孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

チェコ  「プラハの春」から50年 親ロシア派の大統領は沈黙 ロシアでは正当化の流れ

2018-08-22 22:10:28 | 欧州情勢

「プラハの春」ジャズクラブで踊る学生【https://www.theguardian.com/world/2018/jul/22/observer-archive-the-prague-spring-27-july-1968

軍事侵攻したソ連兵に話しかけるプラハ市民【https://socialistworker.org/2008/08/05/1968-and-prague-spring

抗議するプラハ市民【https://www.mrallsophistory.com/revision/the-end-of-the-prague-spring-20th-august-1968.html

反EU・反移民難民の右傾化が著しいチェコ
中欧チェコは最近の国際政治にあっては、EUにありながらも、ハンガリーやポーランドともに、反EU・反移民難民の右傾化が著しい国として登場します。(2017年12月1日ブログ“東西亀裂が深まるEU チェコのポピュリズム台頭 「非リベラル」傾向を強めるハンガリー・ポーランド”など)

****日系議員オカムラがチェコの右傾化をあおる****
<イスラム教徒の人口が0.1%しかないチェコで、日系政治家オカムラ率いる極右政党が支持を広げる理由>

欧州に広がる極右台頭の波がチェコにも押し寄せた。

(2017年)10月20~21日に行われた総選挙で、反イスラムと反EUを公約に掲げる極右の新党「自由と直接民主主義(SPD)」が3位に付ける躍進を遂げた。

SPDの勢いを受け、第1党の中道右派「ANO2011」も移民・難民への強硬な姿勢を強調するなど右傾化の流れは強まる一方だ。

SPDを率いる日系の上院議員トミオ・オカムラ(45)は日本人の父とチェコ人の母を持ち、幼少期を日本で過ごした人物だ。

チェコで実業家として成功を収めた後に政治家に転じた彼は、イスラム教を宗教ではなく「イデオロギー」だと語るなどイスラム嫌いの発言を連発。

チェコ人は中東発祥の肉料理ケバブを食べるのをやめ、モスク周辺に豚を連れて行くべきだなどとも主張している。

「チェコのイスラム化を食い止めたい。移民を全く容認しない姿勢を推し進めたい」と、オカムラは選挙後に語った。

ただし、チェコではイスラム教徒は人口のわずか0.1%で、深刻な難民問題も発生していない。

それでもオカムラの主張が国民の共感を得る背景には、国家消滅の脅威に怯えてきたチェコの歴史的な経緯と、欧州各国で相次ぐテロへの恐怖心があるとみられる。

SPDが連立政権入りする可能性は低いが、オカムラが今後も台風の目となるのは間違いなさそうだ。【2017年11月2日 Newsweek】
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****チェコ大統領選、ゼマン氏再選 移民流入の恐れを強調*****
チェコ大統領選の決選投票が26、27日にあり、移民流入の恐れを強調し、ポピュリストと評されている「親ロシア・中国」の現職ゼマン氏(73)が、接戦を制して再選を果たした。

前チェコ科学アカデミー総裁のイジー・ドラホシュ氏(68)は「親欧州連合(EU)」を訴えて挑み、チェコが中ロと西欧のどちらに近づくのか注目が集まった。
 
選挙は事実上、ゼマン氏に対する信任投票だった。チェコ統計局の発表によると、開票終了の数字で得票率はゼマン氏が51・4%、ドラホシュ氏が48・6%。
 
ゼマン氏は「反イスラム」を鮮明にして、チェコでは深刻ではない移民問題で恐怖をあおってきた。ときに尊大な態度で汚い言葉も使う一方、親しみやすさを演出して地方住民や高齢者の人気を得てきた。
 
また、ウクライナ問題でEUによる対ロシア制裁に反対し、中国との関係改善を重視。隣国ハンガリーやポーランドの指導者と並び、EUには懐疑的な姿勢だ。
 
チェコで実際に政権を担うのは首相だが、大統領は首相を指名して組閣を命じる役割があるほか、その発言は社会的影響力を持つ。(後略)【1月28日 朝日】
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【「現代の介入は戦車ではなく、プロパガンダやフェイクニュース、選挙に影響を及ぼす手法によるものだ」】
ソ連の衛星国という立場にあった50年前のチェコ(当時はチェコスロバキア)は、東西冷戦のなかにあって、ソ連に代表される強権的・官僚主義的社会主義に対し、「人間の顔をした社会主義」を掲げる共産党体制内の民主化運動が一時的に成功し、「プラハの春」とも称されました。

しかし、この「プラハの春」は、ソ連主導のワルシャワ条約機構軍の軍事侵攻で潰されることにもなります。

****プラハの春****
1968年、「人間の顔をした社会主義」を掲げるドプチェクの指導の下で展開された、チェコスロヴァキアでの民主化運動。
 
チェコスロヴァキアでは1948年の2月事件で共産党政権が成立してチェコスロヴァキア社会主義共和国となって以来、スターリン批判の受容が遅れて党改革が行われず、1960年代からは経済面での停滞から成長の低下が問題となってきた。

特に文学者が知識人、学生の中から民主化と自由化を望む声が強まり、民主化運動による政府批判が高まった。
 
1968年春、チェコスロヴァキア共産党は第一書記にドプチェクを選任、改革派を登用して民主化に乗り出した。

まず3月には検閲制度を廃止して言論の自由を保障し、ついで4月には新しい共産党行動綱領を決定して「人間の顔をした社会主義」を目指すことが打ち出された。

これを受けてチェコスロヴァキア内の議論はまさに百花斉放を様相を呈し、新たな政党の結成の動き現れ、首都プラハの町にはミニスカートなどの西欧風の諸文化が大量に開花した。

また6月には70人あまりの知識人が署名して「二千語宣言」が発表され、ドプチェク路線を強く支持し、旧来の体制に戻ることに強い反対が表明された。これら1968年春の一連の自由化の爆発を「プラハの春」と言っている。 
 
しかし、夏になると8月20日にソ連のブレジネフ政権は、ワルシャワ条約機構5ヵ国軍を侵攻っせて軍事弾圧に踏み切り、市民の抗議の嵐の中をプラハの中心部を制圧、ドプチェクらを連行した。

このチェコ事件によってプラハの春は踏みにじられてしまった。【「世界史の窓」】
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当時は中学生で、政治的なことはよくわかりませんでしたが、新しい時代を喜ぶプラハ市民の映像などをニュースで目にしたような記憶があります。

また、「二千語宣言」の署名者に、東京オリンピックで「オリンピックの名花」とも讃えられた女子体操の女王、チャフラフスカ氏の名前があったことも印象に残りました。

****プラハの春」弾圧から50年、犠牲者を追悼 反ロシアデモも チェコ***
チェコとスロバキアは21日、社会主義体制下にあったチェコスロバキアで巻き起こった民主化運動「プラハの春」がソ連の軍事介入で制圧されてから50年を迎える。

チェコの首都プラハでは弾圧の犠牲者を追悼する式典が企画されている一方、これを機に当時と現在の政治状況の類似性を指摘する動きもある。(中略)

■「1968年と今は似ている」
「プラハの春」弾圧50年の前夜となる20日午後、チェコの首都プラハのロシア大使館前では複数の非政府組織が主催する抗議デモが行われ、300人ほどが「私たちは忘れない」「ロシアの帝国主義を阻止せよ」「自由は真実の中にある」などと書かれた横断幕を掲げて参加した。
 
デモを主催した親欧州連合派の市民運動NGO「パルス・オブ・ヨーロッパ」のトマシュ・ぺジンスキー氏はAFPの取材に、「プラハ市民は断固として占領を拒否したのに、一部のロシア人はいまだに占領は国際的な支援だったと思い込んでいる」と述べ、ソ連時代の人々ように、帝国主義を続行するロシアの現政権に立ち向かうようロシア国民に呼び掛ける手紙を書いたことを明らかにした。
 
ぺジンスキー氏は「50年前のような介入は現在も起きている。ただし現代の介入は戦車ではなく、プロパガンダやフェイクニュース、選挙に影響を及ぼす手法によるものだ」と指摘する。
 
抗議デモではチェコ国旗や欧州連合、北大西洋条約機構の旗のほか、ウクライナの旗も見られた。ウクライナ国旗を手にした参加者は「ソ連共産党による1968年の(プラハ)侵攻と、オリガルヒ(新興財閥)が実質的に権力を独占している現在のロシアの状況とは確実に似ている」とAFPに語った。

■親ロシア派のチェコ大統領は沈黙
チェコ公共テレビは21日、昼間は「プラハの春」弾圧の特集番組のみを放映し、夜にスロバキアのアンドレイ・キスカ大統領による記念演説を放送する予定だ。
 
一方、親ロシア派で元共産党員のチェコ大統領、ミロシュ・ゼマン氏は追悼行事には一切参加しないと表明しており、「プラハの春」弾圧50年に関しても沈黙を貫いている。【8月21日 AFP】
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ソ連の戦車で民主化運動を踏みつぶされ、大勢の犠牲者(弾圧の初日だけで約50人のチェコスロバキア人が死亡。ソ連占領下の犠牲者は約400人とされる【同上】)を出した事件に対し、(国民の過半の支持で就任した)親ロシアの大統領が沈黙を守る・・・・世の中は変わるものです。

ロシア 3分の1が「侵攻は正しかった」】
ロシア国内にあっても、チェコへの軍事侵攻を正当化する見方が増えているとも。

****プラハの春「侵攻は正しい」 ロシア世論調査で3分の1****
50年前の1968年8月に当時のチェコスロバキアにソ連軍が侵攻し、「プラハの春」と呼ばれた民主改革を圧殺した事件について、ロシアの独立系世論調査機関「レバダ・センター」は21日、ロシアの回答者の3分の1が「侵攻は正しかった」とした調査結果を発表した。

当時のチェコスロバキアの民主改革を「反ソ分子による政変」「西側による策動」と否定的にとらえる回答は計44%にも及んだ。
 
「プラハの春」ではチェコスロバキアの共産党政権が自ら民主化を進め、「人間の顔をした社会主義」を目指した。しかし、ソ連など社会主義諸国からなるワルシャワ条約機構軍は68年8月20日深夜にプラハに侵攻。

抵抗した多数の市民が犠牲になり、後に東欧革命が起きた89年にはソ連も当時の侵攻を誤りと認めた。
 
今回の調査で「プラハの春」へのロシア国内の否定的な見方は10年前の同じ調査より18ポイント伸びた。

「ソ連支配の体制に対する反乱」や「民主改革の試み」と肯定的に見る回答は28%で、侵攻を「正しくなかった」としたのは19%。最初の質問で「プラハの春」について「何も知らない」と答えた人は10年前より9ポイント減って46%だった。
 
ロシア国内では、2014年のクリミア半島併合を機にプーチン大統領の支持率が急上昇した。プーチン氏は旧ソ連国で起きる民主化運動や国内の反政権運動をしばしば「西側諸国の干渉」と批判し、世論でも欧米諸国のロシア批判に対する反発が強まっている。【8月21日 朝日】
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カラー革命を「西側諸国の干渉」による脅威と見るプーチン政権下にあっては、当然と言えば当然の流れでしょうか。


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