孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インド  深刻な環境汚染 アダニ・グループ会長の問題は政権へ飛火の可能性も 中国とは関係改善へ

2024-11-21 23:50:59 | 南アジア(インド)

(【11月16日 NHK】)

【深刻な環境汚染 成長を妨げる問題のひとつにも】
このところインドの環境汚染に関するニュースが連日報じられています。

****インドの聖なる川に「白い泡」が大量発生… 正体は有毒物質、汚水や洗剤が主因****
インドの首都ニューデリーを流れるヒンズー教の聖なる川、ヤムナ川の表面に白い泡が大量に発生し、川一面を覆っている。正体は有毒物質。川に流された汚水や洗剤が主な原因で、環境汚染の深刻さを物語っている。地元メディアが23日までに報じた。

地元誌インディア・トゥデーによると、工場から出た汚染物質がヤムナ川上流に流れ込み、洗剤などを含む排水とともに放水路を通過する際にかき混ぜられて泡が発生する。白い泡は積雪のようで、衛星画像でも捉えられたという。

インドでは川が「母」や「女神」として崇拝され、研究者は「川が泣いているようだ」と話している。
ヤムナ川はヒマラヤ山脈に端を発し、聖なる川として知られるガンジス川の支流の一つ。(共同)【10月23日 産経】
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しかし、有害な泡も一部の熱心な信者の信仰を妨げることはできないようで・・・

****白い泡が大量発生...インド「下水汚染された川」に次々入る女性たちの目的とは?****

ヒンドゥー教の太陽神スーリヤに健康と繁栄を祈る伝統行事チャートプジャ祭で、インドの首都ニューデリー中心部を流れるヤムナ川に入る女性。

産業廃棄物や農薬、下水による高レベルの汚染で、川面には大量の泡が浮かぶ。
地元裁判所は健康と安全上の懸念から川での祝祭を禁じたが、それでも数千人が汚染水の中で祈りをささげた。【11月18日 Newsweek】
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川の汚染以上に多くの人々に影響するのが大気汚染。
“インドの首都ニュー・デリーは「世界で最も汚染された首都」と言われ、特にこの時期は車の排気ガスや収穫後の野焼き、さらにディワリの花火で町は煙に包まれます。”【11月7日 テレ朝news】

ディワリというのは10月末から11月初めに行われるヒンドゥー教の祭りで、別名「光のフェスティバル」とも呼ばれ、大量の爆竹や花火が使用されます。

****大気汚染のインド首都で工事禁止 学校はオンライン授業****
深刻な大気汚染への対策として、インド政府は18日から首都ニューデリーへの中大型トラックの進入や公共事業の建設工事を禁止した。学校はオンライン授業に切り替えるほか、中央政府職員には在宅勤務が導入される可能性もある。大気汚染が社会生活や経済に影響を及ぼし始めた。

大気汚染対策を担う政府機関が17日に公表し、地元メディアによると、状況が改善するまで続ける。ニューデリーや近郊では、農地の野焼きが本格化する10月ごろから空気の質が極端に悪化し「世界最悪級」とも言われる。

政府機関によると、生活必需品を運ぶほか、液化天然ガスや電気で走行するトラック以外はニューデリーへの乗り入れを認めない。ニューデリーを含むデリー首都圏では高速道路や高架、送電線などの公共事業の建設を中断させた。

首都圏政府のアティシ首相は17日、一部の学年を除き初等教育などの対面授業を中止すると発表。指示があるまでオンライン授業に切り替える【11月18日 共同】
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****泥縄式インドの大気汚染対策 汚染値はWHO基準の50倍超*****
(中略)濃く有毒なスモッグが首都を包み込み、大気の質がますます危険な状態になる中で、約3300万人のニューデリー市民は毎朝目を覚ます。  

肺の奥深くまで入り込む可能性のある大気中の微小粒子状物質を測定する国の主要な環境機関によれば、この数値はさらに深刻なカテゴリーへと上昇しているという。  

市内のいくつかの地域では、WHOが推奨する安全基準値の50倍以上だった。 予報によると、大気の質の悪さは週明けまで続くという。  

毎年農業地域で作物残渣が焼却されるため、インド北部の大気汚染は特に冬に上昇する。燃焼と同時に気温が下がるため、煙が空気中に閉じ込められ、その煙が都市部に吹き込まれ、自動車の排気ガスが汚染にさらに拍車をかける。  

産業界からの排出物や、発電のための石炭燃焼も汚染に関係しており、ここ数週間は着実に上昇している。(中略)

首都を取り巻く大気の悪化は、住民の怒りをい、多くの市民が頭痛や咳を訴え、街を"黙示録的"とか"ガス室"と表現する人もいる。  毎年100万人以上のインド人が公害関連疾患で死亡していると推定されている。  

当局は過去にもスモッグを抑えるために、スプリンクラーやスモッグ防止銃を配備したこともある。  既に地域が汚染されてしまってから、その影響を緩和しようとするのではなく、汚染そのものを大幅に削減する長期的な解決策が必要ではないか。 【11月19日 AP】
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日本もかつては川の大気も有害物質で汚染され公害に苦しんだ過去があります。水俣病、新潟水俣病(第二水俣病)、四日市ぜんそく、イタイイタイ病といった、いわゆる四大公害病も。光化学スモッグが社会問題になった時期も。

環境問題・公害は経済が成長していく過程で多くの国が経験していくものではあるのでしょうが、インドの場合その程度が甚だしいようにも。

6年ほど前のインド旅行だったでしょうか、南インドのある田舎の町で食べ物を買ったところ、レジ袋ではなく紙で包んで紐でしばってくれました。「レジ袋はコスト的に高い殻なのか・・・」と思ったら、後で知ったところではレジ袋が環境対策として条例で禁止になっているようでした。

「カオスの国インドも随分と先進的な取組をするようになったものだ・・・」と思ったのですが、一方で町の空き地などはプラゴミなどで地表が見えないぐらい。

レジ袋禁止もいいけど、先ずは勝手にそこらへんに捨てない・・・という最低限の意識の問題から取り組まないといけないと感じた次第。

ただ、今思うと、捨てない云々は、単に意識の問題ではなく、ゴミ回収の仕組みがどの程度整っているかにもよるでしょう。

いずれにしても、環境汚染は今後の経済成長を目論むインド・モディ首相にとっての障害のひとつになっています。

****インドはなぜ「次の中国」になれないのか 停電、水害、環境汚染…モディ首相の求心力も低下****
「次の中国」に必要なGDP成長率
米モルガン・スタンレーは9月17日に発表したリポートで、主要な世界株価指数(MSCI・ACワールドIMI指数)のインド株のウエート(2.35%)が初めて中国株(2.24%)を上回ったと発表した。

インドの経済成長率の高さを理由に、同国の株式市場では海外からの力強い資金の流入が続いている。中国経済が強力な刺激策の欠如や根強いデフレ圧力で失速する中、投資家の間で「インドが世界経済の新たな成長の原動力となる」との確信が高まっていることが示された形だ。

インドの第2四半期の実質国内総生産(GDP)の成長率は前年比6.7%増だった。前四半期の7.8%増から伸び率は鈍化したものの、人口増加などを背景に主要国を上回る成長を維持している。

国際通貨基金(IMF)によれば、世界の経済成長への寄与度はインドが16%、中国が34%だ。「インドは『次の中国』になる」との期待が生まれているが、そのためには2桁近い成長を長期にわたって続ける必要があると言われている。

高学歴者ほど就業環境が厳しく
「飛ぶ鳥を落とす」勢いの感があるインド経済だが、課題も山積している。

喫緊の課題は雇用創出力の低さを改善することだ。2022年度(22年4月〜23年3月)の失業率は、モディ政権発足前(2013年度)の4.9%から5.4%に上昇した。15〜29歳の若年層の失業率は16%を超え、高学歴者ほど就業環境が厳しくなっている。

米シティグループの分析結果によれば、現在の成長率(年率7%)ではインドの年間の雇用創出は800〜900万人にとどまるが、国内労働市場に新規参入する若年層を吸収するには年間1200万人の雇用創出が必要となるという。

インドの雇用創出力が低い主な要因は以下の2つだ。
(1)製造業のGDPに占める比率が17%と発展途上国の中で下位に属していること
(2)非農業部門の雇用に占める中小企業の割合も約4割と世界平均から見てかなり低いこと(中略)

停電、浸水、水不足、環境汚染
インフラの脆弱性も頭の痛い問題だ。

電力インフラ全体が未整備なインドではいまだに突然の停電が起きる。安定した電力の確保には原子力発電の拡大が不可欠だが、インドの総発電量に占める原子力の比率は2%未満だ。インド政府は民間の協力を得て導入の拡大を図ろうとしている(9月14日付日本経済新聞)ものの、前途遼遠と言わざるを得ない。

豪雨災害も増加の一途だ。雨季(モンスーン)中の9月14日、文化遺産のタージマハルでは庭園の一部が大雨で浸水した。7月末には南部ケララ州の著名な観光地でも集中豪雨による土砂崩れが発生している。

一方、深刻な水不足も発生しており、経済活動に悪影響を及ぼし始めている。

有数のビジネス都市バンガロールでは、3月に水不足で企業活動全般に支障をきたす事態が発生した。米格付け企業のムーディーズ・インベストメント・サービスは6月、水不足がインドの格付けに悪影響を及ぼす可能性があるという警告を発している。

水質汚染も目を覆うばかりの状況だ。モディ氏は議員に選出された際に「ガンジス川の浄化」を公約に掲げたが、一向に改善されていない。

都市廃棄物の問題も日に日に悪化している。英リーズ大学の研究チームは9月5日、環境中に廃棄されたプラスチックごみはインドが世界最大で930万トン(2020年時点)との分析結果を発表した。

またインド当局の推計によれば、毎日排出されている17万トンのゴミのうち適正に処分されているのは3分の2に過ぎず、残りは不法投棄されている。

中国との関係と連立政権…モディ氏の求心力は
国内の懸案事項に加え、中国との関係改善も焦眉の急だ。

インドの長期的な発展にはグローバルな供給網と一体になる必要があるが、その際、中国経済との連携強化は避けて通れない。だが、2020年5月にヒマラヤ山脈の国境沿いで衝突して以来、両国の関係は緊張状態が続いている。

これが災いして、電気自動車(EV)や半導体、人工知能(AI)などの分野での資本・技術・人材の交流は滞っているものの、インド政府はここに来て緊張緩和に動き出した。

ジャイシャンカル外相は9月10日、「中国からの投資に門戸を閉ざしていない」と発言した。また産業界の働きかけを受け、政府は中国人へのビザ発給を緩和し始めている(9月11日付ロイター)。

だが、この動きが続く保証はないと言わざるを得ない。

モディ氏は6月に3期目の政権樹立に成功したが、初めて体験する連立政権の運営に戸惑っている。連立する政党の反対で重要政策の撤回を余儀なくされるなど、求心力の低下も懸念事項だ。(中略)

「内憂外患」を抱えるインドが「第2の中国」になるのは、現段階では非常に難しいのではないだろうか。【9月26日 藤和彦氏 デイリー新潮】
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【アダニ・グループ会長、贈賄や巨額詐欺に関与した疑惑 モディ首相へ飛火も】
水や大気だけでなく、政治の世界も汚職・不正で汚染されています。

****印財閥アダニ、会長ら起訴で新たな危機 モディ政権に火の粉も****
富豪として知られるインド財閥アダニ・グループのゴータム・アダニ会長が20日、贈賄や巨額詐欺に関与した疑いで米検察当局に起訴された。アダニ・グループにとっては昨年の会計不正疑惑に続く、新たな危機となる。会長と同郷のモディ首相に火の粉が飛ぶ恐れもある。

アダニ会長、会長の甥でアダニ・グリーン・エナジー幹部のサガル・アダニ氏、アダニ・グリーン・エナジーのビニート・ジャエイン元最高経営責任者(CEO)は証券詐欺、証券詐欺の共謀、電信詐欺の共謀で起訴された。

21日のインド市場では、アダニ・グループの株・債券が急落。疑惑の渦中にあるアダニ・グリーン・エナジーは6億ドルの社債売却を取りやめた。

アダニ・グループは声明で、「(疑惑は)根拠がなく否定する」と表明し、あらゆる可能な法的手段を取る方針を示した。

アダニ・グループを巡っては昨年、空売り家のヒンデンブルグ・リサーチが、会計粉飾やタックスヘイブン(租税回避地)を利用した脱税などを指摘するリポートを発表。グループの株・債券が急落した。今もインド証券取引委員会(SEBI)の調査が続いている。

モディ首相は、アダニ会長と同じ西部のグジャラート州出身。野党からはかねて、アダニを「ひいき」しているとの批判が出ていた。野党・国民会議派は21日、アダニ・グループによる不正疑いを議会が調査するよう改めて求めた。【11月21日 ロイター】
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“「アダニが急成長した背景にはモディ首相との密接な関係があった」との指摘がかねてなされていた。両氏は同じ西部グジャラート州の出身で、アダニは同州を基盤に事業を拡大してきたからだ。”【2023年2月13日 藤和彦氏 デイリー新潮】

昨年2月に報じられていた案件がまだ解決しない状況で新たな問題・・・・アダニ会長の問題は“親密な関係”のモディ首相に飛び火します。

【中国との関係を改善せざるを得ないインド 「対立ではなく協調に焦点を当てるべきだ」(シン国防相)】
【9月26日 藤和彦氏 デイリー新潮】でも指摘されている中国との関係については、インドとしては中国との関係を改善しないと経済的に回らなくなるという事情があります。

****インドが「中国重視」に方向転換せざるを得ない事情 「タージマハル」がスモッグで消える…深刻な公害や食品価格の高騰で高まる国民の不満****
(中略)
「消費」は流行遅れになった?
視界が不良なのは空気や水だけではない。景気の先行きもあやしくなっている。
インドの10月の消費者物価指数(CPI)は前年比6.21%上昇し、1年2カ月ぶりの高い伸びとなった。約半分のウエートを占める食品が前年比10.87%上昇し、11月もこの傾向が続くと見込まれている。

食品価格が賃金の伸びを上回るスピードで上昇を続けているため、インドの中間層の購買力は大きな痛手を被っている。(中略)その旺盛な消費に世界は注目してきたが、食品価格の高騰が災いとなり急減速している。

消費不振がインド経済全体に打撃
消費の不振は企業収益にも暗い影を投げかけている。
インドの主要企業の第3四半期決算は4年半ぶりの低水準に陥った。専門家は、消費動向を始め広範な分野で景気減速が見られると警戒している(11月11日付ロイター)。(中略)このように、食品価格の高騰はインド経済全体に打撃を与えつつある。

インド中央銀行は今年の実質経済成長率を前年比7.2%と予測しているが、民間では成長率予想を下方修正する動きが強まっている。

成長の鈍化はモディ首相にとって頭の痛い問題だ。今年の選挙で苦戦したのは中間層の不満が主な要因だった。成長が鈍化すれば、国内の雇用難はますます深刻化し、政権への批判が高まるばかりだろう。

西側諸国から中国へと軸足を移行
注目すべきは、海外投資家の間で「インドが西側諸国から中国へと軸足を移行している兆しがある」との指摘が出ていることだ(10月31日付日本経済新聞)。

モディ氏は10月23日、訪問先のロシア西部カザンで5年ぶりに中国の習近平国家主席と会談し、対立の原因となっていた国境紛争地の安全管理について協議を加速することで合意した。25日には、領有権を巡り対立するインド北部ラダック地方の一部から印中両軍が撤収を開始し、30日にその完了が報じられている。

今回の緊張緩和はインドが主導したと言われている。
2020年5月の国境紛争後、インド政府は中国企業を締め出してきた。だが、9月からは態度を一変させ、中国企業に対して投資の呼びかけを活発化させている。

中国に代わって「世界の工場」を目指すインドが、深刻なアキレス腱を抱えているからだ。国内企業の競争力が低いため、中国企業の助けを借りないとインド国内のサプライチェーンが整備されない。

インドには日米豪印の協力枠組み「クアッド(QUAD)」に対する失望もあるようだ。専門家は、「中国封じ込め」という当初の目的が希薄化し、具体的な成果が出ていないと批判的だ(10月5日付日本経済新聞)。(後略)【11月21日 藤和彦氏 デイリー新潮】
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****中国・インド国防相が会談「対立ではなく協調を」国境の係争地めぐり相互の協力で一致****
(中略)中国の董軍国防相とインドのシン国防相は20日、ASEAN拡大国防相会議が開かれているラオスで個別に会談しました。

両国は国境の係争地で軍事衝突を繰り返してきましたが、5年ぶりとなる公式な首脳会談が行われた先月以降、緊張緩和と関係修復に向けた意思疎通を加速させています。インド政府によりますと、両国防相は会談で、互いの信頼を再構築するために協力していくことで合意しました。

また、シン国防相は「インドと中国が友好的な関係を築くことは、世界の平和につながるだろう」と述べたうえで、「対立ではなく協調に焦点を当てるべきだ」と強調したということです。【11月21日 TBS NEWS DIG】
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