(今年7月21日 広州から桂林への移動で乗車した中国高速鉄道の広州南駅で高速鉄道乗車を待つ人々の様子)
【急速に拡大する中国高速鉄道 年末には3万5000キロに】
中国のいわゆる四大発明とは羅針盤・火薬・紙 ・印刷.を指しますが、三大発明として、印刷術・火薬・羅針盤の3つがあげられることもあります。
これらが中国起源の技術かどうかは別にして、世界に大きな影響を与えた技術であることは間違いありません。
そして、現代中国の「新4大発明」とされるのが、高速鉄道、モバイル決済、ネット通販、シェア自転車だそうです。
この言葉の由来は、“17年5月に北京外国語大学で行われた調査がきっかけだと指摘。20カ国から来た留学生に「自分の国に一番持ち帰りたい技術」を尋ねたところ、最も多かった回答が、高速鉄道、モバイル決済、シェア自転車、ネット通販だった”【2018年4月4日 レコードチャイナ】ということで、一見してわかるように、この4つの技術は決して中国で発明されたものではありません。
例えば高速鉄道に関しては、“国際鉄道連合(UIC)によると、世界初の高速列車の運行は1964年の日本の新幹線から始まった。フランスでは55年に時速331キロが達成された。しかし東京と大阪を時速210キロで結んだ新幹線が、最初の定期運行の高速列車とされている」とした”【同上】とのこと。
何より、自転車シェアリングなどは、2015年から2018年に業界が急成長ののち衰退し、短期間のうちに過去のものとなっています。
そうしたなかで、中国で急拡大している「高速鉄道」はいたく中国人民の自尊心をくすぐるようで、高速鉄道関連の話題は非常に多く目にします。
****わが高速鉄道の「世界への影響力は空前の規模」だ!=中国メディア****
中国が「名刺」と自負している中国高速鉄道。日本よりずっと遅れて高速鉄道網を広げ始めたが、その総延長は今や日本を大きく超えており、さらなる拡大を続けている。
中国メディアの今日頭条は22日、中国高速鉄道が年末には3万5000キロにまで達すると紹介する記事を掲載した。
記事によると、11月22日に行われた中国国家鉄路集団の会議で、鉄道の総距離が年内には13万9000キロに達し、そのうち高速鉄道は3万5000キロになることが明らかになったという。中国の鉄道技術は各方面で世界トップレベルになったと伝えた。
特に中国が世界を先駆けているのは「高原の厳しい気候での建設」だと記事は紹介。日本では青海チベット鉄道とも呼ばれる青蔵(せいぞう)鉄道は、世界で最も高所を走る高原鉄道となっている。記事は、凍土や寒さ、空気の薄さなど難題をクリアして成し遂げた偉業だと自賛している。
また、時速350キロでの自動運転の実現でも世界初で、世界の鉄道システムのスマート化でも世界のリーダーになっていると紹介。
さらには、中国高速鉄道は利用者がスマホ1つですべて利用できるようになっていて、スマホで乗車券を購入して席を選び、スマホで改札口を通り、食べ物の注文もできるといかに進んでいるかを伝えた。
利用者の数も今年は延べ36億人が予想され、2012年と比較すると実に92%の増加であるという。中国高速鉄道は海外にも輸出されており、「世界への影響力は空前の規模」だと中国高速鉄道の躍進ぶりを伝えている。
実際、中国が高速鉄道にかける期待と資金は並外れて大きく、さすが国家事業だけあると言えるだろう。しかし多くの路線では赤字が続いており、厳しい現実があるのも事実のようだ。【11月26日 Searchina】
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【赤字体質 料金見直しも】
「国策」として急拡大する中国「高速鉄道」の赤字体質については、以下のようにも。
****中国高速鉄道は赤字を抱えながら、なぜ今なお拡大を続けるのか=中国メディア****
中国は国策として高速鉄道網の整備を進めており、総延長はすでに圧倒的に世界一の規模となっている。だが、なかには利用客数の少ない路線もあって、赤字となっている路線も多い。
中国メディアの今日頭条は10月31日、中国高速鉄道の運営が赤字になることは「もはや珍しいことではない」と指摘する一方、多くの中国人はどれほどの規模の赤字なのかは良く分かっていないと伝え、中国高速鉄道の運営における収支について考察する記事を掲載した。
記事は、中国の国営鉄道会社である中国国家鉄路集団有限公司の傘下にある18の鉄道局のうち、2018年に黒字を確保できたのはわずか8つの鉄道局だけであり、それ以外はいずれも赤字であったことがメディアによって報じられたと紹介。そして、瀋陽鉄道局やハルビン鉄道局、成都鉄道局の18年の赤字額は100億元(約1535億円)を上回ったと伝えた。
続けて、中国高速鉄道はなぜ赤字になるのかと疑問を投げかけ、それには3つの理由があると主張。
まず1つ目は高速鉄道の「建設コスト」であり、中国は今なお高速鉄道網を拡大し続けているため、路線拡張のための投資が収益を圧迫しているのだと指摘した。また、高速鉄道は建設コストのみならず、運営コストも高いと指摘し、時速350キロメートルで高速鉄道を走行させる場合、電力コストだけでも1時間あたり5000元(約7万5000円)以上もかかるのだと指摘した。
また、中国は国土が広く、人口は西部に比べて東部に多いと指摘し、「路線によって乗車率に大きなばらつきがある」と紹介。中国の東部は乗車率が高く、中西部は乗車率が低い傾向にあり、中西部における損失を東部が補っている構図になっていると指摘した。
さらに記事は、中国はなぜ莫大な赤字が出ていても高速鉄道の建設を続けるかと疑問を投げかける一方で「高速鉄道は中国国民の生活を豊かにする存在であると同時に、中西部の都市の経済成長を促進し、内需拡大に寄与するインフラでもある」と指摘し、中国は目の前の赤字ではなく、将来の成長を見据えているのだと伝えた。【11月3日 Searchina】
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しかし、いくら国策といはいえ“中国鉄路総公司の債務は約85兆5000億円”となると、“料金見直し”の話が出てきます。
****赤字路線が大半の中国高速鉄道、乗車料金の見直しは妥当なのか=中国メディア****
中国では2018年末までに日本の新幹線に相当する「高速鉄道」の営業距離が3万キロ近くに達したが、利益が出ている路線は北京ー上海間や北京ー広州間など一部に限られている。
中国鉄路総公司の債務は約85兆5000億円とも報じられており、とうとう価格の見直しを行うことになったようだ。中国メディアの今日頭条は22日、中国の高速鉄道は値上げするのかと題する記事を掲載した。
記事はまず、中国高速鉄道は11月に入り、全国ほぼ横並びの価格がようやく見直されることになったと紹介。エリアごとに市場規模を見ながら価格を値上げ、あるいは値下げすると伝えている。
これまでの高速鉄道の価格計算は、1等席で1キロメートル当たり0.3366元(約5.2円)、2等席は1キロあたり0.2805元(約4.3円)で、10%以内の上下幅と一律に定められていたという。
しかし、建設コストは山地か平地かでかなりの差があり、一律の価格では不公平だとの声が上がっていたようだ。
記事は、中国全土でも黒字路線はほんのわずかで、ほとんどの路線では赤字経営だと指摘。北京ー上海間のように人気の高い路線では値上げし、空席率の高い路線では、価格を下げることで乗客を増やし「薄利多売」で収入増を目指すことになるとしている。
安くすることで乗車率を増やすというのは、乗車料金の割引になる学生や軍人などで実証済みであり、逆に人気の路線では価格を上げても乗車率は高いままというのは、祝祭日や長期休みで実証済みだとしている。
高速鉄道の赤字は以前から指摘されており、価格の見直しに迫られることは予想されていた。しかし、ユーザーからは「すでに飛行機のほうが安いことさえあるのに、これ以上高くなれば誰が高速鉄道に乗るのだ」という疑問の声が目立った。
中国高速鉄道は、速くて安いことで庶民にも受け入れられてきたが、度重なる値上げで割高感が増すと客が離れることになりかねない。かといってこれ以上赤字を増やすわけにもいかず、中国高速鉄道は難しいかじ取りが求められていると言えるだろう。【11月25日 Searchina】
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更にスピードをあげることも物理的には可能なようですが、騒音問題、環境負荷、そしてコスト的に問題が大きいようです。
****中国高速鉄道は時速400キロでの営業運転は可能なのか=中国メディア****
北京市と上海市を結ぶ京滬(けいこ)高速鉄道は最高時速350キロメートルでの営業運転が行われており、これは営業速度としては世界最速となっているが、将来的に中国高速鉄道は時速400キロを超える速度で営業運転が行われることはあるのだろうか。(中略)
記事は、中国鉄道学会理事長である盧春房氏の見解として、中国高速鉄道が時速400キロで営業運転を行うためにはレールの安定性や車両性能の高さ、各種制御の正確性および十分な電力供給といった要素が重要となると強調。
同時に営業運転である以上は安全性や快適性、環境への配慮も求められることになると指摘し、現時点では快適性や環境への配慮といった点で「十分な技術が確立されていない」と論じた。
続けて、中国高速鉄道は過去に行った試験走行で時速487キロ以上を記録しており、速度を出すことだけならすでに技術的に可能であるとし、これまでの試験では高速走行時の車両の揺れや車両内の気圧変化といった点では基準をクリアしていると指摘。しかし、車両内の騒音については基準値を超えていたと論じた。
また、時速420キロで走行する場合の電力消費は時速350キロでの走行時より44%も増大すると伝え、電力消費の大きさとそれに伴う二酸化炭素の排出量の増加は「受け入れがたいもの」だと指摘した。
一方で記事は、中国ではすでに設計最高速度が400キロを超える高速鉄道車両の組み立てが行われていると伝え、「努力を重ね、問題を1つずつ解決していけば中国高速鉄道の最高速度を高めていくことは十分に可能だ」と伝えた。【11月25日 Searchina】
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【日本への強い意識】
海外受注で日本の新幹線をライバル視していることもあって、日本人が中国高速鉄道をどのように評価しているかもいたく気になるようです。
*****中国高速鉄道を利用した日本人客は「こんな感想を抱くらしいぞ」=中国メディア*****
中国人の生活を大きく変えた高速鉄道。多くの面で日本の新幹線を超えたとさえ自負する中国人は多い。では、日本人が高速鉄道を利用すると新幹線と比べてどう感じるのだろうか。中国メディアの今日頭条は21日、日本人旅行客による高速鉄道の感想を紹介する記事を掲載した。
記事によると、この日本人旅行客は中国高速鉄道を利用して「中国人も言い返せない2つの問題点」を指摘したそうだ。その1つは「保安検査に時間がかかりすぎる」こと。
新幹線には保安検査がないので面倒に感じるのは十分に理解できることだ。休日だと検査に非常に長い列ができるため、十分時間に余裕をもって行動しないと列車に乗り遅れてしまう中国人も少なくない。
筆者は、「保安検査は安全のためには欠かせない」としながらも、高速鉄道を利用する中国人自身も面倒に感じているので言い返せないとしている。
2つ目は「車内サービス」だ。特に車内で販売される弁当や菓子、飲み物などが通常の店と比べて非常に高く、「普通の弁当」でもかなり高価だと紹介。
しかも重要なことに、弁当の味は「おいしくない」うえに、種類もとても少なく、冷めていることさえあると指摘している。これには、おいしくて種類も多く適正価格な日本の駅弁と比べたら、中国人としても反論の余地がないようだ。駅弁に関する問題は、中国国内でも昔から言われているがなかなか改善されないようだ。
日本人旅行客の指摘したこの「2つの欠点」には、ユーザーからも「中国人の心の声を代弁してくれた」と歓迎する声が寄せられた。
あるユーザーは、保安検査に400人も並んでいて、本人は乗れたものの間に合わなかった人が多く、空席が目立つまま出発したそうだ。
また、3つ目の欠点に「立ち席を加えたい」という意見も目立った。中国高速鉄道は全席指定だが、指定席以外に立ち席も若干発売される。しかし、立ち席であっても2等席とまったく同じ値段であるため、どうしても不公平感が否めない。
実際に乗車してみると、中国の高速鉄道車両は揺れも少なく乗り心地はいたって快適だ。記事が指摘する欠点を克服できれば、さらに快適な鉄道となるに違いない。日本人旅行者のみならず、大多数の中国人利用者のためにも、利用者の声を反映して改善してほしいものである。【11月25日 Searchina】
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上記記事で「立ち席」とあるのは、いわゆる「自由席」のことではないでしょうか。
中国では全席指定のため、指定席以外は「立ち席」となってしまいます。
昔の中国の鉄道旅行は、筆舌に尽くせないほど大変でした。高速鉄道は2回しか乗ったことがありませんが、新幹線同様に快適で便利です。
何分にも中国は広く、陸路の移動は時間がかかります。自由席で気軽に乗れて、しかも座れるようになれば、観光客にとっても更に使い勝手がいい乗り物になります。もっとも空路との競合は、料金次第というところです。
【日本が受注したインド高速鉄道に暗雲】
日本と中国は受注競争を繰り広げていますが、日本側の強みは「品質の高さと安全性」ですが、中国側には建設コストの低さという大きな強みがあります。さらに、広大な国土の様々な気候のもとで運用されている経験も中国側の強みになりつつあります。
将来的には、日本の新幹線が中国高速鉄道と正面から勝負するのは難しくなるようにも思えます。
日本が受注した大きな成果がインドですが、雲行きが怪しくなっているとの報道も。
****日本支援の印高速鉄道計画に暗雲、主要州で野党連合が政権奪還****
インド経済の中心地・ムンバイがある西部マハラシュトラ州で、モディ首相率いる与党・インド人民党(BJP)が野党3党の連合に政権を譲ることになった。この結果、日本政府が支援する新幹線技術を用いた高速鉄道建設計画に黄信号がともった。
同計画の総投資額170億ドルの大部分は、日本政府による低利の長期融資。BJPは計画が始動した2017年にマハラシュトラ、グジャラートの2つの州政府を担っていた。
それが、BJPとこれまで同盟関係にあった地域政党「シブ・セーナー」が主導する野党連合がマハラシュトラ州政府を担当し、シブ・セーナーの党首が州首相に就任する見通しとなった。
同党の広報担当は「我々は一貫して新幹線に反対してきた」と表明。鉄道路線の大部分が他の州で敷設されるにもかかわらず、マハラシュトラ州政府が資金の大半を拠出していると不満を述べたうえで「見直しは必至だ」と語った。
高速鉄道は、ムンバイとグジャラード州のアーメダバードの508キロを結ぶ計画。だが、果物を生産する農家による反対で土地収用が難航していた。インド経済の成長率が鈍化する中、高速鉄道建設計画が遅延すれば、投資家の信頼を損ねかねない。
シブ・セーナーと連立を組む「国民会議派」の幹部は「インフラ事業に反対しているわけではないが、同時に、農家の利益を無視できない。農家が反対している事業については再考する」と述べた。
高速鉄道建設を進める「高速鉄道公社」からコメントは得られていない。
同計画に必要な土地1380ヘクタールのうち、当局がこれまで収容できたのは548ヘクタールにとどまる。政府が7月に明らかにしたところによると、2023年までに高速鉄道の運行を開始する予定となっていた。【11月28日 ロイター】
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