孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イエメン  5年に及ぶ内戦に、ようやく“出口”を探る動きも

2019-11-30 22:18:07 | 中東情勢

(サウジアラビアに解放され、イエメン首都サヌアに到着した同国の反政府武装勢力「フーシ派」の構成員ら(2019年11月28日撮影)【11月29日 AFP】)

 

【戦闘は下火に イエメンへの関与を低下させるサウジ、イラン】

2015年3月から続いている中東イエメンの内戦は、暫定政府を支援して空爆を続けるサウジアラビアとイスラム教シーア派のフーシ派を支援しているとされるイランとの代理戦争ともなっていますが、見るべき資源もない中東最貧国の内戦ということで国際的関心も低く「忘れれた戦争」とも呼ばれてきました。

 

ここのところは戦闘に関する報道もほとんど見かけません。

それは「忘れれた戦争」という関心の低さのほかに、戦闘自体がひと頃に比べて下火になっていることを反映したものでしょう。

 

***************

最近忘れられた戦争とよばれたイエメン内戦について、ほとんど報道がなくなりましたが(せいぜいホデイダの小競り合い位か)、これは戦闘行為が非常に下火になっていて、マスコミも書く記事が無くなってきたからと思われ、それ自体は歓迎すべきことかと思います。

これはおそらく、hothy軍(フーシ派)のドローンで東部州の石油施設を手痛くやられたサウディが、イエメン空爆を縮小しているためと、他方イランの方も、取りあえずそのミサイル、ドローンの威力を見せつけたので、少し様子を見るかというとことかもしれません。【10月25日 「中東の窓」】

****************

 

イエメン内戦に油を注いできたサウジアラビアは石油施設攻撃で手痛い被害を受けて、イエメン介入を主導してきた実力者ムハンマド皇太子は戦略の見直しを迫られています。

 

同じく内戦を油を注いでいたイランについては、上記では“ミサイル、ドローンの威力を見せつけたので・・・”とありますが、それよりは、制裁でイラン国内が大変な状態となっており、とてもイエメンどころではなくなっているということで、イエメンへの関与が低下しているのではないでしょうか。

 

昨日のイランの話題でも取り上げたように、国民の不満は、国内経済が停滞して市民が困窮しているにもかかわらず、シリアやレバノン、イエメンに資金をつぎ込んでいる対外拡張政策にも向けられています。

 

更に言えば、サウジアラビアとともにイエメンに介入していたアラブ首長国連邦(UAE)は、実質的には暫定政府というよりはアデンを中心とした南部分離主義勢力を支援してきましたが、独自の対イラン政策や、“取るものはそこそこ取った”ということで、すでにイエメンから手を引いています。

(9月3日ブログ“UAE  イエメンから撤退 アメリカの「対イラン封じ込め」に綻び イエメン内戦の様相も変化”)

 

上記のように外部勢力の関与が低下すれば、おのずと内戦も下火になります。

 

【“出口”を探る動き】

そのため、“出口が見えない”という言葉が枕詞のように使われていたイエメン内戦についても、最近は戦闘のニュースではなく、停戦に向けた動きなどが報道の中心になってきています。

 

先ずは主戦場となっていた重要港湾都市ホデイダ。

 

****イエメン暫定政府とフーシ派、港湾都市ホデイダに共同監視所を設置****

イエメン暫定政権とイスラム教シーア派の反政府武装組織フーシ派は、一色触発だった港湾都市ホデイダにおける緊張緩和を目指す動きの一環として、共同監視所を設置した。

 

国連のマーティン・グリフィスイエメン担当事務総長特使は23日、ツイッターで、ホデイダの前線沿いへの監視所4か所を設置と、連絡将校の配置を前向きな動きと評価した。

 

2018年12月、国連の仲介により暫定政府とフーシ派の和平協議がスウェーデンで行われ、ホデイダでの停戦など数々の進展がみられた。これを受けてホデイダでの戦闘の大部分は停止された。

 

国連は今年5月、フーシ派がホデイダと近隣の二つの港から撤退したと発表。停戦合意以降で最初の実質的な前進となった。

 

暫定政府当局者は匿名でAFPに対し、監視所はこれまでのところ「順調に」機能していると述べた。 【10月24日 AFP】

******************

 

石油施設被害を受けたサウジアラビア・ムハンマド皇太子も、これまでのイエメン介入に対する国内批判を封じ込めるためにもイエメン停戦に向けて動いているように見えます。

 

****イエメン暫定政権と独立派が和解、戦闘収束 サウジ仲介****

内戦が続く中東のイエメンで、ハディ暫定政権と南部地域の分離独立派が5日、サウジアラビアの首都リヤドで和解に合意し、双方からなる政府をつくる協定に署名した。

 

反政府武装組織フーシに対抗するために共闘していた暫定政権と独立派は今年8月に衝突し、「内戦のなかの内戦」が勃発。三つどもえの戦闘は収まった格好だが、内戦が収束に向かうかは見通せないままだ。

 

ロイター通信などによると、今回の協定では、新たな暫定政府が30日以内に組織され、分離独立派「南部暫定評議会」(STC)にも複数の閣僚ポストが配分されることになる一方、STC側の兵力は暫定政権の管理下に置かれる。暫定政権はSTCが占拠していた南部アデンに戻るという。

 

暫定政権の後ろ盾で、仲介を続けてきたサウジアラビアのムハンマド皇太子は署名の式典に同席し、「この協定は、内戦を終結させる政治的解決に到達するために、各勢力間の広い対話の扉を開くものだ」と述べた。

 

皇太子には「内輪もめ」を一刻も早く収束させ、対フーシで結束を強めたい意向があるとみられる。【11月6日 朝日】

****************

 

上記記事では“皇太子には「内輪もめ」を一刻も早く収束させ、対フーシで結束を強めたい意向があるとみられる”とありますが、財政を悪化させ報復被害を受けるこれまでのような空爆ではなく、できれば和平協議を・・・と考えているのではないでしょうか。

 

****サウジ、イエメン反体制派128人を解放****

サウジアラビアは28日、捕虜としてきたイエメン反政府武装勢力「フーシ派」の構成員128人をイエメン首都サヌアの空港に送り、解放した。5年にわたるイエメン内戦の終結に向けた取り組みに弾みをつける狙いがある。

 

捕虜らは赤十字国際委員会の飛行機3機で到着。空港内でフーシ派指揮官らや親族と対面する様子をAFP特派員が目にした。

 

イエメンに駐留するサウジ主導の連合軍は今週、フーシ派の捕虜200人の解放を予告したほか、2016年から商用便の運航が停止されているサヌアの空港から、診療の必要な患者を航空搬送することを認めると表明していた。

 

サウジ政府高官は今月、フーシ派との「チャンネルは開いている」と表明。その後、同派はサウジへの攻撃を停止している。

 

同派は捕虜送還の決定をたたえている。 【11月29日 AFP】AFPBB News

******************

 

先述のようにイエメンどころではないイランも内戦停止は歓迎するところでしょう。

 

“内戦が収束に向かうかは見通せない”状況ではありますが、さしもの5年にわたるイエメン内戦もようやく“出口”を探す動きに期待がもてる・・・・ように思えます。

 

甚大な犠牲を出したあげくの遅きに失した動きではありますが。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする