イギリスで16日、エリザベス女王の誕生日を記念して毎年発表される受勲者リスト「Queen’s Birthday Honours List」の2007年度版が発表されましたが、この中に小説「悪魔の詩」の著者のサルマン・ラシュディ氏が含まれていたことが大きな問題になっています。
1989年にサルマン・ラシュディ氏が書いた小説「悪魔の詩」は、イスラムを揶揄・挑発する内容で、イスラム社会の反発を招きました。
当時のイラン革命の最高指導者ホメイニ師は、イスラム法にのっとったサルマン・ラシュディ氏の死刑宣告(ファトワー)を発動し、イランの財団からは実行者に対する高額の懸賞金も提示されました。
この“暗殺指令”でまた世界中が大騒ぎになりました。
1991年には日本語訳の翻訳者五十嵐一氏が何者かによって喉を切られて殺されました。
今回イギリスのサルマン・ラシュディ氏に対する爵位授与の発表は、当然のことながらイスラム社会に大きな波紋を起こしています。
普段抗議活動はあまり見られないマレーシアでも抗議がなされているそうです。
パキスタンの商業者組合では、サルマン・ラシュディ氏の首を刎ねた者に日本円で約2060万円の賞金をかけたそうです。
この事態を受けて20日、イギリスのベケット外相は「ラシュディ氏への爵位授与は同氏が生涯にわたって創作してきた文学作品に対するものだが、これを重く受け止めた人々に対し謝罪する。」と陳謝しました。
現在のところは上記のような経緯ですが、それにしてもイギリスも「なんでこんな騒ぎになるとわかりきったことをするのかな・・・」という気がします。
他の国ならまだしも、イギリスは現在イラク、アフガニスタンというイスラム国家に多数の兵士を派遣し、彼らは激しい戦闘のなかで苦境に立っている訳ですから、民衆の反発を煽る今回の爵位授与は彼ら兵士の首にロープをかけて足を引っ張るような行為ではないかと思います。
氏の文学的功績とか、表現の自由の問題等々いろいろありますが、今現在世界でイスラム社会との関係が非常にデリケートになっており、あちこちで火を噴いているとき、「どうして・・・」という感じです。
こういう問題は、特に扇動する者・グループが存在すると、全体の流れに大きく影響することも懸念されます。
写真はパキスタン・カラチでの抗議行動 “flickr”より(By BHowdy)
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