孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラン  大統領選挙にラフサンジャニ元大統領出馬 立候補が認められるかは不透明

2013-05-12 21:52:42 | イラン

(大統領選挙への出馬を表明するラフサンジャニ元大統領 【5月12日 TBS】 http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye5329770.html)

革命のイデオロギーに固執しない現実的な政策を志向する穏健派
現在の国際関係のひとつの中心をなしているイランでは、6月14日に大統領選挙が行われます。
2期8年を務めたアフマディネジャド大統領の任期満了に伴って行われるもので、最高指導者ハメネイ師との関係が悪化して、権力内で力を失いつつあるとされるアフマディネジャド大統領は3選禁止の規定により出馬できません。

今月7日から5日間で686人が立候補の届け出を行っていますが、最高指導者ハメネイ師に近い有力候補者と並んで、ラフサンジャニ元大統領の立候補が報じられています。

*****ラフサンジャニ師、最後の挑戦=「ハメネイ派」に挑む―イラン大統領選****
6月14日投票のイラン大統領選で、1989年から97年まで2期にわたって大統領を務めたラフサンジャニ師が11日、出馬を見送るのではないかとの観測が強まる中、締め切り直前に立候補者登録を行った。かつて最高指導者の故ホメイニ師に次ぐナンバー2として権勢を振るった大物政治家だが、78歳と高齢で、今回の選挙が政界最後の挑戦になる可能性が高い。

ラフサンジャニ師は79年のイラン・イスラム革命以降、体制を中枢で支えてきた保守派だが、大統領在任中に米欧との関係改善を模索するなど、革命のイデオロギーに固執しない現実的な政策を志向する穏健派としても知られる。

ホメイニ体制下では、ホメイニ師後継の最高指導者ハメネイ師より強い影響力を誇った時期があり、両者の関係は微妙だ。一方、今回選挙でほかに立候補を届け出たガリバフ・テヘラン市長やハダドアデル前国会議長らはハメネイ師に近い。選挙になれば、ハタミ前大統領ら改革派の支持を取り付け、「ハメネイ派」に挑む形となる。【5月12日 時事】 
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前回大統領選挙で改革派のムサビ元首相を支持して失脚した保守派の重鎮ラフサンジャニ元大統領は、経済重視の現実主義路線をとり、欧米との関係修復も期待できるとも見られています。
(ラフサンジャニ元大統領の復権については、2012年8月16日ブログ「イラン 求心力を失うアフマディネジャド大統領 大統領制廃止の議論も」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120816)でも取り上げました)

出馬が許可されるかは不透明
ただ、復権したとされるラフサンジャニ元大統領ではありますが、改革派の受け皿となることも想定されますので、最高指導者ハメネイ師の側近候補者の対立候補として出馬が許可されるかは不透明です。

“イランではハメネイ師の影響下にある「護憲評議会」が、イスラム教の教えに忠実かどうかなどを審査して事前に候補者を絞り込むことになっていて、改革派に近いラフサンジャニ氏が失格となる可能性も指摘されています。”【5月12日 NHK】

最高指導者ハメネイ師に近い勢力からは、ハダドアデル前国会議長、ガリバフ・テヘラン市長、ハメネイ師の顧問ベラヤチ元外相が立候補を届け出ていますが。3氏は今後、当選の可能性が最も高い1人に一本化し、残る2人が応援に回る計画とされています。
また、アハマディネジャド大統領に近い候補者としては、側近のマシャイ元大統領府長官が届出を行っています。
このほか、保守派からは核問題交渉責任者のジャリリ最高安全保障委員会事務局長やモッタキ元外相らも届け出ています。

改革派に関しては、“前回2009年の選挙で抗議行動を起こした改革派は存在感が薄まっています。当時の中心的存在だったムサビ元首相は現在も軟禁状態にあるとされ、今回、改革派から出馬を表明しているアレフ元副大統領は有力視されていません。また、改革派から期待の声が上がっていたハタミ元大統領は出馬しませんでした。”【5月12日 TBS】とのことです。

改革派の中心的存在であるハタミ元大統領は、なぜ前回も今回も出馬しないのか・・・という疑問もありますが、おそらく出馬が許されない状況にあるのでしょう。

アフマディネジャド大統領の力が弱まっており、改革派は有力候補が出せない政治状況ですから、もしラフサンジャニ元大統領の立候補が認められれば、最高指導者ハメネイ師の側近候補者と改革を希望する人々からも支持を集められるラフサンジャニ元大統領の争いという展開になりそうです。
それだけに、ラフサンジャニ元大統領の出馬が認められるのだろうか・・・という疑問はあります。

また、現実主義者のラフサンジャニ元大統領ですから、仮に大統領に復職できたとしても、ハメネイ師周辺の保守強硬派と対立しても欧米との関係修復や民主的改革などに動くか・・・という点は、これまた疑問でもあります。

先ずは、ラフサンジャニ元大統領の立候補資格審査が注目されます。

なお、イランは欧米では“悪の枢軸”といった、欧米社会とは対極にある非民主的国家のイメージでとらえられることが多い国です。
確かに最高指導者という宗教的権威が大統領を上回る権限を有している体制であり、選挙の立候補についても宗教的見地などからの資格審査があり、現行体制に批判的な勢力の出馬が大きく制約されているという限界もありますが、とにもかくにも大統領や議員が選挙で民意を受けて選出される政治システムにはなっています。

その意味では、北朝鮮などと同レベルで論じることはできませんし、中国などの一党独裁体制、アフリカの強権支配国家などと比べても、欧米的民主主義により近い側面も持ち合わせているように思われます。
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