
(カメラに映った人の顔を次々と識別し、年齢や性別、その時の感情を推測する【10月9日 GLOBE+】)
【米中対立の当面の行方】
貿易問題、北朝鮮、南シナ海等々で米中間の対立が激化しているのは連日報道されているところです。
****【米中貿易戦争のエスカレート】世界秩序決めるのは誰か ニューヨーク・タイムズ(米国)****
米国が9月下旬、中国からの輸入品に新たな追加関税を課す制裁第3弾を発動し、米中の「貿易戦争」がエスカレートしている。
米紙は、これが21世紀の世界秩序を決するライバル同士の対決だと指摘。中国では、米国に譲歩する必要はないという強硬論に加え、米国と日欧の分断を図る論調が出ている。(中略)
貿易問題で米国と中国が全面的な対立関係に入り、米紙ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、トーマス・フリードマン氏は9月25日の同紙(電子版)で、「誰が21世紀の世界秩序のルールを決めるのか。それが試されるときがきた」と述べた。
トランプ米政権が前日の24日、知的財産権侵害を理由に、中国からの年2千億ドル(約22兆円)相当の輸入品に追加関税を課す制裁措置を発動。
フリードマン氏は、米中が「本格的な貿易戦争」に突入するとの見通しを示した。同氏は「長く支配的地位にあった経済・軍事超大国」の米国と、「上昇するライバル」の中国との衝突は避けられなかったと指摘。将来の国力を決定づける通商分野で、対立が先鋭化した形で現れたと分析した。(中略)
トランプ米大統領は(中略)懸案のNAFTA改定に道筋をつけたことで、トランプ政権が今後、中国との「貿易戦争」にいちだんと力を傾けるとの観測が浮上している。
今月1日の米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は、NAFTAを改定した「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」により、米国は「中国との戦闘に用いる弾薬を手にする」と述べる。
協定には、自動車・関連部品の製造を北米地域に回帰させることを狙った条項が入り、中国の「世界の工場」としての地位に打撃を与える可能性がある。
米政権が、新貿易協議入りで合意した日本や欧州連合(EU)を「中国に対抗するパートナー」とし、次第に「中国包囲網」を狭めていく−との見通しも同紙は示した。【10月8日 産経】
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****米中対立激化、貿易分野を超え「新たな冷戦時代」に突入か****
2018年10月7日、参考消息網は、ペンス米副大統領がこのほどワシントンで行った演説で、中国が広域経済圏構想「一帯一路」を通じて影響力を広げる「債務外交」を展開していると強く批判したことについて、「米中対立は貿易分野を超え、新たな冷戦を引き起こす恐れがある」と懸念する記事を掲載した。
日本メディアによると、ペンス氏は演説で、11月の中間選挙を前に、中国が秘密工作やプロパガンダ機関によってトランプ氏に反対する世論誘導を目論んでいると断定。「中国へ米国の民主主義に干渉している」と強く批判した。
これを受け、中国のネット上では「1972年のニクソン大統領(当時)の中国訪問時以来の厳しい演説内容だ」、「新たな冷戦時代の幕開けが近い」などの声が広がった。
一方、中国外務省の華春瑩(ホア・チュンイン)副報道局量は5日に談話を発表。ペンス氏の批判に対し「中国の内外政策に数々のいわれのない非難を行った。断固反対する」と強く反発した。【10月8日 レコードチャイナ】
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“「長く支配的地位にあった経済・軍事超大国」の米国と、「上昇するライバル」の中国との衝突は避けられなかった”・・・・基本的にはそういう話でしょう。古今東西、支配者と台頭するライバルの間の軋轢は不可避とも言えますので。
今後については、一方的にエスカレートしていくのか、妥協が図られるのか・・・そのあたりは不透明ですが、お互いに相手を必要としている関係でもありますので、その利益が損なわれ、世界全体が不安定な状態に陥るようなところまではいかないのでは・・・と、個人的には思っています。両国指導者もそこまで愚かではないでしょう。
ただ、そのことは、10年以上前に中国人民解放軍高官の話として話題にもなった“太平洋東西分割論”みたいな形にもなって、日本の置かれる国際環境は・・・・という話にもなるのかもと考えています。
【長期的には、AIで優位に立つほうが国際的にも優位になるのでは・・・中国に圧倒的な有利なビッグデータ利用】
上記は、現在の対立のとりあえずの落ち着きどころの話ですが、より長期的には、米中どちらが世界への影響力を行使する立場にたつのかという話は依然として残ります。
現在は、経済的にも、軍事的にも、技術面でもアメリカの優位は間違いありませんが、その優位がいつまで保たれるのか?(アメリカのその不安感から現在の米中対立を仕掛けているのでしょう)
20世紀後半からの社会をコンピュータやインターネットが基本的に変えたように、長期的にみた場合、世界のあり様を変えていくのはAI(人工知能)の技術ではないかと思います。
おそらくAIで指導的立場にたつ国が、国際関係でも優位な立場にたつことになるのではないでしょうか。
イノベーションが進むAIの世界にあっては、AIそのものに関する技術もさることながら、非常に重要なのはAIがどのようにどれだけのデータにアクセスできるのか、そのデータの質と量ではないでしょうか。
一定に自己学習能力を備えたAIであれば、豊富なデータにアクセスできれば、最初は陳腐な対応しかできなくても、やがては人間の能力をはるかに超えた対応も可能となるでしょう。
****「新しいもの好き」が背を押す中国の技術革新****
「女性 年齢:25 楽しそう」「男性 年齢:24 落ち着いている」
6月、上海市であった家電の見本市「CES ASIA」。カメラでとらえた顔がディスプレーに映し出され、分析結果が添えられていた。ネット通販大手の京東集団が開発している人工知能(AI)の画像認識を使ったシステムだ。
客の性別や年齢、表情などを読み取り、ビッグデータを使った分析結果から、その人が潜在的に何を欲しいのかを分析し、薦めようとしている。つまりは「欲望の掘り起こしシステム」だ。
試してみると、読み取った顔の分析結果から、「成熟した自信」「非凡な器」……と歯の浮くような賛辞が表示され、香水の写真が出てきた。香水はつけないので全く興味がない。賛辞の内容を含め、精度はまだまだなようだ。
それでも、展示ブースは黒山の人だかりだ。列に並んでまでして自分の顔を読み取らせ、AIのお薦めは何か知ろうとしている。
通算2年半、中国で暮らして感じるのは、中国人の新しい物好きで、便利で面白いと思えばすぐに飛びつく傾向だ。テクノロジーは消費を中心に、中国人の生活を急速に変えつつある。【10月9日 GLOBE+】
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こうした技術も今は“笑い話”レベルでも、やがては街を歩く人々の顔認証(および個人に関する膨大な蓄積データ)から犯罪・テロを起こしそうな人間をピックアップするような技術にも進化し、犯罪・テロを起こす前に予防的に拘束するといった近未来ディストピア的な社会にもなるのでは・・・とも考えています。(ドラマの観すぎかもしれませんが・・・)
そうした技術の進歩には不可欠な豊富なデータアクセスに関しては、個人情報に関するプライバシーが厳しく制約されているアメリカ企業は不利な立場にあります。
****グーグルの情報隠しに厳しい批判 「情報流出より重大」****
米グーグルは8日、同社のソーシャルネットワーク「Google+(グーグルプラス)」上でソフトに欠陥があり、約50万人分の個人情報が流出したおそれがあると公表した。こうした事態を受け、グーグルは、消費者向けのグーグルプラスを来年8月末で閉鎖することも打ち出した。
グーグルは8日の発表で「消費者の期待に応えるグーグルプラスを作り、維持するのは、課題が大きい」として、「消費者向けのグーグルプラスを閉鎖する」と発表した。企業向けのサービスは残すという。
グーグルによると、欠陥が分かったのは今年3月。利用者が公開していない名前や電子メールのアドレス、職業、性別、年齢といった個人情報が、外部のソフト開発者から見られるおそれがあったという。
グーグルは、個人情報流出のおそれが分かった3月の時点ですぐにソフトの欠陥を修復した、と説明。「悪用された形跡がない」などとして公表しなかったとしている。
ただ、米国内では、グーグルの「情報隠し」に厳しい批判が出ており、米メディアは公表しなかった経緯を詳しく報じている。
米ウォールストリート・ジャーナルは8日朝、「グーグルは大量の個人情報流出を今春分かっていたにもかかわらず、米議会などからの批判を恐れ、公表しないことを選んだ」と報道。米経済専門テレビCNBCは「問題自体より、情報隠しをおこなったことのほうが重大だ」という専門家のコメントを紹介した。(中略)【10月9日 朝日】
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一方、中国では欧米とは異なる社会体制、個人情報の秘密保持にあまり関心のない(あるいは、もともとそうした権利などは想定されない社会に生活していると言うべきか)国民、さらには前出記事にもあるような“新しいもの好き”な国民性などによって、14億人もの大量データに容易にアクセスできる環境があり、アメリカに比べて決定的に優位な立場にあります。
“ビッグデータはAI時代、産業のオイル(原油)と言われる。「中国には膨大なデータがある。データが多ければ多いほど、良い結果が得られる。もしデータがオイルならば、中国は新たなサウジアラビアだ」”【前出GLOBE+】
****人口14億のビッグデータを独り占めに 中国はデータで世界を征するか****
(中略)
■AIによる治安維持、進む実用化
中国でAIに注目しているのは企業だけでない。むしろ、実践がよく目につくのが政府による治安維持だ。
画像認識を使い、カメラに映った逃亡犯をコンサート会場で逮捕。春節の人波でごった返す駅で、顔認識機能付きのサングラスをかけた警察官が行き交う人々に目をこらす。
公安部門に画像認識技術を提供している北京のベンチャー北京曠視科技は、自社の技術を使い、「5000件以上の犯罪の解決と、1万人以上の指名手配犯の検挙に貢献した」(蒋燕副総裁)という。
世界経済フォーラムのAI部門のトップ、ケイ・ファースバターフィールドは、AI分野で中国は二つの優位性があるという。
一つは資金面だ。「中国が北京の西のAI研究施設に投ずる資金だけで21億ドル(約2400億円)で、米国政府の16年のAI投資12億ドルよりはるかに多い。中国ではAIの発展が国策だからだ」と指摘する。中国政府は17年、「30年には世界の主要AIセンターになる」とうたう計画を策定した。
もう一つはAIの応用だ。「データが手に入りやすいほど、AIの応用領域は広がる」。顔認証、買い物、金融取引、果ては治安活動まで、いろんな場面で使われている。
それは、個人情報の保護に先進国ほど敏感でない国民性が支えている。14億の人口を抱える中国は「より大きなデータセットで、AIを運用できる」と言う。
■膨大なデータで「新たなサウジアラビアになる」
ビッグデータはAI時代、産業のオイル(原油)と言われる。「中国には膨大なデータがある。データが多ければ多いほど、良い結果が得られる。もしデータがオイルならば、中国は新たなサウジアラビアだ」。
中国のAIの第一人者で、元グーグル中国法人トップの李開復・創新工場会長は、9月のイベントでそう語った。人々の好奇心は「ディープラーニング(深層学習)」といった技術を通じ、AIを磨く材料になる。
中国は国内の膨大なデータを囲い込もうとしている。中国政府は17年に施行したサイバーセキュリティー法で、国家安全の目的から、国内で集めたデータの国外への持ち出しを制限した。
中国工業情報化省は「国外企業の中国市場への参入を制限するためではない」というが、中国によるデータ独り占めにつながる。
巨大な市場が生み出す膨大なデータを積極的に活用しようとする企業。それを中国共産党と政府の産業政策が後押しする。中国は今、米国と並ぶもう一つのAI大国への道を猛進している。(後略)【10月9日 GLOBE+】
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AIが支配的となる社会における勝者は中国ではないか・・・・というのが、今日の結論です。
【スマホ決済によるキャッシュレス社会】
近未来的なそうした話は別として、現在、中国人が自国の先進性を示すものとして“誇り”に感じているのが、スマホ決済の普及です。
“現在の中国ではスマートフォンに表示したQRコードを相手のスマホや専用機器で読み取るなどして支払う。この仕組みをネット通販大手のアリババ集団系のサービスが採用し、一気に広がった。2015年の中国のキャッシュレス決済の普及率は60%。日本の18%はおろか、米国の45%も優にしのぐ。”【同上】
日本を訪れる中国人観光客が増大する中で、日本への認識を改めたという話と並んで、なぜ日本はスマホ決済が普及せず、いまだに現金を重視しているのか・・・という感想がよく聞かれます。
スマホ決済は便利ですが、巨大地震で電気などのインフラが崩壊すると使えなくという脆弱性も、先の北海道の地震の際には明らかになっています。
集められた個人データがどのように扱われるのかも気がかりな点ですが、中国ではそういうことにはあまり関心はありません。
まあ、問題はあるにしても便利なことは間違いないでしょう。しかし、中国を旅行する外国人は使用できません。(中国金融機関に口座ありませんので)
7月に中国を旅行した際に、ガイド氏にその話をすると、「いえ、現金だって使えますから問題ありません」との返答。
確かに、現金での買い物・飲食に問題はありませんでした。
しかし、ある町の店でミネラルウォーターを買おうとしたところ、スマホ利用を前提にした店にはつり銭の準備がなかったのか、1元のおつりを探して店員があちこち引き出しを探す騒動も。(今考えると、スマホ決済の問題ではなく、深夜だったので、現金の整理をした後だったのかも・・・・)
女性店員からは「なんで、スマホを使わないのよ!」(言葉はわかりませんが、QRコードを指し示していましたので、多分、そんなことを言っていたのでしょう)と軽くなじられる場面もありました。
外国人旅行者だけでなく、中国にもスマホを持たない高齢者などは存在します。
そうした“弱者”の利便性にあまり頓着しないのが中国流です。(日本なら、そうした問題がクリアされないと普及には歯止めがかかりますが)
****モバイル決済普及の中国、釣り銭ないタクシー運転手が現金払いの高齢者を罵倒****
2018年9月27日、新浪新聞の微博(ウェイボー)アカウント・頭条新聞によると、タクシーを利用した高齢者が現金で支払ったところ口論に発展した。
22日、広東省広州市内で、高齢男性がタクシー代を50元札で支払おうとしたが、運転手はお釣りがないためモバイル決済での支払いを要求。男性は「微信(WeChat)は持っていない」と怒って去ろうとした。
そこで運転手はタクシーから降りて男性を追い掛け再び口論に。運転手はあくまでモバイル決済を要求したが、男性は「微信は持っていない」と拒否。結局、運転手は近くのコンビニで両替をしてお釣りを渡そうとしたが、再び口論となり、運転手は男性にお釣りを投げつけた。結局、釣り銭は道路に落ちたままで双方が立ち去った。
これに対し、中国のネットユーザーから「自分がお釣りを準備していなかったのに(運転手は)ののしるのか」「このおじいさんは支払いを拒否しているわけではない。運転手の方が受け取りを拒否しているのに、なぜののしるのだ?」「この運転手はちょっとひどい。みんながモバイル決済するわけではない」など、運転手を非難するコメントが多く寄せられた。
また、「人民元とは支払いのためにあるもの」「人民元の受け取り拒否は違法だよ。この運転手は分かっているのか?」などの意見もあった。【10月1日 レコードチャイナ】
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「人民元の受け取り拒否は違法だよ」・・・・私も、「そうだよね。それが法的に裏付けられた貨幣というものだよね」と思ったのですが、日本でも最近は「現金支払いお断り」の店舗が出現しているそうなので(田舎住まいなので見たことはありませんが)、事前にことわりさえすれば、あながちそういうことでもないようです。
****気がつけばキャッシュレス社会 現金お断りの店も 決済手数料、引き下げ進む****
日本のキャッシュレス決済比率は18%(2015年)。政府はこの比率を25年までに、40%まで引き上げようとしている。現金志向が根強く残る日本で、果たして実現できるのか。(中略)
■「現金お断り」の実験店
JR総武線の馬喰町駅(東京・中央)の近くに、外食大手ロイヤルホールディングスが昨秋開いた、「現金お断り」の実験店がある。
レストランに近づくと「CASHLESS」と書かれたボードが目に入る。実際に店舗で現金は使えず、支払いはクレジットカードや電子マネーなどに限っている。会計はスタッフを呼び出して、テーブルで決済するので、混雑時でもレジで待たずに済む。
店舗にとってもメリットは大きい。閉店後に毎日行っていた精算や、釣り銭の準備といった作業がなくなる。「現金を扱う仕事は手間がかかるうえ、精神的な負担も大きかった」(ロイヤルHDの中西喜丈氏)という。
人手不足が深刻な外食業界ではキャッシュレス化が、従業員の負担軽減にも直結する。(後略)【7月29日 日経ヴェリタス】
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実をいうと、私はこれまで必要性を感じず、まだガラケーです。でもスマホがないと生活しにくい社会が日本でもひろがりそうです。この年末に2年縛りがとけますので、そのときにスマホを購入することにしています。