孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフリカ中部ブルンジ  隣国ルワンダで起きた大虐殺を想起させる表現で反対派弾圧を示唆

2015-11-13 22:20:53 | アフリカ

【5月22日 AFP】

おさまらない混乱
アフリカ中部の小さな国ブルンジは、隣国ルワンダ同様にツチ・フツの対立から犠牲者数30万人とも言われる大量虐殺を経験した国です。

今年に入り、憲法規定を拡大解釈(あるいは曲解)したヌクルンジザ大統領三選を巡る大統領選挙の混乱から再び不穏な情勢になったことは、4月27日ブログ「アフリカ中部ブルンジ 大統領選挙を巡る混乱 蘇る虐殺・内戦の記憶」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150427で、また、その後のクーデター騒動については、5月14日ブログ「アフリカ中部ブルンジ 大統領選挙の混乱からクーデター 成否は未確認 懸念される混乱拡大」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150514でも取り上げました。

結局クーデターは失敗し、かつてフツ系武装組織の指導者でもあったヌクルンジザ大統領が現在も政権を担っていますが、クーデター騒動後も混乱はおさまっていません。

****ブルンジ、反大統領派の学生ら一時米大使館に避難 副大統領は国外へ****
ブルンジの首都ブジュンブラで(6月)25日、3選を目指す同国のピエール・ヌクルンジザ大統領に抗議するデモに参加している学生約200人が、警察の暴力的な取り締まりを恐れ、米大使館の敷地に無許可で入る騒ぎが発生した。

また同日、第2副大統領は自ら国外に避難したことを明らかにした。同大統領が3選を目指し出馬表明を行って以降続いている同国の政情不安がますます強まっている。(後略)【6月26日 AFP】
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6月29日には、大統領三選に反対する野党がボイコットするなかで議会選挙が行われました。投票を前に首都ブジュンブラなど幾つかの投票所に手投げ弾が投げ込まれるなど緊迫した状況の中での投票でした。

****与党が大半の議席獲得=ブルンジ議会選****
AFP通信によると、6月29日に投票が行われたアフリカ中部ブルンジの国民議会選で選挙委員会は7日、ヌクルンジザ大統領の与党「民主防衛国民会議・民主防衛勢力」が公選議席100のうち77を得たと発表した。

同国では4月末以降、ヌクルンジザ氏が大統領選3選出馬を表明したことに抗議するデモが活発化して多数が死傷しており、野党勢力は選挙ができる環境にないとして議会選をボイコットした。【7月8日 時事】 
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7月には、批判の的となっていたヌクルンジザ大統領が三選を目指す大統領選挙が混乱の中で実施されました。
今回の大統領選は欧米などから現段階での実施に反対する声が上がり、2度延期されたものの、野党各党がボイコットする中での選挙となりました。

****ブルンジ大統領選、投票開始 銃撃や爆発で死者も****
アフリカ中部ブルンジの大統領選は21日、投票が始まったが、首都ブジュンブラでは投票開始前に銃撃や爆弾攻撃が相次いで発生した。

今回の大統領選では、国際社会の批判を受けながらも出馬した現職ピエール・ヌクルンジザ大統領(51)の3選が確実視されているが、暴力行為の引き金となる恐れも高まっており、数日間で数千人規模の人々が周辺国に逃れる事態となっている。

警察や目撃者によると、ブジュンブラでは21日の夜明け直後に投票所が開いたが、前夜から爆発や銃撃が相次ぎ、警察官と市民の少なくとも計2人が死亡した。

ブジュンブラは3か月におよび続く反政府行動の中心地。反ヌクルンジザ派の抗議運動は暴力的な締め付けを受けてきており、4月下旬以降で少なくとも100人が死亡。これまでに反大統領派の多くが国外逃亡している他、暴力の再燃を恐れる一般市民15万人以上が難民化している。

また国際医療援助NPO「国境なき医師団(MSF)」は20日、暴力行為の横行を恐れ1日当たり約1000人の人々が隣国タンザニアに逃れていると発表した。

ブルンジでは5月半ば、軍幹部らがヌクルンジザ大統領に対するクーデターを試みたが失敗。以降は北部で闘争を展開している。【7月21日 AFP】
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選挙結果は、ヌクルンジザ大統領が三選を実現するものとなりました。

8月には、大統領三選に反対するデモ参加者の取り締まりを指揮し、5月のクーデターを失敗させた立役者とみられていた大統領側近が暗殺される事件も。

****<ブルンジ>政権ナンバー2暗殺****
アフリカ中部ブルンジからの報道によると、ヌクルンジザ大統領側近で現政権ナンバー2の実力者と目されるヌシミリマナ将軍が2日、首都ブジュンブラの路上で武装グループに襲撃され殺害された。

ブルンジでは先月24日に3選を果たした大統領に対する野党や反対派市民の反発が強い。5月にクーデターを企てた軍の一部は引き続き政権転覆を目指しているとされており、大統領側近の暗殺は同国内の緊張をさらに高めそうだ。(後略)【8月3日 毎日】
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その後、ブルンジに関する報道は目にしていなかったので、混乱も下火になったのか・・・とも考えていましたが、そうでもないようで、オバマ米大統領が「深い懸念」を示し、安保理では国連による現地展開も検討されています。

****ブルンジ情勢に「深い懸念」=米大統領****
オバマ米大統領は11日、南アフリカのズマ大統領と電話し、アフリカ中部ブルンジで大統領派と反大統領派の対立が激化し、治安情勢が悪化していることに「深い懸念」を抱いていると伝えた。

オバマ大統領はその上で、南アフリカが周辺国などと協力し、沈静化と対話を働き掛けるよう要請した。【11月12日 時事】
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****国連展開の可能性=ブルンジ治安悪化で安保理決議****
国連安全保障理事会は12日、アフリカ中部ブルンジで大統領派と反大統領派の対立から治安が悪化しているのを受け、国連による現地展開の選択肢を含めた対応策を15日以内に安保理に報告するよう、事務総長に求める決議を全会一致で採択した。

同国のヌクルンジザ大統領が今月、反対派に武装解除を最後通告したのに加え、大統領派の議会議長は1994年に隣国ルワンダで起きた大虐殺を想起させる表現で反対派弾圧を示唆した。

多数派フツと少数派ツチによる暴力抗争の恐れも指摘される中、決議には有事の対応計画を策定する狙いがある。【11月13日 時事】 
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“隣国ルワンダで起きた大虐殺を想起させる表現で反対派弾圧を示唆”・・・・どういうものかは知りません。
ルワンダのジェノサイド当時は、フツ系ラジオが連日「奴ら(ツチ)は薄汚れた汚らしいゴキブリだ。さあ、ゴキブリを駆除しよう!潰せ!殺せ!ゴキブリどもを皆殺しにしろ!」と民衆を煽っていました。

紛争の傷に加え、飢餓や貧困の中で政府への不満が高まるも、それを口外できない状況が約10年続いてきた
大統領三選に反対する動きとツチ・フツの対立がどのようにリンクするのかはよくわかりませんが、大統領批判の背景には苦しい経済情勢があるようです。

また、警察当局や民兵組織による鎮圧行動は熾烈なものがあるようです。

ブルンジ男性と結婚された日本人女性のブログ「ブルンジ人旦那とブホロブホロ ライフ」には、そうした混乱の状況について詳しく記載されています。

****まだ紛争は続いているということ****
・・・・(大量虐殺を招いた)紛争中の経済はマイナス成長を記録したが、近年は年約4%の成長を続けている。しかし、実感としては人々は紛争前より貧しくなったという。

UNDPによると、1人あたりGNI(購買力平価)は790ドルと、サブサハラアフリカの平均の5分の1ほどしかなく、また、1日1.25ドル以下で暮らす貧困層は81%にのぼる。IFPRI(国際食糧政策研究所)が定義する飢餓指数においては、エリトリアと並んでExtremely Alarmingに位置付けられている。

人口の約9割が、自給を基本とする農業に従事しているが、土地の矮小化等が原因となり、自足を達成している農家はごく稀である。

よって、現金収入のある家族・親戚に扶養の負担が集中する傾向にあるが、一方で、就職は非常に困難であり、大卒者でも無職状態にある人も多い。(中略)

紛争の傷に加え、飢餓や貧困の中で政府への不満が高まるも、それを口外できない状況が約10年続いてきた。

このような苦労を踏みにじるかのように、大統領は、和平合意や憲法に違反して立候補を宣言した。

すぐさま、我慢の限界に達した多くの市民たちが、主に首都の一部地域にてデモを開始した。多くは平和的なデモであったが、一部は、道路封鎖や警察への投石等に発展した。

このような行為に対し、警察やImbonerakure(かつての紛争時のゲリラ組織が姿を変えた与党党員の青年組織)が市民への暴力や人権侵害行為を激化させてきた。

Human Rights Watchによると、警察が実弾でデモ隊の頭や胸を狙う、逃げる人を背後から撃つ、デモに参加していない人に発砲する、平和的なデモに発砲する、怪我人を運搬中の人に発砲する、発砲後に殴る・蹴るなどの暴行を加える、人権活動家に暴力を加える等、数多くの暴力行為が確認されているという。

現地メディアが撮影した映像の中で「警察が市民を殺している。どれだけ殺そうと私たちは抵抗をやめない」とある男性が語っていた。再び暴力の連鎖が始まってしまったのだ。

そして、軍によるクーデターが起きた。クーデター直後は、歌い踊る市民が街に溢れた。恐怖政治を自らで追いやった、民主主義の花が咲いたと確信したそうだ。しかし、大統領派の軍が応戦し、主要機関を抑えるための砲撃戦に発展した。その結果、大統領が戻り、クーデターは失敗に終わった。友人たちからは、もう希望がないというメッセージが届いた。

もともと異なる武装勢力であった野党が結束を始めたが、警察によって野党党首1名が殺害されたのを機に、他の党首も亡命せざるを得なくなった。政府への糾弾と対話の開始を主張しており、また、国連が調停人を送るも、与党は交渉を拒否し続けている。

与党の暴力はメディアへも及び、警察やImbonerakureによって主要メディア局が焼かれ、ラジオに関しては全て放送が停止している。また、複数のジャーナリストに対して殺害の脅迫を行っている。

大統領の違憲行為に反対する与党員への脅迫も激しく、亡命者も発生した。隣国へ亡命した与党の国会議員Aime Nkurunziza氏の内部告発によると、反対するのであれば国を出ること、さもなくば命はないという脅迫があったそうだ。Imbonerakureが国境を厳しく監視しているため、亡命時に逮捕された人も多い。

常時でさえ学校側のストライキ等で授業が遅れる傾向にあるにも関わらず、首都の多くの学校は数か月間閉鎖され、若者たちが不満を募らせた。

貧しい庶民たちは、物価高騰や日用品の品薄により生活が更に困窮している。例として、塩の価格は、大統領の立候補前は約60円/kgであったが、9月初旬には約76円/kgとなった。

複数の反政府ゲリラが活動を再び活発化させており、特に農村部において、紛争の生々しい記憶を持っている多くの人たちが国外に逃げている。また、武装闘争に向けた資金集めとみられる強盗事件も増加している。

4月25日以降、少なくとも100名の市民が死亡し、数百人が投獄され、20万人近くが国外に避難した。結局、7月21日に大統領選挙が強行され、違憲のまま大統領が再選された。

選挙後、少しずつ日常生活が再開される中、秘密(私服)警察の前トップが暗殺された。彼は大統領の右脳とも言われ、多くの市民の虐殺に関与している。容疑者は反政府派のいずれかとも、大統領によるとも言われ、はっきりしていない。

しかし、警察が周辺地域へ弾圧を加え、再び無実の市民の血が流れ始めたことは事実である。更に、一命は取り留めたものの、最も著名な人権活動家であるPierre Claver Mbonimpaが銃弾を受けた。また、軍の前トップは殺害され、現トップの暗殺未遂も起きた。

与党と複数の反政府派との複雑な対立は、再び激化していることが明らかである。更に、中国等がニッケルと引き換えに急速に政府に近付いており、対立は複雑化する一方である。「これから何が起こるかわからない」。私の家族や友人が口をそろえる。

独立以来殺戮が絶えなかったブルンジは、アルーシャ和平合意を以って先の紛争を終結させた。恐怖や失望から立ち上がり、極度の飢餓と貧困に日々立ち向かいながら決死の思いで這い上がってきた人々は、今日の政府や警察、Imbonerakureを赦すことはできず、これからも暴力の連鎖とそれに伴う治安や経済の悪化は続くであろう。

この絶望の中で、ある友人は私にこう言った。「民主主義の果実を味わうその日まで、諦めない」
【9月27日 ドゥサベ友香氏 「ブルンジ人旦那とブホロブホロ ライフ」http://ameblo.jp/burundihusband/entry-12077923937.html
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「これから何が起こるかわからない」・・・・特段の資源もないアフリカの小国ですから、大国間の利害対立もさほど大きくないようです。国連の速やかな対応で新たな混乱・悲劇を未然に防ぐことができることを期待します。
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