会の無策に、NUGと人民がいら立ちを募らせている」ことに理解を示しつつ、事態のエスカレートは「残念だ」と声明を出した。

「暴力はミャンマーの人々の苦しみの原因であって、解決策ではない」と、SAC-Mのクリストファー・シドッティは述べている。「NUGの気持ちは分かるが、その決断が引き起こす事態を、われわれは憂慮している」

米国務省のネッド・プライス報道官やイギリスのピート・ボウルズ駐ミャンマー大使、インドネシア外務省のテウク・ファイザシャー報道官らも、民主派の「自衛のための戦争」に理解を示しつつ、円滑な人道援助のために双方に平和を呼び掛けた。(中略)

だが、民主派が武力闘争を正式な戦略として打ち出したことは、倫理的な問題や現実的な問題を生じさせている。
NUGは5月に国民防衛隊を設置したとき、「市民を脅し、標的にし、攻撃してはならない」し、市民がいる場所を標的にしてはならないという行動規範を示した。

これは、無差別的な残虐行為を繰り返す国軍とは違うことを明確にするとともに、こうした非道の責任が問われることがなかったミャンマーの文化を正そうという意思の表れだ。

だが、戦闘が激化すれば、正義と不正義を分ける線は曖昧になりかねない。NUGの宣戦布告は、軍当局者や、民間人を含む軍事政権協力者の殺害を暗に奨励していると受け止められても無理はない。(中略)

ただし武力闘争を実践しようとする民主派は少数派で、大多数は大規模なストなど非暴力的な抵抗運動を展開しているという見方もある。

武力衝突のエスカレートは、NUGの政治的選択肢を狭めることにもなる。NUGはミャンマー政府として国際的な承認を得たいと考えているが、今回の宣戦布告で、その実現性は著しく小さくなった。

それに、いかに大義があっても、その戦いが成功する保証はない。にわかづくりの国民防衛隊はもとより、少数民族の武装組織はそれぞれ目標や利害が異なり、国軍に対して足並みのそろった戦いを展開できるかは分からない。

国軍がNUGの宣戦布告にひるむとも思えない。むしろ圧倒的な武力で反撃してくる可能性が高い。そうなれば、「もっと激しく長期的な内戦となり、大虐殺によって相手を消耗させる戦い方がまかり通るようになるだろう」と、長年ミャンマーの人権問題に取り組んできたデービッド・スコット・マティソンは語る。
その消耗戦によって残るのは、荒廃だけだ。【9月15日 Newsweek】
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【国際社会にクーデターの正当性を求める国軍 うまくいかない経済運営 残虐行為も】
国軍側は各国の外交官を招いた説明会を開催するなどして、国際社会の「クーデターの正当性」への理解を求めています。そこには、思惑どおりに進んでいない現実への国軍側の“焦り”も

****「クーデターは正当」の主張続けるミャンマー国軍…国際社会復帰に“焦り”*****
(中略)クーデターによる混乱に加えて新型コロナウイルスの感染拡大により、ミャンマー経済は壊滅的な打撃を受けている。世界銀行は2021年度のミャンマーの経済成長率がマイナス18%になる見通しだと発表した。

ラスト・フロンティアと呼ばれ、日本企業を含め多くの海外企業が進出していたミャンマーだが、クーデター後の事業継続は依然不透明な情勢だ。国際社会やミャンマー市民の反発を受けて、国軍関連企業との取引を停止する外国企業も増えている。国軍側はこうした動きを何とか食い止めようと必死なのだ。(中略)

各国に求める「正当性」
国軍が各国に改めて理解を求めたのは、「クーデターの正当性」だ。
まず、アウン・サン・スー・チー氏率いる与党・国民民主連盟(NLD)が圧勝した2020年11月の選挙について、中間調査の結果を発表した。国軍側はクーデター以前から選挙に不正があったと主張し、選挙の無効を訴えてきた。

説明会でもこの主張を繰り返した形だ。会場の入り口にも与党側の不正の証拠とされる写真が大量に張り出されていた。

国軍による市民への弾圧でこれまでに1000人以上が殺害され、逮捕者は8000人を超える。国際社会は弾圧を止めるよう求めているが、国軍側が弾圧を止める動きはない。逆に「抵抗する市民側が起こした事件とその被害」について説明し、治安維持の必要性を強調した。

クーデターを起こしたことや、その後の国家運営など国際社会に何とか自らの主張を認めさせようと躍起となっているのが伺える。(後略)【9月14日 FNNプライムオンライン】
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ただ、内戦は別にしても、国軍による統治はあまりうまくいっていません。
“ミャンマー国軍、為替相場の管理策を撤回 二重相場で混乱、通貨急落”【9月17日 朝日】

国軍による民間人殺害も。
“ミャンマー軍事政権、反政府勢力捜索を理由に各地で民間人虐殺”【9月25日 大塚 智彦氏 JBpress】

【反政府勢力に“二股”かける中国】
国軍に対し制裁を課す欧米とは一線を画している中国・ロシアですが、中国も国軍支援が目立ち、反政府勢力の標的にされるのは避けたいところ。

一定に反政府勢力側の少数民族勢力も支援して“二股”かけているようです。

****中国、政権・反政府勢力双方にワクチン支援 ミャンマー****
中国は、ミャンマー軍事政権に新型コロナウイルスワクチンを提供する一方、政権と敵対する反政府武装勢力にもワクチンを支援している。双方に協力の手を差し伸べることで、混迷を深めるミャンマーでの影響力を拡大する狙いがある。
 
(中略)中国政府はこれまでに、軍事政権に約1300万回分のワクチンを提供した。

軍事政権は感染拡大に歯止めをかけられずにいる。新型ウイルスを完全に封じ込める「ゼロコロナ」を目指す中国としては、2000キロにわたり国境を接するミャンマーからの新型ウイルス流入を警戒している。
 
反政府勢力メンバーがAFPに語ったところによれば、中国政府はワクチンや医療要員、隔離施設用の資材を目立たないように提供している。
 
ヒスイの産地として知られるミャンマー北部を支配する少数民族武装勢力「カチン独立軍」の報道担当者は、中国赤十字の職員が新型ウイルスの感染拡大抑制を支援するため時々やって来ると話した。(中略)

KIAの報道担当者によると、ミャンマーが感染の第3波に見舞われた7月、KIAは拠点とするカチン州ライザで1万人に中国製ワクチンを接種した。中国から医療要員が派遣され、マスクや手指消毒薬も配布されたという。
 
他の少数民族武装勢力「シャン州進歩党」や「タアン民族解放軍」も中国から支援を受けたとAFPに語った。
 
一方、国境の町ムセでは、中国との取引再開を目指す貿易関係者向けに1000床の隔離施設の建設が進められている。現場で働いているのはミャンマー人だが、建設資材は全て中国雲南省当局が提供していることが、AFPの取材で分かった。

■大々的に宣伝されない支援
中国によるこうした支援は、アジア、アフリカ向け支援のように大々的に宣伝されていない。(中略)

ミャンマーを拠点としていた専門家デービット・マシソン氏は、同国の国境地帯に暮らす中国系住民は中国のSIMカードや通貨を使っており、一帯は実質的に中国の一部のようになっていると話した。
 
ミャンマーで武力勢力と国軍の大規模な衝突が起き、2017年のように大勢のミャンマー人が中国に逃げ込んでくる事態になることが中国政府にとっての「最悪のシナリオ」だと、マシソン氏は指摘した。(中略)

香港大学の韓恩澤准教授は、軍事政権は中国による少数民族武力勢力への支援を決して快く思っていないが、他に選択肢はないと指摘した。 【9月25日 AFP】
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少数民族の中には「カチン独立軍」のほか、中国と関係が深いワ州連合軍(UWSA)や中国系少数民族もいます。
そうした勢力との関係を維持することは、中国にとって、国境地帯の中国向けガスパイプライン等の権益保護にもなりますし、万一、国軍側が敗退した場合の「保険」にもなります。

反政府勢力をめぐる水面下の中ロの動きとしては、国連を舞台にしたアメリカとの駆け引きもあるようです。

****国連総会、ミャンマーの演説が見送りに 米国が中ロと水面下で合意か****
米ニューヨークの国連本部で開催中の国連総会一般討論演説で、今年はミャンマーの代表が発言しないことが決定的となった。国連のハク副報道官が24日夜、「現時点でミャンマーが話す予定はない」と取材に答えた。
 
一般討論演説は、国連に加盟する193カ国の首脳らが自国の政策などを内外に向けてアピールする場で、演説見送りは異例だ。今年は22日に始まり、ミャンマーは最終日の27日、チョーモートゥン国連大使が演説するはずだった。(中略)
 
チョーモートゥン氏は、国軍がクーデターを起こす前の昨年10月に就任。クーデター後は、国軍を公然と非難してきた。それに対し、国軍は「解任」や「訴追」を言い渡し、自らに近いアウントゥレイン氏を新たな国連大使として任命した。
 
複数の米メディアによると、国軍と一定の関係を保つ中国やロシアが、チョーモートゥン氏が演説を見送れば、当面は国連大使の座に異議を唱えないと、米国と水面下で合意したという。(後略)【9月25日 朝日】
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“(反国軍の)チョーモートゥン氏が演説を見送れば、当面は国連大使の座に異議を唱えない”というのは国軍としても不服でしょうが、“他に選択肢はない”力関係の現実でしょう。

あと興味深いところでは“ミャンマー民主派弾圧を支える、ウクライナの武器輸出──人権団体報告書”【9月14日 JBpress】といった記事も。
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ミャンマー  国軍によるクーデターから半年 弾圧とコロナ禍で深まる混迷

2021-08-01 22:37:58 | ミャンマー
(ミャンマーで不足している医療用酸素を求めて列を作る人々=最大都市ヤンゴンで2021年7月28日【7月31日 毎日】)

【国軍の弾圧に有効な手立てがとれない国際社会】
ミャンマーの国軍クーデターから半年。

ミャンマーを巡る国際状況は、国軍支配に対する欧米が制裁を課す一方で、影響力拡大を目論むロシアが国軍を積極支持、自国権益保護を重視する中国は国軍支援への深入りは避けながらも欧米の制裁には反対する対応で、市民弾圧を続ける国軍への国連・国際社会としての一致したアプローチができていません。

ASEAN内部も対応に温度差があり、また、暴力の即時停止や軍と民主派勢力の対話を仲介するASEANの特使の派遣など4月の首脳会議(ミン・アウン・フライン司令官も出席)での合意も、国軍側は「国内情勢が安定したら」という形で事実上無視するような状況が続いています。

****対ミャンマー、割れる世界 欧米諸国は制裁/ロ・中反対 クーデター半年****
ミャンマーで国軍がクーデターを起こし、権力を握ってから8月1日で半年になる。欧米諸国が制裁に踏み切る一方、ロシアや中国は反対するなど、国際社会の対応は割れたままだ。国軍の弾圧で900人を超える犠牲者が出る事態に、国際社会は有効な手を打てずにいる。
 
7月29日に開かれた国連安全保障理事会の非公式会合。米国の代表が「今こそ暴力を終わらせ、(ミャンマーを)民主主義の道に引き戻すために圧力を強める時だ」と力説したが、中国やロシアは欠席した。
 
クーデター後、米国や欧州連合(EU)は国軍幹部や国軍系企業などに相次いで制裁を科した。だが、ロシアや中国は国連安保理でも「内政不干渉」を理由に制裁に反対し、制裁決議ができない状況が続く。
 
中でも際立つのはロシアの姿勢だ。6月23日、モスクワの高級ホテルのホールに、ミャンマー国軍トップのミンアウンフライン最高司令官の姿があった。
 
ロシア国防省主催の「国際安全保障モスクワ会議」に招かれて演説したミンアウンフライン氏は、「国家主権に対して膨大な干渉が行われていることは明らかだ」と述べ、欧米諸国を念頭にした批判を展開した。
 
国連総会は6月、ミャンマーへの武器流入を防ぐよう呼びかける決議を採択したが、ロシアが配慮する気配はない。ロシアの軍事技術協力局のトップは7月23日、2018年にミャンマーと契約を結んだスホイ30戦闘機6機や他の攻撃機が間もなく供給されるとの見通しを、インタファクス通信に語った。
 
ロシアは東南アジア諸国連合(ASEAN)各国との関係構築に力を入れており、その中核が軍事技術協力だ。ミャンマー国軍との親密な関係には、各国の対米関係に温度差のあるアジア太平洋地域で自国への米国の包囲網にくさびを打つ意味がある。
 
「軍政を支持している」とのメディアの指摘に、ラブロフ外相は「歪曲(わいきょく)だ」と反論したが、ロシアがミャンマー国軍の最大の後ろ盾になりつつあるのが現実だ。
 
中国は、ASEANがミンアウンフライン氏も参加した首脳会議で打ち出した暴力の停止、特使派遣、人道支援の提供などの5項目の合意への支持を表明する一方で、制裁に反対する姿勢は崩していない。
 
こうしたロシア、中国などの態度を背に、国軍側は主要7カ国首脳会議(G7サミット)の首脳宣言に盛り込まれたクーデターへの非難などに反論し、強気の姿勢を取り続ける。

 ■ASEANも温度差
事態の打開に向け、ミャンマーを含む10カ国が加盟するASEANに期待する声も強い。ASEANは「内政不干渉」が原則だが、今回はインドネシアやマレーシア、シンガポールが中心となり、4月に首脳会議を開催。6月には、首脳会議での5項目の合意を踏まえ、今年の議長国ブルネイの第2外相やASEAN事務局長らがミャンマーを訪れた。
 
だがそれ以降、目立った進展はない。特使にはインドネシア、タイ、マレーシアなどの元外相や大使経験者らの名前が挙がるが、決定には至っていない。人道支援も、西部ラカイン州などでの需要調査が予定されていたが、国軍側が受け入れを認めていない模様だ。
 
ASEAN内の温度差も影を落とす。タイやベトナム、カンボジアなどは干渉に消極的で、こうした国際社会やASEAN内の「分断」を見透かすように、国軍側は支配の既成事実化を進めてきた。ASEAN関連の一連の会議にも、クーデター後に国軍側が任命した閣僚らがなし崩し的に参加を続けている。
 
拘束されたアウンサンスーチー氏らを支持する民主派が4月に樹立した「統一政府」は、国際社会に支持と政府としての承認を訴えている。AP通信などによると、国軍側は民主派を支持するチョーモートゥン国連大使に代わる新たな大使を任命したとし、国連側に信任を求めた。どちらを大使として認めるのか、国際社会は再び問われることになる。【8月1日 朝日】
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ASEAN特使受入れについては、ようやく動きがあったようです。ただし、軍と民主派勢力との対話を仲介するのが本来の趣旨ですが、とてもまともに機能するとは思えませんが。

****ASEAN特使受け入れへ ミャンマー国軍トップ****
ミャンマー国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官は1日、クーデターから半年に合わせた国営テレビでの演説で、東南アジア諸国連合(ASEAN)が4月に合意した特使の派遣を受け入れる姿勢を示した。
 
総司令官は、これまで早期の特使受け入れに否定的な姿勢を取っていた。(後略)【8月1日 共同】
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【弾圧とコロナ禍で深まる混迷 医療・金融は大混乱】
国内情勢の面では、国軍支配に抵抗する武装市民及び少数民族武装勢力と国軍の衝突が続いており、更に新型コロナの深刻な感染拡大によって混迷が深まっています。

****ミャンマー軍 クーデター半年 弾圧と感染拡大で混迷深まる****
(中略)ミャンマーでは去年11月の総選挙で、アウン・サン・スー・チー氏率いるNLD=国民民主連盟が圧勝しましたが、軍は選挙に不正があったとしてことし2月クーデターを起こし1日で半年となります。

各地では依然として市民がゲリラ的なデモを散発的に繰り返したり、医療関係者や公務員らが職務を放棄する不服従運動を続けたりして軍の統治に抵抗しています。

これに対して軍は、徹底した弾圧を続けていて現地の人権団体によりますと、死者は31日までで940人、拘束されている人は5444人に上っています。また銃などの武器を手にした市民と軍との戦闘も各地で発生し、市民側におおぜいの死者が出たケースも地元メディアによって複数、報告されています。

一方で、このところ、新型コロナウイルスの感染が急拡大していて、保健当局の発表によりますと7月一か月間は平均すると一日に4500人を超える新たな感染者が毎日確認され、7月の死者数は6000人に達しました。

ただ限られた検査数に占める陽性者の割合が高い日には40%を超えていることから、地元メディアは、実際の感染者数や死者数は当局の発表をはるかに上回ると見られると伝えています。

クーデター後の混乱が続くなか、ぜい弱な医療体制は崩壊状態に陥っていて、患者の多くは自宅での療養を余儀なくされ、医療用酸素の不足も深刻で、各地の酸素工場の前には看病する家族などの長い列ができる事態となっています。また、火葬場には対応しきれないほどの遺体が連日次々と運び込まれています。

事態の収束が見えない中、ミャンマーでは、軍と市民の対立が深まり、新型コロナウイルスの感染拡大もあいまって、混迷は深まる一方となっています。

軍は正当性強調も現場は医療崩壊状態に
新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、ミャンマー軍は連日、国営テレビを通じてワクチンの接種や患者の治療に使う酸素の調達の様子を伝え、感染対策をアピールしています。

また、ミン・アウン・フライン司令官みずからが新型コロナウイルスの対策会議に出席した映像も伝えられ、ロシアや中国からワクチンを確保することや、ミャンマー国内で、ワクチンの生産計画が進められていることが紹介されるなど、メディアを通じて、クーデター後の統治の正当性を示すねらいがあるとみられます。

一方、現地ではもともと医療体制がぜい弱なうえに、クーデター以降、医療関係者がCDM=市民不服従運動に参加したり、軍に追われたりするなか、感染者が急激に増え、医療が崩壊状態にあります。

医療関係者によりますと、中にはボランティアで治療にあたっている人もいますが十分な医薬品や医療機器が調達できず、活動には限界があるということです。

こうした中、SNS上では「軍には感染拡大を防ぐことができない」とか「クーデターのせいで状況が悪化した」といった書き込みが相次ぎ、軍への批判が一層高まっています。(中略)

経済の混乱広がる 卵話題で価格高騰も
ミャンマーでは軍によるクーデターのあと、物流や金融サービスが停滞しているうえ、新型コロナウイルスの感染が急速に拡大していることで経済の混乱が一段と広がっています。

このうち最大都市ヤンゴンでは、7月中旬、卵の価格が急激に上昇し、市内のスーパーなどではふだんの2倍以上の価格に跳ね上がったということです。「卵をたくさん食べれば感染しにくくなる」といった話がSNSなどを通して広がり、買い求める人が急増したためとみられ、卵が売り切れる店も相次いだということです。卵の高値は今も続き、卵を安く売るヤンゴンの露店には、100人以上が列を作っていました。

こうした事態に、軍は、国営テレビを通じて、豆類やイモなど卵のかわりになるという食材のリストを公表し、国民の不安を和らげようと躍起になっています。(後略)【8月1日 NHK】
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崩壊は医療だけでなく、金融も深刻な混乱状態にあります。

****(きしむ国家 ミャンマー政変半年:下)コロナ下のクーデター、苦境に追い打ち****
(中略)世界銀行は26日、2020年10月~21年9月のミャンマーの国内総生産(GDP)は、前年から18%減るとの推計を発表した。コロナとクーデターがなかった場合の予想に比べて経済が3割縮んだとの見方で、同期間中に100万人の職が失われると見込む。

状況がさらに悪化すれば、貧困ライン以下で暮らす人が22年初めまでに19年の2倍超になりうるとも警告した。

 ■現金不足・失業「全て壊れた」
経済の土台を揺るがしているのは金融の混乱だ。世銀の調査でも、回答企業の52%が「現金不足」が問題だとした。クーデター直後から、多くの行員が不服従運動に参加。一部の業務が再開され、銀行からお金を引き出そうと預金者らが列をつくったが、銀行の破綻(はたん)を避けるため政府は引き出し額を制限した。
 
「4月は銀行に800回以上も電話した」。ヤンゴンに住む女性(35)はこう振り返る。将来への不安から、いまでは何を買うにも現金しか受けつけない店がほとんどだ。現金を引き出すには銀行窓口の予約が必要だったが、なかなかつながらず、ようやくつながって引き出せたのは50万チャット(約3万3千円)。半月の生活費にも満たなかった。
 
こうした混乱を受け、手数料を取って電子送金と現金を交換する業者や、預金者の代わりに銀行に並ぶ業者も現れた。SNSに広告も出ているが、交換手数料が10%ほどかかるケースもある。
 
通貨チャットは下落。生活必需品の供給も滞り、ヤンゴンでは食用油がクーデター前の1月時点と比べて1・4倍超に、燃料価格は約1・8倍に上がった。
 
調査会社ミャンマー・サーベイ・リサーチの瀧波栄一郎さんは「長引くコロナ禍とクーデターによる経済悪化により、失業者や減給された労働者が増え、農村に帰省や退避をしたヤンゴン在住者が1~2割はいる」とみる。そして「欧米が制裁対象としているヒスイの採掘など、表に出ない経済活動も再び活性化してしまうのではないか」と懸念する。
 
経済的な苦境からの出口は見えない。国軍側は海外からの投資の呼び込みに躍起だが、投資や融資を控える動きも広がる。7月にはノルウェーの通信大手テレノールグループが撤退を発表した。
 
人権問題への投資家の視線が厳しくなるなか、ミャンマーで事業をすること自体が人権侵害に手を貸していると取られかねない。(後略)【7月31日 朝日】
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こうした状況で、総選挙と司令官の暫定首相就任に関する報道も。

****23年8月までに再選挙と表明 ミャンマー国軍トップ****
ミャンマー国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官はクーデターから半年となる1日、国営テレビでの演説で、非常事態宣言終了後の2023年8月までに再選挙を実施すると表明した。東南アジア諸国連合(ASEAN)の特使を受け入れる姿勢も示した。

総司令官が具体的な選挙の時期に言及したのは初めて。民主的な手続きを取ることを国内外にアピールする狙いとみられる。
 
総司令官は、昨年11月の総選挙で不正があり、結果を無効にしたと強調。クーデターに伴う非常事態宣言を解除した後「6カ月間の準備を経て、23年8月までに自由で公正な選挙を実施する」とした。【8月1日 共同】
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****ミャンマー国軍トップが暫定首相に****
ミャンマー国軍が設置した最高意思決定機関「国家統治評議会」は1日、議長で国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官を首相とする暫定政府が発足したと発表した。【8月1日 共同】
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総選挙については、スー・チー氏が率いる国民民主連盟(NLD)を排除した形で、国軍を認める政党だけの選挙を考えていると思われます。

【戦闘を避ける避難民 「ジャングルで発見されれば軍に殺されるし、自宅に留まっていても(軍に)殺される」】
国内各地で起きている軍と抵抗勢力の武力衝突によって多くの避難民が発生していますが、「ジャングルで発見されれば軍に殺されるし、自宅に留まっていても(軍に)殺される」との状況。

****密林で虐殺された遺体少なくとも10数体発見 軍と武装市民の戦闘激化するミャンマー*****
<突然のクーデターから半年、この国の状況はさらに混迷の度を深めている>

(中略)実弾発砲を含めたあらゆる人権侵害が反軍政の市民に対して行われているなか、各地で「国民防衛隊(PDF)」という武装した市民による軍との衝突、戦闘が激化しており、サガイン地方では軍とPDFによる激しい戦闘が起きた。

この戦闘で戦禍を逃れるためジャングルに逃れた市民が、掃討作戦を続ける軍に殺害されるケースもあり、同地方カニ郡区付近のジャングルで住民5人の虐殺遺体が発見され、付近には少なくとも10人の遺体が埋まっている可能性があるという。

発見された遺体の中には樹木から吊り下げられた様な明らかに「虐殺」された遺体もあり、軍による「蛮行」「人権侵害」の証拠として国際的な人権団体が厳しく非難する事態となっている。

密林に逃れた市民を軍が虐殺か
米政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」が7月28日に伝えたところによると、サガイン地方カニ郡区ジーピントゥイン村近くのジャングルで首をロープで縛られて木に吊り下げられた遺体1体とその近くで遺体4体を住民が発見した。

さらにその付近には遺体を埋めた集団埋葬の形跡が3か所あり、少なくとも10人の遺体があるとみられているものの、周囲に地雷が埋められている可能性があるため、発掘作業は行えない状況が続いているという。

遺体の身元は依然不明だが、うち1人は60代の男性とみられている。この男性は武装市民の組織「国民防衛隊(PDF)」とは無関係のジャングルに避難した一般住民とみられている。

カニ郡区では軍が侵攻してきた7月11日以来、軍兵士と武装市民による戦闘が激化し、多数の犠牲者、行方不明者が出ているといわれており、その安否が気遣われている。

戦闘への巻添えを恐れた一般の住民が付近のジャングルに逃げたが、そこへ武装市民を追跡、掃討する目的の兵士らが追跡し、避難民を発見しては無残な方法で殺害したのが発見された5人の遺体とみられている。

現地のPDF関係者によると、軍が侵攻して一般市民に対して武力行使を始めたことから住民らが周辺地区のPDFに支援を求め、多くの武装市民がカニ郡区に駆けつけて軍と戦闘になったという。しかし駆けつけたPDFも多くが軍による包囲網のトラップにはまり、多くが命を落としたとされている。(中略)

こうしたカニ郡区での戦闘激化、犠牲者の増加をRFAが軍政のゾー・ミン・トゥン報道官に問い合わせているが、回答は一切ないとしている。

各地で武装市民が蜂起、軍と衝突
民主政権のスー・チー氏率いる最大与党「国民民主連盟(NLD)」がクーデターで事実上解体に追い込まれたことを受けて、NLDなどが軍政に対抗する民主組織「国民統一政府(NUG)」と軍の武力弾圧に抵抗するための武装市民組織「PDF」を組織した。

このPDFは軍の武力行使に「目には目を」と対抗するための組織で、学生や若者が国境地帯で同じく軍政と長年武装闘争を続けてきた少数民族武装組織と合流、戦闘訓練や戦場での救急措置などを学び、武器を供与されて都市部に戻り、軍と戦闘に従事している。

地方都市ではこうしたPDFメンバーが軍から人権侵害を受ける市民の保護のために軍に武力抵抗を続けている。
さらに西部チン州、北部カチン州、東部シャン州やカヤー州、カレン州などでも地元の少数民族武装組織と軍との戦闘が激しくなっており、クーデターから半年となる8月1日を前にミャンマーは実質的には既に「内戦状態」にあるといえる状況だ。

住民1500人以上が密林に避難
(中略)戦闘があったサガイン地方カニ郡区では4月2日以降の戦闘でこれまでに住民約1500人がジャングルに逃れて避難生活を余儀なくされているという。

住民によると軍が住宅に押し入り、現金や生活用品、食料を奪取したり、暴力、脅迫、家の破壊などが続いたりしたために避難したとしている。避難先のジャングルでは軍に発見されるとRPGと呼ばれるロケット弾まで撃ち込まれとこともあり、住民たちは軍に発見されないように移動を続けているという。

住民の1人はRFAに対して「ジャングルで発見されれば軍に殺されるし、自宅に留まっていても殺される」と行き場のない苦悩を明かした。(後略)【7月31日 大塚智彦氏 Newsweek】
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