孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国・新疆ウイグル自治区 不妊処置を示す人口動態か 国連人権高等弁務官が今月中国訪問

2022-05-20 22:42:33 | 中国
(中国国旗などが飾り付けられたバザール(2019年12月、新疆ウイグル自治区・ウルムチで)=片岡航希撮影【5月20日 読売】)

【人口増加率が急減したウイグル族 当局関与による不妊処置急増を反映か】
アメリカ議会上院は昨年12月に、新疆ウイグル自治区を産地とする物品輸入を全面的に禁じる「ウイグル強制労働防止法案」を全会一致で可決するなど、中国のウイグル族に対する人権侵害及び、そのことへのアメリカの批判は激しさを増す米中対立の「主戦場」の様相を呈していました。


しかし、ロシアのウクライナ侵攻がアメリカ・国際社会の主要関心事になったせいか、最近はあまりウイグル族弾圧関連のニュースは目にしません。

そうしたなかで、(中国側は否定するものの)強制収容施設、強制労働、不妊手術強制、宗教・民族文化の抑圧、漢民族優遇などが行われていると欧米が批判する中国のウイグル族等少数民族弾圧政策の結果、特に不妊処置強制を示すものとも思われる人口動態の数字が報じられています。

****ウイグル人口増加率急減 少数民族地域100分の1も 当局の出生抑制策が影響か****
中国新疆ウイグル自治区の少数民族が集まる地域で、人口千人当たりの増加数を示す「人口増加率」(移住を除く)が極端に低下している。

地元当局の統計によると、ウイグル族が人口の9割超を占めるカシュガル地区では、2017年の30・42から19年は0・31に激減。ホータン地区も17年の11・8から19年は0・9に落ち込んだ。こうした地域では14~18年に不妊処置件数が急増しており、当局の関与が疑われているウイグル族を狙った人口抑制の実態が浮き彫りになった。 

地元当局の統計資料「カシュガル地区統計年鑑」によると、19年に人口千人当たり1人も増えなかったことを意味する人口増加率「1未満」だったのはカシュガル、ホータン両地区で、いずれも18年以降に急減。特にカシュガル地区は17年の約100分の1に落ち込んだ。
 
新疆全体の統計年鑑では、19年分から地域別の人口データが非公開とされた。ウイグル族への人口抑制策の影響を読み取れなくする狙いがあった可能性があるが、同年鑑作成の基礎資料となるカシュガル地区統計年鑑には19年分までの地域別データが記載されていた。
 
カシュガル、ホータン両地区以外のウイグル族の集住地域もトルファン市が1・02、アクス地区1・48と、いずれも中国の平均(3・32)や新疆の平均(3・69)を大幅に下回った。漢族が人口の7割超の区都ウルムチ市(5・66)やカラマイ市(5・31)は、中国や新疆の平均を上回った。
 
ホータン地区の統計年鑑(13~17年分)では、人口の約97%を占める「その他の民族」(うちウイグル族が99%超)の人口増加率が年々下がる一方、人口の約3%の漢族は上昇している実態も判明。17年には漢族の増加率がその他の民族を上回る逆転現象が起きた。

産児制限「一人っ子政策」が15年に撤廃されたことに伴い、中国全体で16年から不妊手術や子宮内避妊具(IUD)装着手術が減少したが、新疆では当局による少数民族抑圧が強まった疑いがある14~18年に不妊処置件数が急増した。

新疆統計年鑑によると、18年に不妊処置を受けていた人は新疆全体で約29万3千人に上り、約75%がウイグル族集住地域に集中。そのうち不妊手術は約8万9千人に上り、約99%がウイグル族の集住地域の住民だった。
 
自治区政府系の研究機関幹部は、新疆でウイグル族が増え続けて漢族との人口差が広がることの「政治的リスク」を問題視した論文を17年に発表。人口抑制策の実施を強く促してきた。
 
ウイグル族 
ウイグル族はトルコ系民族で大多数がイスラム教徒。2009年に中国新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで大規模暴動が発生し、政府は過激主義によるテロとして監視を強化。14年、習近平国家主席が新疆を視察時にも自爆テロが起き、統制がさらに強まったとされる。

国連人種差別撤廃委員会は18年、最大100万人以上のウイグル族などが思想改造のための施設に収容されたと報告した。中国政府は昨秋公表した新疆の人口動態に関する白書で「過去20年のウイグル族の人口増加率は全国の少数民族をはるかに上回る」と強調。不妊手術の強制も否定し「自主的な選択」とした。【5月12日 坂本 信博氏 西日本】
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【バチェレ国連人権高等弁務官の中国訪問 中国は「歓迎」するも、「調査」が目的ではないという姿勢】
こうしたウイグル族の実情を調査するため、バチェレ国連人権高等弁務官が5月に中国を訪問することで、中国側も同意しています。

****国連に新疆への完全なアクセス許可を、米が中国に要求****
米国は9日、バチェレ国連人権高等弁務官の中国訪問が決まったことを受け、新疆ウイグル自治区での人権侵害を調査するため、同地区への「制限や監視のないアクセス」を認めるよう中国に求めた。

バチェレ氏は8日、5月にも自身が訪中することで中国政府と合意したと表明した。新疆も含まれる。国連人権高等弁務官の訪中は2005年以来となる。

在ジュネーブ国連機関の米代表を務めるシェバ・クロッカー氏は、バチェレ氏が新疆のウイグル族やさまざまなグループと個人的に面会し、「残虐行為」や強制労働などの虐待が報告されている場所にアクセスできる必要があると指摘。

「アクセス制限や活動・報告妨害は、バチェレ氏の訪問の信頼性を著しく損ない、新疆での人権侵害を否定するプロパガンダを支持することになる」と述べた。

活動家らは約100万人のウイグル族が拘束されていると指摘している。

中国は虐待を否定しており、収容施設について過激思想に対処するための職業訓練所だとし、19年終盤には全員が「卒業」したと発表している。【3月10日 ロイター】
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【国連人権高等弁務官の中国訪問を前に「弾圧隠し」も】
4月末には先遣隊が中国に入り中国側と調整していますが、詳細は明らかにされてません。
中国側はバチェレ国連人権高等弁務官の中国訪問を「歓迎」を示しているものの、“交流と協力の推進が目的であり、人権問題に対する「調査」が目的ではない”というのが中国側のスタンスです。

そうした状況で、中国側の「やらせ」疑惑も報じられています。

****ウイグル自治区で「弾圧隠し」か…国連高官の訪問前に監視台撤去・モスク礼拝を指示****
国連のミチェル・バチェレ人権高等弁務官が今月末までに中国入りし、少数民族ウイグル族への人権侵害が指摘される新疆ウイグル自治区を視察する。自治区では訪問を前に「弾圧隠し」が始まっている模様で、バチェレ氏が実態を把握するのは困難とみられる。

◆やらせ
「自治区では、ウイグル族のイスラム教信仰を保障しているかのような『やらせ』が増えている。バチェレ氏の目から弾圧を隠す意図があるのは明らかだ」 海外在住のウイグル族男性(48)は本紙の電話取材に、そう憤った。
 
自治区に住む人から男性が得た情報によれば、区都ウルムチでは、街中に数百メートルおきに設置されていた警察の監視台の撤去が進んでいる。5月上旬には、当局が普段は禁じるモスク(イスラム教礼拝所)での礼拝を指示し、当局者がその様子をビデオで撮影したという。バチェレ氏の訪問にあたり、宣伝材料として利用される可能性がある。
 
ウイグル族の女性(37)は「ウイグル族が住む集合住宅の入り口に設置されたテロ防止名目の鉄柵も、2か月前から撤去され始めた」と明かした。
 
また、米政府系放送局のラジオ自由アジア(RFA)は、当局が自治区の複数都市の住民に対し、許可なく国連訪問団の質問に答えることを禁止し、外国を含む自治区外からの電話にも出ないよう指示したと伝えた。「外国人と会話してはならない」と通知した村もあるという。

◆お膳立て
バチェレ氏訪中の具体的な日程は公表されていないが、国連によれば、約1週間の滞在中、自治区訪問のほか、政府高官との会談も予定されている。北京は訪れないという。

国際人権団体は懸念を深め、視察が「独立した立場で無制約で行われる」よう求めている。「人権侵害はない」とする中国がお膳立てした視察では、今回の訪問を受けた報告書が中国に有利な内容となるおそれがあるためだ。
 
一方、AP通信は17日、自治区南部の一つの村でウイグル族1万人以上がテロに関連する罪で収監されていると報じた。25人に1人が収容されている計算で「世界最悪の投獄率」だとしている。

RFAによると、自治区西部のカシュガルでは、ウイグル族の特産品が集まり「ウイグル文化の展示場」と呼ばれる国際貿易市場の解体も進んでいる。

同化政策 高官人事にも
中国の習近平シージンピン政権は、大多数の漢族と少数民族を一つの「中華民族」と位置付け、同化政策を意味する「共同体意識の強化」を掲げてきた。少数民族の居住区域などでは、それに基づく高官人事も進んでいる。
 
寧夏回族自治区では今月9日、区都トップの張雨浦ジャンユープー氏が区政府主席代理に就いた。地元ナンバー2の政府主席に昇格する公算が大きい。張氏は回族ながら山東省出身者で、自治区での勤務経験は1年以下だ。内モンゴル自治区で昨年、遼寧省の出身者が主席ポストに就いたことに続き、自治区外出身者の起用となる。
 
香港紙・星島日報は一連の人事の狙いを「地元勢力の拡大を防ぐため」と伝えた。国内五つの自治区では、いずれもトップの共産党委員会書記ポストは漢族が独占。

少数民族の起用が制度化されている主席ポストについても、地元出身者を充てることで地元への配慮を示すこともあった。こうした人事手法が見直されている可能性がある。
 
特に内モンゴル自治区では近年、当局の言語政策に対する抗議活動が起きており、地元の反発に気兼ねなく同化政策を推進する布石との見方がある。習政権は2020年、少数民族政策部門トップにも、少数民族ではなく漢族を起用する異例の人事を行っている。【5月20日 読売】
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【国連監視団体 ベラルーシ人国連特別報告者が中国から20万ドルを受け取る一方、ウイグル人に対する「民族浄化を隠蔽するのを支援」したと批判】
なお、「国連」と言っても、当然ながら欧米・日本的な価値観の国だけでなく、中国や強権支配国家も多く存在しますので、「国連」=(欧米・日本が考えるような)民主主義的価値観という訳でもありません。

ただ、そこに「カネ」が絡むと・・・

****国連特別報告者に中国から2500万円、「民族浄化の隠蔽支援」 監視団体****
国連監視団体「UNウオッチ」は19日、国連のアリーナ・ドゥハン特別報告者が2021年に中国から20万ドル(約2560万円)を受け取る一方、同国がイスラム系少数民族ウイグル人に対する「民族浄化を隠蔽(いんぺい)するのを支援」したと非難し、返金を求めた。
 
ドゥハン氏はベラルーシ人法学者。2020年3月、国連人権理事会から特別報告者に任命された。一方的な制裁の負の影響を専門とする。国連特別報告者の主張は必ずしも国連の見解を反映するものではない。
 
ドゥハン氏は昨年9月、新疆ウイグル自治区を「素晴らしい土地」と喧伝(けんでん)する中国政府が後援するオンラインプロパガンダイベントに出席した。
 
イベントでは中国の外交官や高官が、西側諸国が中国に対する中傷キャンペーンを展開していると非難。「新疆ウイグル自治区の政策は国際的な労働・人権基準に従っており、生活水準の向上を目指す全民族の意志を支持する」と主張する映像も流された。
 
欧米諸国は中国によるウイグル人へのジェノサイド(大量虐殺)を認定しているが、中国は断固として否定している。
 
UNウオッチによると、ドゥハン氏は昨年、他にも二つの西側諸国による制裁を批判するイベントに出席。イベントは中国、ベラルーシ、イラン、ベネズエラ、ロシアの共催だった。
 
UNウオッチのヒレル・ノイアー事務局長は「独立した立場であるべき人権専門家が政権から金を受け取り、残虐行為を隠蔽すべく企図されたイベントを支持するとは信じ難い」と非難した。
 
中国からドゥハン氏への献金は3月、国連総会に提出された国連人権理事会が任命したすべての特別報告者と作業部会の活動に関する報告書で発覚した。
 
国連人権理事会の報道官はAFPの取材に対し、特別報告者の活動資金は国連の通常予算で賄われるが、委託された仕事の量に対して決して十分とはいえないとして、特定の活動に対する任意献金の必要性を強調した。
 
特別報告者の活動には多くの国が献金しているが、中国が昨年ドゥハン氏に献金した額は群を抜いて多かった。ドゥハン氏はロシアからも15万ドル(約1900万円)、カタールからも2万5000ドル(約320万円)を受け取った。
 
ドゥハン氏はベネズエラやジンバブエ、イランなどを訪問。制裁は「壊滅的な人道的影響」をもたらし違法であり、解除すべきだと主張。人権活動家からは、権威主義国の苦境は西側諸国に科された制裁が原因だと主張し、権威主義政権のプロパガンダに利用されていると批判されている。 【5月20日 AFP】
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国連特別報告者も“いろいろ”なようです。

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