孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ「銃社会」 土壇場でとりあえず回避された「3D銃」 今後問題になる認知症患者の銃保有

2018-08-06 21:54:13 | アメリカ

(画像は【i.huffpost.com 】より 3Dプリンターで製造した銃は、日本でも2014年に事件化したことがあります。)

銃規制に立ち上がった高校生 「銃文化をぶち壊す文化大革命を」】
銃社会アメリカでは、銃による悲劇が繰り返し起きようとも一向に銃規制が進まない、それどころか、事件が起きるたびに銃を求めて銃器店に向かう人が増えるという現実があることは、今更の話です。

そうした中にあって、今年2月に17人の犠牲者を出した米フロリダ州パークランドの高校での銃乱射事件を受けて、事件を経験した高校生らを中心にした銃規制を求める動きが、注目もされています。

****米国の歴史初、銃規制に立ち上がった高校生****
「これは政治問題ではなく、ボクらの命の問題だ」

コロンバインから9年後に起こった高校銃乱射事件
(中略)映画にもなり、あれだけ騒がれたのに、コロンバインの高校生による大規模な抗議デモや集会は実施されていない。

当時の記録をたどってみても、事件直後、2人の犠牲者を悼む追悼が行われただけである。当時高校生だった人たちは今や37歳前後。パークランドの高校生の両親の世代だ。

「銃文化」をぶち壊す「文化大革命だ」
しかし今回はどうも様相が一変している。
 
パークランドの高校で起こった乱射事件で辛うじて助かった高校生たちがネットを使って全米中にツィートした。
 
「クラスメートが血だらけになって死んでいった。ボクはその横で生き残った。メディアは死傷者数を取り上げて騒いでいる。でもボクにとってはこれは数字なんかんじゃない」
 
「実際にさっきまで話していたクラスメートが死んじゃったのだ。これが銃の怖さだ。どうしてこんなことが起こるんだ」
 
「大人が何もしないって言うのなら、ボクら若い世代が動き出そうよ。銃文化をぶち壊す文化大革命を起こそうよ」
 
全米各地で高校生主催の集会やデモが起こっている。
 
ハリウッドの著名な俳優や映画製作者たちが高校生の集会開催のために資金援助もした。俳優のジョージ・クルーニ氏、テレビ司会者のオプラ・ウィンフリー氏やスティーブ・スピルバーグ氏は合わせて200万ドルを寄付した。

だが、大人たちの反応は鈍い。ドナルド・トランプ大統領は銃規制に向けて指導力を発揮しようとはしない。教師は武装すべきだと頓珍漢なことを言っている。
 
全米ライフル協会のお偉方の顔色をうかがう米議会の共和党議員や一部民主党議員たちは抜本的な銃規制措置を取るような動きは見せていない。
 
中間選挙に向けて高校生たちは高校生たちに「有権者登録」をするように呼びかけている。「銃規制に不熱心な政治家を落とせ」と訴えている。(後略)【7月10日 高濱 賛氏 JB Press】
********************

****高校生・全米ライフル協会前で銃規制訴え****
銃の乱射事件で17人が犠牲になった米国南部・フロリダ州の高校の生徒たちが銃を持つ権利を擁護する有力なロビー団体NRA・全米ライフル協会の前で集会を開き、銃の規制を強化する必要性を訴えた。

高校生たちは秋の中間選挙で銃規制に反対する政治家を落選させようと呼びかける活動をしている。

これに対しNRAの前には銃を持つ権利を主張する団体も集まり、自分の身を守るために銃を持つべきだと訴えた。

高校生たちは今月半ばまでに全米60以上の都市を回る予定。【8月5日 BSニュース】
***********************

この高校生らの取り組みが何らかの変化を勝ち取ることができるのか・・個人的には残念ながらあまり期待はしていません。高校生らの動きが注目されるというのは、それ以外に大した動きがないということの裏返しでしょう。

3Dプリンターでの銃製造 情報公開を認めたトランプ大統領も「あまり道理にかなっていない」】
ただ、銃社会アメリカにあっても、3Dプリンターで製造番号もない、金属探知機にも見地されないプラスチック製の拳銃を自宅で作るというのは、さすがにまずいのでは・・・・といった認識はあるようです。

****米ワシントン州など、3Dプリンターでの銃製造認めたトランプ政権を提訴****
米国で(7月)30日、3Dプリンターでプラスチック製の拳銃を作る権利を認める決定を下したトランプ政権を相手取り、ワシントン州など8州と首都ワシントンが合同で決定に対する差し止め命令を求めてシアトルの連邦裁判所に提訴した。
 
コネティカット、メリーランド、マサチューセッツ、ニュージャージー、ニューヨーク、ペンシルベニア、オレゴン、ワシントンの8州とコロンビア特別区(首都ワシントン)、決定は銃器を規制する州の権利を侵害するものだと主張している。
 
3Dプリンター銃をめぐってはテキサス州の銃権利活動家コーディー・ウィルソン氏が、合衆国憲法修正第2条が保証した米国民が銃を保有する権利は個人が自宅で銃を製造する権利にも拡大されるべきだと主張。

長い法廷闘争を経てトランプ政権は今年6月、ウィルソン氏の主張を認めた。
 
これにより8月から、一台2000ドル(約22万円)程度の3Dプリンターさえあれば誰でもプラスチック銃を一丁当たりわずか数百ドル(数万円)で製造することが可能になる。

だが3Dプリンターで製造した銃には製造番号がなく、当局の管理や規制は及ばない。さらにプラスチック製であるため空港や公共施設に設置された金属探知機で検知できないと安全対策専門家らは危惧している。
 
30日の提訴を主導したワシントン州のボブ・ファーガソン司法長官は、3Dプリンターでの銃製造を認めたトランプ政権の決定について「違憲で違法だ。率直にいって恐怖を感じる」と述べ、「この前代未聞の動きは国民の安全にとって破滅的なだけでなく、危険人物の手に銃器が渡らないよう規制する州法をもぶち壊すものだ」と付け加えた。【7月31日 AFP】
******************

3Dプリンターでの銃製造を認めた立場のトランプ大統領自身も、「あまり道理にかなっていない」と、弁解じみたことをツイートしています。

***************
この問題を巡り、トランプ大統領も31日、強力な銃ロビー団体「全米ライフル協会(NRA)」と話をしたことを明かし、3D銃の製造方法をネット公開することに対して疑問を呈していた。

「3Dプリンターで製造されたプラスチック銃が一般に販売されることについて目を向けてみた。NRAとすでに話したが、あまり道理にかなっているようにはみえない」と大統領はツイッターに投稿した。【8月5日 Newsweek】
***************

なお、3Dプリンター銃とはどういうものなのかは、以下のようにも。

***************
3Dプリンター銃とはどういったものか、またどのように作られるのかを以下にまとめた。

●3D印刷とは、3次元のデジタルモデルをベースに立体物を作る技術であり、プラスチックや金属など材料の層を積み重ねて造形する。1980年代に初めてこの技術の特許が認められた。2009年に初めて商業用3Dプリンターが発売され人気となった。

●業務で使われることが多いが、個人でもデスクトップ3Dプリンターの購入は可能だ。調査会社コンテクストによると、デスクトップ3Dプリンターは2015年以降、100万台以上売れている。価格は数百ドルから数千ドルと幅広い。

●ほぼ完全に3Dプリンターで製造された世界初の銃「リベレーター」は2013年に発表された。撃針以外は3Dプリンターで作られた部品で、装弾数は1発のみ。従来の小火器に使用される金属部品と3Dプリンターによって作られた部品を組み合わせたハイブリッド設計だ。

●リベレーターのような自家製の銃はしばしば「ゴースト銃」と呼ばれる。未登録で追跡できず、製造番号がないからだ。

●リベレーターは、ディフェンス・ディストリビューテッドの創設者で、自称「クリプトアナキスト(暗号自由主義者)」のコーディ・ウィルソン氏が開発。同団体のウェブサイトによると、「アメリカのライフル愛好家のために」活動しているという。

同団体はまた、自動小銃AR─15のロウワーレシーバーなど、軍事レベルの武器部品を組み立てることができる工作機械も販売している。

●米連邦法の「検知されない銃器法」(1988年)は、空港や裁判所といった公共の場で金属探知機で検知できる十分な金属を含まない銃を禁止しているが、金属部品を取り外し不可とすることは義務付けてはいない。
3Dプラスチック銃メーカーは、機能には影響しない金属を挿入することで、この抜け穴をうまく利用している。【8月5日 Newsweek】
*********************

この3Dプリンターで製作する銃の設計図のオンラインでの公開については、シアトルの連邦裁判所が仮差し止め命令を出し、土壇場で回避されています。

****米連邦地裁、3Dプリンター銃の設計図公開に仮差し止め命令****
米ワシントン州シアトルの連邦裁判所は7月31日、3Dプリンターで製作する銃の設計図のオンラインでの公開について仮差し止め命令を出した。

テキサス州の非営利団体「ディフェンス・ディストリビューテッド」が、5年に及ぶ法廷闘争の末にドナルド・トランプ政権と和解したことを受けて実施しようとしていた設計図の公開は土壇場で当面阻止された。

ワシントン州など8州とコロンビア特別区(首都ワシントン)は7月30日、トランプ政権とディフェンス・ディストリビューテッドの和解内容は「恣意(しい)的で根拠を欠いている」として、連邦政府を相手取り同連邦地裁に提訴していた。

シアトル連邦地裁のロバート・ラズニク判事は、3Dプリンター銃の設計図公開に対する「一方的緊急差し止め命令」を求める原告の申し立てを認め、今月10日に審理を開くことを決めた。【8月1日 AFP】
**********************

今後については、10日の審理次第ということでしょうか。

ただ、すでにこの「3D銃」の製造方法については情報が洩れており、すでに多数のダウンロードがなされているとも。

****3Dプリンター銃の「設計図」は公開前から1000回以上ダウンロードされていた****
(中略)
問題の公開主体は非営利団体「ディフェンス・ディストリビューテッド(DD)」で、銃の製造方法を8月1日に公開する予定だった。

だが、ペンシルベニア州司法長官のニュースリリースによると、実際にはこの期日前から情報が漏れており、一時差し止め命令が出た段階ではすでに1000回以上ダウンロードされていたという。

DDが製造方法を公開する予定だった銃は短銃やライフルなど10数種類あるが、情報が漏れたのは、アメリカで繰り返し銃乱射事件で用いられてきた攻撃用ライフル「AR-15」のデータだった。

シャピロは3D銃の情報について、「ペンシルベニア州の住民に、即時かつ不可逆的な悪影響を与える」と懸念を表明した。「(銃の製造方法の公開は)、銃の販売および購入に関する州法を無視した無謀な行為だ」

「製造番号もなく追跡不能なこれらの銃が、ひとたび我々の住む街や学校に出回れば、回収は不可能だ。今日この州では3D銃のファイルをダウンロードをできなくする法的措置をとった。公共の安全と常識の勝利だ」と、シャピロは言った。

DLには身元証明も不要
DDのサイトを利用するにはユーザー登録が必要だが、求められる情報はユーザー名、パスワード、メールアドレスの3つだけ。

銃の設計図のダウンロードサービスの利用料は1カ月で5ドル、無期限のアクセスには1000ドルを払う。シャピロによると、同サイトでは年齢を証明するものや、有効な銃所持許可証、銃の携行許可番号などの提示は求められない。

DDの弁護士ジョシュ・ブラックマンはCNNに対し、AR-15の設計図が1000回以上ダウンロードされたことを認めた。それが29日以前のことかどうかについては明言を避けた。「これは銃の問題ではなく、言論の自由の問題だ」と、ブラックマンは言う。

3D銃や自作の武器には製造番号がなく追跡できないことから、「ゴースト・ガン(幽霊銃)」と呼ばれる。プラスチック製なので金属探知機に探知されにくい。

DDを創設したコーディー・ウィルソンは、2013年にも3D銃「ザ・リベレーター(解放者)」の製造方法をネットで公開したことがある人物だ。

CNNによると、米国務省は当時ウィルソンに対し、武器国際取引に関する規則(ITAR)に違反するとしてデータの削除を命じている。【8月1日 Newsweek】
*******************

先日のTV報道を観ていると、リベラルな意見が多いニューヨークの街頭インタビューにあっても、この「3D銃」問題に関し、“言論の自由”の観点を重視する声も少なくないようです。

個人的には、そういう問題ではないように思うのですが。

65歳以上の高齢者の45%が自宅に銃を保有
アメリカでは、精神疾患患者やDVの前歴があるような者による銃購入がしばしば問題になりますが、認知症患者による銃保有という大きな問題もあるようです。

日本では高齢化社会に伴い、高齢者による自動車運転が問題になっていますが、高齢者、ひいては認知症患者が増大しているのはアメリカも同じで、自動車運転もさることながら、銃保有をそのまま認められていることによる事件も起きています。

“二〇五〇年までに、全米で「自宅に銃を保有する認知症患者」が八百万~一千二百万人に達するという推計があり、連邦や州政府に対策を求める声が強まっている。”【「選択」8月号】

“現在でも米国では、六十五歳以上の高齢者の四五%が自宅に銃を保有しているという。目身の銃を保有しているのが約三〇%で、残りは同居人が保有している。”【同上】

元警察関係者で銃へのこだわりが強く、銃の手入れを日課としている高齢者が、銃に触れている間に意識が混濁し、配偶者を「お前は誰だ!」と撃ってしまう・・・といった事故も。

“カイザー・ヘルス・ニュースが、ニュース報道など公になったケースだけで追ったところ、一二年以降で十五件が、認知症患者による他殺事件と確認された。
 
犠牲者はすべて、妻や息子、娘などの家族か、自宅を訪ねた介護士など、「患者に最も近い人たち」だった。

アレッシア記者は「調査サンプルは非常に少ない。実際には、認知症患者による他殺の数はもっと多いはず」と言う。”【同上】

認知症患者の銃保有を禁止しているのはハワイ州だけとかで、多くの州で規制が全くない現実があります。

現実に起きている銃関連の事件に認知症患者がどれだけ関与しているか、詳しい統計数字すらなく、それは「全米ライフル協会(NRA)」の圧力によるものとも。

****近親者「射殺」の悲劇が増加中 認知症患者が「銃保有」する米国****
・・・・だが、米国では高齢者も、認知症患者も、銃保有者も増えている。

意識が混濁した高齢者が、自分にとって一番犬切な人たちを射殺してしまうという、形容しがたい悲劇は今後もたびたび起きるだろう。
 
ただし、それは「不可避の悲劇」ではない。認知症患者の銃保有の危険性を理解し、適切な対策さえ導入すれば、比較的容易に防げるものなのである。【同上】
**********************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする