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(写真はサハリンで建設が進むパイプライン 環境問題も指摘されています
“flickr”より By Dario Thuburn)
昨日はロシアから極東に関するニュースが2件ありました。
ひとつはプーチン大統領がサハリン州知事を解任したというもの。(AFP 8月7日)
ロシアの州知事は以前は選挙による公選制でしたが、04年からは中央集権強化のため大統領の推薦に基づいて地方議会が選出する事実上の「任命制」が導入されたそうです。
現サハリン知事は公選制で選ばれた知事でしたが、石油開発を巡る州の利益に対する不満や、地震対策の不手際を叱責され、事実上の解任になったようです。
今後のサハリンの石油開発・北方四島などの極東開発について中央の意向を強めていくねらいがあるそうです。
ただ、これはサハリンに限らない話で、年末の下院選・来年3月の次期大統領選を控え、プーチン大統領は今春から地方の知事を相次いで解任して中央集権強化を進めているそうです。
ロシアでは「プーチン帝国」樹立が着々と進行しているようです。
もう1件のニュースは、ロシアの国防相と経済発展貿易相が8日、北方領土の択捉島を視察するというものです。(毎日 8月7日)
ロシア政府要人では今年4月の第1副首相、6月の外相に次ぐ北方領土訪問となるそうで、極東地方の開発に力を入れたいプーチン政権の意向をあらわしているとか。
サハリンの石油・天然ガス開発は埋蔵量も当初見込みより増え、かなり長期にわたる大規模開発になりそうです。
資源外交で“強いロシア”復活を目指すプーチン大統領にとっては、極東資源開発、それを梃子にした極東全般の開発促進は重要なカードになりつつあるのでしょう。
第一義的にはエネルーギー不足に悩む中国が需要先・開発パートナーとして想定されているようですが、1対1では中国側の意向に左右される危険もあるので、ロシアとしては日本を巻き込むかたちでバランスをとろうとしているとも言われています。
また、ロシアのGDPあたりのエネルギー消費は日本の7倍とかで、日本の省エネ技術にも強い関心がるとも思われます。
日本としては、北方領土問題は別にして、近隣に石油・天然ガス資源供給基地ができそこから入手できること、極東開発プロジェクトへの参画などは好都合なことではありますが、どうもロシアという国に対しては不信感が拭えない側面があります。
進行しているサハリン開発にしても、開発途中から圧力をかける形で、プーチン側近で固める国営企業ガスプロムへ強引に開発主導権を持っていったように覚えています。
また、今月1日にはガスプロムがベラルーシに対し代金未納を理由にガス供給を45%削減するとの処置を発表し、結局ベラルーシ側が折れる形で解決したようです。
昨年ウクライナともガス供給で揉め、西欧諸国も影響を受けていました。
「払わない方が悪い。」と言えばそれまでですが、それだけなら高利貸しと同じです。
ロシアの資源に頼るのはいささか毒饅頭のようなところもありますが、まあ、いざというときは吐き出せる用意はして・・・というところでしょうか。
ロシアも今は資源を武器に急成長していますが、得意な分野・長所と思える点がやがて意外なネックになるというのは世間一般にあることです。
原油高の風を受けた資源に頼った強気な運営は、経済開発が結局自国の資源の状況に制約されることになりますし、原油価格の動向いかんでは大きな修正を余儀なくされます。
そのとき、国際的信用を失っていては手を貸す国もないでしょう。
実はロシアに関してはもうひとつニュースがありました。
親ロシアの分離独立派を抱えるグルジアが、「ロシア戦闘機が領空侵犯して、ロケット爆弾を投下(不発)した」とロシアを非難し緊張が高まっているというものです。
ロシアはこれを全面的に否定しており、今のところ“藪の中”の様相です。
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