孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  ウクライナの米供与長射程兵器によるロシア領内軍事拠点攻撃容認

2024-11-18 23:10:54 | 欧州情勢

(長射程兵器ATACMS【11月18日 NHK】  最大射程約300キロ・・・名古屋から東京を狙えます)

【ウクライナに領土断念を迫るトランプ次期大統領 政権移行チーム「停戦案」 ウクライナ拒否】
昨日ブログではトランプ復権に向けた世界各国の動きをとりあげましたが、トランプ復権で最もドラスティックに変わる可能性があるのがウクライナの問題。トランプ氏は今年5月「自分がアメリカ大統領なら、24時間以内に戦争は解決する」と豪語しています。

24時間云々はともかく、トランプ氏がウクライナ支援に消極的であり、同氏を支持する人々も、ウクライナ支援ではなくアメリカ国内の自分たちの生活を守るためにカネを使うべきだとしていること、アメリカの支援がなければウクライナの戦争継続は極めて困難なことから、トランプ氏が早期結着に向けてその力を行使することが予想されています。

ただ、「早期決着」が可能になるのは現在戦局において優位な立場にあるロシアの賛同が得られる場合でしょう。
そうしたロシアの主張にほぼ沿う形でウクライナに停戦を迫ることが予想され、そのあたりは11月11日ブログ“ウクライナ  ルール・理念なき「力による平和」・ディールのトランプ流外交でどうなる?”でも取り上げたところです。

トランプ新政権が考える「停戦」の中身については、現在のロシア占領地域をそのままにした形での、政権移行チームによる以下のような案が報じられています。

****トランプ次期大統領 政権移行チーム ウクライナの戦闘凍結案を検討 約1290キロにわたる“非武装地帯”設ける案 米WSJ紙報道****
ロシアによるウクライナ侵攻をめぐって、トランプ次期大統領の政権移行チームが非武装地帯を設けるなどの戦闘凍結案を検討していると報じられています。

これは、6日付の「ウォール・ストリート・ジャーナル」がトランプ次期大統領に近い複数の人物の話として報じたものです。

トランプ氏の政権移行チームは、ウクライナの前線を固定化して、およそ1290キロメートルにわたる非武装地帯を設ける戦闘凍結案を検討しているということです。事実上、ロシアがウクライナの国土のおよそ2割を占領し続けることになるため、ウクライナ側が受け入れる可能性は今のところ低いとみられます。

また、案では、ウクライナには少なくとも20年間、NATOに加盟しないことを約束させる代わりに、アメリカがウクライナに武器を供給し続け、ロシアを抑制するとしています。【11月12日 TBS NEWS DIG】
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この停戦案について、ウクライナ側は拒否の意向をアメリカに示しています。

****ウクライナ戦闘凍結「非現実的」 米次期政権案に拒否の意向示す****
ロシアに侵攻されるウクライナのポドリャク大統領府長官顧問はトランプ次期米大統領の政権移行チーム内で検討中とされる戦闘凍結案について「ウクライナが領土と主権を断念しなければならない。筋が通らず、非現実的だ」と述べ、拒否する意向を示した。共同通信と12日会見した。ポドリャク氏はゼレンスキー大統領の最側近の一人。

政権移行チーム内では前線を固定化して戦闘を凍結し、ウクライナが望むNATO加盟を棚上げする案が浮上したと報じられた。トランプ氏は選挙戦で、来年1月20日の就任前に戦争を解決するなどと豪語してきたが、終結の見通しは立たない。

ポドリャク氏はトランプ氏のウクライナ政策は公になっていないとした上で、凍結案は「ウクライナに犠牲を強いるだけで、ロシアに何も強制していない。侵略者を勢いづかせる」と批判し、ロシアに圧力をかけ譲歩を迫るべきだと主張した。

ポドリャク氏によると、ゼレンスキー氏は7日にトランプ氏と約30分間にわたって電話会談し、ウクライナの立場を説明した。【11月14日 共同】
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ただ、トランプ新政権が武器支援停止をチラつかせて圧力をかけてきた場合、ウクライナ側がアメリカの要請を断り切れるのか?もちろん支援がなくても戦うとはしていますが・・・・

【攻勢を強めるロシア】
一方、ロシアは攻勢を強めています。

****ロシア、ウクライナが奪還した東部要衝に攻撃 北東戦線で攻勢か****
当局によると、ロシアの小規模な突撃部隊が13日、ウクライナ東部ハリコフ州の都市クピャンスク郊外に短時間侵入した。北東戦線でロシアが攻勢を強めている可能性がある。

同市は重要な鉄道拠点で、2022年2月のロシアによる侵攻開始初期にロシア軍によって占領されたが、同年9月にウクライナが反撃して奪還していた。

ウクライナ軍によると、ロシア軍はウクライナ軍兵士に偽装するなどして波状攻撃を仕掛けた。ただ、ウクライナ軍はこれを撃退したという。

ロシア軍はクピャンスク戦線についてコメントしていないが、あるロシア当局者はロシア軍が同市郊外に足場を築きつつあると述べた。ロイターはこの証言を独自に検証することはできなかった。【11月15日 ロイター】
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また、ウクライナがロシア領内に侵攻した地域についても、北朝鮮兵士を含む5万人規模で攻勢をかけ奪還をめざしているようです。

更に、厳冬期を迎えるウクライナの電力インフラに対しても。

****ロシア軍がウクライナ全土に大規模攻撃、厳冬期を前に発電所など標的か…計画停電実施へ****
ロシア軍は17日、ウクライナの首都キーウを含む全土に大規模な攻撃を実施した。厳冬期を前に発電所などの重要インフラ施設を標的にしたとみられる。攻撃で南部ミコライウ州や西部リビウ州などで少なくとも7人が死亡。施設への被害は大きく、18日は計画停電が行われる見通しだ。

今回の攻撃は8月以来、3か月間で最大規模とされる。ウクライナ側によれば、露軍は極超音速ミサイル「キンジャル」や巡航ミサイルなど約120発のミサイルと無人機90機を発射。ウクライナ軍は、このうちミサイル104発、無人機42機を撃墜したという。

地元当局などによると、南部のオデーサ州やミコライウ州、西部のリビウ州で計5人が死亡。東部ドニプロペトロウシク州では鉄道の施設が被害を受け、鉄道会社職員2人が死亡した。

ロイター通信によれば、首都キーウでも市街地で爆発音が響いた。住民らは避難した地下鉄駅の構内で身を寄せ合っていたという。

ウクライナの国営電力会社「ウクルエネルゴ」は17日、攻撃による施設の被害の影響で、ウクライナ全土で18日午前6時から午後10時の間、計画停電を実施すると発表した。【11月18日 読売】
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【バイデン大統領 長射程兵器によるロシア領内軍事拠点攻撃容認 北朝鮮参戦で方針転換】
こうしたウクライナにとって厳しい情勢で報じられ、大きな注目を集めているのが、アメリカ・バイデン政権の長射程兵器を使ったロシア領内への攻撃を容認する方針転換です。

ウクライナを支援するバイデン政権としては、トランプ新政権への引継ぎまでに極力ウクライナを有利な立場にしたいこと、北朝鮮の参戦という新たな事態への対応があると見られています。

****バイデン大統領 長射程兵器露攻撃容認 北朝鮮参戦で方針転換 派兵停止圧力も****
米メディアは17日、ウクライナに米国が供与した長射程兵器を使ったロシア領内への攻撃を、バイデン大統領が容認したと報じた。ロシアのウクライナ侵略に北朝鮮が参戦したことを契機に政策転換した。

早期停戦を主張するトランプ次期大統領の大統領選勝利を受け露軍の攻勢強化も予想され、ウクライナ軍の反撃能力をテコ入れする。北朝鮮に派兵停止を迫る圧力も意識したとみられる。

米紙ニューヨーク・タイムズなどによると、バイデン氏が容認に踏み切ったのは、米国が供与している射程300キロの地対地ミサイル「ATACMS」による露領内の軍事拠点への攻撃。ウクライナのゼレンスキー大統領は同日の声明で「われわれは言葉では攻撃しない。ミサイル自体が語るだろう」と述べ、使用に意欲を示した。

ゼレンスキー氏はATACMSによる対露攻撃を戦勝計画の柱に位置づけ容認を求めてきたが、バイデン氏はロシアの米欧への報復を懸念し拒んできた。しかし、北朝鮮がロシアの侵略を支援するため約1万人の部隊を派兵。一部は、ウクライナが今夏以降占拠を続ける露西部クルスク州に投じられた。

同州が露軍側に奪還され、戦況がウクライナに不利に傾く事態を回避するため、バイデン氏は14日からの南米訪問の直前に決断した。

ウクライナはATACMSで同州内の露軍や北朝鮮軍の集結地点などを直接攻撃するとみられ、米高官は同紙に対し「これ以上派兵すべきでないとのメッセージを北朝鮮に送る」と語った。

ロシアの侵略開始以降、バイデン氏はウクライナが勝利に必要と訴える兵器や能力の提供を迅速に許可しない対応を続けてきたが、北朝鮮参戦とトランプ氏の勝利で環境は一変し、残る任期中に自らの権限で最も効果的な決断に踏み切った形だ。長射程兵器を提供する英仏なども追随するとみられる。【11月18日 産経】
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欧州も同調する動き。

****EU製武器によるロシア領内攻撃、加盟国の合意を期待=ボレル氏****
 欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は18日、ウクライナがEU製の武器をロシア領内への攻撃に使用することについて、EU内で合意することへの期待を示した。

EU外相会議の前に、「ウクライナが矢を止めるだけでなく、射手を撃ち抜くためにも、われわれが提供した武器を使えるようにすべきと何度も訴えてきた」と述べた。

「これが行うべきことだと信じている。再び議論になると思うが、各国が同意することを願っている」と語った。【11月18日 ロイター】
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当然ながらロシアは反発しています。ロシアの反応が核兵器をチラつかせることもなく比較的穏当なのは、まだ政治発表がないせいでしょうか。

****米、ウクライナに長距離攻撃許可なら緊張高まる=ロシア大統領府****
ロシア大統領府のペスコフ報道官は18日、ウクライナが米国製兵器を使用してロシア領内を攻撃することを米政府が許可すれば、緊張が高まり、米国の紛争への関与が深まることになると述べた。

ロイターは17日、関係筋の話として、ウクライナが米国製兵器を使用してロシア領内を攻撃することをバイデン政権が許可したと報じた。

ペスコフ報道官は、退陣するバイデン政権が火に油を注ぎ、ウクライナ紛争をエスカレートさせることを望んでいると述べた。【11月18日 ロイター】
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ペスコフ報道官は「質的に新たな緊張の段階であり、米国の関与が新たな状況にあることを意味する」と語っていますが、“新たな緊張”ということでは、北朝鮮参戦という“新たな緊張”をもたらしたのはロシアの方です。

【トランプ氏周辺は猛反発 一枚岩でもない共和党内部】
アメリカ国内ではトランプ氏周辺は猛批判の様子。

****なぜ今さら長射程ミサイル解禁なのか、ウクライナ戦争をめぐるバイデン最後の賭け****
<ウクライナに米国製兵器でロシア領内を攻撃することを許可したバイデン政権に対して、戦争をエスカレートさせるのかとトランプ支持派がX上で猛烈な批判を展開している>

(中略)バイデン政権の決定はすぐに反発を招き、トランプ支持者の一部がX(旧ツイッター)で、戦争の早期終結という公約のトランプに対し、任期残り2カ月のバイデンがウクライナ戦争をエスカレートさせるようとしていると非難した。

ジョージア州選出の共和党議員のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員は、バイデンをこう非難した。「アメリカ国民は11月5日の大統領選投票日に、外国の戦争に資金を提供したり戦ったりすることを望まないという考えを明らかにした。われわれは自分たちの問題を解決したいのだ。もうたくさんだ。こんなことはやめなければならない」

ベンチャーキャピタリストで政治経済の話題を配信するオールイン・ポッドキャストの共同ホストを務めるデービッド・サックスもXに投稿し、「トランプはウクライナでの戦争を終わらせる権限を勝ち取った。では、バイデンは任期最後の2カ月で何をしようというのか? 大規模な戦争拡大だ。彼の目的はトランプに最悪の状況をもたらすことだ」

ユタ州選出のマイク・リー上院議員(共和党)がXに投稿した「リベラルは戦争が大好き」「戦争は大きな政府を促進する」というコメントに対しては、実業家でトランプ政権に入る予定のイーロン・マスクが「これは真実だ」と返信した。

バイデンの決断についてトランプはまだ声明を出していないが、長男のドナルド・トランプ・ジュニアはXにこう書いている。「軍産複合体は、父が平和を創造し命を救うチャンスを得る前に、確実に第3次世界大戦を起こしたいようだ。何兆ドルもの資金を確保しなければならない。無駄に命が失われる! 愚か者め!」

保守系学生団体ターニングポイントUSAの創設者チャーリー・カークは、Xでこう主張した。「バイデンは第三次世界大戦を起こそうとしている。病的だし、完全に頭がおかしい。アメリカの兵器をロシアの内陸に撃ち込んだりするべきではない!ロシアがアメリカにミサイルを撃ち込むためにミサイルを供与するようなものだ」(後略)【11月18日 Newsweek】
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もっとも、“米共和党で安全保障政策に精通するターナー下院議員は「もっと早くゼレンスキー氏の嘆願に耳を傾けるべきだった」とバイデン氏の対応の遅さを批判した。”【11月18日 時事】ということで、共和党内部も浮くラナイ支援に関しては一枚岩ではないようです。

たしかに、政権最終盤の今になって・・・というのは中途半端な感も。やるなら「もっと早く・・・」という感も。

第1次トランプ政権時も、あと数日で・・・といった段階で、バイデン政権への置き土産のような施策もとられましたが・・・。

もっとも、「ATACMS」によるロシア領内の軍事拠点への攻撃がゲームチェンジャーになりうるかどうかは知りません。繰り返しになりますが、「もう少し早ければ・・・」

【中国企業 ロシア向け軍用ドローン生産】
ロシア支援の側では北朝鮮参戦以外にも。

****中国、ロシア向けドローン生産か EUが指摘と香港紙****
香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは18日までに、欧州連合(EU)が中国新疆ウイグル自治区でロシア軍のための軍用ドローン(無人機)が生産されている決定的な証拠を得たと報じた。複数の外交筋の証言としており、EUは中国に確認を求めている。

中国政府の承認を得たものかどうかは不明。ただ外交筋は中国で政府の許可なしに軍用品や兵器の生産は難しいとみている。

同紙によると、EU当局者の一人は、中国の工場で生産されたドローンがロシアに送られ、ウクライナでの戦争に使われたと語った。

EU当局者は中国当局がどの程度認識しているか確認する必要があるとの考えを示した。【11月18日 共同】
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中国政府は関与を否定するでしょうが、中国みたいな国で、政府の許可なくロシアに軍用ドローンを供与なんて話があったら、そっちがビックリでしょう。

外国メディアへの規制が厳しい新疆ウイグル自治区で・・・というのが、いかにも・・・と言う感も。
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