バリ島を観光された方ならご存知のように、バリ・ウブドでは夜になると、街のあちこち(多くは寺院や集会所)で、外国人観光客をターゲットにした伝統舞踊やガムラン演奏、影絵芝居など、伝統芸能のパフォーマンスが行われます。
曜日ごとに演目が変わりますが、各曜日とも7~10か所ぐらいで異なるパフォーマンスが行なわれていますので、観光客は興味があるパフォーマンスを「今日はダンス、明日は影絵・・・」といった感じで選ぶことができます。(料金も600~700円程度とリーズナブルです)
私はウブドは3回目ですが、ウブドをリピートする大きな理由が、毎夜繰り広げられるこのパフォーマンスです。
演じるのは、プロというよりは、普段は普通に仕事をしているバリ住民で、主に地域ごとにグループを作って演じているようです。
海外公演を行うような有名グループも多くあります。
今回旅行でトレッキングガイドをお願いしたカデさんも、そうした有名グループの属するガムラン(さまざまな銅鑼や鍵盤打楽器による合奏の民族音楽)奏者で、公演のために日本にも数回来られています。(そうしたこともあって、日本人女性と結婚されることにもなったようです)
彼の話によれば、昔はグループはそんなに多くなく、毎夜の公演機会も多かったため、プロに近いような形で生計を立てることもできましたが、最近はグループ数が非常に多く、1週間に1回の公演に限られるため、ガムラン演奏では暮らしていけないとか。
その点では演奏レベルも昔の方が高かったかも・・・・とのこと。
そんなバリ島の伝統芸能のひとつが、バリ島のイメージにもなっているケチャです。
楽器を使わず、数十名の上半身裸の男子が幾重にも輪になって、「チャッ チャッ チャッ」といった掛け声を合唱のように重ねてリズムを刻むパフォーマンスです。
もともとは祈りのためのものが起源で、現在のようなスタイルになったのは、20世紀以降のヨーロッパ人の指導によるものとかで、そうした点でも外国人の興味を引き付けるように作られたものとも言えます。
(ケチャに限らず、バリの「伝統芸能」は、ヨーロッパ人の視点から再構成された面が多くあります。そのことの良し悪しは別にして、そうしたことから、外国人が「南国の島」に抱くエキゾチックなイメージと重なりやすいという面があるようです)
ケチャは非常にリズミカルで楽しめる演目ですので、私はバリを訪れるたびに鑑賞しており、今回も初日の4日には、超有名(超ベタと言うべきか バリを紹介したガイドブックの最初のページに必ず出てくるものです)な、海を背景にしたウルワツ寺院で行われるケチャを観に、片道2時間以上かけて行ってきました。
感想としては、ウブド市内で毎夜行われているケチャと大差ないというか、むしろ観光客相手にコミカルに崩し過ぎているようにも・・・・。
二日目の昨夜も、ウブド市内のケチャに行ってきました。(二夜連続というのは、そこまで好きという訳でなく、たまたまスケジュールの都合上、そうなっただけですが)
昨夜のケチャは、「女性グループによるケチャ」というのが珍しく、10か所ほどで行われている多くのパフォーマンスの中から選んだ次第です。
50名ほどの女性で演じられるケチャは、芸術的レベルはわかりませんが、それなりに楽しめるものです。
もちろん女性ですから、上半身裸という訳ではありません。
「Women Kecak」ということで、決して“Young Women”ではありませんので念のため。
まあ、40歳前後の女性が多いでしょうか。中にはもっと若い女性もいます。
男性として、そういうことにも関心が向くのも「女性ケチャ」ならではですが、あまりそうしたことを言うとセクハラになりますので・・・・。
ケチャは掛け声によるリズミカルな合唱に合わせて、有名な叙事詩ラーマーヤナをベースにしたダンスが一緒に行われますが、そこに登場する悪辣な魔王や暴れまくるサルの神様ハヌマンなどは男性が演じているようです。
もともと男性が演じていたケチャを女性が行うことに関して社会的抵抗がなかったのか、カデさんに尋ねたところ、そういう「やってはいけない」という抵抗はなかったものの、「女にどれほどのものができるのか?」という男性側からの蔑視はあったようです。
毎日の家事やお供えづくりに追われる女性は楽しみの機会が少ないため、自分たちも何か楽しいことをしたい・・・という主婦たちが始めたのが「女性ケチャ」とのことです。
確かにケチャは技術的に、ガムラン演奏や伝統舞踊に比べると、誰でも参加しやすいと言えるでしょう。
同じインドネシアでも、イスラムの戒律が厳しい北部アチェ州では女性の行動が厳しく制約もされていますが、バリ島の「女性ケチャ」のように女性が生き生きと社会参加するのは、非常に素晴らしいことではないでしょうか。
なお、「女性ガムラン」もいくつかグループがあるようです。明日以降、ちょっと覗いてみましょうか。
なお、今夜はジェゴク演奏(太い竹を並べた巨大木琴のような打楽器演奏)のパフォーマンスを観る予定にしています。
ただ、外は激しい雨が降っています。会場まで行くのも大変そう。(水はけの悪いゲストハウスの中庭は池になっています) どうしましょうか?
(ケチャの最後に演じられる、トランス状態に入った男性が燃える火の中を裸足で走るパフォーマンス)