孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

韓国  大統領・与党支持が意外に少なくないとの世論調査結果 北朝鮮スパイ疑惑も

2025-01-09 22:53:31 | 東アジア

(弾劾訴追され職務停止となった韓国の尹錫悦大統領の拘束が実現せず、先行き不透明感が増していることで、尹氏の支持者が勇気づけられ、与党「国民の力」の支持に回復の兆しが見られている。大統領支持派のデモ、ソウルの大統領官邸近くで9日撮影。【1月9日 ロイター】)

【大統領公邸を「要塞化」 国家権力同士のにらみあい】
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が12月3日夜に一時宣布した「非常戒厳」を巡る大混乱と弾劾決議などに関しては周知のところ。

現在は、伊大統領の拘束をめぐって、抵抗する大統領側が大統領公邸を「要塞化」、大統領警護処と警察等の国家権力同士がにらみ合うという異例の事態となっています。

****尹氏の拘束令状再着手へ調整続く 韓国、対応強化で衝突懸念****
韓国の高官犯罪捜査庁や警察などによる合同捜査本部は9日、尹錫悦大統領の拘束令状執行に再び着手する時期や方法を巡り検討を続けた。

3日の執行失敗を受け、より強力な警察部隊の投入が取り沙汰され、抵抗する大統領警護庁も鉄条網などで公邸を「要塞化」(韓国メディア)。衝突への懸念と緊張が高まる中、尹氏側は正式に逮捕状を取った場合の捜査には応じる考えも示した。

韓国メディアによると、警察は暴力団など犯罪組織の制圧にも当たる「刑事機動隊」の展開を検討。捜査員も前回の倍に当たる約300人を動員する構えだという。対する警護庁は、公邸に通じる道の門に鎖を絡めたり、捜査員の行く手を阻む大型車両の数を増やしたりと防備を固める。

8日にはインターネットメディアが、尹氏とみられる人物が同日午後(日本時間同)、関係者らと公邸敷地内を点検するような場面を捉えたとする映像を公開。尹氏が直々に警護強化を指示するような姿に注目が集まった。大統領府は「軍事上の保護区域を無断で撮影した」として同メディアを告発した。【1月9日 共同】
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【大統領・与党を支持する者も少なくない世論調査結果】
「非常戒厳」宣布からの一連の動向で、伊大統領は国民の信頼を完全に失って孤立し、巷には大統領への怒り・批判の声が溢れている・・・・というイメージも持ちがちですが、最近発表された世論調査をみると、必ずしもそういう話でもなさそうです。

尹大統領の支持率は40%台回復したという調査も。もっとも野党側は調査手法に問題があるとして調査機関を公選法違反の疑いで告発する方針とか。

****韓国・尹大統領の支持率は40%台回復か 一部世論調査報道、野党は手法を問題視し告発へ****
韓国で弾劾訴追された尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の支持率を巡り、一部の世論調査で昨年12月3日の「非常戒厳」宣布以降、初めて40%台に達したと、地元メディアが報じた。

保守的な論調で知られる朝鮮日報(電子版)は「1カ月でV字回復」と強調している。一方、革新系最大野党「共に民主党」は、この調査を行った機関を公選法違反の疑いで告発する方針を明らかにした。

朝鮮日報などによると、韓国世論評判研究所(KOPRA)が18歳以上の男女1000人を対象に1月3、4両日行った世論調査で、尹氏を「強く支持する」との答えが31%、「支持する」も9%あった。一方、「全く支持しない」は56%、「支持しない」は4%だった。

一方、政党支持率では「共に民主党」が39%、尹氏が所属する保守系与党「国民の力」は36%で拮抗(きっこう)した。

この調査結果を、共に民主党などは問題視する。
「質問項目の設計などが特定の回答を誘導する形で進められた」 共に民主党の趙承来(チョスンレ)首席報道官は6日、記者団にこう述べ、KOPRAに対し、公選法違反の疑いで告発する方針を明らかにした。

具体的には、捜査機関「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」が執行を目指す尹氏の拘束令状について、違法性が指摘されていることを前置きした上で質問している点などを疑問視しているという。

左派系のハンギョレ新聞は7日配信の記事で、KOPRAの調査結果について「極右勢力と与党『国民の力』の支持層で共有され、世論の流れを歪曲(わいきょく)している」と非難した。

共に民主党の対応に対し、「国民の力」のメディア特別委員会は「『告発脅迫』で世論調査まで手なずけようとする奸悪な試みと見るほかはない」と反論している。【1月7日 産経】
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この調査だけの話なら“特定の回答を誘導する形”云々も「そうなんだ・・・」という話になりますが、大統領・与党側が意を強くするような調査が他にも。

別の調査では、大統領に対する逮捕状執行について、44.5%が反対しているとの結果も・

****4割超が尹大統領逮捕に反対 分断あらわに 韓国世論調査****
韓国の世論調査会社「リアルメーター」は8日、戒厳令を宣布した尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する逮捕状執行について、54・4%が賛成する一方、44・5%が反対しているとの調査結果を発表した。

高官犯罪捜査庁(高捜庁)や警察などで作る合同捜査本部は内乱などの容疑で尹氏に対する2度目の逮捕状執行を試みようとしているが、世論の分裂は捜査当局の判断にも一定の影響を与えそうだ。

調査は7日に18歳以上の男女約500人を対象に行った。逮捕に反対する44・5%には「拘束せずに捜査」を求める12・5%と、「戒厳令は正当だったので逮捕すべきでない」とする31・9%が含まれている。

年代別には40〜50代の約7割が逮捕を支持。一方、60〜70代の半数以上が反対した。男女別で見ると、女性は約6割が逮捕に賛成し、男性は賛成が48・8%、反対が49・2%と拮抗(きっこう)した。

逮捕について賛否が二分する背景には、戒厳令以降の政治的混乱について、尹氏だけでなく、安定化に積極的な役割を果たさない野党にも責任があるとの見方が広がっていることとの関連もありそうだ。政治混乱について「尹氏や与党の責任だ」と回答した人は51・3%で、「野党の責任だ」と答えた人は39・1%だった。【1月9日 毎日】
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「戒厳令は正当だったので逮捕すべきでない」が31・9%・・・保守の岩盤支持層は崩れていないようです。更に政治的混乱への野党責任も加わって・・・といったところ。

また、別調査では与党「国民の力」の支持率が3週間ぶりに6ポイント上昇し、30%台を回復したとのこと。

****大統領が弾劾される政局で韓国与党の支持率が上昇も…“次期大統領”にふさわしい人物は圧倒的に野党・李在明****
韓国の世論調査で与党「国民の力」の支持率が3週間ぶりに6ポイント上昇し、30%台に回復したことが明らかになった。これにより最大野党「共に民主党」との支持率の差が4ポイントまで縮まった。

エンブレインパブリック、KSTATリサーチ、コリアリサーチ、韓国リサーチが1月6日から8日にかけて、全国18歳以上の男女1000人を対象に実施した全国指標調査(NBS)の結果を1月9日に発表した。

それによると、1月第2週の「国民の力」の支持率は32%、「共に民主党」の支持率は36%で、その差は4ポイントだった。「共に民主党」の支持率は前回調査(2024年12月19日実施)より3ポイント低下した。
「祖国革新党」は7%、「改革新党」は3%の支持を得た。

次期大統領にふさわしい人物は?
大統領選挙が今年行われた場合、どの政党の候補に投票するかという質問には、「共に民主党」の候補を選ぶとした回答が41%、「国民の力」の候補を選ぶとした回答が29%だった。

次期大統領として最も適任だと思う人物について尋ねたところ、「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表を選んだ回答者が31%だった。(中略) 「該当者なし」「わからない」、または回答を拒否した人は32%だった。(中略)

また、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾審判について「弾劾を認めて尹大統領を罷免すべきだ」との回答が62%に上った。「弾劾を棄却し、職務に復帰させるべきだ」との回答は33%だった。

尹大統領の弾劾審判に対する対応については、「非常に誤っている」(53%)を含め、「誤っている」と答えた人は65%だった。一方、「うまくやっている」との回答は30%だった。

NBS調査は、携帯電話の仮想番号(100%)を用いた電話インタビューで行われた。標本誤差は95%信頼水準で±3.1ポイント、回答率は22.8%だ。【1月9日 サーチコリア】
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これだけの政治混乱のあとで与野党の支持率の差が4ポイントしかないというのも極めて意外。

また、3人に一人が「弾劾を棄却し、職務に復帰させるべきだ」と考えているのは、前述のように保守岩盤支持層健在(復調)を示すものでしょう。

【大統領拘束失敗で勢いづく保守勢力】
また、大統領拘束の失敗で保守勢力の意気は上がっているようです。

****韓国与党に支持回復の兆し、尹氏拘束失敗で保守層勢いづく****
弾劾訴追され職務停止となった韓国の尹錫悦大統領の拘束が実現せず、先行き不透明感が増していることで、尹氏の支持者が勇気づけられ、与党「国民の力」の支持に回復の兆しが見られている。

9日に発表された全国指標調査(NBS)によれば、回答者の59%が尹氏の拘束を望んでおり、37%は拘束は行き過ぎと答えた。

尹氏の弾劾訴追から数週間を経て、国民の力の支持率が回復している。一部のアナリストは、年内に大統領選が行われる可能性を見据えて保守派が団結する兆候を示していると分析している。

韓国外国語大学のメイソン・リチー教授は、「尹氏を拘束しようとしたことで、保守派が再び活気づいたようだ」と述べた。

与党の支持率回復の背景には、尹氏の戒厳令布告に賛同する岩盤支持層に加え、野党「共に民主党」の李在明代表が大統領になることを懸念する消極的な支持層の存在があるとの見方を示した。

「尹氏が拘束されていたら、保守派は弾劾訴追に続いて2度目の敗北を喫し、復活の勢いはすぐに失われていただろう。拘束の試みが失敗すればするほど、保守派は復活を強く感じるだろう」と語った。

6日に発表されたリアルメーターの世論調査によると、国民の力の支持率は34.4%で、3週連続で上昇した。一方、最大野党の共に民主党の支持率は45.2%だった。

韓国の世論調査機関の大半は、尹氏の弾劾訴追以降、同氏の支持率を公表していないが、一部の調査ではここ数日、尹氏個人の支持率が上昇している。

ユーラシア・グループの北東アジア担当シニアアナリスト、ジェレミー・チャン氏は、尹氏の拘束に向けたさらなる試みは、同氏と与党の支持を「活気づける」だけだろうと述べた。

仁川大学のイ・ジュンハン教授(政治学)は国民の力の復調について、2017年に朴槿恵元大統領が弾劾された後の選挙で保守政党が大敗した経験があるため、保守層の間で危機感が高まっているとの見方を示した。【1月9日 ロイター】
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【「共に民主党」の李在明代表も崖っぷち】
“次期大統領にふさわしい人物”の筆頭にあがっている「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表ですが、伊大統領の罷免・次期大統領選挙を急がないと、自身の事件で大統領選挙にも出馬できない“時間的”事情があるのも周知のところ。

****すでに“大統領気取り”だが、大統領選に出馬さえできない可能性も…李在明代表、側近が控訴審でも有罪****
12月3日の非常戒厳事態を契機に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾審判が開始され、次期大統領選に向けた青信号が灯るかに見えた「共に民主党」李在明(イ・ジェミョン)代表だが、再び暗礁に乗り上げた。

偽証教唆容疑の無罪判決で一息ついた李代表の“司法リスク”が再び浮上してきたからだ。
サンバンウルグループと絡んだ裁判で起訴された李代表の側近であるイ・ファヨン元京畿道平和副知事が、控訴審でも有罪を免れなかった。李代表にも直結するサンバンウルによる違法な北朝鮮への送金の事実関係が、今回も認定された。

目前に迫った公職選挙法違反事件もある。李代表が今年11月、1審で懲役1年、執行猶予2年の判決を受けた事件だ。今後10年間、選挙に出馬できない重い判決だ。

選挙法違反事件では、控訴審が3カ月以内に結論を出すことが義務付けられている。尹大統領の弾劾審判とは別に、李代表が直面する危機の火種は消えていないように見える。【12月20日 サーチコリア】
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【「戒厳令は正当だった」という主張を更に強めそうな北朝鮮スパイ疑惑】
伊大統領及び保守岩盤支持層の「戒厳令は正当だった」という主張を更に強めそうな北朝鮮の介入疑惑に関する情報も明らかになっています。

****韓国最大規模の労組幹部は北朝鮮のスパイ、報告文で「総会長」金正恩氏に忠誠示す****
北朝鮮の対韓国工作機関「文化交流局」が、韓国最大規模の労組幹部だった男らによって秘密裏に結成されたスパイ組織に対して多数の指令文を送っていたことが、韓国・水原地裁の判決で認定された。韓国の労組を通じ、日米韓3か国協力の弱体化を狙う北朝鮮の思惑が見てとれる。

日米韓揺さぶり
「韓国と日本の関係は最悪だ。高揚した反日世論の流れに乗り、『韓米日三角同盟』を破裂させるための活動が必要だ」

北朝鮮は2019年7月から8月に3回にわたって指令文を送った。これに先立ち、日本政府は元徴用工訴訟問題への対応を巡り当時の文在寅ムンジェイン政権が解決に向けた対応を見せない中、対韓輸出管理強化に踏み切っていた。

指令文では「民族の利益を侵害する冒涜ぼうとく行為だと社会に認識させ、文政府が日本に妥協案を出さないよう力を与えろ」と求め、日本大使館を包囲したり、日の丸を破ったりするような過激な反日闘争の強化を促した。この後、韓国内では市民団体などによる日本製品の不買運動が広がった。

また保守の尹錫悦ユンソンニョル政権が発足した直後の22年5月の指令文は、「(尹政権が)従属的な韓米同盟にしがみつき、反北朝鮮対決策動に狂っている」と対北強硬路線への転換に危機感を示し、韓国内での「大衆闘争」で糾弾する必要があると主張した。

米軍基地画像も
スパイ組織に対しては、日米韓の協力強化が「平和と安定を害する」というメッセージの発信につながる記者会見や署名運動、抗議デモを指示。リーダー格の男が局長を務めていた労組「民主労総」は、尹政権発足後、3か国協力反対の活動を積極的に展開している。

水原地裁の判決で「北朝鮮に渡れば攻撃対象になり得るなど、韓国に不利益をもたらす危険性が明白」と強く非難したのが、この男が所持していたデータだ。ソウル南方の京畿道キョンギド平沢ピョンテクの米軍基地のヘリコプターや車両、ミサイル砲台の画像などが収められていた。

北朝鮮の工作機関は19年1月の指令文で「有事に備えた準備を整える」とし、平沢の軍基地や軍港の配置図、「大統領府や主要統治機関をマヒさせるため」として、送電網システムの資料について入手を求めており、判決は北朝鮮の指示に従い、男がこうした情報を収集したと認定した。

「本社」「支社長」
指令文は、北朝鮮の文化交流局を「本社」、韓国のスパイ組織のリーダー格の男を「支社長」、民主労総を「営業1部」と表現。19年8月には「『本社』の指示に従い、『支社長』が『営業1部』を通じ反日感情を高めるための闘争を戦術的によく練っていると評価する」との指令文もあった。流出した場合でも、実態解明を防ぐ隠蔽いんぺい工作とみられる。

メールなどで送られた指令文は、別の文字や画像に内容が埋め込まれる「ステガノグラフィー」と呼ばれる暗号化手法で隠されていた。捜査機関の捜索や押収があってもやりとりが発覚しないよう備えていた。

リーダー格の男は北朝鮮に報告文を送るたび、金正恩キムジョンウン朝鮮労働党総書記を「総会長」との隠語で表現し、「いつも忠実な息子として闘争しています」(20年5月)、「我が民族の自主と平和のために努力されている総会長の領導に感服します」(同6月)とつづるなど、忠誠を示していた。

今回の事件について、韓国に亡命した北朝鮮元工作員の一人は「スパイ活動の氷山の一角が明らかになっただけ」と指摘する。韓国の裁判所では今回の事件以外にも、北朝鮮からの指令文を受け取っていたなどとして国家保安法違反に問われているスパイ事件の公判が3件行われている。【1月9日 読売】
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この事件は韓国メディアは直接には報じておらず、上記【読売】報道を引用する形で多くの韓国メディアが取り上げているとのこと。

そのあたりについても、“「なぜこんな重大なスパイ事件を国内メディアは報道せず、日本のメディアを引用しなければならないのか。一体どれだけ北朝鮮や中国のスパイがメディアに浸透しているのか」といった疑心の反応も少なくなかった。”【1月9日 サーチコリア】という反響も。

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