
(ジンバブエの首都ハラレにある、同国の野党「民主変革運動連合」本部前に集まった支持者たち(2018年7月31日撮影)【8月1日 AFP】勝利を確信しているようですが・・・)
接戦が予想され注目されたアフリカ・ジンバブエの大統領選挙については、まだ得票状況の発表はありませんが、同時に行われた議会選挙の方は、与党側が圧勝の勢いとの中間結果が報じられています。
****ジンバブエ議会選の中間結果発表、与党が大半の議席獲得 過半数超え****
先月30日に実施されたジンバブエの総選挙の公式な中間結果が1日、発表され、与党・ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU-PF)が大半の議席を獲得したことが明らかになった。
その一方、大統領選については開票作業が続けられているが、最大野党・民主変革運動(MDC)は不正行為が広く横行していたと主張している。
国営放送局ZBCは、「ジンバブエ選挙委員会(ZEC)が議会選について、新たに50議席の集計結果を発表し、これまでのところ153議席の結果が判明した。
153議席のうち、ZANU-PFが110議席を獲得した一方、MDCの陣営は41議席を獲得した」と報じた。ジンバブエの下院議会は定数210議席。
MDCは議会選の結果に対して、これまでのところ反応を示していない。しかし同党の党首で大統領選に出馬しているのネルソン・チャミサ(Nelson Chamisa)議長は1日、大統領選の結果がでっち上げられていると訴えていた。【8月1日 AFP】
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ジンバブエ大統領選挙は、ムガベ前大統領失脚後初めての選挙ですが、現職、ムナンガグワ大統領(75)と、最大野党「民主変革運動」のチャミサ議長(40)による事実上の一騎打ちとなっています。
****<ジンバブエ>総選挙「ムガベ後」初 自由・公正かが焦点****
アフリカ南部ジンバブエの大統領選挙と議会選が30日、実施された。「恐怖政治」を敷いて、1980年の独立以来37年間にわたり政権の座にあったムガベ前大統領の失脚後初めての選挙。
ムガベ政権の崩壊を受けて、自由で公正な投開票が行われるかが焦点となっている。
大統領選には23人が立候補したが、与党「ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線」の現職、ムナンガグワ大統領(75)と、最大野党「民主変革運動」のチャミサ議長(40)による事実上の一騎打ちとなっている。両候補
とも外貨不足に苦しむ国家経済の再建を最優先課題に掲げる。
昨年11月にムガベ氏に副大統領職を解任されたムナンガグワ氏は、事実上のクーデターによって大統領に就任した。選挙の洗礼を受けて政権の正統性を確保し、外資誘致や国際通貨基金(IMF)の支援再開につなげたい考えだ。
当初は組織網や資金力で勝る現職が有利とみられていたが、経済回復を実感できない国民からは失望の声が聞こえる。直近の世論調査では、リードするムナンガグワ氏に、チャミサ氏が3ポイント差にまで迫っており、接戦となる可能性もある。
ムガベ政権下の選挙では与党や選挙管理委員会の不正、軍の介入が横行していた。今回は欧州連合(EU)などの選挙監視団を受け入れた。選挙運動は平穏に行われる一方で、投票日を前に脅迫や嫌がらせの報道が急増。有権者の多重登録の疑いなどもあり、野党は投開票の不正に警戒感を強めている。
ハラレ市内の投票所には長い列ができた。投票所に訪れたプレシャスさん(69)は「独立以来ずっと与党に投票してきた」。大学卒業後も職が見つからないというフランシスさん(27)は「過去の過ちをただすには新しい指導者が必要だ」と話した。
大勢判明までには数日かかる見通し。過半数の票を得た候補がいなかった場合、9月8日に上位2人による決選投票が行われる。【7月30日 毎日】
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両候補とも、それぞれ問題を抱えての選挙戦でした。
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ムナンガグワ氏は長年ムガベ氏の側近だったが、昨年11月、突然ムガベ氏に副大統領職を解任された。それをきっかけに、ムナンガグワ氏に近い国軍がムガベ氏を自宅に軟禁、ムガベ氏の辞任につながった。
ムナンガグワ氏はムガベ氏を追放した立役者として一定の評価はあり、経済回復を期待する経済界の支持を集めているものの、「昨年11月から経済の目立った改善が見られないことに国民から不満の声も高まっている」(外交筋)との指摘もある。
また、国家治安相だった1980年代、軍が市民ら約2万人を殺害した虐殺事件に関わった疑惑も影を落としている。
ムガベ政権時代、「反ムガベ」の先頭に立ち2月に死去したMDCのツァンギライ前党首の後を継いだチャミサ氏は、若さを前面に出した選挙戦を展開し、都市部や若者の間では人気が高い。だが、政治的実績に乏しく、党内の派閥争いも抱える。【7月29日 読売】
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現職ムナンガグワ氏はムガベ前大統領側近でしたが、失脚劇をめぐる争いがあり、ムガベ前大統領は野党候補を支持する“ねじれ”も生じています。
****<ジンバブエ大統領選>ムガベ氏巡り与野党候補に「ねじれ」****
ジンバブエ大統領選は投票日直前、有力候補2人とムガベ前大統領との関係を巡り、舌戦が繰り広げられた。独裁者ムガベ氏と野党候補の接近が指摘され、かつてムガベ氏の側近だった与党現職は過去との決別を訴えるという「ねじれ現象」が見られた。
ムガベ氏は29日に自宅で記者会見を開き「私を今のような状況に追い込んだ人たちには投票できない」と述べ、与党やムナンガグワ大統領には投票しないことを明言。「残る選択肢はチャミサ氏しかない」とし、最大野党のチャミサ議長への支持を示唆した。
これを受けてムナンガグワ氏は同日夜、フェイスブックに映像を投稿。チャミサ氏とムガベ氏の「結託」を主張して「チャミサ氏の背後にいるムガベ氏に投票するのか。私が率いる新生ジンバブエに投票するのか」と有権者に問いかけた。
かつてムナンガグワ氏はムガベ氏の「右腕」で、過去の野党弾圧の黒幕とされる。チャミサ氏は6月、毎日新聞の取材に「ムガベ氏と一心同体だった彼に改革はできない」と批判していた。
ムガベ氏の突然の会見の意図は不明だ。ハラレ市内で投票したアフメド・モハメドさん(47)は「ムガベ氏は過去の人。投票用紙に自分の名前がないのがさびしいのだろう」と受け流していた。【7月30日 毎日】
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野党候補のチャミサ議長は、31日には早々と「圧勝」宣言をする自信を示していました。
****ジンバブエ大統領選、野党代表が「圧勝」宣言****
ジンバブエ大統領選の投票から一夜明けた31日、最大野党・民主変革運動のネルソン・チャミサ議長は、同党が投票所1万か所から集めた情報によると自身が「圧勝している」と述べた。
チャミサ氏はツイッターに、「圧勝している…われわれは非常に良くやった」「次(の政権)をつくる準備はできている」と投稿した。
長く政権の座にあったロバート・ムガベ前大統領が昨年失脚した後としては初の歴史的な選挙で、投票率も高かった。立候補者も記録的な多さとなったが、与党・ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線でムガベ前大統領の右腕だったエマーソン・ムナンガグワ大統領とMDCのチャミサ議長の事実上の一騎打ちとなった。
選挙管理当局によれば多くの投票所で有権者が列をつくり、30日夕方の投票締め切り1時間前の推定投票率は約75%だった。
30日夜に首都ハラレで記者会見したジンバブエ選挙委員会のプリシラ・チグンバ委員長は、「高い投票率は有権者教育と広報が十分だったことを示している」との見方を示した。
今回は、長年受け入れを拒否されてきた欧州連合の選挙監視団も派遣された。監視団は、投票率は高いようだが選挙過程に「不十分な点」があった恐れもあると警告した。【7月31日 AFP】
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冒頭記事にあるように、議会選挙の方が与党圧勝となると、大統領選挙の方も与党・ムナンガグワ大統領の方が優勢か・・・とも推察されますが、そういう結果が出たとき、上記のように「圧勝した」との自信を示す野党側がその結果を受け入れるかどうか・・・・。
ジンバブエの大統領選挙は、かつてムガベ大統領と故モーガン・ツァンギライ議長が激しい争いを繰り広げ、2008年選挙では第1回投票で劣勢に立ったムガベ大統領側の“暴力”によって国中が混乱、野党ツァンギライ議長は決戦投票を辞退せざるを得ない状況に追い込まれたこともあります。
その経緯からも“自由で公正な投開票が行われるかが焦点”となっていましたが、野党側敗北の結果が出されたとき、その結果を野党側が“公正な投票結果”として認めるかどうかが懸念されます。
チャミサ議長はインタビューで「もし、敗北の結果が出たら受け入れるか?」と訊かれ、「そんなありえない事態は想定していない」といった答えをしていました。
もし、不正があった・・・との主張がなされた場合は、再び国中が混乱する可能性があります。
今朝の海外メディアのTVニュースでは、野党本部の前に当局側の放水車が集結して、混乱の事態をも想定した動きが見られると報じられています。
一方、もし野党側・チャミサ氏有利の状況になると、軍はムナンガグワ氏を支持しており、チャミサ氏当選阻止のため介入する可能性も取り沙汰されています。
結果発表はこれからですが、事前の予測が拮抗していただけに、どうもすんなりとはおさまらないような緊迫した雰囲気が感じられます。