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(【10月23日 朝日】)
【中国当局、日本からのODAを評価 「日本は中国の発展の貢献者だ」との報道を指示】
日中関係が急速に関係強化・改善の方向に動いていることは周知のところで、この流れは2011年から7年ぶりの日本首相訪中となる、また、日中平和友好条約発効40周年という節目の時期ともなる、25日からの安倍首相の訪中で一層加速するものと思われます。
中国にとってはアメリカとの対立激化があり、日本にも、何を言い出すかわからないトランプ政権、一向に改善しない北方領土をめぐる対ロシア関係といった事情も背景にあって、双方が関係強化を求めている・・・とよく言われています。
そうした現在の国際情勢はともかく、日本にとって中国は一衣帯水の隣国、しかもこれからの世界をリードすると目されている「大国」であり、1500年だか2000年だかに及ぶ交流の歴史、その間の文化的影響を考えれば、良好な関係を構築することは歓迎すべきことでしょう。
もちろん、領土問題や歴史認識の問題だけでなく、共産党一党支配の中国とは価値観の違いは大きく、中国国内における人権・民主化の問題では容認しがたい面も多々あります。
そうではありますが、上記のような政治・経済・安全保障における現在・将来の関係性、歴史的・文化的関係などを考えれば、言うべきことは言える、言っても反日運動といった過剰な対応にならないような正常な関係を構築することは重要でしょう。
ただ、中国側がどこまで本気なのか・・・という疑念も捨てきれませんが、下記のような報道を見ると、それなりの対応ではあるようです。
****中国、日本のODA貢献報じよ 政府がメディアに指示、友好演出****
安倍晋三首相の25日からの訪中を控え、中国政府が共産党・政府系メディアに対し、中国の経済発展に対する日本の政府開発援助(ODA)の貢献を積極的に報じるよう指導したことが23日、分かった。宣伝当局に近い関係者が明らかにした。
日本による援助が中国で強調されることはまれで、日本で不満の声も出ていた。
日中両国は同日、平和友好条約の発効40周年を迎え、習近平指導部は友好ムードを前面に押し出す方針だ。
関係者によると、中国の外交当局は先週、報道機関の関係者を集めた会合で、「日本は中国の発展の貢献者だ」として、日本の援助を前向きに伝えるよう促した。【10月23日 共同】
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その対中国ODAが今年度で終了するとのこと。
****中国へのODA終了へ 大国への援助に疑問 今後は「対等」に****
日中両政府は、日本がおよそ40年にわたって続けてきた中国に対するODA=政府開発援助を、今年度の新規案件を最後に終了することになりました。
今後は対等な立場で新たな協力方法を話し合う「開発協力対話」を立ち上げ、途上国支援などで連携を図ることにしています。
日本の対中ODAは中国が改革開放政策を打ち出した翌年の1979年から始まり、有償資金協力の円借款や無償の資金協力、それに技術協力を通じて、合わせて3兆円以上を供与し、中国の経済成長を支えてきました。
円借款と金額の大きな無償資金協力の新規供与はすでに終了していますが、日中両政府は今回の安倍総理大臣の中国訪問に合わせて、このほかの無償資金協力と技術協力についても今年度の新規案件を最後に終了することになりました。
安倍総理大臣が今月26日の李克強首相との首脳会談で提案して理解を得る見通しです。
対中ODAは、道路や発電所といったインフラ整備のほか、環境対策や人材育成など幅広い分野で活用され、日中の協力関係を支える大きな柱となってきましたが、中国が日本を抜いて世界2位の経済大国となる中、日本国内で対中ODAを疑問視する声が高まっていました。
日中両政府としては今後対等な立場で第三国でのインフラ整備などを話し合いたい考えで、新たに「開発協力対話」を立ち上げ、途上国支援などで連携を図ることにしています。
対中ODAとは
日本の対中ODAが始まったのは中国が改革開放政策を打ち出した翌年の1979年でした。
中国が近代化へと大きくかじを切る中で、日本のODAは道路や空港、発電所といった大型インフラの整備や環境対策、それに人材育成などに活用されてきました。
これまでに総額3兆6500億円余りにのぼる対中ODAは日本企業が中国に投資する環境整備にもつながり、中国の経済成長を支えてきました。
このうち医療の分野では、1984年に日本の無償資金協力で北京に「中日友好病院」が建設され、感染症対策や人材育成に貢献してきました。
2008年に起きた四川大地震では、土砂災害で失われた広大な森林の再生にもODAが活用されるなど、協力の分野は多岐にわたっています。【10月23日 NHK】
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日本側には経済成長を果たした中国へどうしてODAを供与する必要があるのか・・・という不満もありましたが、中国側には戦後賠償の代替の意味合いがあるとの認識があります。
“2000年に来日した中国の唐家セン(王へんに旋)外相(当時)は、日本記者クラブでの講演で、「中国に対するODAは、戦後賠償に代わる行為である」と述べた。中国側は対中ODAについて、請求を放棄した戦後賠償の代替の意味合いがあるとの認識を持っている”【10月23日 和田千才 氏 HUFFPOST】
かつて周恩来も同趣旨のことを言っていましたので、実際、毛沢東・周恩来と田中・大平の首脳間でそうした趣旨の合意があったのでしょう。
いずれにしても、中国側が「日本は中国の発展の貢献者だ」とODAの意義を認め、国内にも周知させ、今後は「対等」を・・・ということであれば、結構な話です。
【相手国訪問者数に比例するように改善する中国の対日印象、停滞する日本の対中国印象】
中国政府が日本に対する関係改善の対応をとれるのは、国際情勢上の必要性だけでなく、国民一般の日本への意識が好転していることもあってのことでしょう。
****<日中世論調査>中国人4割、日本を好感 調査後初の高水準****
◇「言論NPO」と「中国国際出版集団」発表
シンクタンク「言論NPO」と「中国国際出版集団」は11日、今年の日中共同世論調査の結果を発表した。
中国人の日本に対する印象で「良い」(「どちらかといえば」を含む、以下同じ)との回答は42.2%(前年比10.7ポイント増)と2005年の調査開始以来初めて4割を超えた。
中国側の対日イメージの改善がさらに進む一方、日本側では依然厳しい対中イメージが主流を占めており日中間の温度差が浮き彫りになった。
東京で記者会見した言論NPOの工藤泰志代表は、訪日経験のある中国人の7割以上が「良い」印象を持つと答えるなど渡航経験が対日イメージの改善に貢献していると指摘。
日中関係を重要と考える中国人も74.0%(同5.3ポイント増)にのぼっており、「米中貿易摩擦の中で、中国側が特に日本との経済関係を重視する傾向が強まっているのも一因だろう」と話した。
一方、日本で中国に良い印象を持つとの回答は13.1%(同1.6ポイント増)で、沖縄・尖閣諸島国有化(12年)以降の調査で20%未満の水準が続いている。
日中平和友好条約締結40年にあたる今年、日中政府は関係改善を進めており、安倍晋三首相が今月25〜27日の日程で訪中する方向。
主権や領土保全の相互尊重を定め、覇権を求めないとした条約について、その精神が「実現できている」(「一定程度」を含む)としたのは日本で14.8%にとどまる一方、中国では44.8%だった。
調査は8月27日〜9月22日に実施し、今年で14回目。ともに18歳以上の男女が対象で日本で1000人、中国で1548人から回答を得た。【10月11日 毎日】
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日本への中国人観光客が急増するなかで、その日本への好意的印象のこうした調査への反映が鈍いように常々感じていたのですが、ここにきてその影響が本格的に反映しだしたようにも思えます。
ただ、日本からの中国への印象が停滞していることへも、中国を訪れる日本人観光客が増えないこととリンクしているようです。(どちらが原因で、どちらが結果かは判然としませんが)
“日本側の調査を担当した「言論NPO」では、実際に日本を訪れる中国人が増加したことが、対日イメージの改善に貢献している一方、日本から中国を訪問する人は減少傾向にあり、対中感情が悪化したまま停滞していることにつながっていると分析している。”【10月11日 日テレNEWS24】
日本人観光客が増えないことへの中国側の不満・怪訝な思いもあるようです。
****中国では日本旅行が人気なのに! なぜ中国に来る日本人は増えないのか=中国メディア****
中国でも夏を迎え、旅行の計画を立てる人が増えている。今年も依然として日本は人気の渡航先となっているが、中国メディアの快資訊はこのほど、「日本を訪れる中国人が増加する一方で、中国に来る日本人は増えないのはなぜか」と問いかける記事を掲載した。
中国人観光客が日本へ押し寄せ、大きな経済効果をもたらしているが、記事は「日本人観光客は中国に押し寄せていないばかりか、むしろ減少しているのではないか」と主張。中国人が大量に訪日しているのに、日本人が訪中しないのは不公平だとしながらも、中国を訪れる日本人が増えない理由を推測した。
まず、「中国の伝統文化が消滅または崩壊していることが原因」と主張した。それとは対照的に日本は唐の時代に中国から学んだ文化を独自の文化として発展させ、保存してきたと指摘し、中国人が日本を訪れるとタイムスリップしたかのような錯覚を感じるものの、日本人としては興味深い歴史や文化が見当たらないと感じるのではないかと主張。
中国は経済発展を優先し、伝統文化の保護を疎かにしたゆえに日本人だけでなく、外国人観光客全体の足が遠ざかったと分析した。
また、日本人は大きなストレスを抱えながら生きているとし、「中国人ですら中国国内は物価が高いと感じるうえ、南国のようにのんびりと過ごせる場所もない」ため、日本人がわざわざ中国を訪れないのも理解できると主張した。
そのほか、日本はサービスやおもてなしで世界有数のクオリティを持つが、中国の観光地の環境や受けられるサービスは「全体的に質が劣り、日本のほうが絶対的に優れている」と指摘。そして、大気汚染や食の安全問題なども日本人が中国旅行を敬遠する理由なのではないかと分析した。
最後に、「中国人の反日感情」を挙げ、一部だが日本へ旅行する同胞を批判する中国人がいるように、「日本人のなかには中国へ旅行したくても、反日感情を恐れて敬遠している人もいるかもしれない」と伝えている。【7月7日 サーチナ】
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私は中国へは9回ほど旅行してしますが、中国側の“分析”に関していろいろ意見もあります。ただ、長くなるので、ここではパスします。
なお、日本人観光客が増えない背景には、観光面で抱える中国の問題点だけでなく、中国に限らず、日本人の海外旅行全般があまり増加していない、横ばい傾向にあることもあるのでは。
“内向き志向”というか、日本人が外の世界への関心を薄めていることに関して、は個人的には懸念もあります。
それはともかく、観光資源の面でいえば、中国はアジア諸国のなかではやはり図抜けたものがありますので、多くの日本人が中国を観光してみたら・・・とも思っています。印象もまた変わるかも。
なお、増えていないのは観光客だけではないようです。
****在中日本人が5年連続で減少、中国ネット「増えてると言ってなかった?」****
2018年10月8日、在中日本人が5年連続で減少したという情報に、中国のネットユーザーがコメントを寄せている。
日本経済新聞の中国語版は同日、中国版ツイッター・微博(ウェイボー)アカウントで外務省がまとめたデータを紹介。17年に中国に居住する日本人は10月の時点で前年比3%減の12万4000人となった。米国に次いで2番目に多い数だが、13年から5年連続で減少しているという。(後略)【10月11日 レコードチャイナ】
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これは、日中間の経済動向、人件費高騰や環境規制強化などに伴う生産拠点としての中国の立場の変化を反映したものでしょうか。
観光ではアメリカ人よりはヨーロピアンが目立ちますので、中国居住アメリカ人がそんなに多いというのも意外な感が。
【中国メディア 日中間に「もっと多くの福原愛を」】
ところで、これまで中国人の日本への印象改善に大きく寄与してきた卓球の福原愛が引退を表明して中国で話題になっています。
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(全日本選手権初優勝を果たし、涙ぐむ福原愛=2012年1月21日、東京体育館【10月22日 時事】)
中国で選手活動し、(中国東北訛りの愛嬌ある)中国語を流ちょうに話す福原愛に、勝っては泣き、負けては泣く彼女に、「日本は嫌いだけど、愛ちゃんは大好き」という中国人も多いようです。(個人的には、幼稚園か小学低学年ぐらいの年齢の愛ちゃんが泣きながら、それでも必死にラケットを振る姿が印象に残っていますが)
“「瓷娃娃」(磁器の人形)のように無邪気な笑顔、中国東北なまりの中国語、中国の強豪選手に負けて泣く姿。福原愛は、中国人の心の中に最も受け入れられた日本のスポーツ選手だろう。”【10月23日 レコードチャイナ】
***福原愛、中国語で引退メッセージ=中国ネット「それでもあなたを愛している」「日中友好にはまだあなたが必要」****
2018年10月21日、卓球の福原愛が現役引退を表明し、中国版ツイッター・微博(ウェイボー)上で中国のファン向けに、中国語でメッセージを発信した。
福原は冒頭「今日はみなさんにお話ししたいことがあります。私、福原愛は、卓球選手を引退することになりました」と切り出し、自身の中国との関わりを振り返りながら、中国のファンや卓球関係者に対する感謝の気持ちをつづっている。(中略)
400万人近いフォロワーを抱える福原の微博アカウントに書き込まれた引退メッセージには、40万件を超える「いいね」と5万件以上のコメントが寄せられており、中国における福原の人気ぶりと影響力の強さを感じさせる。
ネットユーザーは「あなたの決定を支持する。それでもあなたを愛している」「愛ちゃん、永遠にお幸せに!」「突然大切なものを失ったようで辛い」「これからの人生で順風満帆でありますように」「あなたは永遠に、中国で最も愛された日本人アスリートだ」「悲しかったけど、油条のエピソードにほっこりさせられた」など、引退を惜しみつつも労い、今後の人生を祝福するコメントが多く寄せられた。
また「日中友好には、これまで通りあなたの存在が必要です」と、今後も日中間の懸け橋であり続けることに期待を示す声も出ている。【10月22日 レコードチャイナ】
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福原愛へのエールはネットユーザーだけでなく、中国外務省や中国政府系メディアからも。
****福原愛引退、中国外交部「多くの中国人にも愛される選手だった」―中国紙****
2018年10月22日、環球時報(電子版)によると、卓球の人気選手で21日に現役引退を表明した福原愛さんについて、中国外務省の華春瑩(ホア・チュンイン)副報道局長は22日の定例記者会見で「とてもかわいくて実力もあり、多くの中国人にも愛される選手だった」と語った。
日本の記者の質問に答えたもの。華報道官は「われわれは日中両国の相互交流と友好のため、より多くの人が力を尽くすことを望む。両国の協力に貢献してほしい」と述べた。【10月22日 レコードチャイナ】
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****中国紙、日中「もっと福原愛を」 人民日報系の環球時報が論評****
23日付の中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は、日中間に「もっと多くの福原愛を」と題する論評を掲載、日中友好の発展に貢献した卓球の福原愛選手のような人物を両国が見いだすべきだと訴えた。
中国で練習を重ね、中国語を話す福原選手は中国でも人気が高い。論評は、引退を発表した福原選手が、日中関係が悪化した05年に遼寧省瀋陽の親善大使を引き受けたことなどを指摘。スポーツや民間交流を通じて両国関係を安定させる模範的な存在だったと称賛した。
また、安倍晋三首相の訪中が、福原選手のような人物を育て、友好の絆を強めるきっかけになることを期待しているとした。【10月23日 共同】
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彼女のような大きな影響を与える存在は稀有ですが、観光や仕事で日中間を往来する両国の人々のそれぞれが小さな「福原愛」となって両国の架け橋になれば・・・。