(和平協定への調印を前に握手を交わす南スーダンのサルバ・キール大統領(右)とリヤク・マシャール前副大統領(2018年9月12日撮影)【9月13日 AFP】 この指導者たちは、紛争で40万人とも言われる犠牲者出ていることをどのように考えているのでしょうか?)
【南スーダン 繰り返される停戦破棄 今回は? すでに死者は40万人 年末までに子ども2万人が餓死の危険】
昨日、久しぶりに南スーダンのニュースを目にしました。
自衛隊の国連PKO撤収後は、日本での関心は急速に低下したようにも。
「そういえば、9月に和平協定に調印して、そのあとどうなったのだろうか・・・?」というのが正直な印象。
****反政府派トップが帰還 2年ぶり****
南スーダン政府と反政府派の和平を祝う式典に出席するため、最大の反政府勢力を率いるマシャール前第1副大統領が31日、約2年ぶりに同国の首都ジュバに帰還した。
マシャール氏は2016年7月の内戦再燃後、ジュバを脱出し、南アフリカなどで亡命生活を余儀なくされていた。
現地からの情報によると、式典にはキール大統領やマシャール氏のほか、和平を仲介した隣国スーダンのバシル大統領ら周辺国の首脳も出席。マシャール氏は「反政府派も平和を望んでいる。和平協定を履行する用意がある」などと語った。
キール大統領とマシャール氏は9月に和平協定の最終文書に調印した。来年5月までに政府と反政府派による暫定統一政権を発足させ、マシャール氏は第1副大統領に復帰することになっている。
ただ、一部地域では今も武力衝突が続く。和平協定に基づく政治犯や反政府派メンバーの釈放などは実現しておらず、首都の治安維持にも課題を残す。
反政府派の報道官によると、マシャール氏の帰還は一時的なもので、近く再出国する見通しだ。
英ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の調査によると、13年12月に始まった内戦の死者は推計約40万人に上る。【10月31日 毎日】
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ちなみに、9月に調印された和平協定については、以下のように報じられていました。
****<南スーダン内戦>和平協定調印 8カ月以内に暫定統一政権****
2013年末から内戦状態が続いていた南スーダンの政府と反政府勢力各派は12日、エチオピアの首都アディスアベバで和平協定の最終文書に調印した。8カ月以内に暫定統一政権を再発足させる。
合意を着実に履行し、政府軍と武装勢力の衝突を回避できるかが焦点となる。
現地からの情報によると、周辺国の首脳らが見守る中、キール大統領と反政府勢力トップのマシャール前第1副大統領が合意文に署名し、握手を交わした。副大統領を現在の2人から5人に増やし、反政府勢力各派に分配。
亡命中のマシャール氏は第1副大統領に復帰する。任期は総選挙までの3年間となる。
ただ、これまで10回以上結ばれた停戦合意はいずれもすぐに破られており、和平の実現には曲折が予想される。米英ノルウェーの3カ国は「当事者がどの程度関与するかに懸念を持っている」との声明を発表した。
南スーダンは2011年にスーダンから分離独立後、キール氏とマシャール氏の権力争いから内戦状態となった。15年8月に和平協定を結び、翌年4月に暫定政権を樹立したが、首都ジュバで大規模な戦闘が起きて2カ月半で破綻した。
和平協議は周辺国が仲介。最終的には南スーダンの油田地帯に権益を持つ隣国スーダンが主導する形で各勢力間の交渉をまとめた。
合意によると、政府軍とマシャール氏配下の部隊は8カ月以内に統合される予定だが、シンクタンク米平和研究所の専門家アリ・バージー氏は「(短期間での統合は)非現実的」と指摘。
「当面は現政権が存続するが、暫定政権の発足に向けた準備が進むのか。内戦終結に向けた強い意志が見えず、合意の履行には深刻な疑問が残る」という。
一部の武装勢力は、キール派とマシャール派が中心の権力分担では「根本的解決にならない」として、署名を拒否している。
5年近い内戦では兵士らによる深刻な人権侵害が相次ぎ、経済崩壊で住民は困窮。250万人が周辺国に逃れ、1994年のルワンダ大虐殺に匹敵する「アフリカ最大の難民危機」となっていた。
南スーダンでは昨年5月まで、日本の陸上自衛隊が国連平和維持活動(PKO)に派遣されていた。国際協力機構(JICA)の邦人職員も内戦再燃を受けて国外に退避したが、今年8月に常駐での業務を再開している。【9月13日 毎日】
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“これまで10回以上結ばれた停戦合意はいずれもすぐに破られており・・・”
小説家マーク・トウェインの有名な言葉「禁煙なんて簡単さ。私はもう何千回もやめてきたのだから。」を連想させる事態ですが、マシャール氏が一時的にせよ帰国したということは、少なくとも今のところは停戦の大枠は維持されているようです。(一部地域の衝突はあるものの)
ただ、すでに大きすぎる犠牲を払っています。
****<南スーダン>内戦死者40万人 想定上回り衝撃****
2013年12月に始まった南スーダンの内戦が原因で死亡した人の数は従来の想定を大きく上回り、約40万人に上ると英ロンドン大学衛生熱帯医学大学院が援助団体の現地調査などを基に結論づけた。
11年から続くシリア内戦に匹敵する被害規模で、関係者に衝撃を与えている。
調査は、今年4月までの犠牲者数を約38万3000人と推定。うち19万人が戦闘で殺害され、ほぼ同数の人が紛争下の劣悪な衛生環境による病気や栄養不良などで死亡したという。内戦が激化した16〜17年にかけて特に多くの犠牲者が出たとしている。
南スーダン内戦の死者数をめぐっては、国連関係者が16年初めに約5万人という数字を示したが、その後の混乱で大幅に増えたとみられる犠牲者数についての分析結果が公表されたのは初めて。
同大学院は、実際の犠牲者数は40万人を「はるかに上回る可能性がある」としている。
国連によると、5年近くに及ぶ内戦では約250万人の難民が発生。国内避難民を含めると約450万人が家を追われ、人口の約6割に当たる600万人以上が深刻な食料不足に直面している。
南スーダン政府と反政府勢力は今月、和平協定の最終文書に調印したが、その後も戦闘が発生し、合意の履行が疑問視されている。【9月28日 毎日】
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このような悲惨な状況の常として、最も大きい犠牲は抵抗力が弱い子供たちが払うことになります。
****【南スーダン】 年末までに子ども2万人が餓死する危険****
南スーダンで子ども2万人が年末までに栄養失調によって死亡する可能性があるとされた。
国際市民社会組織セーブ・ザ・チルドレンから出された声明で、内戦が招いた状況により、南スーダンで子ども100万人を含む600万人以上に緊急の食料支援が必要であると伝えられた。
声明では、「子ども27万人が飢餓の危険に直面している。子ども約2万人が2018年末までに極度の飢餓によって死亡すると予想できる」と述べられた。
セーブ・ザ・チルドレン・南スーダンのデイドラ・キーオ代表は、「人道支援サービスの継続と拡大に向けた財政支援が確保されなければ、多数の子どもが死の危険と隣り合わせである」と述べた。
戦争の最も深刻な結果に直面しているのが子どもたちであることを思い出させた同組織は、人道支援サービスの受け取りが容易になるよう呼びかけも行った。(後略)【10月19日 TRT】
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いつも思うことですが、キール氏とマシャール氏、その他の武装勢力の指導者たちは、これだけの犠牲を国民に強いて、一体何を求めているのでしょうか?
おそらく自分の民族・部族以外は“国民”とも思っていないのでしょうし、自分の民族・部族の人々の生命・財産への関心すら怪しいものがあります。
そうした指導者しかいないところにいくら支援しても、ざるで水をすくうような感もありますが、さりとて見過ごすこともできません・・・・。
【西アフリカ・マリ 国連PKO部隊基地への襲撃も】
西アフリカのマリでは、国際テロ組織アルカイダにつながるイスラム過激派のグループが一時、北部の広い範囲を支配下に置きましたが、5年前に旧宗主国のフランスが部隊を派遣して主要な町を制圧し、過激派を排除しました。
住民の熱烈な歓迎で迎えられたフランス軍は積極果敢な作戦による成功を国際的にアピールしたかのようにも見えましたが、その後も過激派グループは広大なサハラ砂漠に潜みながら、フランス軍やマリの政府軍などに対する襲撃を繰り返しており、フランスにとっても重荷になってきています。
****サヘル5か国のテロ対策部隊司令部に爆弾攻撃 3人死亡 マリ****
西アフリカのマリで29日、サヘル5か国(G5 Sahel=ブルキナファソ、チャド、マリ、モーリタニア、ニジェール)でつくるテロ対策特別部隊「サヘル5か国合同軍」の司令部が自動車爆弾による攻撃を受け、治安筋と地元首長によれば、兵士2人と民間人1人が死亡した。負傷者も多数出ている。(中略)
同部隊は2017年、不安定な状況にある広大なサヘル地域でイスラム過激派反政府勢力や犯罪集団を撃退するため、フランスの支援を受けて創設された。司令部への攻撃はこれが初めて。(中略)
国連は26日、同部隊に参加しているマリ兵らが5月、マリ中部の市場で、しかるべき手続きを経ずに民間人12人を処刑していたとの調査結果を発表した。処刑は兵士1人が死亡したことへの報復として行われたという。
フランス軍司令部は29日、セバレでの攻撃に先立ち、同国のマリ派遣部隊、通称「バルカン」の兵士らが22日行った地元部隊との合同作戦で、イスラム過激派15人を殺害または拘束したと明らかにしていた。【6月30日 AFP】
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この「サヘル5か国合同軍」司令部襲撃の二日後にはフランス軍部隊が襲撃されています。
****マリでフランス部隊襲撃される 複数の死傷者か****
イスラム過激派が活動する西アフリカ・マリの砂漠地帯で、治安維持にあたっているフランス軍の部隊が襲撃され、複数の死傷者が出ているもようです。
マリ北部の砂漠地帯にある町、ガオで1日、治安維持にあたっているフランス軍とマリの政府軍が軍用車両でパトロールしていたところ、爆発がありました。
現地の報道によりますと、爆発物を積んだ車が部隊の車列に近づいて爆発したということで、自爆テロとみられ、複数の死傷者が出ているもようです。(後略)【7月2日 NHK】
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9月には、6月に爆弾攻撃を受けたアフリカのサヘル5か国は司令部をセバレから首都バマコへ移転しました。
マリでは、国連PKO部隊の基地も襲撃を受けています。
****マリでPKO連続攻撃 2人死亡、15人負傷****
西アフリカ・マリ北部トンブクトゥ州で27日、国連平和維持活動(PKO)部隊の基地が武装集団に襲撃され隊員2人が死亡、11人が負傷した。
約4時間後には中部モプティ州で別部隊が爆弾攻撃に遭い、4人が負傷した。国連が明らかにした。
トンブクトゥ州では、ロケット砲や機関銃で武装した集団が複数のピックアップトラックに分乗し襲撃。死亡した2人はブルキナファソから派遣された兵士という。モプティ州では、トーゴ兵が攻撃を受けた。(後略)【10月28日 共同】
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ここも、いつ終わるとも知れない泥沼のようです。
【中央アフリカ共和国 国連部隊と武装集団の衝突 ロシア民間軍会社の暗躍】
中央アフリカ共和国も、イスラム教徒系民兵組織「セレカ」とキリスト教徒系の民兵組織「アンチバラカ」の抗争・報復合戦を軸に、やはり泥沼の混乱が続いているようです。
****中央アフリカ、紛争により人口4分の1が避難民化 国連発表****
国連は(5月)29日、中央アフリカ共和国の人口4分の1以上が紛争により避難民化しているとした最新の集計結果を明らかにした。
国連人道問題調整事務所によれば、同国の国内避難民の数は4月時点で66万9997人に上る。
これに加えて、国内での武力衝突により近隣諸国へ逃れた避難民は57万人に及び、双方を合わせた避難民の数は合わせて、同国人口450万人のうち123万人超に達する。
世界の最貧国の一つに数えられる同国は2013年、イスラム教徒中心の武装勢力連合「セレカ」によってキリスト教徒のフランソワ・ボジゼ大統領が失脚したのを機に宗教対立を帯びた抗争に突入。
セレカ排除の支援目的でフランス軍が介入し、翌年には平和維持と治安安定化を任務とする大規模な国連部隊が配置された。
それでもなお、同国では暴力沙汰が後を絶たず不安定な状況が続いている。国土の大半はさまざまな民兵組織の手にあり、その多くがイスラム教徒やキリスト教徒を保護していると主張する一方、資源をめぐって戦闘を繰り広げている。【5月30日 AFP】AFPBB News
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国連は国連平和維持活動(PKO)のため1万3000人を派兵していますが、その国連PKOも戦闘行為の当事者となる混乱状態となっています。
****中央アフリカ首都で国連部隊と武装集団が衝突、19人死亡****
世界で最も貧しく不安定な国の一つとされる中央アフリカの首都バンギのイスラム教徒地区で、国連平和維持軍と武装集団との間で衝突が発生、国連部隊の兵士1人を含む19人が死亡し、100人以上が負傷した。
過去2年の間で最悪の流血の事態に憤ったPK5地区の住民ら数百人は、国連中央アフリカ多元統合安定化派遣団の拠点に押し寄せ、国連部隊によって10日に殺害されたという男性17人の遺体を並べた。
MINUSCAによると、衝突は平和維持軍が治安捜査を開始した後に起きた待ち伏せ攻撃で始まった。(後略)【4月12日 AFP】
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このように混乱が続く中央アフリカで7月30日、ロシアの民間軍事会社について取材していたロシア人ジャーナリスト3人が車で移動中に襲撃、殺害される事件があって、ロシアの民間軍事会社の活動、およびロシアで繰り返されるジャーナリスト・政敵の殺害ということで国際的に注目されました。
****中央アフリカ共和国で露ジャーナリスト3人死亡 背景に疑問が****
(中略)3人は、中央アフリカ共和国で活動するロシアの民間軍事会社、ワーグナー・グループの戦闘員について調査していた。
ワーグナー・グループは過去に、内戦の続くシリアでの活動が話題となった。最近になって、中央アフリカ共和国でも活動している可能性が浮上した。
ロシア政府と政府高官は、戦闘員とのつながりを否定している。しかしロシア政府は今年2月、国連の許可を得た上で、中央アフリカ共和国軍の訓練と軍備強化のために教官180人を派遣している。(中略)
ロシアと中央アフリカ共和国の関係は?
中央アフリカ共和国には機能している軍隊が存在せず、安全保障が喫緊の問題となっている。PKOは疲弊しており、国土の大部分は反政府組織が支配している。
そのため軍隊を復興しようという動きがあり、ここにロシアが登場する。
2017年12月、ロシア政府は国連安全保障理事会で、中央アフリカ共和国軍に対する小火器禁止に例外を設けるよう求めた。
軍隊訓練のために専門家を派遣したほか、フォースタン=アルシャンジュ・トゥアデラ大統領の警護にも何人かの警備員を送り込んでいる。【8月2日 BBC】
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以前、大規模な紛争・衝突があった南スーダン、マリ、中央アフリカでは、メディアへの露出は減っていますが、今も混乱が続いており、国連PKOも積極的な武力行使によって治安を安定させるという役割を担って活動していますが、苦戦している状況にあるようです。